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【第1話】初めましてと懐かしのミルク粥
【1-3】
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──転生?
生まれ変わり、っていうことだろうか。
「やはり、アースことチキュウの方々は、自分たちの星にしか生命体は存在しないと思っておられるのですね。──宇宙の造りは複雑でしてね、宇宙自体がいくつもありますし、生命体が存在している星が複数ある宇宙もいくつかあります。それぞれの星の住人同士で交流がある場合も、無い場合もある。そして、それぞれ生命体の交流がある範囲をひとつの『世界』とみなしています。星ひとつで『世界』のこともあれば、複数の星あるいは宇宙規模で『世界』となることもあります。そして、貴方が生きていたチキュウと、此処は異なる世界です。……お分かりいただけていますでしょうか?」
「地球と、僕が今いる此処は、少なくとも違う星……ということだよね?」
「ええ、素晴らしい! ミカさんは理解力が高いのですね。話が早くて、助かります。ちなみに、此処はディデーレという星のプレカシオン王国の中にある魔王の城です」
「……なんだって?」
異世界がどうのという話だって、思考が追い付くかどうか怪しいのに、「魔王」という単語が飛び出てますます混乱してくる。あまりにもファンタジーすぎないか?
「貴方にとって突飛な話であることは、私も理解しています。ですが、端的に事実だけを述べれば、私は異世界で死んだばかりの貴方の魂を此処へ転生させました。魔王の食事係として」
「……魔王の食事係?」
「はい。私が転生させる魂を選別するための条件として設定したのは、亡くなった時点で生前の人生に未練が無く、天涯孤独で、料理が好きなアースの人の魂。……ミカさんは、この条件枠に当てはまりますか?」
「まぁ、当てはまるかな……、ただ、料理が好きって言っても、凝ったものは作れないけど」
「いえ、そこは問題ではありません。……そうですか。当てはまるのですね」
カミュは哀しげに目を伏せた後、慈愛に満ちた眼差しを僕へ向けてきた。
「ミカさんは、大変お若いとお見受けしますが、何年生きていらしたんですか?」
「二十年だよ」
「おや……、思っていたより長い。けれど、やはり大変お若いですね。それで、何の未練も無くお亡くなりになったと? ……本当に?」
「食事係」と自身の料理スキルの釣り合いが気になる僕とは違い、カミュは僕が彼の条件枠に本当に収まっているのかが引っ掛かっているらしい。
「未練は無かったよ、本当に。僕は訳あって天涯孤独の身だったし、将来の夢とか目標も特に無かったし。……まぁ、流石に知らない人から突き飛ばされて巻き込まれた事故で死ぬことになるとは思わなかったし、死ぬ直前に自分の手作りのごはんを誰かに食べてみてほしかったな、くらいは考えたけど」
「……手料理を振る舞う相手がいらっしゃらなかった、と?」
「うん。友達も恋人もいなかったし、家族もいなかったから。ごはんを作るのは好きだったけど、いつもそれを自分で食べるだけ。いつか誰かに食べてもらえる機会があればいいな、ってぼんやり考えることはあったかな。でも、それだって未練と言うほどじゃないから」
特殊な環境で生きてきた僕は人と繋がるのが下手で、家に誰かを招いたり招かれたりする機会なんか無かった。いつか誰かと温かい家庭を作れたらいいなとぼんやり夢見つつ、だからといって恋愛したいって強く考えたこともないから結婚とは縁遠そうな気がしていた。その程度の、未練にもならないくらいの気持ちだ。
