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【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー
【10-15】
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「うん、勿論。僕もセレーナさんの話を聞かせてもらいたかったから、むしろ嬉しいよ。……お口に合うか分からないけど、お茶とお菓子を持ってきたから、ゆっくり寛ぎながらお話しよう」
「お茶とお菓子……、人間の、ですよねぇぇぇ?」
嫌悪感というより、戸惑いや不思議に思っている感じの表情で、セレーナさんはおずおずと宙に浮かんでいる茶菓子を見つめる。そういう反応をされると、可愛らしい見た目をしていても、彼女もやっぱり魔の者なんだなぁと感慨深くなる。不快感とかは全然無くて、面白いとか興味深いとか、そういう心境だ。
「うちのミカの作るものは何でも美味いぞ。そこの赤い悪魔と緑の悪魔も、喜んで飲み食いするからな」
「ノヴァユエはどうだか知りませんが、私は日々、ミカさんの作ってくださるものを有難く美味しくいただいておりますよ」
「あーっ! カマルティユ先輩ってば意地悪ー! ボクだってミカが作ってくれたもんは美味いと思うんだからねー! 他の人間の食いもん飲みもんはいらねーけどッ」
魔王と悪魔が次々に肯定しているのを聞いて安心したのか、セレーナさんはすとんと腰を下ろし、魔法で目の前に置かれたお茶のグラス(カミュに頼んで作ってもらった新作の食器だ)へ怖々と手を伸ばす。召し上がれ、と目線と指先で促すと、彼女は冷えたマッ茶をこくんと一口飲んで、橙色の瞳を輝かせた。色味も相まって、ランタンに火が灯ったように感じる。
「わああああ……! 良い香りですぅぅぅ! 意外と飲みやすくてぇぇぇ、美味しいですぅぅぅ……!」
「良かった。お菓子もどうぞ。昨日、オピテルさんも美味しいって食べてくれたんだよ」
「オピテル様……」
口の中で飴を転がすかのような甘やかさでウサギ天使の名前を呼んだ紫悪魔は、どこか恍惚とした表情で指先をそろりそろりと塩サブレへ伸ばした。そして、おっかなびっくり摘み上げた焼菓子へ、スローな動きで齧りつく。
「ん……! んんん……!」
頬を紅く染めながら、一口、また一口と、セレーナさんは夢中で塩サブレを食べて、次にフロランタンを食べ始める。カリカリッ、サクサクッと良い音が聞こえてきて、なんだか可愛らしい光景だ。焼菓子を飲み下した彼女は、うっとりとした顔で拍手する。
「素晴らしいですぅぅぅ! 美味しい……! オピテル様が美味しいと仰った物をアタクシも同じように美味しいと感じられて、嬉しいですぅぅぅ……!」
眩しくすら感じる綺麗な表情は、少し前に違う人が浮かべているのを見たことがある。──サリハさんだ。フィラスを密かに恋慕っていた彼女は、彼のことを思い浮かべながら、今のセレーナさんとよく似た顔つきになっていた。
つまり、きっと、セレーナさんはオピテルさんに恋をしている。本来であれば、仕事上でほんの少し関わりがあるだけの間柄のはずの相手を、真剣に想っているんだろう。
「美味しいって言ってもらえて良かった。──改めまして、僕は海風です。ジルやカミュ、あと、あそこで寛いでいるクックとポッポの世話になりながら、この城で食事係として料理を作っているんだ。ノヴァユエとも、今は仲良くさせてもらっていると思うよ。よろしくお願いします」
セレーナさんからも挨拶してもらったのだから、一度は僕もきちんとしないと。そう思って頭を下げると、セレーナさんは恐縮したように両手をバタバタと振った。
「ひえええ、そんなそんなぁぁぁ……! ミカ様、アタクシなんかに頭を下げてはいけませんんん! ミカ様はカマルティユ兄様にとってとても大切な人間だと、ノヴァユエ兄様から何度も何度も聞いておりますのでぇぇぇ……! アタクシなんかにぃぃぃ……!」
「セレーナ、うるさいですよ」
「はッ、はひぃぃぃ……! カマルティユ兄様、ごめんなさいぃぃぃ……!」
セレーナさんはペコペコと何度も頭を下げているけれど、カミュの表情は硬めのままだ。セレーナさんはカミュを「兄様」と呼んで慕っているようだけど、対するカミュのほうはなんだか他人行儀というか、ちょっと冷たい。この温度差は一体何なんだろう?
