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5.空賊との戦いを終えて
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「用意は出来たか?」
シエルの力で商船に戻るとグレイは桃色髪の女を見つけ、問いかけた。
「まだですわ」
「あん?」
グレイは桃色髪の女に詰め寄る。
「口約束とは言え契約だ。不義理をする奴には容赦しねえぞ?」
つい先ほど悪名高い『シウニキス一家』の空賊船を拿捕した者が凄んで詰め寄ってくるのだ。桃色髪の女の周りの者は怯えながらじりじりと後ろに下がる。だが、この桃色髪の女は意に介さずグレイの目をジッと見つめてきた。
(なんだ? この女……)
グレイとて凄んでいるだけであり、この女をどうにかしようとは思っていない。そもそも空賊を討伐出来たのはシエルの謎の力のおかげだ。そのことを考えると、こういう交渉(?)の場ではいつも居心地の悪さを感じている。
「まだあなたの仕事は終わっておりません。私の依頼は護衛です。」
「それは俺がことわっ……」
「あなたは一方的に断って空賊船に行ってしまいました。つまり取引の条件は決まっていなかったのです」
(コイツ……)
グレイは心の中で頭を抱えた。確かにこの桃色髪の女の言い分は正しい。だが、この状況で正しさを突き付けてくる者はこれまで一人もいなかった。海賊を倒す者を相手に交渉をしてくる程の胆力を持った者など世界を見まわしてもそう多くないはずだ。
「……じゃあ、とりあえず討伐分はよこせ。続きの交渉はその後だ。」
「ダメです。渡したらあの不思議な力で飛んで行ってしまうのでしょう? それでは私の安全は担保されません」
バレてる……これは困ったとシエルを見るが、船の手すりに肘をかけ、ぼうっと海を眺めている。
(あのコミュ障め……!)
グレイがシエルと再会してから、シエルが人と話すことはほとんど見たことがない。
(昔はこうじゃなかったはずなんだけどな)
グレイは小さくため息をついた。
「聞・い・て・ま・す・か?」
桃色髪の女が詰め寄ってくる。
(やりづらい……)
グレイもここしばらく、まともなコミュニケーションを取った経験が無い。渡り鳥としての活動はギルドの受付を通して話すし、今回の様な緊急時ではまともな話し合いをしない。加えて相方とは普段からまともな会話などしない。それもあって、このように踏み込んでくる人間には気後れをしてしまう。
「……聞いてるよ」
「では受けてくださるのでしょうか?」
正直に言うとここから去りたい。だが、普段なら面倒になるとすぐに『力』を使うシエルが動かない。この依頼を受けろと言うことなのだろうか。
「う~ん……」
「受・け・て・く・だ・さ・る・の・で・しょ・う・か?」
どちらにしても、俺は一人では逃げることが出来ない。
「……どこまでだ?」
桃色髪の女は花が綻ぶように微笑んだ。
「ありがとうございますわ! ひとまずは港まで。そこで詳しくお話をさせてください」
面倒なことになった。グレイは心の中で深いため息をついた。
シエルの力で商船に戻るとグレイは桃色髪の女を見つけ、問いかけた。
「まだですわ」
「あん?」
グレイは桃色髪の女に詰め寄る。
「口約束とは言え契約だ。不義理をする奴には容赦しねえぞ?」
つい先ほど悪名高い『シウニキス一家』の空賊船を拿捕した者が凄んで詰め寄ってくるのだ。桃色髪の女の周りの者は怯えながらじりじりと後ろに下がる。だが、この桃色髪の女は意に介さずグレイの目をジッと見つめてきた。
(なんだ? この女……)
グレイとて凄んでいるだけであり、この女をどうにかしようとは思っていない。そもそも空賊を討伐出来たのはシエルの謎の力のおかげだ。そのことを考えると、こういう交渉(?)の場ではいつも居心地の悪さを感じている。
「まだあなたの仕事は終わっておりません。私の依頼は護衛です。」
「それは俺がことわっ……」
「あなたは一方的に断って空賊船に行ってしまいました。つまり取引の条件は決まっていなかったのです」
(コイツ……)
グレイは心の中で頭を抱えた。確かにこの桃色髪の女の言い分は正しい。だが、この状況で正しさを突き付けてくる者はこれまで一人もいなかった。海賊を倒す者を相手に交渉をしてくる程の胆力を持った者など世界を見まわしてもそう多くないはずだ。
「……じゃあ、とりあえず討伐分はよこせ。続きの交渉はその後だ。」
「ダメです。渡したらあの不思議な力で飛んで行ってしまうのでしょう? それでは私の安全は担保されません」
バレてる……これは困ったとシエルを見るが、船の手すりに肘をかけ、ぼうっと海を眺めている。
(あのコミュ障め……!)
グレイがシエルと再会してから、シエルが人と話すことはほとんど見たことがない。
(昔はこうじゃなかったはずなんだけどな)
グレイは小さくため息をついた。
「聞・い・て・ま・す・か?」
桃色髪の女が詰め寄ってくる。
(やりづらい……)
グレイもここしばらく、まともなコミュニケーションを取った経験が無い。渡り鳥としての活動はギルドの受付を通して話すし、今回の様な緊急時ではまともな話し合いをしない。加えて相方とは普段からまともな会話などしない。それもあって、このように踏み込んでくる人間には気後れをしてしまう。
「……聞いてるよ」
「では受けてくださるのでしょうか?」
正直に言うとここから去りたい。だが、普段なら面倒になるとすぐに『力』を使うシエルが動かない。この依頼を受けろと言うことなのだろうか。
「う~ん……」
「受・け・て・く・だ・さ・る・の・で・しょ・う・か?」
どちらにしても、俺は一人では逃げることが出来ない。
「……どこまでだ?」
桃色髪の女は花が綻ぶように微笑んだ。
「ありがとうございますわ! ひとまずは港まで。そこで詳しくお話をさせてください」
面倒なことになった。グレイは心の中で深いため息をついた。
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