上 下
229 / 276
二人の蜜月

4

しおりを挟む
 しかしこのお互い持っている認識のずれは、おそらく奇妙に噛み合っていた。

 多分、もっと恋に詳しい者から見れば、駆け引きの類と捉えられるかもしれない。

 フレイディからはともかく、アマリアにとってそんな認識は欠片もなかったのだけど。

 ただ、気持ちに素直に従っているにすぎない。

 そのようなフレイディとアマリアの様子は、周りから見ても少し変わったと思われたらしい。

 義祖母のジェシカは「仲睦まじくてなによりね」とあたたかく見守ってくれるし、やはり頻繁に実家帰省をしてくるフィオナも同じであった。

「本当の夫婦になったようなものね」と言ってくれて、アマリアはくすぐったく思いつつも、「ありがとうございます」と、功労者ともいえるフィオナに厚く御礼を言った。

 周りから見ても、夫婦らしくなった。

 その点は喜ばしく、幸せなことだ。

 でもアマリアがあの日、朝の庭で話をしたとき確認したように、契約の結婚であるのは変わっていない。

 よって、この生活はいつか終わることになる。

 いや、『いつか』どころか、約一年という予定だ。

 つまり、あと二ヵ月ほどの予定であった。

 それを考えると寂しくなってしまう気持ちはあるけれど、最初からそう決まっていたことだ。

 仕方がない。

 アマリアのその思考は割り切りが良すぎたし、フレイディがもしその思考を知っていたなら、盛大に肩を落としたと思われる。

 けれど幸い、フレイディはアマリアの思考など読めない。

 ただ、夫婦関係に恋仲が加わった幸せな蜜月を味わっていたようだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,769pt お気に入り:1,659

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,831pt お気に入り:3,021

【完結】飯屋ではありません薬屋です。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:72

この結婚、ケリつけさせて頂きます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,874pt お気に入り:2,910

処理中です...