ジルも同じように疑問を抱いたのか、首を傾げながらカミュを見つめ、質問を投げかけた。
「おい、カミュ。セレーナは、ノヴァユエと同じようにお前のことも兄と呼んでいるようだが、本当に大して面識は無いのか? お前が忘れているだけじゃないのか?」
「私は記憶力には自信があります。本当に、セレーナとは一度か二度くらいしか話したことはありません。ノヴァユエからしつこく話を聞かされていたので、彼女のことを一方的に多少は知っていますが」
カミュがツンとした態度で受け答えると、それを聞いていたノヴァユエは苦笑し、セレーナさんは半泣きになりながらも健気に何度も頷く。
「そうなのですぅぅぅ……! アタクシ、尊敬している方を勝手に兄様姉様とお呼びしておりましてぇぇぇ、カマルティユ兄様にも勝手に憧れているだけなのですぅぅぅ……!」
「……私になど、憧れるものではありませんよ。こんなに魔の者らしくない存在など、何の手本にもなりません」
自嘲気味にカミュが窘めた瞬間、セレーナさんはバンッッと力強い音を立てて、両手でテーブルを叩いた。
「そんなことありませんんん! 絶対に!」
「お茶とお菓子……、人間の、ですよねぇぇぇ?」
嫌悪感というより、戸惑いや不思議に思っている感じの表情で、セレーナさんはおずおずと宙に浮かんでいる茶菓子を見つめる。そういう反応をされると、可愛らしい見た目をしていても、彼女もやっぱり魔の者なんだなぁと感慨深くなる。不快感とかは全然無くて、面白いとか興味深いとか、そういう心境だ。
「うちのミカの作るものは何でも美味いぞ。そこの赤い悪魔と緑の悪魔も、喜んで飲み食いするからな」
「ノヴァユエはどうだか知りませんが、私は日々、ミカさんの作ってくださるものを有難く美味しくいただいておりますよ」
「あーっ! カマルティユ先輩ってば意地悪ー! ボクだってミカが作ってくれたもんは美味いと思うんだからねー! 他の人間の食いもん飲みもんはいらねーけどッ」
魔王と悪魔が次々に肯定しているのを聞いて安心したのか、セレーナさんはすとんと腰を下ろし、魔法で目の前に置かれたお茶のグラス(カミュに頼んで作ってもらった新作の食器だ)へ怖々と手を伸ばす。召し上がれ、と目線と指先で促すと、彼女は冷えたマッ茶をこくんと一口飲んで、橙色の瞳を輝かせた。色味も相まって、ランタンに火が灯ったように感じる。
「わああああ……! 良い香りですぅぅぅ! 意外と飲みやすくてぇぇぇ、美味しいですぅぅぅ……!」
「良かった。お菓子もどうぞ。昨日、オピテルさんも美味しいって食べてくれたんだよ」
「オピテル様……」
口の中で飴を転がすかのような甘やかさでウサギ天使の名前を呼んだ紫悪魔は、どこか恍惚とした表情で指先をそろりそろりと塩サブレへ伸ばした。そして、おっかなびっくり摘み上げた焼菓子へ、スローな動きで齧りつく。
「ん……! んんん……!」
頬を紅く染めながら、一口、また一口と、セレーナさんは夢中で塩サブレを食べて、次にフロランタンを食べ始める。カリカリッ、サクサクッと良い音が聞こえてきて、なんだか可愛らしい光景だ。焼菓子を飲み下した彼女は、うっとりとした顔で拍手する。
「素晴らしいですぅぅぅ! 美味しい……! オピテル様が美味しいと仰った物をアタクシも同じように美味しいと感じられて、嬉しいですぅぅぅ……!」
眩しくすら感じる綺麗な表情は、少し前に違う人が浮かべているのを見たことがある。──サリハさんだ。フィラスを密かに恋慕っていた彼女は、彼のことを思い浮かべながら、今のセレーナさんとよく似た顔つきになっていた。
つまり、きっと、セレーナさんはオピテルさんに恋をしている。本来であれば、仕事上でほんの少し関わりがあるだけの間柄のはずの相手を、真剣に想っているんだろう。
「美味しいって言ってもらえて良かった。──改めまして、僕は海風です。ジルやカミュ、あと、あそこで寛いでいるクックとポッポの世話になりながら、この城で食事係として料理を作っているんだ。ノヴァユエとも、今は仲良くさせてもらっていると思うよ。よろしくお願いします」
セレーナさんからも挨拶してもらったのだから、一度は僕もきちんとしないと。そう思って頭を下げると、セレーナさんは恐縮したように両手をバタバタと振った。
「ひえええ、そんなそんなぁぁぁ……! ミカ様、アタクシなんかに頭を下げてはいけませんんん! ミカ様はカマルティユ兄様にとってとても大切な人間だと、ノヴァユエ兄様から何度も何度も聞いておりますのでぇぇぇ……! アタクシなんかにぃぃぃ……!」
「セレーナ、うるさいですよ」
「はッ、はひぃぃぃ……! カマルティユ兄様、ごめんなさいぃぃぃ……!」
セレーナさんはペコペコと何度も頭を下げているけれど、カミュの表情は硬めのままだ。セレーナさんはカミュを「兄様」と呼んで慕っているようだけど、対するカミュのほうはなんだか他人行儀というか、ちょっと冷たい。この温度差は一体何なんだろう?
ジルも同じように疑問を抱いたのか、首を傾げながらカミュを見つめ、質問を投げかけた。
「おい、カミュ。セレーナは、ノヴァユエと同じようにお前のことも兄と呼んでいるようだが、本当に大して面識は無いのか? お前が忘れているだけじゃないのか?」
「私は記憶力には自信があります。本当に、セレーナとは一度か二度くらいしか話したことはありません。ノヴァユエからしつこく話を聞かされていたので、彼女のことを一方的に多少は知っていますが」
カミュがツンとした態度で受け答えると、それを聞いていたノヴァユエは苦笑し、セレーナさんは半泣きになりながらも健気に何度も頷く。
「そうなのですぅぅぅ……! アタクシ、尊敬している方を勝手に兄様姉様とお呼びしておりましてぇぇぇ、カマルティユ兄様にも勝手に憧れているだけなのですぅぅぅ……!」
「……私になど、憧れるものではありませんよ。こんなに魔の者らしくない存在など、何の手本にもなりません」
自嘲気味にカミュが窘めた瞬間、セレーナさんはバンッッと力強い音を立てて、両手でテーブルを叩いた。
「そんなことありませんんん! 絶対に!」
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