魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

文字の大きさ
244 / 246
【第11話】秋と冬の狭間で屋台料理を君たちと

【11-12】

しおりを挟む
「そなたに危険なことをさせるつもりは無い。だが、こちらが望まずとも、そうなってしまう可能性も考えられるし、それは不本意だ。とりあえず、何か不調があれば少しでも教えてほしい。……今はどうだ?」
「不調、ですか……?」

 問われてみて、改めて自分の心身と向き合ってみる。少し緊張しているのは、この状況であれば普通のことだと思うから、不調にはならないはずだ。
 他にいつもと違う部分があるとすれば……?

「不調と断言するほどではないんですけど、ほんの少しだけ息苦しさがあるかもしれないです。呼吸が出来ないとか、胸が痛いとか、そういうわけじゃないですし、自分ではそこまで気にならない程度ですから、心配はいらないと思いますけど……」

 正直に話してみると、マティ様の表情に若干の緊張が走る。

「息苦しさ……、なるほど、魔力が無い影響が出てしまっているのかもしれないな」
「えっ……、魔力が無いと呼吸がしづらくなるなんてあるんですか?」
「絶対に、と言い切れるわけではないが、おそらくはそういった影響も出るはずだ。私も含めて、この世界では『魔力』を持っているのが普通であり、『魔法』を使うために必要な要素があらゆる部分に宿っている。その要素があることによって、魔力を持たない者がどういった影響を受けるのかは、不明な部分が多い。我々には必要な物が、そなたやカイのような体質の者には毒になる可能性も十分に考えられる」
「毒……」

 毒、と聞くと、なんだか背筋が寒くなる。自分のことよりも、まだ赤ちゃんであるカイ様のことが心配になった。地球でも、赤ちゃんや小さい子どもが受けた悪いものが大人になった後にも響いたりするって、何かと問題になっていたと思う。それって、この星の──ディデーレの人たちだって同じはずだ。

「案ずるな。今は少し不調があるやもしれないが、無理をさせるつもりは無い。それに、普段のそなたはジルの庇護下にあり、しもべとして魔王に護られているはずだ。だからこそ、あの城にいる間は特に不調などは無いだろう?」

 僕の表情が曇っているのを見て心配してくれたのか、マティ様が優しい言葉を掛けてくれる。それは有難いけれど、僕が心配なのは彼の弟のことだ。

「カイ様は大丈夫なんですか? 今の僕は大した不調を感じていないですけど、この息苦しさ……、もしかしたら赤ちゃんにとっては負担が大きかったりするかもしれません」
「ああ、カイのことを案じてくれていたのか。そなたは本当に優しいな。──カイは今、賢者……ドノヴァンではない他の者だが、賢者が常に傍で見守っており、細心の注意を払って保護魔法で覆っているのだ。だから、今は心配無い。……だが、カイは日々成長しており、そのうち一日の大半を寝て過ごす赤子ではなく、一人で無邪気に駆け回る子どもになるだろう。そのとき、魔力を持たない身体のカイ自身に保護魔法を掛け続けるのは、様々な面から見て危ない。だからこそ、こうしてミカに協力してもらっているのだ」

 確かに、ジルもカミュも、僕そのものに魔法を掛けることは可能な限り避けている。おそらく、魔王と悪魔は人間の賢者以上の魔法能力を持っているはず。そんな彼らでさえ、かなり慎重に注意深く扱っているのだから、ただでさえ目が離せない幼児──しかも王子様を相手に賢者が保護魔法を駆使するのは厳しいのだろう。

「王都の中で僕が普通に過ごせる場所なら、カイ様も大丈夫な可能性が高いから、それを探ってみたい──ということなんですね」
「その通りだ。無論、ミカとカイの体質が全く同じではないだろうが、大いに参考になると思う。だからといって、ミカに無理をさせたいわけではない。何度も繰り返し言っているが、気になる不調があればすぐに言ってくれ」
「はい。ありがとうございます、マティ様。カイ様のためにも、気になることがあればすぐに言いますね」
「ああ、よろしく頼む。……さて。ここからは、少し楽しい話をしようか」

 僕の頭をぽんぽんと撫でてから、マティ様は懐から折り畳んだ紙を取り出して、丁寧に開く。そこには何かの見取り図と、何かの短文をリスト化されているような文字が羅列されている。──僕がなんとなく読める文字だけ拾ってみると、飲食物の名前が書かれているように感じた。

「ミカはこの世界の文字や言葉の勉強をしているのだったな。どうだ? 何か読めそうな部分はあるか?」
「はい。えぇと……、お恥ずかしいくらいちょっとだけなんですけど、料理の名前が書かれているような気がします。ごはんっぽいものも、おやつっぽいものも、飲み物っぽいものも書かれているような……」
「その通りだ。異世界の言葉を学んで読み解くとは、素晴らしいな。偉いぞ、ミカ」
「いえ、そんな……」

 優しい眼差しで大袈裟なくらい褒めてくれたマティ様は、続いて答え合わせの言葉をくれた。

「これは、感謝祭で出店している屋台と、そこで出している料理などの一覧だ。会場はかなり広いからな、ミカが気になる所を絞って回ったほうがいいだろう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...