241 / 246
【第11話】秋と冬の狭間で屋台料理を君たちと
【11-9】
しおりを挟む
緑色の髪をふわりと靡かせて着地したノヴァユエは、眼鏡をクイッと上げてご機嫌に笑う。そして、感謝祭の衣装を着ている僕を見て、更に笑みを深めた。
「ミカ~★ よく似合ってるじゃん☆ そんな格好してるとさぁ、普通にこの世界の人間に見えちゃうけどさー、でもやっぱりミカはボクちんの特別っ★」
「到着するなり、何を言っているんですか貴方は。無遠慮に触らないでください。せっかく綺麗におめかししていただいたんですから」
浮かれた口調で言いながら僕へ伸ばしてきたノヴァユエの手を、カミュが冷たく叩き落とす。緑の悪魔は気分を害した様子もなく、ヘラヘラと笑い続けていた。
「ノヴァユエ、こんにちは。褒めてくれてありがとう。カミュが作ってくれた衣装、素敵でしょ?」
「うん! カマルティユ先輩ってば、裁縫まで得意なんてほんと非が無さすぎるよねー★」
嬉しい言葉を掛けてくれたノヴァユエへ挨拶すると、彼は嬉しそうなニコニコ笑顔を返してくる。僕の隣に立つカミュは咳払いし、眉間に僅かな皺を刻む。……まぁ、ただの照れ隠しなんだろうけど。
「──ノヴァユエ。約束通りに来てくれたことに、まずは感謝しましょう。私たちが留守にしている間、ジル様のことをくれぐれも頼みましたよ。特別なお世話は必要ありませんが、様子がおかしくないか気をつけてさしあげていてください」
「りょーかいっ★ よろしくね~、プレカシオンの魔王っ☆」
「……ああ。すまないな、世話になる」
そう言って軽く頭を下げる魔王を、緑の悪魔は驚いたように凝視する。
「えっ!? なんだよ~、急に! 今までそんな畏まった感じじゃなかったじゃーん!」
「今回は特別だ。……場合によってはお前も危険な目に遭うかもしれないのに、それでもこうして協力してくれている。ましてや、他国の魔王のことなどノヴァユエにはどうでもいい存在のはずだ」
「……別に、お前のためじゃねぇし。ミカとカマルティユ先輩のためだし。……でも、別にお前のことも嫌いじゃねーけどさぁ」
もごもごと呟くノヴァユエの顔は、さっきのカミュみたいに照れ隠しと不機嫌が混在している表情だ。たぶん、照れ隠しの比重のほうがずっと大きいはず。
「お昼ごはんに、スープとサンドイッチとサラダ、あとはおやつにアップルパイ──って言ってもノヴァユエには分からないと思うけど、食べられるものを色々と用意してあるから、二人で一緒に食べてね」
食事係としてごはんとおやつに関することを伝えると、ノヴァユエの顔がパァッと輝く。
「ミカの作ったもん!? ボクも一緒に食べていいのっ!?」
「勿論だよ。温め直したりするのはジルがしてくれると思うし、一緒に楽しんで食べてね」
「わーいっ★ 嬉しいっ☆」
無邪気に笑うノヴァユエと、それを穏やかに見守るジル。そんな二人の姿を見て、カミュは少し安心したように柔らかな表情をしていた。本来であれば友好関係を築くことが難しいであろう彼らが一緒にいても問題無さそうな雰囲気を醸し出していることに安堵しているのだろうし、嬉しくもあるんだろう。その気持ちは、僕にもよく分かる。
今のこの光景は、ジルとカミュがそれぞれ魔王・悪魔としての役割よりも平和を望む自身の心を大事にしているからこそ、そして、僕やノヴァユエのような周りの者たちも彼らの在り方に感化されているからこそのものだ。
響き合い、重なり合って繋がっていく関係が、とても温かい。この優しい温度を、これからも守っていけたらいいと、心からそう願っている。
「……ミカさん、そろそろ参りましょうか」
「うん。……じゃあ、ジル、ノヴァユエ、行ってきます」
カミュに促され、出発の挨拶をする僕の両肩に、クックとポッポが乗ってきた。そして、留守番組の魔王と緑の悪魔は、柔らかな笑顔で頷いてくれる。
「ああ、気をつけて行ってこい。無事な帰りを待っている」
「こっちのことは気にしないで、楽しんできてねーっ★」
悪い方向の「もしも」を想定しているからこそ、ジルではなくカミュが僕に同行し、ノヴァユエがここにいるわけだけれども、誰もそのことに触れたりはしない。きっと大丈夫だと、そう信じているからこその、明るい挨拶だ。
これは、現実逃避なんかじゃない。
それほど強く、優しい未来を思い描いているからだ。
自分の心に言い聞かせるようにしつつ、ジルとノヴァユエをしっかりと見つめてから、僕はカミュの手を借りて馬車へと乗り込む。クックとポッポは着席した僕の膝へと舞い降り、励ましのドヤ顔を披露してくれた。
「では、ミカさん、参りますよ。貴方に直接ではなく、馬車に転移魔法を掛けるので安全だとは思いますが、もしも少しでも気分が優れなければ、到着後にすぐに仰ってください」
「うん、分かった。よろしくね、カミュ」
「お任せください。──では、目を閉じてくださいね」
カミュの言葉に従って、僕がぎゅっと目を瞑った。
----------------------------------------------------------------------
【おしらせ】
体調と仕事の関係で、毎日更新が厳しくなってきてしまい不定期更新になってしまっております。
