許せなかった僕たちへ

古川ゆう

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一章

1.6 現実+1

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私達は
「今日はもう家に帰りなさい。」
とおばあちゃんにそう言われ各々自分の家へと帰る事にした。

いつもなら
私、結人、蓮の順に「また、明日。」と手を振って見送って帰っていた。

だが、今日はいつもと違う。

3人はそれぞれ別の道を歩いて自分の家まで帰ったのだ。

「どうしよう。怖いな。」
葵は心の中で呟いていた。

「あの男、あの人を埋めたのかな。」

「だめ、余計な事考えたら怖くなるからやめよう。」

「蓮も結人も別の道帰ってったし。それもそうだよね。」

「こんな日に一緒に帰れるわけないもんね。」

「明日から夏休みなのに…。」

「早く、家に帰ろう。」

葵の歩幅がいつもより大きくなり
足早に大地を踏みしめて歩いた。


無事に葵は家へと到着した。

玄関の鍵を開けたが、時刻は15時頃だった為両親は仕事から帰っておらず家に居たのは弟の淳だけだった。

「ねえちゃん、おかえり~。」

淳は奥の部屋で勉強をしていた。

玄関の開く音が聞こえたので
帰ってきた者の顔を見ていない淳だったが
終業式が同じだった。

その為、葵だろうと淳は思って言った。

「うん。ただいま。」
葵は落ち着いた声で返事をした。

葵はランドセルを背負ったまま階段を上がり2階の自室へと入った。

部屋に入るといつも見慣れた家具が置かれている。

葵は荷物を床に置いてベッドに倒れこんだ。

先程までの出来事が嫌でも頭の中に流れ込んでくる。

葵の目からは自然と涙が溢れ落ち
枕が濡れる。

「もう、私はどうしたらいいの?」

「ねえ。」

「蓮、結人。」

「教えてよ。」

「誰か、助けてよ…。」

涙で視界は狭くなっていった。



「あおい~。ご飯よ~。」
下からそう聞こえてきた気がした。

目を覚ますと、酷い悪夢でも見ていたのだろうか。着ていたTシャツに汗がべったりとまとわりついていた。

部屋の窓を覗くと先程までは群青色だった空もいつの間にか橙色へと変わり果て鴉が羽を広げ空を舞っている。

壁に掛けてある時計を腫れぼったい目で見てみると時刻は6時30分。

そのまま眠っていたようだ。

「はぁ。嫌だな。」
葵は深い溜息を零した。

扉を開け階段を降りた。

リビングへ向かうと

皿をテーブル上に並べながら「も~、何回も呼んだのに葵起きないんだから~。」と呆れた表情で、母親の福田遙ふくだはるかは言ってきた。

「ごめん、寝てたから。」
と葵はあくびをしながら返した。

「葵、1学期お疲れさま。」

「明日から夏休みだろ?」

そう言いながらテーブル上に並べられた皿に遙が作った料理を取り分けているのが
父親の福田壮志ふくだそうじだ。

「そうだよ、ありがと。」
葵は素っ気なく返した。

「お父さん、明日も仕事?」
淳は壮志に聞いた。

「仕事だけど、どうした?」

「え~仕事なの~。」

「自由研究一緒にして欲しかったのに。」
淳は残念そうに言った。

「仕方ないでしょ。お母さんが手伝ってあげようか?」

「お母さんじゃだめなの。」
淳は不服そうな顔をしていた。

「ふ~ん、もう夏休みの宿題手伝ってあげないからね。」
遙は口を尖らせ言った。

「え、それはだめだよ~。」

壮志はそれを見て笑っている。

「淳、また休みの日な。」

「さ、食べるか~。」

4人は椅子に座り食卓を囲んだ。

いつもと変わらない光景だった。

今日あった出来事は夢だったのだろうか。

葵はそう錯覚していた。

だが、身体が食べ物を拒絶している。

口に運ぶ動作さえも、その行為さえも出来なかった。

強制的に脳から直接
あの時の場面が頭の中で写し出される。

ご飯を2口程食べ
「ごちそうさま。」
と葵は言った。

「どうしたの?葵。」

「せっかく作ったのに、食べないの?」

