魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

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【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー

【10-19】

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「カボチャはガボンで、パチィは祝宴のことだな? ……ミカはガボンの宴がやりたいのか? ガボンの宴が何なのか俺には分からないが……」

 皆の疑問をまとめてというか代表というか、ジルが発した言葉に、他の人たちも次々に頷く。クックとポッポも真似してカクカクと頷いていた。

「あ、えっと……、つまり、宴がしたいっていうより、僕は、カボチャ……ガボンを使ったお菓子をたくさん作って、みんなに振る舞いたいんだ。もしもオピテルさんやセレーナさんがまた来てくれるんだったら、是非そうしたいなって思ったのが、つい口から出ちゃったんだよね」
「えっ!? いっぱい作りたいのー!? ミカってば相変わらず変っていうかイイ奴すぎねぇ!?」

 ノヴァユエが素っ頓狂な声を上げると、カミュが緑の悪魔の肩をパシッと叩く。その一方、カミュはカミュで少し呆れたような、それでいて心配そうな顔で僕を見つめてきた。

「ミカさんはいつもお優しくて、我々やお客さまへ美味しいものをたくさん作ってくださいますが、ノヴァユエにセレーナにオピテル殿まで加わってしまっては、頭数が多くてあまりにも大変なのでは……?」
「今日のうちから仕込みが出来れば、そこまで大変じゃないよ。……あ、火を使うためにカミュに手伝ってもらわないといけないから、君は大変かもしれないけど」
「いえ、私は全然平気ですけれども……」
「僕、一度だけでもいいから、自分が作るお菓子でおもてなしを頑張ってみたかったんだ。地球では他人との繋がりが全然無くてそういう機会は無かったし、せっかくだから挑戦してみたいなって思って……、ただ、オピテルさんとセレーナさんが話し合う内容を考えると、はしゃぐ感じでもないと思うし、やめたほうがいいかな……。配慮が足りなくて、ごめんなさい」

 喋っている間に、みんなが再び集まろうとしている目的を思い出して、僕は段々と声が萎んでいってしまった。セレーナさんたちは真剣に悩んだり考えたりしているのに、そこに浮かれた考えを差し込むなんてよくなかったと思う。
 しょんぼりしている僕の肩を、隣からセレーナさんがぽんぽんと軽く叩いてくる。俯いていた視線を彼女へと移すと、セレーナさんは両手で作った握り拳を振りながら、僕を励まそうとするように笑った。

「ミカ様ぁぁぁ! アタクシは、とっても素敵なご提案だと思うのですぅぅぅ。ミカ様の作ってくださったおやつは美味しいですしぃぃぃ、オピテル様もお気に入りとのことでしたしぃぃぃ、ミカ様がよろしいのでしたらぁぁぁ、是非お願いしたいですぅぅぅ」
「そう言ってもらえるのはすごく嬉しいけど、でも……、やっぱり僕、セレーナさんへの気遣いが足りなかった気がするよ。ごめんね」
「あ、ぁ、謝らないでくださいぃぃぃ! アタクシ、嬉しいのですぅぅぅ。ミカ様にとって、アタクシたちのことなんて、本当はどうでもいいはずですのにぃぃぃ、それを好意的に捉えていただけるだけでも嬉しいのにぃぃぃ、おもてなしを頑張ってくださるだなんてぇぇぇ、感激ですよぉぉぉ」

 ……セレーナさん、優しいなぁ。ノヴァユエが彼女を可愛がっていたり、種族が違ってもオピテルさんが惹かれた理由が、なんとなく分かる気がする。
 話し合いの主役であるセレーナさんがそう言ってくれるのは嬉しいし、だったらカボチャスイーツを色々と作っておもてなしするのも良いようなきはするけれども、そもそもこのお城の主はジルだ。セレーナさんとは反対側の隣に座っているジルを見上げると、穏やかな黒い瞳があたたかい眼差しを返してくれた。

「俺は、ミカがやりたいと思うのなら、やればいいと思う。ミカは宴がしたいのではなく、もてなしを張り切りたいと言っていた。それは、お前が気に病むほど不謹慎なことではないと思う。……どうだ、カミュ。手伝えるか?」

 魔王から問われた美しい悪魔は、当然と云うかのように微笑んで頷く。

「私はいつだって、喜んでミカさんのお手伝いをいたしますよ。ミカさんがご無理なさらないよう、きちんと見守らせていただきつつ、微力ながらお手伝いしましょう」
「ありがとう、ジル、カミュ……!」
「ミカー、ボクちんも手伝うからねっ★」
「うん、ノヴァユエもありがとう。あと、セレーナさんも、優しく気遣ってくれてありがとう」

 みんなに感謝を伝えると、魔王も悪魔も優しい笑顔を返してくれた。クックとポッポも、どことなく機嫌よくさえずっている。

 ──とりあえず、明日の昼過ぎに来てほしい旨を伝える鳥文をオピテルさん宛てに飛ばし、ノヴァユエとセレーナさんはこの城に一泊し、明日に備えることになった。オピテルさんから喜んで行くという内容の返信もあり、平和に夜が更けていく。

 ──そんな中、誰ひとり気付かないうちにジルが密かに一人で苦しんでいたことを、そのときの僕は全く知りもしなかった。
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