でも、完結まできちんと書き上げる気持ちでおりますので、今後ものんびりとお付き合いいただけますと嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
「ミカ~★ よく似合ってるじゃん☆ そんな格好してるとさぁ、普通にこの世界の人間に見えちゃうけどさー、でもやっぱりミカはボクちんの特別っ★」
「到着するなり、何を言っているんですか貴方は。無遠慮に触らないでください。せっかく綺麗におめかししていただいたんですから」
浮かれた口調で言いながら僕へ伸ばしてきたノヴァユエの手を、カミュが冷たく叩き落とす。緑の悪魔は気分を害した様子もなく、ヘラヘラと笑い続けていた。
「ノヴァユエ、こんにちは。褒めてくれてありがとう。カミュが作ってくれた衣装、素敵でしょ?」
「うん! カマルティユ先輩ってば、裁縫まで得意なんてほんと非が無さすぎるよねー★」
嬉しい言葉を掛けてくれたノヴァユエへ挨拶すると、彼は嬉しそうなニコニコ笑顔を返してくる。僕の隣に立つカミュは咳払いし、眉間に僅かな皺を刻む。……まぁ、ただの照れ隠しなんだろうけど。
「──ノヴァユエ。約束通りに来てくれたことに、まずは感謝しましょう。私たちが留守にしている間、ジル様のことをくれぐれも頼みましたよ。特別なお世話は必要ありませんが、様子がおかしくないか気をつけてさしあげていてください」
「りょーかいっ★ よろしくね~、プレカシオンの魔王っ☆」
「……ああ。すまないな、世話になる」
そう言って軽く頭を下げる魔王を、緑の悪魔は驚いたように凝視する。
「えっ!? なんだよ~、急に! 今までそんな畏まった感じじゃなかったじゃーん!」
「今回は特別だ。……場合によってはお前も危険な目に遭うかもしれないのに、それでもこうして協力してくれている。ましてや、他国の魔王のことなどノヴァユエにはどうでもいい存在のはずだ」
「……別に、お前のためじゃねぇし。ミカとカマルティユ先輩のためだし。……でも、別にお前のことも嫌いじゃねーけどさぁ」
もごもごと呟くノヴァユエの顔は、さっきのカミュみたいに照れ隠しと不機嫌が混在している表情だ。たぶん、照れ隠しの比重のほうがずっと大きいはず。
「お昼ごはんに、スープとサンドイッチとサラダ、あとはおやつにアップルパイ──って言ってもノヴァユエには分からないと思うけど、食べられるものを色々と用意してあるから、二人で一緒に食べてね」
食事係としてごはんとおやつに関することを伝えると、ノヴァユエの顔がパァッと輝く。
「ミカの作ったもん!? ボクも一緒に食べていいのっ!?」
「勿論だよ。温め直したりするのはジルがしてくれると思うし、一緒に楽しんで食べてね」
「わーいっ★ 嬉しいっ☆」
無邪気に笑うノヴァユエと、それを穏やかに見守るジル。そんな二人の姿を見て、カミュは少し安心したように柔らかな表情をしていた。本来であれば友好関係を築くことが難しいであろう彼らが一緒にいても問題無さそうな雰囲気を醸し出していることに安堵しているのだろうし、嬉しくもあるんだろう。その気持ちは、僕にもよく分かる。
今のこの光景は、ジルとカミュがそれぞれ魔王・悪魔としての役割よりも平和を望む自身の心を大事にしているからこそ、そして、僕やノヴァユエのような周りの者たちも彼らの在り方に感化されているからこそのものだ。
響き合い、重なり合って繋がっていく関係が、とても温かい。この優しい温度を、これからも守っていけたらいいと、心からそう願っている。
「……ミカさん、そろそろ参りましょうか」
「うん。……じゃあ、ジル、ノヴァユエ、行ってきます」
カミュに促され、出発の挨拶をする僕の両肩に、クックとポッポが乗ってきた。そして、留守番組の魔王と緑の悪魔は、柔らかな笑顔で頷いてくれる。
「ああ、気をつけて行ってこい。無事な帰りを待っている」
「こっちのことは気にしないで、楽しんできてねーっ★」
悪い方向の「もしも」を想定しているからこそ、ジルではなくカミュが僕に同行し、ノヴァユエがここにいるわけだけれども、誰もそのことに触れたりはしない。きっと大丈夫だと、そう信じているからこその、明るい挨拶だ。
これは、現実逃避なんかじゃない。
それほど強く、優しい未来を思い描いているからだ。
自分の心に言い聞かせるようにしつつ、ジルとノヴァユエをしっかりと見つめてから、僕はカミュの手を借りて馬車へと乗り込む。クックとポッポは着席した僕の膝へと舞い降り、励ましのドヤ顔を披露してくれた。
「では、ミカさん、参りますよ。貴方に直接ではなく、馬車に転移魔法を掛けるので安全だとは思いますが、もしも少しでも気分が優れなければ、到着後にすぐに仰ってください」
「うん、分かった。よろしくね、カミュ」
「お任せください。──では、目を閉じてくださいね」
カミュの言葉に従って、僕がぎゅっと目を瞑った。
----------------------------------------------------------------------
【おしらせ】
体調と仕事の関係で、毎日更新が厳しくなってきてしまい不定期更新になってしまっております。
でも、完結まできちんと書き上げる気持ちでおりますので、今後ものんびりとお付き合いいただけますと嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる