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【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー
【10-18】
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「……子どもが出来たという、根拠は?」
「へっっっ?」
「俺の能力では、お前の腹の中には生命反応を感じない。まぁ、俺は今は魔王とはいえ、元々は人間だしな。俺には理解や力が及ばない部分で何かしらの根拠があるのなら、聞かせてほしい。そこの赤い奴と緑の奴も、おそらくそれが一番気掛かりなはずだ」
静かな声で要点だけを羅列した質問を淡々と投げ掛けたジルを見て、セレーナさんは何度か瞬きをした後、しょんぼりと肩を落とした。
「そうなのですよねぇぇぇ……、実は、アタクシにも、自分の中に新しい命が宿っている気配が感じ取れないのですぅぅぅ。……で、でも、オピテル様が仰るようにアタクシたちが同じよう気持ちを重ねたことで子どもが出来たのだとしたらぁぁぁ、それは大切にしてあげたいじゃないですかぁぁぁ」
声色はどこかふにゃふにゃとして頼りないけれども、セレーナさんの瞳は真剣だ。自分が母になるかもしれない可能性と、彼女なりに真剣に向き合っているのだろう。本来は繁殖しない魔の者の彼女には実感が湧きづらいことだろうけれど、それでも、セレーナさんはきちんと考えようとしている。
──僕の母は、どうだったのだろう。ふと、そんなことを考えてしまう。
母は、最終的には僕のことを恨んでいたのだと思う。彼女が刑務所に行ってしまってから、僕宛てに手紙が来たことは無いし、こちらから連絡をする勇気も無かった。だから、母の気持ちは何ひとつ分からない。
僕という存在がお腹にいると知ったとき、一瞬だけでも喜んでくれたりはしたのだろうか。それとも、最初から最後まで、彼女にとっての僕は疎ましい存在だったのだろうか。
僕が死んだことは、母にも伝えられたのだろうか。そのとき彼女は、何を思ったのだろう。ほっとしたのだろうか。それとも、少しくらいは悼んでくれたのだろうか。
「ミカ」
不意に間近で名前を呼ばれ、僕はハッと我に返った。いつの間にか、隣にジルが立っている。背を屈めて僕の顔を覗き込んできているジルの漆黒の瞳には、溢れんばかりの心配が浮かんでいた。
「あっ……、ごめん、僕、ちょっとボーッとしてて」
「ああ。昨日から来客続きで疲れているんだろう。話は俺たちが聞いておくから大丈夫だ。お前はそんなに気負わず、気楽に茶菓子を楽しんでいるといい」
そう言って僕の頭を撫でたジルは、そのまま隣の席に座ってくる。自分のお茶と焼菓子を魔法で引き寄せた彼は、テーブルの下でさりげなく僕の手をするりと撫でてきた。
……たぶん、ジルは、僕が何を考えて押し黙っていたのかを察しているんだろう。だからこそ、大丈夫だと伝えるために、僕の心を支えてくれるために、こうして傍に来てくれたんだ。ありがとうの気持ちを込めて見つめると、ジルは黙って頷いてくれた。
「──そうですよね。こう連日で来客があっては、ミカさんも気疲れしてしまうでしょう。ただの魔王への挑戦者であれば、ジル様と私だけで十分に対応できますが、『客』となってはそうはいきませんから。すみません、配慮が足りませんでした」
「だよねー。ミカってば優しいからさぁ、またみんなで集まるなんてなったら、張り切っちゃうっしょー? カマルティユ先輩とボクが手伝うとしてもさぁ、ミカの負担がでかいよねー」
僕がボケッとしている間に、何か話が進んでいたらしい。誰かお客さんを招こうとしていたんだろうか?
「ごめんね、何の話……?」
「ああ、明日オピテルを招いてみようかという話が持ち上がっていたんだ。俺たちだけでは、セレーナが本当に身籠っているのか分からないからな。オピテルだったら判断できるかもしれないから、話し合いも兼ねて来てもらおうかと」
ジルが説明してくれると、それに合わせて頷くセレーナさんが更に補足してきた。
「でもぉぉぉ、それはミカ様が疲れてしまわれるからやめたほうがいいかもしれませんんん。申し訳ありませんんん、アタクシ気が利かなくてぇぇぇ、すぐにそこまで考えられませんでしたぁぁぁ……! オピテル様にお会いするにしても、こちらでお世話になるのではなくてぇぇぇ、他の場所のほうがいいかもしれませんんん」
「んー……、でもさーぁ、お父様の目を逃れて聖なる者と密会できる場所なんて他に思いつくー? ここだったら、まぁ、魔王の領域だしぃ……、そもそもカマルティユ先輩が管理している場所にお父様が口出ししたりしないと思うしさー」
「父だって、そこまで私を甘やかしたりはしませんよ。何か怪しいと思えば、たとえ魔王の城であろうとも干渉してくるでしょうね。まぁ、相手が父であろうとも、ジル様とミカさんには決して手出しさせませんが」
「うっわ……こえぇ……」
悪魔たちがやいのやいのと言い合っているのを聞きながら、僕はとある考えに到達していた。
今も賑やかなのに、更にそこにオピテルさんも加わるかもしれなくて? しかも、明日以降の予定ならば、おもてなしの仕込みをしておくことも出来て? ……ということは?
