117 / 246
【第6話】両片想いとフライドポテト
【6-7】
しおりを挟む
◇
「えっ……、す、すごく大きい……」
朝食後、片付けやら何やらを終わらせてから、僕は今まで一度も足を踏み入れたことが無かった遊戯室へと案内され、「創世大戦」に使う遊戯盤を見せてもらったんだけど──、これが、想像の遥か上をいく大きさだった。
てっきり、すごろくゲームのボードくらいのサイズかと思っていたのに、見せられたのは卓球台とかビリヤード台とか、そういう感じのものを彷彿とさせるごついテーブルみたいなものだった。大きい地形模型図というか、両端に山脈っぽいものがあり、真ん中に海もしくは湖を思わせる水辺っぽいものがある。
目を丸くしている僕を見て、ジルとカミュは微笑んだ。
「まぁ、小さくはないか。これを置ける家かどうかというのが、貧富の境界線の一種になっていることもあるくらいだ」
「そうなんだ……、確かに、自宅にこれを置くって、僕がいた世界でもなかなか無いと思うよ」
「やはり、そうなのか。アビーもマリオも似たような反応をしていたな。アビーは庭になら置けると言っていたが、マリオの家には庭も無いと言っていた。ミカが住んでいた場所も、そんな感じだったのか?」
「うん。庭なんてとんでもない。むしろ、僕が今使わせてもらっている部屋よりも狭い場所だったよ」
「は……? あの部屋よりも狭い? 家が?」
「お家の一室が、というわけではなく……家全体の広さが、ということですか?」
「うん、そうだよ。その中に、調理台とかお風呂とかもあったんだ」
ジルもカミュも、目を点にして絶句している。ディデーレには、ワンルームアパートみたいな物件は無いのかな。この城以外はイラさんとリュリちゃんのアジトしか見たことがないから、よく分からないけど。
ジルとカミュは遊戯盤の両端に置かれている座り心地の良さそうな椅子へ着席し、僕にはその中間地点にある椅子を勧められたので、そこに座る。
よく見ると、遊戯盤の両端に細長い瓶が設置されている。メモリの無いメスシリンダーみたいな形だ。ジルとカミュがそこに手を翳すと、瓶が光り、溢れるギリギリの位置まで水が湧き溜まった。唐突に湧き上がった不思議な水は、キラキラと光り輝いている。
「この水は、参加者の持つ魔力の三分の一相当を可視化したものだ。進行の中で、この水を少しずつ消費しながら発展、謀略、戦争などの作業や行事をこなす必要がある」
「ちなみに、ジル様も私も魔力の上限は無いに等しいですから、このように満杯まで水が溜まっておりますが、通常の人間はここまでは溜まりません。大賢者でも五分の四程度が限界だそうです」
この魔法の水は、HPとかMPとか、ああいうようなものなのかな? きっと、この水の量が多ければ多いほど有利になるんだろう。
「サリハさんはどのくらいまで水を溜められるの?」
「俺たちとほぼ同等だ。無論、彼女の本来の魔力では無理なことで、精霊が力を貸しているからなんだろう」
「なるほど……」
魔力の水を魔王と同程度に溜められるからこそ、時間が掛かる互角な勝負を出来るってことなのかな。知力も必要ということだったから、魔力の水が同程度まであれば誰でも良い勝負が出来るわけじゃないだろうけれど、元手となるものが少なければ知恵を活かしきれないはずだ。
──それにしても、これはどうやって遊ぶものなんだろう。サイコロっぽいものが二つあるけど、駒となるものがあるわけじゃない。サイコロは僕がよく知る六面体のものではなくて、もっと多面の……、ひとつは十二面体くらい、もうひとつは少なくとも二十面以上はありそうだ。この世界独自の数字が書かれている。ちなみに、僕も最近、数字と簡単な文字は読めるようになってきた。
「『創世大戦』は、その名の通り、創られたばかりの世界を発展させていき、最終的には相手の砦を乗っ取ったほうが勝ちだ」
それだけ聞くとシンプルなゲームのようにも思えるけれど、それならば何日も勝負が続いたりはしないはずだ。
「世界を発展させるのに時間が掛かるのかな?」
「そうだな。なんせ、一組の人間の男女から全てが始まる」
「一組の男女……?」
「その男女から子どもが生まれて子孫繁栄していくと同時に、山や海を開拓して住みやすい国にしていき、領地を拡げていくという進行なのです。より広く、より発展した領土を持つことが、重要になります」
「場合によっては、相手国の将や貴族を寝返らせる算段も立てねばならない。開拓も上手くやらなければ、貧相な土壌が増えるばかりになってしまう可能性もある。国民の知能が低すぎると文化の発展が遅れてしまい、だからといって悪知恵を巡らせる者が増えてしまったり、国家への信頼度が低い民が多くなってしまうと、相手国に攻め落とされるまでもなく自滅してしまう」
「発展に必要な項目が多彩で、それが数値化されているのですが、相手へ開示しなければならない数値もあれば、秘密もしくは嘘を提示してもよい数値もあります。『創世大戦』は頭脳戦でもあり、心理戦でもあり、魔力の強さや使い方の判断力が試される遊戯です。遊びと云えど、とても奥が深いのですよ」
奥が深いどころか、想像以上に物凄く複雑だ。僕はあまり詳しくないのだけど、戦略や育成の要素があるシミュレーションゲームのようなものなのだろうか。家庭用ゲーム機のソフト一本分くらいのボリュームはありそうだし、それをクリアすると考えれば、何日も掛かってしまうのも頷ける。
「話を聞いているだけだと、ややこしいだろう。導入部分だけだが、やってみるから見ていてくれ」
そう言って、ジルは魔法で譜面台のような物を引き寄せ、遊戯盤の横に設置した。
