101 / 107
貴方を独りにしないから
③
しおりを挟む
「茂さんはひとになにか教えるだけじゃない。大切なものをくれるんです。それは明るい性格だったり、知識だったり、モノだったりするかもしれません」
菜月の顔は穏やかだった。
なにかしら、彼の中で決めたことがある。
表情がそう言っていた。
次のことは数秒、間があった。
けれど菜月は口を開く。硬いけれど、はっきりした口調で言った。
「杏子さんにもそうです。咲耶ちゃんという存在を与えられたのは茂さんじゃないですか? たとえ壊れてしまったとしても、なにもなかったってこと、ないんじゃないですか?」
きっとこれが本題だった。
ミニ四駆コースに連れてきて、一緒に走ったこと。
これを話したかったからだろう。
茂はこの話題に胸が冷える思いを味わった。
今はまだ考えたくなかったし、どうしたらいいかもわかっていなかったことだ。あまり話したい話題ではない。
でも菜月のほうはなにか心に決めたらしい。
伝えたいと思ってくれるらしい。
茂の目を見つめる瞳は、まるで言い聞かせるようなものだった。
「咲耶ちゃんにもそうです。今、一緒に暮らせないのはわかります。それで咲耶ちゃんが寂しくなるのもわかります」
茂にとって大切な存在、ふたつ。
意味は違っても、そして今はその『大切』が変わってしまっても、確かに『大切』とくくれるカテゴリなのだ。
菜月にとっては胸に痛いだろうに。
恋人……いや、一旦は終わりを切り出されたのだから、今、そうあるかは微妙である。
が、菜月はきっと、終わりにしたつもりはないのだ。
そう伝わってきた。
だからこそ、こうして話をしてくれるのだろう。
思ったこと、伝えてくれるのだろう。
菜月の顔は穏やかだった。
なにかしら、彼の中で決めたことがある。
表情がそう言っていた。
次のことは数秒、間があった。
けれど菜月は口を開く。硬いけれど、はっきりした口調で言った。
「杏子さんにもそうです。咲耶ちゃんという存在を与えられたのは茂さんじゃないですか? たとえ壊れてしまったとしても、なにもなかったってこと、ないんじゃないですか?」
きっとこれが本題だった。
ミニ四駆コースに連れてきて、一緒に走ったこと。
これを話したかったからだろう。
茂はこの話題に胸が冷える思いを味わった。
今はまだ考えたくなかったし、どうしたらいいかもわかっていなかったことだ。あまり話したい話題ではない。
でも菜月のほうはなにか心に決めたらしい。
伝えたいと思ってくれるらしい。
茂の目を見つめる瞳は、まるで言い聞かせるようなものだった。
「咲耶ちゃんにもそうです。今、一緒に暮らせないのはわかります。それで咲耶ちゃんが寂しくなるのもわかります」
茂にとって大切な存在、ふたつ。
意味は違っても、そして今はその『大切』が変わってしまっても、確かに『大切』とくくれるカテゴリなのだ。
菜月にとっては胸に痛いだろうに。
恋人……いや、一旦は終わりを切り出されたのだから、今、そうあるかは微妙である。
が、菜月はきっと、終わりにしたつもりはないのだ。
そう伝わってきた。
だからこそ、こうして話をしてくれるのだろう。
思ったこと、伝えてくれるのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
【第一部完結】カフェと雪の女王と、多分、恋の話
凍星
BL
親の店を継ぎ、運河沿いのカフェで見習店長をつとめる高槻泉水には、人に言えない悩みがあった。
誰かを好きになっても、踏み込んだ関係になれない。つまり、SEXが苦手で体の関係にまで進めないこと。
それは過去の手酷い失恋によるものなのだが、それをどうしたら解消できるのか分からなくて……
呪いのような心の傷と、二人の男性との出会い。自分を変えたい泉水の葛藤と、彼を好きになった年下ホスト蓮のもだもだした両片想いの物語。BLです。
「*」マーク付きの話は、性的描写ありです。閲覧にご注意ください。
【完結】取り柄は顔が良い事だけです
pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。
そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。
そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて?
ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ!
BLです。
性的表現有り。
伊吹視点のお話になります。
題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。
表紙は伊吹です。
記憶喪失のふりをしたら後輩が恋人を名乗り出た
キトー
BL
【BLです】
「俺と秋さんは恋人同士です!」「そうなの!?」
無気力でめんどくさがり屋な大学生、露田秋は交通事故に遭い一時的に記憶喪失になったがすぐに記憶を取り戻す。
そんな最中、大学の後輩である天杉夏から見舞いに来ると連絡があり、秋はほんの悪戯心で夏に記憶喪失のふりを続けたら、突然夏が手を握り「俺と秋さんは恋人同士です」と言ってきた。
もちろんそんな事実は無く、何の冗談だと啞然としている間にあれよあれよと話が進められてしまう。
記憶喪失が嘘だと明かすタイミングを逃してしまった秋は、流れ流され夏と同棲まで始めてしまうが案外夏との恋人生活は居心地が良い。
一方では、夏も秋を騙している罪悪感を抱えて悩むものの、一度手に入れた大切な人を手放す気はなくてあの手この手で秋を甘やかす。
あまり深く考えずにまぁ良いかと騙され続ける受けと、騙している事に罪悪感を持ちながらも必死に受けを繋ぎ止めようとする攻めのコメディ寄りの話です。
【主人公にだけ甘い後輩✕無気力な流され大学生】
反応いただけるととても喜びます!誤字報告もありがたいです。
ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載中。
イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です
はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。
自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。
ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。
外伝完結、続編連載中です。
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
恭介&圭吾シリーズ
芹澤柚衣
BL
高校二年の土屋恭介は、お祓い屋を生業として生活をたてていた。相棒の物の怪犬神と、二歳年下で有能アルバイトの圭吾にフォローしてもらい、どうにか依頼をこなす毎日を送っている。こっそり圭吾に片想いしながら平穏な毎日を過ごしていた恭介だったが、彼には誰にも話せない秘密があった。
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる