セピア色の秘め事

樹木緑

文字の大きさ
25 / 52

第25話 やって来た人

しおりを挟む
「モーニング!」

朝日を浴びた仁がキッチンで、
コーヒーを片手にタブレットをなにやらしかっりと読んでいた。

シャワーをしたばかりなのか、
彼の髪はまだ濡れたままでローブを羽織っている姿は
アメリカで見るどんな映画よりも様になっていた。

“ドキン”

と高鳴る心臓に、

“ちょっと待って、
つい昨日“ジュン”を探してってお願いしたばかりなのに、
何ドキンとしてるの?!”

そう思いながらもう一度、
仁のキッチンに立つ姿をチラッと見てみた。

「スマン、シャワーを借りた。

ローブも使わせてもらってる」

「う、うん、大丈夫だよ!

サイズが合ってよかったよ!」

少し焦って上ずった声に、
仁が僕の方を見て口の角を少し上げた。

その顔に更にノックダウンとまでは来ないけど、
かなり焦るほどには心臓が弾いた。

「あ…… ジ…… 仁って天パなの?

普通はそんなにクルってしてないよね?!」

何か話してないと、
自分の理性が保てなさそうだ。

ずっと小さい頃からジュンが好きなのに、
仁を見るとその思いが覆されそうになる。

“でも何で仁はこんなにキラキラしてるんだろう……”

会ったときから仁の周りに見える光は
僕をいつも困惑させていた。

「ああ、俺の髪だな。

まあ、家でこれが出たのが俺ばかりってのがな……

光の高祖母がフワフワ・クルクルとし髪だったそうだ。

きっと隔世遺伝だろうな。

この濡れた髪を見るたびに、
やっぱり俺達ってDNAをシェアしてるんだなって思うよ。

ぬれたときはこうでも、
乾くとほとんどストレートに戻るんだ」

そう言って仁はクスッと笑った。

“そう言えばジュンもフワフワのクルクルだったな……”

写真の記憶をたどっていると、

「お前もコーヒー飲むか?

それにしてもいい豆使ってるんだな」

不意にそう言われ、

「へッ?」

として仁を見上げた。

「豆だよ。

お前、ちゃんと自分で引いてドリップさせるんだな」

仁がコーヒーメーカーを指でトントンと弾きながら
そう尋ねた。

「ああ、コーヒーだね。

うん、兄さんが大のコーヒー好きでね、
忙しい彼の代わりに僕がいつもコーヒーを入れてたんだよ。

その所為かな?

僕も今では兄さんと同じ舌になっちゃって……」

「そっか、サムには兄貴が居たんだな。

兄貴とは仲良いのか?」

「まあ、悪くは無いけど……

兄さんは凄く優秀だから凄く忙しい人で……

いつもドンくさい僕の尻拭いばかりさせちゃって……」

そう気まずそうに言いながら頭を掻くと、

「お前はドンくさくなんかないよ。

一人でこうやって日本までやって来て
ちゃんとやってるじゃないか。

まあ、危なっかしい所が無いと言えば嘘になるけどな。

なんせ初めて会った時が、

“一目惚れしました、結婚して下さい!”

だからな。

お前、声かけたのが俺達だったから良かったものの、
これがヤバい奴らだったら今頃外国に売られてるかもだぞ?」

そう言って仁が僕のオデコを人差し指で押した。

「エへへ、面目ない。

仁の言う事もごもっともです。

でも本当に声を掛けたのが君らで良かったよ」

テレながらそう言うと、

「なあ、知ってたか?

アメリカから偉い人物が来日したらしいな」

と急に仁が言ったので、
僕はまた

“へッ?”

としたようにして彼を見上げた。

「ほら、この記事見て見ろよ、
知ってるか? この人物。

サイエンスの世界ではかなり著名な人なんだぞ?」

そう言って仁の渡したタブレットには、

“天才科学者トーマス・ディキンズ博士お忍び来日”

とあった。

“兄さん……”

そこにあった写真と名前はまさしく僕の身代わりをしている兄で、
まさか彼まで乗り出してくるとは思わなかった。

その時、

“ピンポーン”

と、インターホンのなる音がした。

僕は仁と目を見合わせると、
インターホンの方に目を向けた。

「待て、俺が出る。

昨日の奴だとは思わないけど、
お前はここで待ってろ」

そう言って仁がインターホンの方へと歩いて行った。

「はい、どちら様?」

仁の声がするのと一緒に、

「お前こそ誰だ?

ここは弟の部屋じゃないのか?」

そう言った声が聞こえてきた。

僕が慌ててインターホンの所へ駆け寄ると、
仁が僕を訝し気に見ながら、

「これ、今タブレットで見た科学者じゃないのか?

もしかして……これがお前の兄貴なのか?」

そう言って、またインターホンに移る人物に目をやった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

36.8℃

月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。 ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。 近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。 制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。 転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。 36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。 香りと距離、運命、そして選択の物語。

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

鳥籠の夢

hina
BL
広大な帝国の属国になった小国の第七王子は帝国の若き皇帝に輿入れすることになる。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

愛しい番に愛されたいオメガなボクの奮闘記

天田れおぽん
BL
 ボク、アイリス・ロックハートは愛しい番であるオズワルドと出会った。  だけどオズワルドには初恋の人がいる。  でもボクは負けない。  ボクは愛しいオズワルドの唯一になるため、番のオメガであることに甘えることなく頑張るんだっ! ※「可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない」のオズワルド君の番の物語です。 ※他サイトでも連載中

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。 オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。

処理中です...