「うん…ごめん。帰りに駄菓子屋寄って色々食べたからかな。」
葵はそう言って誤魔化した。

「お菓子ばっかり食べて。」

「またお腹空いたら食べれる様にラップ包んで置いておくからね。」

「ありがとう。ごちそうさま。」
葵はそう言ってリビングから去ろうとした。

「臨時ニュースです。」
リビングに置いてあるテレビから女性キャスターの声が聞こえてきた。

「つい先程、○○県○○市の山の中腹で石井浩一いしいこういちさんとみられる遺体が発見されました。遺体は中腹付近にあるとされる建物の側で埋められており警察への一本の連絡があり警察の捜査によって発見されたようです。」

「尚、警察に通報があったのは遺体となって発見された父親の息子の石井大和いしいやまと君からの連絡があったそうです。」

「未だ、犯人は捕まっておらず遺体からは何ヵ所もの刺し傷が見られ、犯人は強い復讐心を持った殺害と見て警察は現在も犯人の捜索を続けている模様です。」

テレビからは今日私が目にした全てが聞こえてきた様な気がした。

リビングを去ろうとした葵の足はその場からピタリと動かなくなった。

「え。」「何で。」「どうして。」

葵は何もかも分からなくなっていた。

気持ちの整理が追いつかない。

不安で胸が苦しくなっていく。

「これ、家の近くの山じゃないか?」

「怖いわね、近所でこんな事あるだなんて。」

「物騒だわ。」

壮志と遙は不安を口にした。

葵は自分の脚が震えているのに気づき
ふらつきながらもその脚で階段を上がり
部屋に入った。

部屋に入った瞬間、葵は吐き気を催した。

「どうしよう、お母さん達にバレてしまう。」

「夢なんかじゃなかったんだ。」

「何で、どうして。息子が警察に通報したの……?」

「あの殺された人には子供がいたの?」

「今もあの男の人は捕まってない。」

「やばい。警察が来るかも。私達が山なんかに行かなかったらこんな事にはならなかったに。」

「どうしようどうしようどうしようどうしよう。」

葵は考え過ぎで
頭がどうにかなりそうだった。

その時、階段が軋む音が聞こえてくる。

「誰か上がってくる…。」
葵は怖くなり膝を抱えうずくまる。

「あおい… ちょっといい?」
扉の向こう側から聞こえてきたのは
遙の声だった。

葵は良かったと胸を撫で下ろし
その場から立って部屋のドアを開けた。

だが、部屋の前に立っていた遙の表情がいつもとは違うことに葵は直ぐに気づきその場で固まった。

遙と葵の周りには緊迫した空気が張り詰めている。

「お母さん?」
葵は遙の顔を見て不安になり名前を呼んだ。

「葵…」

「どうして…?」

「何で黙ってたの…?」

遙の顔はぼろぼろと崩れ落ち
瞳からは涙が溢れている。

「お母さん…。」

葵は
「事件の事だ…。」とすぐに気づいた。

「ごめん…なさい…。」

葵は遙と階段を降りると
玄関にはスーツを着た男性2人が立っていた。

葵は子供ながらも2人は警察だと直ぐに分かった。

「福田葵さん、私達はこういう者です。」
そう言って刑事2人は胸ポケットから手帳を出し私に見せてきた。

「葵さん、大変申し訳ないですが、事情聴取を行いたいので任意同行願いますか?」とお父さんくらいの歳の刑事は私に言ってきた。

葵は手帳に書いてある名前を確認した。

白木直人しらぎなおと

若手の刑事だろうか。
180㎝程ある身長にすらっとした体型
黒髪に短髪で口元には小さなホクロが見えた。

近藤敏之こんどうとしゆき

若手刑事の上司にあたる人だろうか。
短髪に少し白髪混じりの黒髪に160㎝にも満たない背丈だがスーツを纏っていても分かるくらいに良い体格をしていた。

葵は
「はい。」
と深く頷いた。

玄関を出る前、葵は両親の顔を見て思っていた。

「こんな2人の顔初めて見たな。」

「こんな事になるなら…。」と。

私は刑事2人に連れられ
警察車両に乗り込んだ。





















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