212 / 246
【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー
【10-6】
しおりを挟む
◇
もともと今朝のごはんは簡単にしようと思っていたから、オピテルさん一人が増えたところで、たいして手間は変わらない。ジルとオピテルさんには先に食堂で雑談してもらって、その間に僕は手早く身支度をしてカミュと一緒に朝食作りを始めた。何も無く話をするのも厳しいだろうから、花の薫りを付けているマッ茶を、先に食堂の二人に出しておいた。
「さて、と……。じゃあ、今回もよろしくね、カミュ」
「はい、よろしくお願いします」
「といっても、今朝は本当に簡単なんだけどね……、お客様が来るって分かってたら、もっとちゃんとした用意をしておいたんだけど」
「私から見れば、十分に豪華な朝食に思えますけれども。なんといっても、ミカさんのカボチャコロッケは絶品ですので」
そう、今日の朝食のメインメニューはカボチャコロッケだ。大量のガボンを消費するべく、コロッケのタネを作り置きしてあって、それを数日ごとに揚げて食卓に出している。定期的に出すと飽きられてしまいそうだなと心配だけれど、今のところ、ジルもカミュも飽きずに食べてくれているようだ。
「そう言ってもらえると嬉しいよ。……そろそろ食べ飽きない?」
「飽きるだなんてとんでもない! 毎日でもいただきたいくらいです」
「あははっ、ありがとう」
お世辞だとしてもそう言ってくれるのは有難いし、カミュは基本的に嘘をついたりしないのを知っているから余計に嬉しい。
ほっこりした気分になったところで、手早く朝食を作っていく。熱した鉄板でトーストを焼き、その隅のスペースを使ってスクランブルエッグを作る。揚げ油をカミュに温めてもらっている間に、ミニサラダを用意した。
この世界──というより、魔法というのは本当に便利で、保温魔法のおかげで調理の順番に冷めやすさを考慮しなくていいのが、とても助かる。副菜をあらかた用意したところで、じっくりとメインディッシュに取り掛かれるのは、気持ちに余裕も生まれて料理の楽しさが増すんだよね。
「──ねぇ、カミュ。聖なる者って、みんなオピテルさんみたいにふわふわなの?」
のんびりとコロッケを揚げながら問い掛けると、隣で鍋の中をわくわくと観察しているカミュは、穏やかな表情のまま頷いた。
「ええ。毛の色は皆さん様々ですが、あのようにふわふわした柔らかい体つきをされていらっしゃいます。この世界にも、ああいう感じの小動物がいますよね」
「うん、この近くにもいるよね。オピテルさんと比べると全然小さいし、耳も二本でピーンと立ってるし、羽も生えてないけど。でも、似てるよね。可愛い」
「ふふっ。オピテル殿に対しても、ミカさんは可愛いと仰っていましたね。ふわふわの生き物はお好きですか?」
「うん、好き! 地球にいた頃も、ふわふわの動物を眺めるのは好きだったなぁ。あっ、クックやポッポみたいな鳥も好きだよ。羽といえば、カミュの翼もかっこいいなって思うよ。ツヤツヤしてるし、大きくてかっこいい」
「そうですか? ミカさんにそう言っていただけると嬉しいですね。ありがとうございます」
少し照れくさそうにはにかみながら、カミュはほんのわずかだけ翼をパタパタさせた。悪魔の蝙蝠羽って云われると少し怖いイメージがあるけど、間近で見るカミュの羽は上品な艶があって本当に格好いい。何度か触らせてもらったことがあるけど、ひんやりしているのかと思いきや、意外とあったかくて驚いたっけ。
「──そういえば、僕たち人間って、聖なる者が魔の者を参考にして創ったんだよね。どうして、羽は生やさなかったんだろう?」
素朴な疑問を口に出すと、何故かカミュは少し悲しそうな顔をした。
「……それはおそらく、空を飛べないようにするためでしょうね」
「えっ? ……でも、ディデーレの人たちは魔法で空を飛べるよね? 僕がいた地球でも、魔法は無かったけど、空を飛べる手段はあったよ」
「ええ。──けれど、それらは、人間が進化していく過程で得た能力なり技術ですから。初めは、翼を持たず、それぞれの世界、それぞれの星、それぞれの国に閉じ込められたか弱き存在だったのですよ。まぁ、我々から見れば、今でも人間は脆弱な存在ではありますが。──ただ、翼を与えず、箱庭に押し込めて観察し、そのうえで『愛している』と言って大切にしていると主張している聖なる者に対して、私は少々疑問を抱いていたりもしたのですよ。……我々魔の者も、他種族にどうこう物申せるような立場ではないのですが」
カミュの口ぶりは、聖なる者への批判よりも、人間に対する同情心のほうが色濃いような気がする。
彼ら「魔の者」は創造主である「父」の意向に逆らえない。管理され、観察され、魂の扱いすら「父」次第だ。そんな自分たちと人間たちに似通った部分を見つけて、微妙な心境なのかもしれないな。
「あっ、ミカさん。コロッケが良い感じの色合いになってきたのでは?」
「あっ、ほんとだ……! よし、これは油から取り出して、次のコロッケを揚げていこう」
「承知しました。お任せください」
カミュが優雅に指を振って魔法でコロッケを取り出し、お皿に並べてくれる。そのまま鮮度を保つ保温魔法を掛けられたコロッケたちは、こんがりキツネ色で美味しそうだ。僕は気合を入れて、次に揚げるコロッケのタネたちを油の中へ投入した。
