魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

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【第8話】優しさが溶け込むフルーツフラッペ

【8-11】

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 マレシスカに指示されたものを魔王と悪魔が集めてくると、彼女はミカの布団をめくり──そこに潜んでいた二羽の鳥を見て目を丸くする。

「あら。ミカの鳥ちゃんたち、ここにいたのね。なんて名前だったかしら?」
「クックとポッポだ。白いほうがクック、黒いほうがポッポ。……ミカが寒がっているから、こいつらは温めてやっていたんだ」

 ジルベールの答えを聞いたマレシスカは優しく目を細め、二羽の鳥を交互に撫でた。クックもポッポも、おとなしくされるがままだ。

「いい子たちね。でも、ミカの身体を少し冷やしてあげないと。上半身を冷やすから……、クックとポッポは、ミカの足元へ移動してくれる? ミカの足を温めてあげて」
「クッ」
「ポッ」

 魔鳥たちはマレシスカの言葉を素直に受け入れ、ちょんちょんと跳ね飛ぶようにして指定された場所へ移動する。そして、ミカの足を温めるため、もっふりとした羽で包むようにして座った。一連の様子を見たマレシスカは、瞳を輝かせる。

「なんて可愛くて賢いの! そこの魔王と悪魔よりよっぽど頼もしいわ!」

 ジルベールは複雑な表情を、カマルティユは苦笑を浮かべつつも、何も反論しない。彼らとしても、「看病」においての役立たずさを自覚して噛みしめているところなのだ。
二人が落ち込んでいるのを察してか、マレシスカは眉尻を下げて困ったように笑う。

「冗談よ、冗談。ミカにとっては、あたしなんかより、あんたたちの存在のほうがよっぽど頼もしいはずよ」
「いや……、それは、どうだろうな」
「少なくとも、ミカさんはキカさんのことも頼りにされていると思いますよ」
「でも、あたしはミカの家族じゃないもの。たまに来る行商人と、一緒に生活している家族は、決して同じ括りには入れないわ。……さぁ! 無駄話はここまで! ミカの看病を進めるわよ!」

 そう言って、マレシスカは魔王と悪魔に指示を出しつつ、自身も手際よく動き始めた。
 カマルティユは濡らした布巾で丁寧にミカの身体を拭いた後、乾いた布巾で水気を吸い取ってから、寝間着を着替えさせる。
 その傍らで、ジルベールとマレシスカは砕いた氷と水を合わせたものを布袋に入れ、更にそれを柔らかな布で包んだ。氷を砕いたり、氷水が溶けづらく尚且つ布袋に染みないようにしたり、という工程はジルベールの魔法で進めていく。そうして出来上がった氷水詰めの布袋のうち、小さめの二つをミカの脇の下へ、大きめのものを彼の頭の下へ置くと、病人の険しい表情が少し和らいだ。

「ミカさんのお顔が、少しだけですが苦しくなさそうになられましたね」
「ああ。氷水の冷たさが気持ちいいのかもしれない。……そうか、寒がっているからといって、温めてやるだけでは駄目だったんだな」
「汗をかくまでは温めて、汗をかいたら頭と脇の下を冷やすといい、っていう民間療法が人気らしいっておばあちゃんが言ってたの。あながち嘘じゃなかったのかもしれないわね」
「なるほど、興味深いお話です」
「大体のことは魔法でどうにかなるし、魔法でどうにもならない怪我や病気は諦めるしかないというのが、普通の考えだからな。魔法を使わずにどうにかしようと考え出した先人たちは凄い」

 雑談を交わしている間にも、みるみるうちにミカの表情が穏やかになっていく。冷気を得たことで寝苦しさが軽減したのだろう。冷やされたミカが安らいだ顔つきになってきたからか、彼を温める役目を担っていたクックとポッポが居心地悪そうにしている。それに気付いたマレシスカは、鳥たちへ笑いかけた。

「クックとポッポは、そのままミカを温めてあげてて。一気に全身冷やしちゃうのもよくないだろうし、よく知ってる温もりが傍にあると安心するもの」

 魔鳥たちはほっとしたような面持ちで、再びミカの足元で身を丸める。それを微笑ましげに見下ろしたカマルティユは、ミカの身体へそっと布団を掛けた。

「寝やすそうなお顔になられただけでも、随分と安心できますね。やっと、回復していただけそうな予感がしてまいりました」
「熱が下がるまでは気が抜けないが、確かに、ミカの様子がだいぶ落ち着いてきたな。ありがとう、マレシスカ」
「ううん、大したことしてないわ。それに、まだまだやることはあるもの。ミカの熱がこのまま下がってくれることを祈って、彼が目を覚ましたときのためにしておかなきゃいけないことがあるでしょ?」

 マレシスカから問われたジルベールとカマルティユはハッとしたように顔を見合わせ、ほぼ同時に答える。

「食事の支度をしなくては」
「目覚めたミカさんに何か召し上がっていただきませんと」
「その通りよ! この様子じゃ、ミカはちゃんと食事が出来ていなかったでしょ? しっかり噛んで食べるのは難しいだろうし、お腹にも重たいだろうから、その辺を考えたものを用意してあげましょ! じゃあ、ジル、行くわよ!」
「お、おい……、腕を引っ張るな」
「カミュはミカを見ていてあげてねー! 汗を拭いて、必要そうだったら着替えもさせてあげて!」
「ふふっ、かしこまりました」

 腕を引かれて困惑している魔王と、意気揚々と手を振る娘を見送りながら、魔王は穏やかに微笑んだ。
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