「なるほど……、だから私は、貴方の魂を呼び寄せてしまったのですね」
「……やっぱり、転生っていうのは本当のことなの?」
「はい。信じがたいでしょうが、貴方は魔の者である私がこの世界に転生させたのです。魔王の食事を用意する僕として」
「しもべ……。というか、僕は分かるけど、まのものって何?」
「種族です。……まぁ、人間からは悪魔と呼ばれておりますが」
悪魔。──そう聞かされて、つい彼の翼を見てしまう。確かに、この黒い蝙蝠羽は、僕が持つ悪魔というイメージ通りと云えなくもないかもしれない。
カミュの言葉を信じるなら此処は魔王の居城らしいし、悪魔がいてもおかしくはないのかな。非現実的だけれど。ただ、目の前にいる紅髪の美男がいかにも悪魔らしいかと問われれば、首を傾げるしかない。
僕の視線をどう捉えたのか、カミュはしゅんと項垂れた。
「人間にとって悪魔が悪い印象の存在であると理解しています。……ミカさんも、お嫌い?」
「うーん……、好き嫌いで考えたことはないからなぁ……、悪魔なんて架空の存在だと思ってたし」
「アースもといチキュウでは、悪魔は空想上の生物だそうですね。けれど、人間を悪しき道へ誘惑したり、災いを招く存在と言われているのでしょう? 魔の者は、まさにそういった存在です。人間にとっては恐ろしい相手でしょうね」
「……カミュも、そういうことをするの?」
「今はしていません。誓って、ミカさんへ手を出したりしませんし、主へ危害を加えようとする相手以外を返り討ちにしたりもいたしません。……ただ、大昔は私もただの『魔の者』でしたから。恥ではありますが、汚点となる行為が多々あったことは認めます」
つまり、過去には悪魔らしい行為をしていたけれど、今は足を洗った──ってことなのかな。
悔しそうに俯いていたカミュは、再び僕をまっすぐに見つめてくる。
「ミカさん、話を戻します。貴方は、魔王の食事を用意する係として、悪魔である私が魂を召喚し、この世界へ転生していただきました。……まず、ここまでの話を信じていただけますか?」
「えっ、……えぇと」
魔王だの悪魔だのにわかには信じられない話だけれど、死後の世界だと思えなくもない……かもしれない。いずれにせよ、電車が到着する直前の線路内へ突き飛ばされた僕が助かったとは考えにくい。そして、一命を取り留めて昏睡状態になってこんな夢を見ているとも、本当に転生したのだとも、どうとでも考えられるし、少なくともこの場でこれ以上反論をする必要は感じられなかった。
「うん。……とりあえず、カミュの言うことを信じるよ」
生まれ変わり、っていうことだろうか。
「やはり、アースことチキュウの方々は、自分たちの星にしか生命体は存在しないと思っておられるのですね。──宇宙の造りは複雑でしてね、宇宙自体がいくつもありますし、生命体が存在している星が複数ある宇宙もいくつかあります。それぞれの星の住人同士で交流がある場合も、無い場合もある。そして、それぞれ生命体の交流がある範囲をひとつの『世界』とみなしています。星ひとつで『世界』のこともあれば、複数の星あるいは宇宙規模で『世界』となることもあります。そして、貴方が生きていたチキュウと、此処は異なる世界です。……お分かりいただけていますでしょうか?」
「地球と、僕が今いる此処は、少なくとも違う星……ということだよね?」
「ええ、素晴らしい! ミカさんは理解力が高いのですね。話が早くて、助かります。ちなみに、此処はディデーレという星のプレカシオン王国の中にある魔王の城です」
「……なんだって?」
異世界がどうのという話だって、思考が追い付くかどうか怪しいのに、「魔王」という単語が飛び出てますます混乱してくる。あまりにもファンタジーすぎないか?
