魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

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【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー

【10-6】

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 ◇


 もともと今朝のごはんは簡単にしようと思っていたから、オピテルさん一人が増えたところで、たいして手間は変わらない。ジルとオピテルさんには先に食堂で雑談してもらって、その間に僕は手早く身支度をしてカミュと一緒に朝食作りを始めた。何も無く話をするのも厳しいだろうから、花の薫りを付けているマッ茶を、先に食堂の二人に出しておいた。

「さて、と……。じゃあ、今回もよろしくね、カミュ」
「はい、よろしくお願いします」
「といっても、今朝は本当に簡単なんだけどね……、お客様が来るって分かってたら、もっとちゃんとした用意をしておいたんだけど」
「私から見れば、十分に豪華な朝食に思えますけれども。なんといっても、ミカさんのカボチャコロッケは絶品ですので」

 そう、今日の朝食のメインメニューはカボチャコロッケだ。大量のガボンを消費するべく、コロッケのタネを作り置きしてあって、それを数日ごとに揚げて食卓に出している。定期的に出すと飽きられてしまいそうだなと心配だけれど、今のところ、ジルもカミュも飽きずに食べてくれているようだ。

「そう言ってもらえると嬉しいよ。……そろそろ食べ飽きない?」
「飽きるだなんてとんでもない! 毎日でもいただきたいくらいです」
「あははっ、ありがとう」

 お世辞だとしてもそう言ってくれるのは有難いし、カミュは基本的に嘘をついたりしないのを知っているから余計に嬉しい。
 ほっこりした気分になったところで、手早く朝食を作っていく。熱した鉄板でトーストを焼き、その隅のスペースを使ってスクランブルエッグを作る。揚げ油をカミュに温めてもらっている間に、ミニサラダを用意した。
 この世界──というより、魔法というのは本当に便利で、保温魔法のおかげで調理の順番に冷めやすさを考慮しなくていいのが、とても助かる。副菜をあらかた用意したところで、じっくりとメインディッシュに取り掛かれるのは、気持ちに余裕も生まれて料理の楽しさが増すんだよね。

「──ねぇ、カミュ。聖なる者って、みんなオピテルさんみたいにふわふわなの?」

 のんびりとコロッケを揚げながら問い掛けると、隣で鍋の中をわくわくと観察しているカミュは、穏やかな表情のまま頷いた。

「ええ。毛の色は皆さん様々ですが、あのようにふわふわした柔らかい体つきをされていらっしゃいます。この世界にも、ああいう感じの小動物がいますよね」
「うん、この近くにもいるよね。オピテルさんと比べると全然小さいし、耳も二本でピーンと立ってるし、羽も生えてないけど。でも、似てるよね。可愛い」
「ふふっ。オピテル殿に対しても、ミカさんは可愛いと仰っていましたね。ふわふわの生き物はお好きですか?」
「うん、好き! 地球にいた頃も、ふわふわの動物を眺めるのは好きだったなぁ。あっ、クックやポッポみたいな鳥も好きだよ。羽といえば、カミュの翼もかっこいいなって思うよ。ツヤツヤしてるし、大きくてかっこいい」
「そうですか? ミカさんにそう言っていただけると嬉しいですね。ありがとうございます」

 少し照れくさそうにはにかみながら、カミュはほんのわずかだけ翼をパタパタさせた。悪魔の蝙蝠羽って云われると少し怖いイメージがあるけど、間近で見るカミュの羽は上品な艶があって本当に格好いい。何度か触らせてもらったことがあるけど、ひんやりしているのかと思いきや、意外とあったかくて驚いたっけ。

「──そういえば、僕たち人間って、聖なる者が魔の者を参考にして創ったんだよね。どうして、羽は生やさなかったんだろう?」

 素朴な疑問を口に出すと、何故かカミュは少し悲しそうな顔をした。

「……それはおそらく、空を飛べないようにするためでしょうね」
「えっ? ……でも、ディデーレの人たちは魔法で空を飛べるよね? 僕がいた地球でも、魔法は無かったけど、空を飛べる手段はあったよ」
「ええ。──けれど、それらは、人間が進化していく過程で得た能力なり技術ですから。初めは、翼を持たず、それぞれの世界、それぞれの星、それぞれの国に閉じ込められたか弱き存在だったのですよ。まぁ、我々から見れば、今でも人間は脆弱な存在ではありますが。──ただ、翼を与えず、箱庭に押し込めて観察し、そのうえで『愛している』と言って大切にしていると主張している聖なる者に対して、私は少々疑問を抱いていたりもしたのですよ。……我々魔の者も、他種族にどうこう物申せるような立場ではないのですが」

 カミュの口ぶりは、聖なる者への批判よりも、人間に対する同情心のほうが色濃いような気がする。
 彼ら「魔の者」は創造主である「父」の意向に逆らえない。管理され、観察され、魂の扱いすら「父」次第だ。そんな自分たちと人間たちに似通った部分を見つけて、微妙な心境なのかもしれないな。

「あっ、ミカさん。コロッケが良い感じの色合いになってきたのでは?」
「あっ、ほんとだ……! よし、これは油から取り出して、次のコロッケを揚げていこう」
「承知しました。お任せください」

 カミュが優雅に指を振って魔法でコロッケを取り出し、お皿に並べてくれる。そのまま鮮度を保つ保温魔法を掛けられたコロッケたちは、こんがりキツネ色で美味しそうだ。僕は気合を入れて、次に揚げるコロッケのタネたちを油の中へ投入した。
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