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【第7話】悪魔をもてなす夏野菜たっぷり辛口ピッツァ
【7-22】
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◇
「うん、こんな感じかな。どっちも綺麗に出来たね」
トッピングを終えたピザ生地を見下ろしながら言うと、ノヴァユエは蝙蝠羽を揺らしながら僕の顔を覗き込んでくる。
「ほんとっ? ボクのも上手に出来てる?」
「うん、とっても上手だよ。美味しそうに出来たね。焼いた後も鮮やかで綺麗だと思うなぁ」
「やったー! 食うのが楽しみだねっ★」
「そうだね」
僕はボーダー柄をベースにしたシンプルなトッピングにしたけれど、ノヴァユエのほうは規則性は無くてバラバラながらも華やかだ。ランダムパターンのモザイク画のようで、見ているだけで元気になってくる。僕には無い感性で、ノヴァユエの自由で伸び伸びとした一面が表れているようで、とても魅力的だと思う。
「じゃあ、カミュ。石窯を温め始めてくれるかな?」
「承知しました。お任せください」
僕たちの様子をニコニコと見守ってくれていたカミュは、綺麗な姿勢で一礼してから、石窯を魔法で温め始めた。
マリオさんが何度もピザを作っていたというだけあって彼は慣れているから、石窯の準備と手入れに関してはカミュにお任せしている。ピザを焼くのに適した状態になったら教えてくれるはずだし、それまでノヴァユエの話を聞こうかな。
「ねぇ、ノヴァユエ、」
「あっ、質問するー? いいよ、答えるよー★」
お見通しだったらしい緑の悪魔に先回りして言われてしまって、思わず笑ってしまう。
「あははっ、ありがとう。……それじゃあ、お言葉に甘えて、少し話を聞かせてもらいたいな。座ろうか。カミュも一緒に、ね?」
「はーいっ★」
「かしこまりました」
窓際に並んでいる木椅子へそれぞれ腰を下ろしたところで、悪魔たちの視線が僕へ集中する。戸棚の上からは、魔鳥二羽の視線も飛んでくる。注目を集めているのだと自覚すると、なんだか緊張してきた。
「え、っと……、どこから話そうかな」
「どっからでもいいんじゃねーの? ミカが一番知りたいのはなーに?」
「うん、えぇと……、ノヴァユエのところの魔王の寿命って、どれくらいなのかな?」
「へっ? うちの魔王のこと知りてぇの?」
「──やはり、そうでしたか」
緑の悪魔は驚いたように目を見開いているけれど、赤い悪魔は納得したように頷いている。
「ミカさんが、ノヴァユエの話の中に気になる点があったと仰ったときから、そんな予感はしていました。彼が魔王を補佐する役目を負ったのは百年ほど前。プレカシオンの魔王が暴走化するまで百年から二百年ほど掛かるのが平均であるのに、ノヴァユエは百年の間に何名か魔王の代替わりを見送ったような口振りでしたから。それが気になったのでしょう?」
まさに、その通りだ。思わず何度も頷くと、カミュも頷きを返してくれる。
「そんな気がしていましたので、勝手ながらジル様には離れていただいたのです」
「あ……、そっか、ジルは気にしちゃうよね」
「ええ。勿論、伝えるべき要点は後からお伝えしますが、ノヴァユエの話から直接耳に入れるよりは、伝聞という形で淡々とお伝えしたほうが衝撃は少ないかと思いまして」
「ああ、そっか……、僕の配慮が足りなかったな。ありがとう、カミュ」
「いいえ、そんな。私が心配性なだけかもしれませんので。ミカさんが気に病まれることはないのですよ」
カミュはそう言ってくれるけれど、僕に気遣いが足りなかったのは確かだ。以前、ジル自身が魔王の暴走化までの時間について話していたこともあるから、彼も気になる話題なんじゃないかと思ったけど、自由奔放で直球の言葉を選びがちなノヴァユエの語り口によってはジルが傷つく可能性もある。
「ミカさん、そんなに落ち込まないでください。貴方のお気持ちも分かりますし、ジル様も関心を持たれる話題なのは確かだと思います」
「でも、僕はカミュみたいに深く考えられなかった。大事にしてもらっているのに、同じように大事にできないなんて、情けないし恥ずかしいよ」
「大げさですよ、ミカさん。そんな大層な話ではないのです。後から話を共有するのですから、結局は同じことですし……」
「ううん、同じじゃないよ。でも、気を遣わせちゃってごめんね、カミュ。ありがとう」
カミュを困らせたいわけじゃないから、そう言って話を切り上げようとしたけれど、美しい悪魔は眉尻を下げてまだ何か言いたげにしている。ああ、もう、やっぱり僕はまだ他者との交流が下手だ。
自己嫌悪を顔に出さないように努めていると、成り行きを見守っていたノヴァユエがおもむろに挙手する。どうぞ、と発言を促すと、彼は場の空気を読んでいないのか押し流すつもりなのか、明るい声音であっけらかんと言った。
「あのさー、ボクだって、そんなにいっぱい魔王の入れ替わりを見たわけじゃないよ★ 補佐役になってすぐのときとー、それから二十年くらい経ってからとー、そこから三十年くらい経ってからとー、今回の入れ替わりくらいかなっ☆」