「貴方にとって突飛な話であることは、私も理解しています。ですが、端的に事実だけを述べれば、私は異世界で死んだばかりの貴方の魂を此処へ転生させました。魔王の食事係として」
「……魔王の食事係?」
「はい。私が転生させる魂を選別するための条件として設定したのは、亡くなった時点で生前の人生に未練が無く、天涯孤独で、料理が好きなアースの人の魂。……ミカさんは、この条件枠に当てはまりますか?」
「まぁ、当てはまるかな……、ただ、料理が好きって言っても、凝ったものは作れないけど」
「いえ、そこは問題ではありません。……そうですか。当てはまるのですね」
カミュは哀しげに目を伏せた後、慈愛に満ちた眼差しを僕へ向けてきた。
「ミカさんは、大変お若いとお見受けしますが、何年生きていらしたんですか?」
「二十年だよ」
「おや……、思っていたより長い。けれど、やはり大変お若いですね。それで、何の未練も無くお亡くなりになったと? ……本当に?」
「食事係」と自身の料理スキルの釣り合いが気になる僕とは違い、カミュは僕が彼の条件枠に本当に収まっているのかが引っ掛かっているらしい。
「未練は無かったよ、本当に。僕は訳あって天涯孤独の身だったし、将来の夢とか目標も特に無かったし。……まぁ、流石に知らない人から突き飛ばされて巻き込まれた事故で死ぬことになるとは思わなかったし、死ぬ直前に自分の手作りのごはんを誰かに食べてみてほしかったな、くらいは考えたけど」
「……手料理を振る舞う相手がいらっしゃらなかった、と?」
「うん。友達も恋人もいなかったし、家族もいなかったから。ごはんを作るのは好きだったけど、いつもそれを自分で食べるだけ。いつか誰かに食べてもらえる機会があればいいな、ってぼんやり考えることはあったかな。でも、それだって未練と言うほどじゃないから」
特殊な環境で生きてきた僕は人と繋がるのが下手で、家に誰かを招いたり招かれたりする機会なんか無かった。いつか誰かと温かい家庭を作れたらいいなとぼんやり夢見つつ、だからといって恋愛したいって強く考えたこともないから結婚とは縁遠そうな気がしていた。その程度の、未練にもならないくらいの気持ちだ。
「なるほど……、だから私は、貴方の魂を呼び寄せてしまったのですね」
「……やっぱり、転生っていうのは本当のことなの?」
「はい。信じがたいでしょうが、貴方は魔の者である私がこの世界に転生させたのです。魔王の食事を用意する僕として」
「しもべ……。というか、僕は分かるけど、まのものって何?」
「種族です。……まぁ、人間からは悪魔と呼ばれておりますが」
悪魔。──そう聞かされて、つい彼の翼を見てしまう。確かに、この黒い蝙蝠羽は、僕が持つ悪魔というイメージ通りと云えなくもないかもしれない。
カミュの言葉を信じるなら此処は魔王の居城らしいし、悪魔がいてもおかしくはないのかな。非現実的だけれど。ただ、目の前にいる紅髪の美男がいかにも悪魔らしいかと問われれば、首を傾げるしかない。
僕の視線をどう捉えたのか、カミュはしゅんと項垂れた。
「人間にとって悪魔が悪い印象の存在であると理解しています。……ミカさんも、お嫌い?」
「うーん……、好き嫌いで考えたことはないからなぁ……、悪魔なんて架空の存在だと思ってたし」
「アースもといチキュウでは、悪魔は空想上の生物だそうですね。けれど、人間を悪しき道へ誘惑したり、災いを招く存在と言われているのでしょう? 魔の者は、まさにそういった存在です。人間にとっては恐ろしい相手でしょうね」
「……カミュも、そういうことをするの?」
「今はしていません。誓って、ミカさんへ手を出したりしませんし、主へ危害を加えようとする相手以外を返り討ちにしたりもいたしません。……ただ、大昔は私もただの『魔の者』でしたから。恥ではありますが、汚点となる行為が多々あったことは認めます」
つまり、過去には悪魔らしい行為をしていたけれど、今は足を洗った──ってことなのかな。
悔しそうに俯いていたカミュは、再び僕をまっすぐに見つめてくる。
「ミカさん、話を戻します。貴方は、魔王の食事を用意する係として、悪魔である私が魂を召喚し、この世界へ転生していただきました。……まず、ここまでの話を信じていただけますか?」
「えっ、……えぇと」
魔王だの悪魔だのにわかには信じられない話だけれど、死後の世界だと思えなくもない……かもしれない。いずれにせよ、電車が到着する直前の線路内へ突き飛ばされた僕が助かったとは考えにくい。そして、一命を取り留めて昏睡状態になってこんな夢を見ているとも、本当に転生したのだとも、どうとでも考えられるし、少なくともこの場でこれ以上反論をする必要は感じられなかった。
「うん。……とりあえず、カミュの言うことを信じるよ」
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