宮廷画家令嬢は契約結婚より肖像画にご執心です!~次期伯爵公の溺愛戦略~

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!

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傷ついた心

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 アトリエで黙々と絵筆を滑らせるアマリア。

 今日は一人きりだった。

 本当なら絵を描くときの大半はフレイディと一緒だ。

 たくさん描いたデッサンや下絵、色見本はあるから本人がいなくても描けないということはない。

 けれど、やはり実際に目の前に立っていてもらって描くほうが、正確に決まっている。

 でもあれ以来、フレイディと一緒に過ごす時間は減ってしまった。

 絵のことだけではなく、日常生活でもだ。

 勿論、家のことは普通だった。

 毎食、食事は一緒にするし、行きあえば挨拶する。

 軽い話もいつも通りだった。

 けれどフレイディの様子はどこか暗いもので。

 はっきり態度として表れているわけではなかったが、なんとなく、空気が淀んでいるように感じられる。

 その状態でアマリアのほうからなにか言えるはずもない。

 自分が原因だというのに。

 絵のことも同じだ。

 フレイディから言われた。

「しばらく時間が取れそうにないから、すまないが一人で進めていてくれるかな」

 そう言われて、アマリアの返事なんて「はい」しかなかった。

 それで今日も、一人で肖像画を進めている。
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