魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

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【第11話】秋と冬の狭間で屋台料理を君たちと

【11-13】

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「屋台ってこんなにあるんですね……! すごい……、大きなお祭りとは聞いていましたけど、想像していたよりずっと規模が大きいから驚きました」

 行ったことが無いから、ジルやカミュから聞いた話と想像を踏まえての推察になってしまうけれど、かなり広い大都市のように思われる。特に、秋の感謝祭が行われている会場となっている大広場は、地球で考えると大規模なアミューズメントパーク程度の敷地面積があるみたいだ。そこに所狭しと屋台が並んでいると考えると、すごくわくわくしてしまう。

「王都だけではなく国全体で見ても、秋の感謝祭は一年を通して一番大きな催しだから、国民もそれを意識しているのか、とても力を入れてくれているのだ。出店や見せ物を提供する側は勿論のこと、客として参加する者たちも各々が本気を出している」
「なるほど……、じゃあ僕も本気を出さないとですね!」
「そうだな、心の底からたっぷりと楽しんでくれ」

 そう言って笑ったマティ様は、出店の一覧の色々なところを指差しながら、どんなメニューが出されているのかの説明を始めてくれた。

「このあたりは、軽めの食事に分類されるようなものを出している店が立ち並んでいる。主食ではなく、間食に近いものだな。塩気のあるおやつ、という感覚かもしれない」
「しょっぱいおやつ、いいですね。どんな食材を使っているものが多いんですか?」
「大体が肉か魚だな」
「け、けっこう重ためなんですね……!?」
「そうか? 若い衆は間食として普通に食べているがな。祭りの屋台以外でも、普段からそこらの町や村で普通に売られて親しまれている」

 コンビニのホットスナックみたいなものなんだろうか。ちょっとした揚げ物なんかは、ごはんのおかずにもなるけれど、おやつとしても食べられる。そんな感じなのかな。

「ミカは甘いもののほうが好きだろうか? ほら……、ここら一帯の出店は、全て甘いものだ。子どもが好きな甘みが強いものから、大人が好む控えめな甘さのものまで、色々とある」
「へぇ……! すごいですね。僕自身は甘いものが特別好きというわけでもなくて、美味しいと思うものなら塩辛いものでも甘いものでも何でも好きです」
「なるほどな。確かに、ミカは何でも美味しそうに食べている印象がある」

 穏やかに言ったマティ様は少しだけ目を伏せて何かを考えてから、リストの屋台をいくつか指差していく。

「私から見た印象にすぎないが、ミカは素材をそのまま活かしたような、素朴な味わいを好むのではないか? それならば、例えば──ここで出しているものは、果実の甘みだけを上手く使っている生菓子で、なかなか珍しいものだな。あと、ここの軽食は肉の香草焼きという一見単純なものではあるのだが、その香草がとても稀少で珍しいものだから、一度味わってみることを勧めたい」
「わぁ……! そういうの大好きです。マティ様がよろしければ、是非、覗いてみたいです」
「私は、ミカと回れれば何でも良いのだ。だから、ミカが気になる所を遠慮なく教えてくれ」
「はい、ありがとうござ、ぃ……ッ」

 嬉しい気持ちのままにお礼を言おうとしたところで、不意に左胸に痛みが走り、言葉を切ってしまう。そういえば、謎の息苦しさが増している気がする。

「……ミカ? どうした?」
「いえ、大丈夫です、たぶん……」
「顔色が悪い。無理はするな。どんな異変があるのだ?」
「一瞬だけ心臓に痛みが走った感じがして……、でも、それはすぐに治まりました。今はもう、なんともありません」
「そうか。……他には?」
「えっと……、少し息苦しい感じがします。普通に呼吸は出来ますけど、さっきよりは重たく感じるというか。でも、そんなに心配していただくようなものじゃありません。ありがとうございます、マティ様」

 心配させたくなくて笑いかけてみたけれど、マティ様の端正な顔は曇ったままだ。クックとポッポも心なしか不安そうな表情で、僕の腹部にぴっとりと寄り添ってきている。
 クールな外見と裏腹に心優しい第三王子は、そっと頭を撫でてきた。

「やはり、魔力を持たない身では、何かが作用して生きづらい世界なのかもしれぬな。その確証の一端を得られただけでも、私もカイも助かる。祭りに参加できないのは残念かもしれぬが、カミュを呼んでもう帰るか?」
「……いえ、ご迷惑でなければ、このままご一緒させてください。僕はまだ、全然平気です」

 お祭りが楽しみという気持ち以上に、マティ様とカイ様のために、もう少し頑張ってみたいという気持ちが大きい。僕はまだ、ほんの少し息苦しいだけだ。
 もしかしたら、王都に近付くにつれて不快感が増していくのかもしれないけれど、それは即ちカイ様にとっても危険が大きい恐れがあるということにもなる。危険性が高いのならば、それは事前に把握しておくべきだし、王都にあるお城で暮らす王子様なら尚更のことだろう。魔力を持たないという、この世界にとって稀有な存在はなかなか見つからないだろうし、限界まで耐えて協力したい。

「迷惑なものか。ありがとう、ミカ。だが、くれぐれも過剰な無理はしないでくれ。……それは、私の心が苦しい」
「はい。倒れるまでの無理はしないとお約束します」

 気遣わしげなアイスブルーの瞳を見つめて、僕はしっかり頷いた。
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