魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

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【第6話】両片想いとフライドポテト

【6-15】

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 ◆◆◆


 魔王と巫女の真剣勝負が始まってから、丸二日ほどの時間が経過した。つまり今は、翌々日の日中だ。早ければ、今日中に最後の決着がつくだろう。

 ジルもサリハさんも遊戯室に籠りきりで、時々、共通の休息時間を取り、遊戯室の両隣にある仮眠室で休んでいるらしい。入浴時は、カミュの転移魔法で浴室へ送り届けているみたいだ。
 勝負中の二人の世話をするために遊戯室へ入れるのはカミュだけで、僕とフィラスは料理や片付けや洗い物などをする他は自由時間としてのんびり出来た。

 僕が地球のことを、フィラスが故郷やその周辺地域のことを話して、互いの文化の差を面白がったり。他愛ない雑談や冗談を言い合って、笑い合ったり。
 ──あと、僕が自分の生い立ちや中水上なかみかみのおじさんのことを話すと、フィラスは大泣きしながら「友よ、友よ」とうわ言のように繰り返して力強く抱きしめてくれた。それは安易な同情などではなく、僕の目線に立って僕の気持ちを共有してくれたからこその涙だと十分に伝わってきたから、ありがたくて、温かくて、思わず僕も泣いてしまったり。

 そんな交流をしているうちに、フィラスから何度も「友よ」と言われているうちに、本当に友だちが出来たような、そんな気持ちになった。学生時代に友だちがいたら、きっとこんな風に喜怒哀楽を共有して、賑やかな時間を過ごせていたのかもしれない。そういう気持ちを味わわせてくれたフィラスに、とても感謝している。

 毎年、客室に泊まっていたというフィラスだけれど、今回は僕の部屋がいいとごねてきた。ベッドが無くても構わないからと頼み込むフィラスへ苦笑して「そんなに仲良くなられるなんて、ちょっと妬けますね」などと軽口を叩きつつも、カミュが魔法で僕の部屋にベッドをもう一つ設置してくれた。
 隣同士のベッドにそれぞれ寝転びながら、寝落ちてしまうまで、ああでもないこうでもないと語り明かすのが、とても楽しい。
 そして、本人の人柄通りあったかい家庭で育った様子のフィラスが、僕とジルとカミュの関係を「我が家族と同等に温かな絆で結ばれている」と言ってくれたのが、とても嬉しくて、その喜びを引きずって幸せな夢を見ることが出来た。

 フィラスが得意なのはおしゃべりだけではなくて、料理の上達も早い。初めはちょっとした装飾に挑戦していたくらいだったのに、この二日でみるみる成長し、今は食材を包丁で手際よく切れるようになっている。勿論、魔法は使わず、彼自身の手作業だ。
 ここまで成長したのなら、彼一人で一品を仕上げることも出来るはず。密かに計画していたことを実行に移す時が来たのでは、と考えた僕は、のほほんとした笑顔でクックとポッポと戯れているフィラスを調理場へと呼び出した。


  ◇


「なっ……! ミカ、正気か!?」
「正気だよ」
「無理だろう! オレが! 一人で! りょ、料理を、一品こしゃえるにゃど!」
「大丈夫、出来るよ」
「できうにょか!?」
「出来るよ!」
「う、うう……」

 気が昂って口調が怪しくなってきたフィラスは、僕に言い切られて言葉に詰まり、狼狽えている。ちょっと困った顔をしているゴールデンレトリバーという感じで、可愛らしい。クックとポッポも、戸棚の上から楽しそうに見下ろしている。

「フィラス一人でって言っても、僕も横についているし。揚げるときだけ油ハネに注意が必要だけど、カミュがついていてくれれば安全だよ」
「揚げる……のか……?」
「うん。君たち一族にとって、揚げ物はご馳走なんだよね? サリハさんに美味しいご馳走を作ってあげたくない?」
「巫女様に……、ふぁぁ……」

 大好きな人の喜ぶ顔を思い浮かべたのか、フィラスの顔も口も蕩けた。微笑ましいし、それは料理において大切な気持ちだとも思う。食べてくれる人を想いながら一生懸命に作った料理は、多少ぎこちなくても、美味しくなるものだから。

「サリハさんも、揚げ物は好きなのかな?」
「ああ、お好きだとも! だが、我が一族は特別な記念日にしか揚げ物を口に出来ないのだ」
「油が貴重なんだもんね」

 サリハさんとフィラスが住む乾地帯は、立地的に他所との交易が難しく、食用油は特に入手しづらいものなんだそうだ。だから、魔王との勝負を終えた後は、土産として油を買って故郷へ帰るらしい。
 貴重な油を使わない調理法は限られているし、もしかしたら、アレは食べたことがないんじゃないかな。

「ねぇ、君たちの故郷でポトトは食べるのかな?」
「ああ。あれは乾地でも比較的育てやすいから、よく食べられている。巫女様もお好きだ」
「そっかそっか。どうやって食べてる? 揚げたことはある?」
「蒸して潰して粉を混ぜて練り込んだものを焼くことが多いな。オレたちは、ポトトを揚げたりはしない」
「うん、うん。じゃあ、やっぱりアレを作るべきだね」
「アレ……?」
「フライドポテト──、っていうか、フライドポトト!」

 愛鳥たちにも負けないくらいのドヤ顔をしている僕に対し、フィラスはきょとんとした顔で金眼を瞬かせた。
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