「うん、こんな感じかな。どっちも綺麗に出来たね」
トッピングを終えたピザ生地を見下ろしながら言うと、ノヴァユエは蝙蝠羽を揺らしながら僕の顔を覗き込んでくる。
「ほんとっ? ボクのも上手に出来てる?」
「うん、とっても上手だよ。美味しそうに出来たね。焼いた後も鮮やかで綺麗だと思うなぁ」
「やったー! 食うのが楽しみだねっ★」
「そうだね」
僕はボーダー柄をベースにしたシンプルなトッピングにしたけれど、ノヴァユエのほうは規則性は無くてバラバラながらも華やかだ。ランダムパターンのモザイク画のようで、見ているだけで元気になってくる。僕には無い感性で、ノヴァユエの自由で伸び伸びとした一面が表れているようで、とても魅力的だと思う。
「じゃあ、カミュ。石窯を温め始めてくれるかな?」
「承知しました。お任せください」
僕たちの様子をニコニコと見守ってくれていたカミュは、綺麗な姿勢で一礼してから、石窯を魔法で温め始めた。
マリオさんが何度もピザを作っていたというだけあって彼は慣れているから、石窯の準備と手入れに関してはカミュにお任せしている。ピザを焼くのに適した状態になったら教えてくれるはずだし、それまでノヴァユエの話を聞こうかな。
「ねぇ、ノヴァユエ、」
「あっ、質問するー? いいよ、答えるよー★」
お見通しだったらしい緑の悪魔に先回りして言われてしまって、思わず笑ってしまう。
「あははっ、ありがとう。……それじゃあ、お言葉に甘えて、少し話を聞かせてもらいたいな。座ろうか。カミュも一緒に、ね?」
「はーいっ★」
「かしこまりました」
窓際に並んでいる木椅子へそれぞれ腰を下ろしたところで、悪魔たちの視線が僕へ集中する。戸棚の上からは、魔鳥二羽の視線も飛んでくる。注目を集めているのだと自覚すると、なんだか緊張してきた。
「え、っと……、どこから話そうかな」
「どっからでもいいんじゃねーの? ミカが一番知りたいのはなーに?」
「うん、えぇと……、ノヴァユエのところの魔王の寿命って、どれくらいなのかな?」
「へっ? うちの魔王のこと知りてぇの?」
「──やはり、そうでしたか」
緑の悪魔は驚いたように目を見開いているけれど、赤い悪魔は納得したように頷いている。
「ミカさんが、ノヴァユエの話の中に気になる点があったと仰ったときから、そんな予感はしていました。彼が魔王を補佐する役目を負ったのは百年ほど前。プレカシオンの魔王が暴走化するまで百年から二百年ほど掛かるのが平均であるのに、ノヴァユエは百年の間に何名か魔王の代替わりを見送ったような口振りでしたから。それが気になったのでしょう?」
まさに、その通りだ。思わず何度も頷くと、カミュも頷きを返してくれる。
「そんな気がしていましたので、勝手ながらジル様には離れていただいたのです」
「あ……、そっか、ジルは気にしちゃうよね」
「ええ。勿論、伝えるべき要点は後からお伝えしますが、ノヴァユエの話から直接耳に入れるよりは、伝聞という形で淡々とお伝えしたほうが衝撃は少ないかと思いまして」
「ああ、そっか……、僕の配慮が足りなかったな。ありがとう、カミュ」
「いいえ、そんな。私が心配性なだけかもしれませんので。ミカさんが気に病まれることはないのですよ」
カミュはそう言ってくれるけれど、僕に気遣いが足りなかったのは確かだ。以前、ジル自身が魔王の暴走化までの時間について話していたこともあるから、彼も気になる話題なんじゃないかと思ったけど、自由奔放で直球の言葉を選びがちなノヴァユエの語り口によってはジルが傷つく可能性もある。
「ミカさん、そんなに落ち込まないでください。貴方のお気持ちも分かりますし、ジル様も関心を持たれる話題なのは確かだと思います」
「でも、僕はカミュみたいに深く考えられなかった。大事にしてもらっているのに、同じように大事にできないなんて、情けないし恥ずかしいよ」
「大げさですよ、ミカさん。そんな大層な話ではないのです。後から話を共有するのですから、結局は同じことですし……」
「ううん、同じじゃないよ。でも、気を遣わせちゃってごめんね、カミュ。ありがとう」
カミュを困らせたいわけじゃないから、そう言って話を切り上げようとしたけれど、美しい悪魔は眉尻を下げてまだ何か言いたげにしている。ああ、もう、やっぱり僕はまだ他者との交流が下手だ。
自己嫌悪を顔に出さないように努めていると、成り行きを見守っていたノヴァユエがおもむろに挙手する。どうぞ、と発言を促すと、彼は場の空気を読んでいないのか押し流すつもりなのか、明るい声音であっけらかんと言った。
「あのさー、ボクだって、そんなにいっぱい魔王の入れ替わりを見たわけじゃないよ★ 補佐役になってすぐのときとー、それから二十年くらい経ってからとー、そこから三十年くらい経ってからとー、今回の入れ替わりくらいかなっ☆」
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