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【第8話】優しさが溶け込むフルーツフラッペ
【8-10】
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◇
久しぶりに魔王の城を訪れたマレシスカは、彼女がいつも馬車を停めている辺りで仁王立ちしている魔王と悪魔の姿を発見して、目を丸くした。彼らは城内の玄関ホールで出迎えてくれるのが常で、あのように外に出て今か今かと待たれたことなど無い。マレシスカの訪問を予測されているのはいつものことだが、あそこまであからさまに待たれているのは初めてだ。
何かあったのだろうかと、喜びよりも先に心配が湧き上がる。彼らがいつもべったりと守護しているミカの姿が見えないのも気に掛かる。不安にかられたマレシスカは、定位置で馬車を停めて転がるように降りた後、すぐさま魔王と悪魔へ向き合った。
「何かあった!?」
挨拶も放り投げて本題へ切り込む彼女と対面したジルベールとカマルティユもまた、直球な言葉を返す。
「マレシスカ、酷い夏風邪への対処法は知っているか?魔法を使わずに悪化した風邪を治す方法だ」
「あと、噛む気力が無い方に召し上がっていただけるような看病食もご存知でしたら、ジル様にご教授いただきたく」
妙に慌てて必死に言い募る魔王と悪魔の言葉の内容から、マレシスカは状況を理解した。──つまり、ミカが酷い夏風邪をひき、彼らはどうしたらいいか分からずオロオロしているのだ。
物資の調達以外で初めて頼られていると実感したマレシスカは、喜びで胸を震わせると同時に、彼らをここまで狼狽えさせているミカの病状が気掛かりになる。馬たちは勝手知ったる厩舎へ勝手に移動してくれるし、荷解きも後でいい。まずは、ミカの様子を確認しなければ。
「ミカに会わせて」
「……マレシスカが直接か?」
「キカさんにうつってしまっては大変なのではないかと」
「平気よ。いいから、早くあの子の状態を見せて」
マレシスカが強気に返しても、ジルベールとカマルティユは困惑して視線を交わし合っている。どうやら、ミカが弱っていることで、彼らもだいぶ精神的に消耗しているらしい。
「しっかりしなさいよ! 大の男が二人も揃ってんのに情けないったらないわ!」
マレシスカは、魔王と悪魔を叱り飛ばすように言い放ち、両手を腰にあてがい、足で地を打ち鳴らす。
「あたしは平気! 風邪をひいたって、治癒魔法でどうにでもなるもの! あんたたちがそこまで困ってるってことは、ミカは相当酷いんでしょ!? グダグダ言ってないで、早くあたしを案内しなさい!」
人妻となったことで一段と強くなった娘の剣幕に押され、魔王たちは素直に食事係の部屋へと先導し始めた。
◇
「ああ……、確かにこれは酷いわね。かなり辛そうだわ」
ぐったりと横たわるミカの様子を観察しながら、マレシスカは自身のこめかみを指先で押さえて何やら考えつつ溜息を零す。ジルベールとカマルティユは彼女の背後に立ち、固唾を飲んで見守っていた。
ミカの瞳はうっすらと開いてはいるが、おそらく何も見えてはいない。いや、視界が塞がっているわけではないだろうが、目に映るものを認識できていないだろう。マレシスカの訪問にも気づいていないはずだ。
「あたしも医者じゃないから、絶対治せるとは断言できないけど。魔法が効かない中毒患者のための民間療法なら知っているわ。特に解熱に対しての効果が期待できるけど、試してみる?」
この世界においての医者は、要は人体の構造の知識と治癒魔法の技量に長けた者のことだ。地球とは異なり、ディデーレの医者は薬品など使わない。
逆に民間では、「薬」というものが生成されていたりする。効果が怪しい眉唾物という扱いではあるが、快楽魔法の過剰使用により魔法が効きづらい体質になってしまった「中毒患者」にとっては頼みの綱でもある。
真面目すぎるほど真面目で、生家の宿屋の仕事を日々コツコツとこなすだけだったジルベールには全く縁が無いものだったので、今まで思いつきもしなかったが、なるほど、「中毒患者」の体質はミカの状態に近いと云えなくもない。そう考えた魔王は、祈るような気持ちで頷いた。
「ああ、頼む。少しでも望みがあれば、それに賭けたい。……すまないな、マレシスカ。来て早々に働かせてしまって」
「そんなの気にしないで! あたしにとっても、ミカは可愛い弟分みたいなものだもん。助けてあげたいわ。それに、ジルとカミュにも働いてもらうからね!」
カラリと笑うマレシスカに対し、ジルベールとカマルティユは即座に頷く。
「勿論だ。俺もきちんと手伝う。というか、指示さえ貰えれば俺たちでやるから、お前は少し休んだほうがいい」
「そうですよ。キカさんの知恵を拝借できれば、後は我々がやりますので」
「変な遠慮はいらないわ。それに、口で説明するより、やっちゃったほうが早いものもあるもの。というわけで、早速取り掛かりましょうか! そうね……、食事より先に、まずは熱を下げる手助けの環境を整えよっか!」
脳内で看病の手順を組み立てたらしいマレシスカは、ジルベールに氷と水を、カマルティユには清潔な布巾を数枚と小さめの布袋を持ってくるよう、テキパキと指示を出した。