もともと今朝のごはんは簡単にしようと思っていたから、オピテルさん一人が増えたところで、たいして手間は変わらない。ジルとオピテルさんには先に食堂で雑談してもらって、その間に僕は手早く身支度をしてカミュと一緒に朝食作りを始めた。何も無く話をするのも厳しいだろうから、花の薫りを付けているマッ茶を、先に食堂の二人に出しておいた。
「さて、と……。じゃあ、今回もよろしくね、カミュ」
「はい、よろしくお願いします」
「といっても、今朝は本当に簡単なんだけどね……、お客様が来るって分かってたら、もっとちゃんとした用意をしておいたんだけど」
「私から見れば、十分に豪華な朝食に思えますけれども。なんといっても、ミカさんのカボチャコロッケは絶品ですので」
そう、今日の朝食のメインメニューはカボチャコロッケだ。大量のガボンを消費するべく、コロッケのタネを作り置きしてあって、それを数日ごとに揚げて食卓に出している。定期的に出すと飽きられてしまいそうだなと心配だけれど、今のところ、ジルもカミュも飽きずに食べてくれているようだ。
「そう言ってもらえると嬉しいよ。……そろそろ食べ飽きない?」
「飽きるだなんてとんでもない! 毎日でもいただきたいくらいです」
「あははっ、ありがとう」
お世辞だとしてもそう言ってくれるのは有難いし、カミュは基本的に嘘をついたりしないのを知っているから余計に嬉しい。
ほっこりした気分になったところで、手早く朝食を作っていく。熱した鉄板でトーストを焼き、その隅のスペースを使ってスクランブルエッグを作る。揚げ油をカミュに温めてもらっている間に、ミニサラダを用意した。
この世界──というより、魔法というのは本当に便利で、保温魔法のおかげで調理の順番に冷めやすさを考慮しなくていいのが、とても助かる。副菜をあらかた用意したところで、じっくりとメインディッシュに取り掛かれるのは、気持ちに余裕も生まれて料理の楽しさが増すんだよね。
「──ねぇ、カミュ。聖なる者って、みんなオピテルさんみたいにふわふわなの?」
のんびりとコロッケを揚げながら問い掛けると、隣で鍋の中をわくわくと観察しているカミュは、穏やかな表情のまま頷いた。
「ええ。毛の色は皆さん様々ですが、あのようにふわふわした柔らかい体つきをされていらっしゃいます。この世界にも、ああいう感じの小動物がいますよね」
「うん、この近くにもいるよね。オピテルさんと比べると全然小さいし、耳も二本でピーンと立ってるし、羽も生えてないけど。でも、似てるよね。可愛い」
「ふふっ。オピテル殿に対しても、ミカさんは可愛いと仰っていましたね。ふわふわの生き物はお好きですか?」
「うん、好き! 地球にいた頃も、ふわふわの動物を眺めるのは好きだったなぁ。あっ、クックやポッポみたいな鳥も好きだよ。羽といえば、カミュの翼もかっこいいなって思うよ。ツヤツヤしてるし、大きくてかっこいい」
「そうですか? ミカさんにそう言っていただけると嬉しいですね。ありがとうございます」
少し照れくさそうにはにかみながら、カミュはほんのわずかだけ翼をパタパタさせた。悪魔の蝙蝠羽って云われると少し怖いイメージがあるけど、間近で見るカミュの羽は上品な艶があって本当に格好いい。何度か触らせてもらったことがあるけど、ひんやりしているのかと思いきや、意外とあったかくて驚いたっけ。
「──そういえば、僕たち人間って、聖なる者が魔の者を参考にして創ったんだよね。どうして、羽は生やさなかったんだろう?」
素朴な疑問を口に出すと、何故かカミュは少し悲しそうな顔をした。
「……それはおそらく、空を飛べないようにするためでしょうね」
「えっ? ……でも、ディデーレの人たちは魔法で空を飛べるよね? 僕がいた地球でも、魔法は無かったけど、空を飛べる手段はあったよ」
「ええ。──けれど、それらは、人間が進化していく過程で得た能力なり技術ですから。初めは、翼を持たず、それぞれの世界、それぞれの星、それぞれの国に閉じ込められたか弱き存在だったのですよ。まぁ、我々から見れば、今でも人間は脆弱な存在ではありますが。──ただ、翼を与えず、箱庭に押し込めて観察し、そのうえで『愛している』と言って大切にしていると主張している聖なる者に対して、私は少々疑問を抱いていたりもしたのですよ。……我々魔の者も、他種族にどうこう物申せるような立場ではないのですが」
カミュの口ぶりは、聖なる者への批判よりも、人間に対する同情心のほうが色濃いような気がする。
彼ら「魔の者」は創造主である「父」の意向に逆らえない。管理され、観察され、魂の扱いすら「父」次第だ。そんな自分たちと人間たちに似通った部分を見つけて、微妙な心境なのかもしれないな。
「あっ、ミカさん。コロッケが良い感じの色合いになってきたのでは?」
「あっ、ほんとだ……! よし、これは油から取り出して、次のコロッケを揚げていこう」
「承知しました。お任せください」
カミュが優雅に指を振って魔法でコロッケを取り出し、お皿に並べてくれる。そのまま鮮度を保つ保温魔法を掛けられたコロッケたちは、こんがりキツネ色で美味しそうだ。僕は気合を入れて、次に揚げるコロッケのタネたちを油の中へ投入した。
1
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる