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【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー
【10-16】
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ビクッと肩を跳ねさせる僕たち一同の様子を気にすることなく、セレーナさんはそのまま熱く語り始める。
「カマルティユ兄様に憧れない魔の者なんて、多分ひとりもいませんんん! カマルティユ兄様は凄いのですっっっ! お父様が自ら最高傑作と仰っている存在ですものぉぉぉ! 本当はずっとお傍に置きたかったのにカマルティユ兄様が離れたがり、まさかお父様がその意志を尊重されたという伝説を知らない同族などおりませんんん!」
カミュはそんなに「父」に気に入られているのか。彼らの在り方を完全に把握しているわけではないけれども、魔の者にとって創造主である「父」は絶対的な存在なのだろうし、そんな人へ多少なりとも反抗心を抱いていたらしいカミュはなかなか豪胆なんじゃないだろうか。
意外な気持ちと妙な感心を抱いてカミュを見つめると、美しい悪魔は微妙な面持ちでわずかに首を振った。
「セレーナの言い分は大げさなのです。私は本当に大した存在ではなく、その割に父がやたらと目を掛けようとしてくるものですから、他の同胞たちをもっと見守ってほしいと思って距離を置いただけですよ。今の父は、私などにさほど関心も無いでしょう」
「えー? またまたぁー、カマルティユ先輩ってば嘘ついちゃダメっしょー」
しれっと言ってのけるカミュに対し、即座に異を唱えたのはノヴァユエだ。緑の悪魔はやたらと細かい動きで眼鏡をクイクイと押し上げながら、ニタニタ笑う。
「お父様は今でもカマルティユ先輩が一番だしぃ、帰ってきてほしくて仕方ないからぁ、何回も手紙を送ってきてるっしょー? 何の返事も無いって、お父様の愚痴が止まらねーのボク的に面倒くせぇからさー、そろそろ顔見せに行ってやればいいのにーって思うよ★」
カミュにそういった連絡が何度も来ているというのが初耳だったのか、ジルは気遣わしげに赤い悪魔を見つめた。その視線に優しい微笑みを返してから、カミュは「余計なことを言うな」と釘を刺すような冷えた視線でノヴァユエを睨む。
「そうでしたか、そんな要請が来ているとは知りませんでした。──いえ、正確に申せば、父から何度も便りは届いておりましたが、一度も中を読んでおりませんでしたので。届く度に速攻で燃やしておりましたから」
「うわー……、ほんとカマルティユ先輩は頭おかしいよねー。お父様から直接手紙をいただけるってめちゃくちゃ名誉なことだしぃ、どんな指令が書かれているか分からないしぃ、ご命令に背くなんて絶対ダメだしぃ、読まずに燃やすなんて気が狂ってるとしか思えねー」
「気が触れてるなどと、ノヴァユエにだけは言われたくないですね。貴方より私のほうが頭がおかしいのが事実だとしたら、明日には全世界が崩壊するでしょう。この世の均衡が崩れているどころの話じゃありませんから」
「そこまで言うー!?」
ドン引きしたり、ゲラゲラ大笑いしたり、ノヴァユエの反応は忙しない。対するカミュはどこまでも冷静で、ツンとすましている。そんな「兄」たちを交互に眺めて、セレーナさんは可愛らしい溜息を零した。
「はぁぁぁ……、本当に兄様たちは素敵ですぅぅぅ。お父様に平然と逆らってもご自身が無事だと理解されていて自信に満ちているカマルティユ兄様も素敵ですしぃぃぃ、そんな素晴らしすぎるカマルティユ兄様に畏れ多くてみんな距離を取りがちなのに何も気にしないで仲良くされているノヴァユエ兄様も素敵ですしぃぃぃ」
「ちょっとーぉ、セレーナぁ。ボク、何も考えてないわけじゃないんだけどーぉ」
「私もノヴァユエと仲良くなった覚えは無いのですが」
「自由な御方って本当に素晴らしいですぅぅぅ、柔軟な考えって素敵ですぅぅぅ」
「兄」たちのツッコミをマイペースに聞き流しているセレーナさんこそ自由な気もするけど……。自分の天真爛漫さには気付いていないであろうセレーナさんは、そのまま恍惚とした溜息を重ねた。
「オピテル様も自由な御方でぇぇぇ、とっても素敵な御方なんですぅぅぅ」
おや? これは恋バナが始まる気配なのでは?
