月が沈まぬように

古川ゆう

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第2話 7月20日 続

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鼠祢島は日本の西側に位置する離島であり島には六つの地区が存在する。

一、潮崎しおざき

二、元浦もとうら

三、本元浦ほんもとうら

四、喜路きろ

五、甲離こうり

六、三蛇地みだち

先程、想太が防波堤から釣りをしていた地区は潮崎と呼ばれている。

想太自身、大物が釣れた試しはないのだが「潮崎の防波堤にはヌシがいる。」と確かな感覚があり比較的に魚も釣れ易いと思っている。

潮崎には定期船など様々な船が停まり町から観光客や島民、荷物などを運んでくる。

定期船が着く所でもある為、鼠祢島に来た人の好奇心を掻き立てるような観光マップや子供達が作成した掲示板などが存在している。

ーー想太は花月と自転車を走らせ二人が住んでいる地区、潮崎から右側に位置する元浦へと向かった。

元浦はあまり大きな所ではなく小さな所だ。

住んでいる人達のも温厚な性格の人が多く喋り方もキツい方ではない。

帰り道、二人は他愛もない話しをしながら自転車を並走させ帰った。

鼠祢島には当然一般的な交通ルールというものはあるのだが離島の為、交番が無い。

故に、交番が無ければ警察だって居る筈もない。

だが、警察の代わりをしている人達…それは鼠祢島消防団だ。

鼠祢島消防団には六つの地区から若手と呼ばれる男性が二人ずつ所属している。

若手とは言われてはいるが三十五歳~五十歳の団員で構成されている。

鼠祢島の法と秩序と安全は、島民と消防団によって固く守られており事故は昔からあまりない。

唯一多くある事故と言えば水難事故である。

その殆どが、鼠祢島の中心にあたる地区、本元浦に建てられている本元浦集会所があるのだが、そこで毎日のように島民が集まり会議と偽って集い毎晩のように酒を嗜みながら騒いでいる。

そうして泥酔した者が尿意を催し海へと向かいそのまま海へ転落するといった流れだ。

そこへいつもの如く消防団が駆けつけ救助…といったことが鼠祢島の日常であった。


「想太、ところで明日からなんするよ?」

「まあ、そうは言っても夏休みはもう始まってるんだけどね~。」

花月は怠そうに自転車のペダルを漕ぎながら想太に問いかけた。

「俺は島の祭りも近いし、太鼓の練習させられるか家の手伝いかなあ。」

花月は呆れた様子で「ふ~ん、そうなんや~私は秋ちゃんに夏休み入ったらお町まで出て一緒に遊ばん?て誘われたんやけどな~。」

「それまでは暇なんやけどな~??」と口を尖らせ想太に言った。

「どした?」

「なんもないわばーか。」

花月の態度に想太は「え?なに?どうした?」と訳も分からず想太は困惑していた。

「まぁ、明日は暇やと思うし釣りかな。」

「釣れんくせに?」

「うるさい。」

「明日は直哉なおやでも誘って喜路の方に行こうかと思っとる。」

「喜路って魚釣れるん?」

「いや、俺自身あんまり喜路では釣りした事ないんやけど昨日やったかな、直哉が喜路にやばいとこ見つけた…って意味深な顔して言いよったんよ。」

「それで?」

「やけん俺は未だ誰にも見つかってない穴場を直哉がとうとう見つけたと思っとる。」

「ふ~ん、男ってなんでそんなの好きなん?」

「それは…。」

「あっ!うん!?お~~い!」

花月は想太の話しの腰を折り前方に見える人物に手を振った。

「美穂~!」

茶色い毛並みをした芝犬の首にリードを着け脇道の草むらに佇む人物が居た。

「あ、想太と花月やん。」

伊藤美穂いとうみほ

この小さな島では遠目から見ても確実に悪目立ちする派手な見た目である。

即席で仕上げた艶の無い金色のショートカットの髪に、涼しげに着こなしているタンクトップとショートパンツからは少し色の焦げた肌が見えている。

おまけに両耳には無数の穴が開いておりこうして近くで美穂を見ると以前会った時よりも増えた気がする。

美穂は本元浦に住んでおり
想太、花月とは同級生だ。

二人は脇道に自転車を止めて美穂と話す。

「美穂、散歩?」

「そうなんよー。まめが散歩行きたそうやったけんねー。」

美穂は気怠そうに犬に向かって話しかけるが美穂には見向きもせず草むらに潜む虫に夢中であった。

「てか、また髪染めたん?」

「あ、これ?」

「さっき帰ってきて染めたー。」

「夏休み入ったしいっかて思ってねー。」

「毎年染めてない?」

「そうかねー。似合うやろ?」

「私はどっちも可愛いと思うし好きやけど。」

「ふふ、ありがとー。花月には負けるけどねー。」少し照れ臭そうに美穂は笑った。



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