久しぶりに魔王の城を訪れたマレシスカは、彼女がいつも馬車を停めている辺りで仁王立ちしている魔王と悪魔の姿を発見して、目を丸くした。彼らは城内の玄関ホールで出迎えてくれるのが常で、あのように外に出て今か今かと待たれたことなど無い。マレシスカの訪問を予測されているのはいつものことだが、あそこまであからさまに待たれているのは初めてだ。
何かあったのだろうかと、喜びよりも先に心配が湧き上がる。彼らがいつもべったりと守護しているミカの姿が見えないのも気に掛かる。不安にかられたマレシスカは、定位置で馬車を停めて転がるように降りた後、すぐさま魔王と悪魔へ向き合った。
「何かあった!?」
挨拶も放り投げて本題へ切り込む彼女と対面したジルベールとカマルティユもまた、直球な言葉を返す。
「マレシスカ、酷い夏風邪への対処法は知っているか?魔法を使わずに悪化した風邪を治す方法だ」
「あと、噛む気力が無い方に召し上がっていただけるような看病食もご存知でしたら、ジル様にご教授いただきたく」
妙に慌てて必死に言い募る魔王と悪魔の言葉の内容から、マレシスカは状況を理解した。──つまり、ミカが酷い夏風邪をひき、彼らはどうしたらいいか分からずオロオロしているのだ。
物資の調達以外で初めて頼られていると実感したマレシスカは、喜びで胸を震わせると同時に、彼らをここまで狼狽えさせているミカの病状が気掛かりになる。馬たちは勝手知ったる厩舎へ勝手に移動してくれるし、荷解きも後でいい。まずは、ミカの様子を確認しなければ。
「ミカに会わせて」
「……マレシスカが直接か?」
「キカさんにうつってしまっては大変なのではないかと」
「平気よ。いいから、早くあの子の状態を見せて」
マレシスカが強気に返しても、ジルベールとカマルティユは困惑して視線を交わし合っている。どうやら、ミカが弱っていることで、彼らもだいぶ精神的に消耗しているらしい。
「しっかりしなさいよ! 大の男が二人も揃ってんのに情けないったらないわ!」
マレシスカは、魔王と悪魔を叱り飛ばすように言い放ち、両手を腰にあてがい、足で地を打ち鳴らす。
「あたしは平気! 風邪をひいたって、治癒魔法でどうにでもなるもの! あんたたちがそこまで困ってるってことは、ミカは相当酷いんでしょ!? グダグダ言ってないで、早くあたしを案内しなさい!」
人妻となったことで一段と強くなった娘の剣幕に押され、魔王たちは素直に食事係の部屋へと先導し始めた。
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「ああ……、確かにこれは酷いわね。かなり辛そうだわ」
ぐったりと横たわるミカの様子を観察しながら、マレシスカは自身のこめかみを指先で押さえて何やら考えつつ溜息を零す。ジルベールとカマルティユは彼女の背後に立ち、固唾を飲んで見守っていた。
ミカの瞳はうっすらと開いてはいるが、おそらく何も見えてはいない。いや、視界が塞がっているわけではないだろうが、目に映るものを認識できていないだろう。マレシスカの訪問にも気づいていないはずだ。
「あたしも医者じゃないから、絶対治せるとは断言できないけど。魔法が効かない中毒患者のための民間療法なら知っているわ。特に解熱に対しての効果が期待できるけど、試してみる?」
この世界においての医者は、要は人体の構造の知識と治癒魔法の技量に長けた者のことだ。地球とは異なり、ディデーレの医者は薬品など使わない。
逆に民間では、「薬」というものが生成されていたりする。効果が怪しい眉唾物という扱いではあるが、快楽魔法の過剰使用により魔法が効きづらい体質になってしまった「中毒患者」にとっては頼みの綱でもある。
真面目すぎるほど真面目で、生家の宿屋の仕事を日々コツコツとこなすだけだったジルベールには全く縁が無いものだったので、今まで思いつきもしなかったが、なるほど、「中毒患者」の体質はミカの状態に近いと云えなくもない。そう考えた魔王は、祈るような気持ちで頷いた。
「ああ、頼む。少しでも望みがあれば、それに賭けたい。……すまないな、マレシスカ。来て早々に働かせてしまって」
「そんなの気にしないで! あたしにとっても、ミカは可愛い弟分みたいなものだもん。助けてあげたいわ。それに、ジルとカミュにも働いてもらうからね!」
カラリと笑うマレシスカに対し、ジルベールとカマルティユは即座に頷く。
「勿論だ。俺もきちんと手伝う。というか、指示さえ貰えれば俺たちでやるから、お前は少し休んだほうがいい」
「そうですよ。キカさんの知恵を拝借できれば、後は我々がやりますので」
「変な遠慮はいらないわ。それに、口で説明するより、やっちゃったほうが早いものもあるもの。というわけで、早速取り掛かりましょうか! そうね……、食事より先に、まずは熱を下げる手助けの環境を整えよっか!」
脳内で看病の手順を組み立てたらしいマレシスカは、ジルベールに氷と水を、カマルティユには清潔な布巾を数枚と小さめの布袋を持ってくるよう、テキパキと指示を出した。
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