「それって、カボチャパーティーのチャンスなのでは……!?」
うっかり声に出してしまった僕へ、一斉に視線が集まってきた。
「へっっっ?」
「俺の能力では、お前の腹の中には生命反応を感じない。まぁ、俺は今は魔王とはいえ、元々は人間だしな。俺には理解や力が及ばない部分で何かしらの根拠があるのなら、聞かせてほしい。そこの赤い奴と緑の奴も、おそらくそれが一番気掛かりなはずだ」
静かな声で要点だけを羅列した質問を淡々と投げ掛けたジルを見て、セレーナさんは何度か瞬きをした後、しょんぼりと肩を落とした。
「そうなのですよねぇぇぇ……、実は、アタクシにも、自分の中に新しい命が宿っている気配が感じ取れないのですぅぅぅ。……で、でも、オピテル様が仰るようにアタクシたちが同じよう気持ちを重ねたことで子どもが出来たのだとしたらぁぁぁ、それは大切にしてあげたいじゃないですかぁぁぁ」
声色はどこかふにゃふにゃとして頼りないけれども、セレーナさんの瞳は真剣だ。自分が母になるかもしれない可能性と、彼女なりに真剣に向き合っているのだろう。本来は繁殖しない魔の者の彼女には実感が湧きづらいことだろうけれど、それでも、セレーナさんはきちんと考えようとしている。
──僕の母は、どうだったのだろう。ふと、そんなことを考えてしまう。
母は、最終的には僕のことを恨んでいたのだと思う。彼女が刑務所に行ってしまってから、僕宛てに手紙が来たことは無いし、こちらから連絡をする勇気も無かった。だから、母の気持ちは何ひとつ分からない。
僕という存在がお腹にいると知ったとき、一瞬だけでも喜んでくれたりはしたのだろうか。それとも、最初から最後まで、彼女にとっての僕は疎ましい存在だったのだろうか。
僕が死んだことは、母にも伝えられたのだろうか。そのとき彼女は、何を思ったのだろう。ほっとしたのだろうか。それとも、少しくらいは悼んでくれたのだろうか。
「ミカ」
不意に間近で名前を呼ばれ、僕はハッと我に返った。いつの間にか、隣にジルが立っている。背を屈めて僕の顔を覗き込んできているジルの漆黒の瞳には、溢れんばかりの心配が浮かんでいた。
「あっ……、ごめん、僕、ちょっとボーッとしてて」
「ああ。昨日から来客続きで疲れているんだろう。話は俺たちが聞いておくから大丈夫だ。お前はそんなに気負わず、気楽に茶菓子を楽しんでいるといい」
そう言って僕の頭を撫でたジルは、そのまま隣の席に座ってくる。自分のお茶と焼菓子を魔法で引き寄せた彼は、テーブルの下でさりげなく僕の手をするりと撫でてきた。
……たぶん、ジルは、僕が何を考えて押し黙っていたのかを察しているんだろう。だからこそ、大丈夫だと伝えるために、僕の心を支えてくれるために、こうして傍に来てくれたんだ。ありがとうの気持ちを込めて見つめると、ジルは黙って頷いてくれた。
「──そうですよね。こう連日で来客があっては、ミカさんも気疲れしてしまうでしょう。ただの魔王への挑戦者であれば、ジル様と私だけで十分に対応できますが、『客』となってはそうはいきませんから。すみません、配慮が足りませんでした」
「だよねー。ミカってば優しいからさぁ、またみんなで集まるなんてなったら、張り切っちゃうっしょー? カマルティユ先輩とボクが手伝うとしてもさぁ、ミカの負担がでかいよねー」
僕がボケッとしている間に、何か話が進んでいたらしい。誰かお客さんを招こうとしていたんだろうか?
「ごめんね、何の話……?」
「ああ、明日オピテルを招いてみようかという話が持ち上がっていたんだ。俺たちだけでは、セレーナが本当に身籠っているのか分からないからな。オピテルだったら判断できるかもしれないから、話し合いも兼ねて来てもらおうかと」
ジルが説明してくれると、それに合わせて頷くセレーナさんが更に補足してきた。
「でもぉぉぉ、それはミカ様が疲れてしまわれるからやめたほうがいいかもしれませんんん。申し訳ありませんんん、アタクシ気が利かなくてぇぇぇ、すぐにそこまで考えられませんでしたぁぁぁ……! オピテル様にお会いするにしても、こちらでお世話になるのではなくてぇぇぇ、他の場所のほうがいいかもしれませんんん」
「んー……、でもさーぁ、お父様の目を逃れて聖なる者と密会できる場所なんて他に思いつくー? ここだったら、まぁ、魔王の領域だしぃ……、そもそもカマルティユ先輩が管理している場所にお父様が口出ししたりしないと思うしさー」
「父だって、そこまで私を甘やかしたりはしませんよ。何か怪しいと思えば、たとえ魔王の城であろうとも干渉してくるでしょうね。まぁ、相手が父であろうとも、ジル様とミカさんには決して手出しさせませんが」
「うっわ……こえぇ……」
悪魔たちがやいのやいのと言い合っているのを聞きながら、僕はとある考えに到達していた。
今も賑やかなのに、更にそこにオピテルさんも加わるかもしれなくて? しかも、明日以降の予定ならば、おもてなしの仕込みをしておくことも出来て? ……ということは?
「それって、カボチャパーティーのチャンスなのでは……!?」
うっかり声に出してしまった僕へ、一斉に視線が集まってきた。
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