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〜男の優しい瞳 泣く私〜
しおりを挟む煙草特有の匂いを味わいながら、メールを見る。響の言う通りだった。
〈別れよう。最後だから言うけど、そこまで好きじゃなかった。 冷めた。〉
私の方だったんだ。最初から、必要とされていなかったのは私の方。
愛されてなかったんだ。私が響を誰かの代わりに選べるような女ではなかった。
自分の惨めさにため息がでそうになる。
「ため息なんてしたら、間違えて肺まで煙が届いちゃいますよ。」
彼は、私の瞳を見つめた。
私は瞳でうなずいて、彼を私の瞳から外す。
彼の瞳に映る私を感じるだけで、今まで作った表情も口調もすぐ壊れてしまいそうだったから。
ボロボロとドラマのみたいに泣き叫ぶほどの悲しみではないはずだが、
心に作られた喪失感はすぐになくなりそうもない。
タバコの煙を吐くだけでは、
震えたくなるような悲しさも虚しさも不安も中々吐けないものだと知った。
私の全てを拒んだ響の声が脳内で再生される。
私が響が必要で、魅力がなかったのも私。
どれだけ代わりでも、私の中で響は大きくなっていた。
男の声が聞こえて、いつのまにかうつむいていた頭を上げる。
「そろそろ煙草、終わりましょう」と彼は煙草の火を消す。
私は彼と同じように火を消すが、大きな大きな感情の波が心を沈めようとする。
唇を噛んで、波が収まるのをま待とうと思った。
しばらく、私達はベンチに座っていた。
その間にも波は大きくなるばかりで、唇を緩めると溢れそうになる。
私は、向かい側の街灯に飛んでいる蛾、一匹をただただ見続けた。
彼の瞳は何を捉えているのだろう、そんなことを考える余裕はなかった。
向かい側の街灯が、音を出しながら消えていく。
辺りは、私達を照らす光しかないようだ。
また何かを失ったような感じがして、唇を噛み締める。
「唇、噛みすぎると血が出ますよ。」
その声に私は彼を見る。
彼は、穏やかな瞳で私を映した。
「唇を噛んで、感情を押し殺すのもあなたの癖、ですか?
対処法は知ってますか?」
優しく問いかけられる。
責め立てられるわけでも、慰められるわけでもない独特な雰囲気が流れる。
私は必死に首を振る。対処法は分かっているのだ。
私は唇を噛むことを止めなかった。 正確には、止められなかった。
しかし、すでに心は波に飲み込まれてたらしい。
心が呼吸を求めて、必死に口を開かせようと、唇を震わせる。
だんだんと嗚咽が漏れてくる。
体も震えてきて、どうしようもならなかった。
人前では、汚い感情も表情も見せないと決めていたのに、見せてる自分が不甲斐ない。
その気持ちも、溢れてくるものによって薄くなってくる。
久しぶりに流した涙は、止むことを知らないようだ。
隣で彼の存在を感じながらも、彼の瞳には私は映っていないのだと悟った。
でもそれが心地よくて、熱くなりすぎた心と体を冷ますには十分だった。
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