宮廷画家令嬢は契約結婚より肖像画にご執心です!~次期伯爵公の溺愛戦略~

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!

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契約の残り時間

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「流石にもう完成なのだろう?」

 それは初夏に入った頃のことであった。

 アマリアが三時間ほどこもっていたアトリエから出ると、フレイディがそこへやってきていた。

 それでそのように聞いてきた。

「ええ。だいぶ満足できるようになってまいりました」

 宮廷の端っこに位置するアトリエから、中心部にある部屋で休憩するべく、廊下を歩きながら、二人は話をする。

 フレイディは勿論、苦笑した。

「だいぶ、なのかい。画家様はこだわりが強いな」

「立派に仕上げたいんですもの」

 話はお茶に使う一室へ移り、初夏の新緑が美しい庭が見える窓際でお茶を飲んだ。

 テーブルセットではあるが、近頃そうしているように、テーブルを挟んで向かい合うのではなく、ひとつのソファに二人、隣同士で腰掛ける形だ。

 距離が近いので少しどきどきしてしまいはするけれど、今となっては心地良い位置であった。

 アマリアは集中していた間、なにも口にしていなかったので、水分が入ってほっとひと息つくことになった。

 アトリエにもなにか、飲み物を用意しておいたほうがいいかもしれない、と思った。

 室内も暑くなっていくのだし、水分があったほうがいい。

 ただ、暑くなり切るまえには完成となるはずなので、今更手配を考えなくてもいいかしら、とも思った。

 そしてまた、『この生活はもう少し』と実感して、やはり心には寂しさがよぎるのだった。
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