そう感じ取った僕は、いそいそとセレーナさんの隣の席に座り、自分のお茶とお菓子を引き寄せた。僕が女の子だったら、セレーナさんとしてももっと話しやすいんだろうけど。とりあえず、男だらけの中でも話しやすそうな空気を作ってあげたほうがいい。
ノヴァユエやカミュが懸念しているようなことを明確にするには、とにかく彼女から情報を引き出さなければ。謎の使命感に駆り立てられながら、僕は一口お茶を飲み、セレーナさんの話に耳を傾ける体勢を整えた。
「オピテルさんには昨日会ったけど、おっとりとして優しそうなひとだったなぁ。セレーナさんから見たら、自由な感じに見えるの?」
「はっ、はひぃぃぃ! オピテル様が自由な御方でなければ、アタクシたちは交流を重ねることもなかったと思うのですぅぅぅ。……ミカ様、も、もしかしてぇぇぇ、アタクシなんかの話を、オピテル様に関する話を聞いてくださるのですかぁぁぁ?」
「うん。是非とも、聞かせてほしいなぁ」
頷きながら答えると、長い睫毛に縁取られたオレンジ色の大きな瞳が輝きを増していった。
「カマルティユ兄様に憧れない魔の者なんて、多分ひとりもいませんんん! カマルティユ兄様は凄いのですっっっ! お父様が自ら最高傑作と仰っている存在ですものぉぉぉ! 本当はずっとお傍に置きたかったのにカマルティユ兄様が離れたがり、まさかお父様がその意志を尊重されたという伝説を知らない同族などおりませんんん!」
カミュはそんなに「父」に気に入られているのか。彼らの在り方を完全に把握しているわけではないけれども、魔の者にとって創造主である「父」は絶対的な存在なのだろうし、そんな人へ多少なりとも反抗心を抱いていたらしいカミュはなかなか豪胆なんじゃないだろうか。
意外な気持ちと妙な感心を抱いてカミュを見つめると、美しい悪魔は微妙な面持ちでわずかに首を振った。
「セレーナの言い分は大げさなのです。私は本当に大した存在ではなく、その割に父がやたらと目を掛けようとしてくるものですから、他の同胞たちをもっと見守ってほしいと思って距離を置いただけですよ。今の父は、私などにさほど関心も無いでしょう」
「えー? またまたぁー、カマルティユ先輩ってば嘘ついちゃダメっしょー」
しれっと言ってのけるカミュに対し、即座に異を唱えたのはノヴァユエだ。緑の悪魔はやたらと細かい動きで眼鏡をクイクイと押し上げながら、ニタニタ笑う。
「お父様は今でもカマルティユ先輩が一番だしぃ、帰ってきてほしくて仕方ないからぁ、何回も手紙を送ってきてるっしょー? 何の返事も無いって、お父様の愚痴が止まらねーのボク的に面倒くせぇからさー、そろそろ顔見せに行ってやればいいのにーって思うよ★」
カミュにそういった連絡が何度も来ているというのが初耳だったのか、ジルは気遣わしげに赤い悪魔を見つめた。その視線に優しい微笑みを返してから、カミュは「余計なことを言うな」と釘を刺すような冷えた視線でノヴァユエを睨む。
「そうでしたか、そんな要請が来ているとは知りませんでした。──いえ、正確に申せば、父から何度も便りは届いておりましたが、一度も中を読んでおりませんでしたので。届く度に速攻で燃やしておりましたから」
「うわー……、ほんとカマルティユ先輩は頭おかしいよねー。お父様から直接手紙をいただけるってめちゃくちゃ名誉なことだしぃ、どんな指令が書かれているか分からないしぃ、ご命令に背くなんて絶対ダメだしぃ、読まずに燃やすなんて気が狂ってるとしか思えねー」
「気が触れてるなどと、ノヴァユエにだけは言われたくないですね。貴方より私のほうが頭がおかしいのが事実だとしたら、明日には全世界が崩壊するでしょう。この世の均衡が崩れているどころの話じゃありませんから」
「そこまで言うー!?」
ドン引きしたり、ゲラゲラ大笑いしたり、ノヴァユエの反応は忙しない。対するカミュはどこまでも冷静で、ツンとすましている。そんな「兄」たちを交互に眺めて、セレーナさんは可愛らしい溜息を零した。
「はぁぁぁ……、本当に兄様たちは素敵ですぅぅぅ。お父様に平然と逆らってもご自身が無事だと理解されていて自信に満ちているカマルティユ兄様も素敵ですしぃぃぃ、そんな素晴らしすぎるカマルティユ兄様に畏れ多くてみんな距離を取りがちなのに何も気にしないで仲良くされているノヴァユエ兄様も素敵ですしぃぃぃ」
「ちょっとーぉ、セレーナぁ。ボク、何も考えてないわけじゃないんだけどーぉ」
「私もノヴァユエと仲良くなった覚えは無いのですが」
「自由な御方って本当に素晴らしいですぅぅぅ、柔軟な考えって素敵ですぅぅぅ」
「兄」たちのツッコミをマイペースに聞き流しているセレーナさんこそ自由な気もするけど……。自分の天真爛漫さには気付いていないであろうセレーナさんは、そのまま恍惚とした溜息を重ねた。
「オピテル様も自由な御方でぇぇぇ、とっても素敵な御方なんですぅぅぅ」
おや? これは恋バナが始まる気配なのでは?
そう感じ取った僕は、いそいそとセレーナさんの隣の席に座り、自分のお茶とお菓子を引き寄せた。僕が女の子だったら、セレーナさんとしてももっと話しやすいんだろうけど。とりあえず、男だらけの中でも話しやすそうな空気を作ってあげたほうがいい。
ノヴァユエやカミュが懸念しているようなことを明確にするには、とにかく彼女から情報を引き出さなければ。謎の使命感に駆り立てられながら、僕は一口お茶を飲み、セレーナさんの話に耳を傾ける体勢を整えた。
「オピテルさんには昨日会ったけど、おっとりとして優しそうなひとだったなぁ。セレーナさんから見たら、自由な感じに見えるの?」
「はっ、はひぃぃぃ! オピテル様が自由な御方でなければ、アタクシたちは交流を重ねることもなかったと思うのですぅぅぅ。……ミカ様、も、もしかしてぇぇぇ、アタクシなんかの話を、オピテル様に関する話を聞いてくださるのですかぁぁぁ?」
「うん。是非とも、聞かせてほしいなぁ」
頷きながら答えると、長い睫毛に縁取られたオレンジ色の大きな瞳が輝きを増していった。
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