魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

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【第6話】両片想いとフライドポテト

【6-16】

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「その、フヤィォポトト……? とやらは、一体何なのだ?」
「ポトトを揚げたものだよ。ほくほくして美味しいんだ。指でつまんで食べられるし、勝負中のサリハさんにも美味しく食べてもらえると思うよ」

 ポトトは、この世界においてのジャガイモに相当する野菜で、僕が知るジャガイモよりもホクホク感が強くて甘みがある。皮の風味もいいから、皮つきのフライドポテトにしたらとても美味しい。何日か前に試しに作ってみたときは、うちの魔王と悪魔も夢中で食べてくれた。余計な味付けはしないで、揚げてすぐ塩を振る程度のシンプルな仕上がりで丁度いい。

「巫女様に喜んでいただけるような揚げ物……、そんな大層なものをオレなどが作れるだろうか」
「大丈夫。本当に簡単なんだよ。フィラスは、上手に野菜を切れるようになったでしょ? その作業をこなせるなら、ちゃんと作れる」
「……心の友が、そこまで言ってくれるのだから、きっとオレにも出来るのだろう。よし! がんばうぞ!」
「うん、サリハさんに喜んでもらえるように頑張ろうね!」
「がんばう!」

 危うい口調ながらも、フィラスは自身を鼓舞するように両手で握り拳を作り、それを思い切り天へと突き上げる。迫力のある両腕でのエイエイオーに僕も付き合って、同じく拳を振り上げた。
 フィラスは、自分に自信があるというわけでもないけれど、必要以上に卑下もしない。素早くポジティブな思考に切り替えるのが上手で、僕も見習いたいと思っている。
 今も、「友が言うことを信じる」という動機づけで見事にテンションを上げていた。彼の金眼が輝いているうちに、調理工程に入ったほうがいいだろう。

「じゃあ、カミュが来る前に、下ごしらえをしちゃおうか。まずは手を洗おう」
「分かった! では、オレが水を汲もう。腕力には自信があるからな」
「ふふっ。じゃあ、お願いするね」

 颯爽と手桶を抱えたフィラスが、隅に置かれている大きな水瓶へ向かい、丁寧に水を掬い入れる。巫女が降らせる雨に縋って生きている一族の一員としては、ザバザバと水を使って手を洗ったり料理をしたりすることに初めは抵抗をおぼえていたみたいだけれど、彼も次第にそういう文化の差だと割り切ったらしく、楽しそうに水を使っていた。

「このくらいあればいいか?」
「あっ、もう少し入れてもらえるかな?手を洗うのに使った残りで、ポトトの表面も洗うから」
「分かった。……うん、……このくらいでどうだ?」
「うん、大丈夫。ありがとう、フィラス」
「お安い御用だ」

 気持ちのいい笑顔で、フィラスは水がたっぷり入った桶を慎重に運んできた。この一連の作業を、ジルやカミュであれば魔法で済ませてしまうんだろうけど、フィラスはあまり魔法が得意ではないらしく手作業でどうにかしているから親近感が湧く。自分の杖すら持たない彼は、焚き火を起こすことも出来ないから巫女様と旅をしていても格好がつかない、と昨夜ボヤいていた。

「じゃあ、まずは手を洗おう」
「了解」

 二人で流し台の前に立ち並び、持ち手の短い柄杓のような道具で交互に水を掬って手を濡らし、固形石鹸を泡立てて洗い、また水を掬って泡を流す。
 この世界では、蛇口をひねったら水が出るような水道設備は整ってないけれど、排水と下水のシステムは備わっていた。人の住む地域の近くには魔法で稼働させている下水処理場のようなものがあるようだけど、魔王の城と繋がっているものは無い。だから、城内の排水は全て一箇所に集められ、それをカミュが魔法で浄化して、やっぱり魔法で海へ戻しているそうだ。今こうして僕たちが手を洗った水も後々、カミュが浄化してくれるんだろうな。

「うん、手が綺麗になったね」
「ああ。贅沢なことだが、気持ちがいいな」
「そうだね」
「ミカ、次は何をするのだ?」

 子どものように無邪気にワクワクしているフィラスが、なんだか可愛らしい。僕と同じくらいの年齢のはずだけど、弟が出来たらこんな感じなのかなぁなんて想像をしてしまう。

「フィラス、こっちに来て。……この麻袋の中に、この城で収穫したポトトが入っているんだよ」
「どれ……、おお、立派に育っているな! 大きくて、皮にもハリがある。太陽の光をたくさん浴びて元気に育った証拠だ。それに、水やりや雑草の世話も丁寧にこなしていなければ、こうは育たない。良い育成をしたな!」
「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいなぁ」
「ミカが育てたのか! こんなに良い親を持てて、ポトトたちもきっと喜んでいるだろう!」
「親って……、いや、それはなんかちょっと違うような気が……?」
「違わない! ミカは子沢山だなぁ! みんなツヤツヤだ! えらいぞぉ!」
「わっ、あははっ、髪がグチャグチャになっちゃうよ!」

 羽交い締めにされて、わしゃわしゃと頭を撫でられて、思わず声を上げて笑ってしまう。ジルやカミュとの穏やかな交流とはまた違う、フィラスとの賑やかなじゃれあいが新鮮で、楽しかった。
 二人して声を上げて笑っていると、仲間に入りたくなったのか、クックとポッポもクポクポと鳴き声を上げ始めた。料理をする場所で羽ばたくのは良くないと理解しているいい子たちなので、それが精一杯の参加なんだろう。

「──本当に、大変仲がよろしいことで。素晴らしいですね」

 急に聞こえた声にビックリしてみんなで振り返ると、調理場の扉が半開きになっており、その隙間からカミュがこちらを覗いて微笑んでいた。
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