「えっ……、す、すごく大きい……」
朝食後、片付けやら何やらを終わらせてから、僕は今まで一度も足を踏み入れたことが無かった遊戯室へと案内され、「創世大戦」に使う遊戯盤を見せてもらったんだけど──、これが、想像の遥か上をいく大きさだった。
てっきり、すごろくゲームのボードくらいのサイズかと思っていたのに、見せられたのは卓球台とかビリヤード台とか、そういう感じのものを彷彿とさせるごついテーブルみたいなものだった。大きい地形模型図というか、両端に山脈っぽいものがあり、真ん中に海もしくは湖を思わせる水辺っぽいものがある。
目を丸くしている僕を見て、ジルとカミュは微笑んだ。
「まぁ、小さくはないか。これを置ける家かどうかというのが、貧富の境界線の一種になっていることもあるくらいだ」
「そうなんだ……、確かに、自宅にこれを置くって、僕がいた世界でもなかなか無いと思うよ」
「やはり、そうなのか。アビーもマリオも似たような反応をしていたな。アビーは庭になら置けると言っていたが、マリオの家には庭も無いと言っていた。ミカが住んでいた場所も、そんな感じだったのか?」
「うん。庭なんてとんでもない。むしろ、僕が今使わせてもらっている部屋よりも狭い場所だったよ」
「は……? あの部屋よりも狭い? 家が?」
「お家の一室が、というわけではなく……家全体の広さが、ということですか?」
「うん、そうだよ。その中に、調理台とかお風呂とかもあったんだ」
ジルもカミュも、目を点にして絶句している。ディデーレには、ワンルームアパートみたいな物件は無いのかな。この城以外はイラさんとリュリちゃんのアジトしか見たことがないから、よく分からないけど。
ジルとカミュは遊戯盤の両端に置かれている座り心地の良さそうな椅子へ着席し、僕にはその中間地点にある椅子を勧められたので、そこに座る。
よく見ると、遊戯盤の両端に細長い瓶が設置されている。メモリの無いメスシリンダーみたいな形だ。ジルとカミュがそこに手を翳すと、瓶が光り、溢れるギリギリの位置まで水が湧き溜まった。唐突に湧き上がった不思議な水は、キラキラと光り輝いている。
「この水は、参加者の持つ魔力の三分の一相当を可視化したものだ。進行の中で、この水を少しずつ消費しながら発展、謀略、戦争などの作業や行事をこなす必要がある」
「ちなみに、ジル様も私も魔力の上限は無いに等しいですから、このように満杯まで水が溜まっておりますが、通常の人間はここまでは溜まりません。大賢者でも五分の四程度が限界だそうです」
この魔法の水は、HPとかMPとか、ああいうようなものなのかな? きっと、この水の量が多ければ多いほど有利になるんだろう。
「サリハさんはどのくらいまで水を溜められるの?」
「俺たちとほぼ同等だ。無論、彼女の本来の魔力では無理なことで、精霊が力を貸しているからなんだろう」
「なるほど……」
魔力の水を魔王と同程度に溜められるからこそ、時間が掛かる互角な勝負を出来るってことなのかな。知力も必要ということだったから、魔力の水が同程度まであれば誰でも良い勝負が出来るわけじゃないだろうけれど、元手となるものが少なければ知恵を活かしきれないはずだ。
──それにしても、これはどうやって遊ぶものなんだろう。サイコロっぽいものが二つあるけど、駒となるものがあるわけじゃない。サイコロは僕がよく知る六面体のものではなくて、もっと多面の……、ひとつは十二面体くらい、もうひとつは少なくとも二十面以上はありそうだ。この世界独自の数字が書かれている。ちなみに、僕も最近、数字と簡単な文字は読めるようになってきた。
「『創世大戦』は、その名の通り、創られたばかりの世界を発展させていき、最終的には相手の砦を乗っ取ったほうが勝ちだ」
それだけ聞くとシンプルなゲームのようにも思えるけれど、それならば何日も勝負が続いたりはしないはずだ。
「世界を発展させるのに時間が掛かるのかな?」
「そうだな。なんせ、一組の人間の男女から全てが始まる」
「一組の男女……?」
「その男女から子どもが生まれて子孫繁栄していくと同時に、山や海を開拓して住みやすい国にしていき、領地を拡げていくという進行なのです。より広く、より発展した領土を持つことが、重要になります」
「場合によっては、相手国の将や貴族を寝返らせる算段も立てねばならない。開拓も上手くやらなければ、貧相な土壌が増えるばかりになってしまう可能性もある。国民の知能が低すぎると文化の発展が遅れてしまい、だからといって悪知恵を巡らせる者が増えてしまったり、国家への信頼度が低い民が多くなってしまうと、相手国に攻め落とされるまでもなく自滅してしまう」
「発展に必要な項目が多彩で、それが数値化されているのですが、相手へ開示しなければならない数値もあれば、秘密もしくは嘘を提示してもよい数値もあります。『創世大戦』は頭脳戦でもあり、心理戦でもあり、魔力の強さや使い方の判断力が試される遊戯です。遊びと云えど、とても奥が深いのですよ」
奥が深いどころか、想像以上に物凄く複雑だ。僕はあまり詳しくないのだけど、戦略や育成の要素があるシミュレーションゲームのようなものなのだろうか。家庭用ゲーム機のソフト一本分くらいのボリュームはありそうだし、それをクリアすると考えれば、何日も掛かってしまうのも頷ける。
「話を聞いているだけだと、ややこしいだろう。導入部分だけだが、やってみるから見ていてくれ」
そう言って、ジルは魔法で譜面台のような物を引き寄せ、遊戯盤の横に設置した。
1
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる