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帰ってきたローブの悪魔〈ダンジョン協会職員ハル視点〉
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世の中のみなさんこんにちは。
ダンジョン協会の下っ端職員をやらせて貰っているハルです。
実はギルド職員を10年やっているのですが、そうは思われません。
そして、良く貧乏くじを引きます。
思えば、この不運は魔力測定の時から始まったでしょうか。
無属性魔法とはいえ「鑑定」魔法が使える事が分かった瞬間家族は狂気乱舞しました。
商人等には強い魔法なのでね。
それが喜んだのも束の間。僕の魔法では名称までしか分かりませんでした。
……つまり魔石を鑑定すれば「魔石(小)」と出て終わりです。何属性が付与されているとか中身までは分かりません。「鑑定」を持っていなくても名称くらい大体見りゃ分かりますので意味ないですね。
そんなこんなで、残念な属性は置いておき頭は悪くなかったので、ダンジョン協会へ就職。
堅実に働いてきたと思いますが、厄介な攻略者は僕の担当とでも決まっているのでしょうか。
なぜかいつも最終的には僕によく来るのですが……。
今回の困った攻略者は通称“ローブの悪魔”です。
受付に来てくれるリューイ君はとても可愛らしい声をしていますし、とても素直です。
ローブであまり顔は見えませんが、とても良い子そうです。
態度だけは。
はい、そんな可愛らしい声で、毎回意味不明なダンジョンカードを提出してくれるのです。
取り敢えず、自分の頭に異常はないか目にも異常はないか、渡されたカードは本当にダンジョンカードかを確認します。
ちなみに僕の属性魔法を発動させても鑑定結果は「ダンジョンカード」なので偽物ではなくダンジョンカードなのでしょう。
と、言うのも、このローブの悪魔達1日でダンジョン攻略を2階層も進めるのです。
ご存知の通り地下1~9階は草原エリアであり、とてつもなく広いです。
既に無料公開されている地図があるからと言って1日に2階層攻略……普通はあり得ませんからね。
彼らはダンジョンをいかに最速で攻略するかの競技にでも出ているのでしょうか?
それにしては、きっちりお休みはとっているようですが。
そして、納品物の少なさ。まぁ、最速で移動しているようですから、しょうがないのですが納品されないとこちらも商売上がったりです。
と、思ったのがいけなかったのでしょうか?
ある日から突然納品物が増えたのです。
その怪異が起こった初めての日は私はお休みだったのですが、地下20階のボス討伐記録が2回あったと、職員内では大変騒ぎになりました。
そして、次から高ランクの魔石大量納品。
ローブの悪魔の由来ですね。
このダンジョン協会は出来て長いですが、上級ダンジョンという事もあり、死亡率も高くあまり人気ではありませんでした。
一部の高ランク攻略者と、国の騎士団の演習場所とする事でスタンピートを逃れてきました。
ただ、王都にも中級のダンジョンがありますからね。
国の騎士団派遣は国にとっても領主にとっても苦く、いつしかダンジョンコアの破壊でダンジョンを閉じる事を目標とするようになっておりました。
一般的にはダンジョンはとても利益に繋がりますが、管理しきれない場合は害悪でしかないのです。
それが、ここ近年領主様の画期的な仕組みの導入で急速に発展し、ダンジョンの管理も問題なく行えるようになったのです。
噂だと、領主の溺愛する末息子のアイディアだとか……まぁ本当であれば当時5歳位の筈なのであくまで噂でしょうが。
話を戻しますが、そんな今では王都に次ぐ人気なダンジョンですが、その資金力がローブの悪魔達のせいで危ぶまれたのです!!
勿論当協会ではダンジョン攻略者が滞りなく精算できるように資金は豊富に用意しています。
毎日、どこかのパーティが地下20階のボス部屋をクリアしても大丈夫な位は資金を用意しているのです。
ただ実際ボス部屋をクリアする攻略者達は少なく、週に1組いれば多い方で、一番多い層は地下1~9階の為、そこまで高額納品になる事はありませんが。
そ・れ・が、ローブの悪魔達は半月もしないうちになんと34回もボス部屋をクリアしてきたのです!
やっとまともに納品してくれたと思ったら、今度は納品しすぎで、みるみる資金が減っていきます。
このダンジョンの攻略者はあのローブの悪魔達だけでは無いですからね!
まだ換金不能とはなりませんが、このままずっと続けられたらと考えると……。
職員一同毎日胃がキリキリしていましたとも、納品はありがたい事ではあるので余計に。
もちろん領主様にも速攻で連絡しましたとも。調査が入るらしいのですが、当然すぐとはいかず結局、くじ引きで負けた精算担当者がお休みするように言って危機は脱しましたけど。
素直な少年で良かったです。ダンジョン攻略者は血の気が多い方が多いですからね。精算担当者は後ろのお付きの人に激昂されたらどうしようか終始震えていたそうですが幸い怒ることなく事態はおさまったと。
そして、お休みから帰ってきたローブの悪魔達の現在。
「あの、お疲れの所申し訳無いのですが、討伐リストにのっていて、納品物が一つも無いのはちょっと……。申し訳無いですがお持ちの魔法収納鞄を見せていただけますか?」
この悪魔達はなんでこうも極端なのでしょうか。
珍しく早朝からダンジョン攻略に赴いたなと思えば夜帰ってきました。彼等にしては長丁場でしたがダンジョンカードを確認すれば、地下21・22階を攻略してきたようです。
また1日で2階層……
そして問題は今回納品物が無いことです。
実はダンジョン協会のダンジョンカード無料や各種福利厚生は納品物を安く買い取る事で売る時の価格差をダンジョン協会の運営資金にあてています。
だから、市場価格の方が高く自分達で売った方が高いのも分かるので、ある程度納品してくれていれば、多少は懐に入れても見逃していますが、討伐記録はあるのに納品が何も無しは流石に見逃せません。
まぁ、理由は1日で攻略したからだと分かりますが。
もうお昼の時点で帰還する攻略者達の話で”地下21階にもサンタークロウス”が現れたと噂になっていましたからね……。
と、言うわけで個室へ移動し、私物の魔法収納鞄を見せていただきました。
まずはローブを取った2人の大きい方が超絶美形でビックリしました。
そして、小柄な方はお嬢さんとも思えるとても可愛いらしい子供でした。
あのローブの悪魔の小さい方は天使でした……。
閑話休題。
お付きの大きい人の魔法収納鞄の中身は良いのです。問題は少年の方の鞄の中身です。
本当出来心だったのです。少年が使わなさそうな剣が魔法収納鞄に入っているなと思ってさりげなく鑑定したら「ミスリルの片手剣」と出ました。
……めちゃくちゃレアな武器です。
現在新たに制作出来る者はおらず、古代遺跡からの出土やダンジョンでのドロップでしか手に入らない筈のものです。
出土されたり、ドロップした場合権利は取得者にありますが、国への報告義務はあったような……
まぁ、ダンジョンカードにそれらしい記載は無いのでドロップ品では無いのでしょう。
もう余計な事には首を突っ込まないようにします。
特に何か隠している訳でも無さそうですので、検査は終了です。
また明日からの胃がやられそうですが、早く調査の方が来てくれる事を祈ります。
ダンジョン協会の下っ端職員をやらせて貰っているハルです。
実はギルド職員を10年やっているのですが、そうは思われません。
そして、良く貧乏くじを引きます。
思えば、この不運は魔力測定の時から始まったでしょうか。
無属性魔法とはいえ「鑑定」魔法が使える事が分かった瞬間家族は狂気乱舞しました。
商人等には強い魔法なのでね。
それが喜んだのも束の間。僕の魔法では名称までしか分かりませんでした。
……つまり魔石を鑑定すれば「魔石(小)」と出て終わりです。何属性が付与されているとか中身までは分かりません。「鑑定」を持っていなくても名称くらい大体見りゃ分かりますので意味ないですね。
そんなこんなで、残念な属性は置いておき頭は悪くなかったので、ダンジョン協会へ就職。
堅実に働いてきたと思いますが、厄介な攻略者は僕の担当とでも決まっているのでしょうか。
なぜかいつも最終的には僕によく来るのですが……。
今回の困った攻略者は通称“ローブの悪魔”です。
受付に来てくれるリューイ君はとても可愛らしい声をしていますし、とても素直です。
ローブであまり顔は見えませんが、とても良い子そうです。
態度だけは。
はい、そんな可愛らしい声で、毎回意味不明なダンジョンカードを提出してくれるのです。
取り敢えず、自分の頭に異常はないか目にも異常はないか、渡されたカードは本当にダンジョンカードかを確認します。
ちなみに僕の属性魔法を発動させても鑑定結果は「ダンジョンカード」なので偽物ではなくダンジョンカードなのでしょう。
と、言うのも、このローブの悪魔達1日でダンジョン攻略を2階層も進めるのです。
ご存知の通り地下1~9階は草原エリアであり、とてつもなく広いです。
既に無料公開されている地図があるからと言って1日に2階層攻略……普通はあり得ませんからね。
彼らはダンジョンをいかに最速で攻略するかの競技にでも出ているのでしょうか?
それにしては、きっちりお休みはとっているようですが。
そして、納品物の少なさ。まぁ、最速で移動しているようですから、しょうがないのですが納品されないとこちらも商売上がったりです。
と、思ったのがいけなかったのでしょうか?
ある日から突然納品物が増えたのです。
その怪異が起こった初めての日は私はお休みだったのですが、地下20階のボス討伐記録が2回あったと、職員内では大変騒ぎになりました。
そして、次から高ランクの魔石大量納品。
ローブの悪魔の由来ですね。
このダンジョン協会は出来て長いですが、上級ダンジョンという事もあり、死亡率も高くあまり人気ではありませんでした。
一部の高ランク攻略者と、国の騎士団の演習場所とする事でスタンピートを逃れてきました。
ただ、王都にも中級のダンジョンがありますからね。
国の騎士団派遣は国にとっても領主にとっても苦く、いつしかダンジョンコアの破壊でダンジョンを閉じる事を目標とするようになっておりました。
一般的にはダンジョンはとても利益に繋がりますが、管理しきれない場合は害悪でしかないのです。
それが、ここ近年領主様の画期的な仕組みの導入で急速に発展し、ダンジョンの管理も問題なく行えるようになったのです。
噂だと、領主の溺愛する末息子のアイディアだとか……まぁ本当であれば当時5歳位の筈なのであくまで噂でしょうが。
話を戻しますが、そんな今では王都に次ぐ人気なダンジョンですが、その資金力がローブの悪魔達のせいで危ぶまれたのです!!
勿論当協会ではダンジョン攻略者が滞りなく精算できるように資金は豊富に用意しています。
毎日、どこかのパーティが地下20階のボス部屋をクリアしても大丈夫な位は資金を用意しているのです。
ただ実際ボス部屋をクリアする攻略者達は少なく、週に1組いれば多い方で、一番多い層は地下1~9階の為、そこまで高額納品になる事はありませんが。
そ・れ・が、ローブの悪魔達は半月もしないうちになんと34回もボス部屋をクリアしてきたのです!
やっとまともに納品してくれたと思ったら、今度は納品しすぎで、みるみる資金が減っていきます。
このダンジョンの攻略者はあのローブの悪魔達だけでは無いですからね!
まだ換金不能とはなりませんが、このままずっと続けられたらと考えると……。
職員一同毎日胃がキリキリしていましたとも、納品はありがたい事ではあるので余計に。
もちろん領主様にも速攻で連絡しましたとも。調査が入るらしいのですが、当然すぐとはいかず結局、くじ引きで負けた精算担当者がお休みするように言って危機は脱しましたけど。
素直な少年で良かったです。ダンジョン攻略者は血の気が多い方が多いですからね。精算担当者は後ろのお付きの人に激昂されたらどうしようか終始震えていたそうですが幸い怒ることなく事態はおさまったと。
そして、お休みから帰ってきたローブの悪魔達の現在。
「あの、お疲れの所申し訳無いのですが、討伐リストにのっていて、納品物が一つも無いのはちょっと……。申し訳無いですがお持ちの魔法収納鞄を見せていただけますか?」
この悪魔達はなんでこうも極端なのでしょうか。
珍しく早朝からダンジョン攻略に赴いたなと思えば夜帰ってきました。彼等にしては長丁場でしたがダンジョンカードを確認すれば、地下21・22階を攻略してきたようです。
また1日で2階層……
そして問題は今回納品物が無いことです。
実はダンジョン協会のダンジョンカード無料や各種福利厚生は納品物を安く買い取る事で売る時の価格差をダンジョン協会の運営資金にあてています。
だから、市場価格の方が高く自分達で売った方が高いのも分かるので、ある程度納品してくれていれば、多少は懐に入れても見逃していますが、討伐記録はあるのに納品が何も無しは流石に見逃せません。
まぁ、理由は1日で攻略したからだと分かりますが。
もうお昼の時点で帰還する攻略者達の話で”地下21階にもサンタークロウス”が現れたと噂になっていましたからね……。
と、言うわけで個室へ移動し、私物の魔法収納鞄を見せていただきました。
まずはローブを取った2人の大きい方が超絶美形でビックリしました。
そして、小柄な方はお嬢さんとも思えるとても可愛いらしい子供でした。
あのローブの悪魔の小さい方は天使でした……。
閑話休題。
お付きの大きい人の魔法収納鞄の中身は良いのです。問題は少年の方の鞄の中身です。
本当出来心だったのです。少年が使わなさそうな剣が魔法収納鞄に入っているなと思ってさりげなく鑑定したら「ミスリルの片手剣」と出ました。
……めちゃくちゃレアな武器です。
現在新たに制作出来る者はおらず、古代遺跡からの出土やダンジョンでのドロップでしか手に入らない筈のものです。
出土されたり、ドロップした場合権利は取得者にありますが、国への報告義務はあったような……
まぁ、ダンジョンカードにそれらしい記載は無いのでドロップ品では無いのでしょう。
もう余計な事には首を突っ込まないようにします。
特に何か隠している訳でも無さそうですので、検査は終了です。
また明日からの胃がやられそうですが、早く調査の方が来てくれる事を祈ります。
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