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第21話ー水沢 瑠璃
しおりを挟むークライス邸のパーティーの前日ー
(ーおかしい)
"光の聖女と5人の騎士"は何度もプレイしたけど、こんなストーリーはなかったはずだ。
女神の気まぐれにより、水沢瑠璃はこの世界の主人公に転生した。覚醒したのは10歳の時だ。
13歳まで水沢瑠璃として地球で過ごし、後に異世界へ送られ聖女ルリ・ミズサワとして過ごす。
覚醒した時、女神は言った。瑠璃はこの世界を5回繰り返すことが出来る。何度目の生でもいいから、瑠璃が決めた生を最後まで生きなさい。と。
現在、5度目の人生を送っている。生を繰り返すには、学園の卒業までに女神像を壊すことだ。そうするとまた10歳に立ち戻る。
瑠璃は生前、病院で過ごした記憶しかない。ベットに座り、ゲームばかりしていた。"光の聖女と5人の騎士"は、瑠璃が大好きだったゲームだ。
何度もプレイし、5人の攻略対象すべて攻略した。
なので、知識を活かし今までの4度の生ではそれぞれ攻略できて楽しかった。
楽しくて、これで終わりには出来なかった。
5度目になる今回の生での狙いは、自分が1番大好きだったキャラクターであり、隠しキャラでもある風氷の騎士エリアル・ラザインだ。
前回の生でも少し狙ってみようかな?と思ったのだが、うまくいかなかった。
今生でも、こんなにうまくいかないとは。
そもそも、エリアル・ラザインがゲームのような行動をとってくれない。なのでゲームと同じように動けなかった。
性格も、違う気がする。
ゲームでは風属性にも関わらず、"氷の"と称されるほど他者に冷たいキャラクターだった。たしかに冷たい印象はあるが、氷と称されるほどではないし、聖女にだけ優しさを見せる設定だったはずが、婚約者にその優しさが向けられている。
その婚約者の性格もゲームと違い過ぎる。
隠しキャラであるエリアル・ラザインの婚約者、ジュナ・クライス。彼女はゲーム序盤で闇魔法に目覚め、聖女の最大の敵になる。エリアルルートではもちろん、他のルートでもラスボス的存在なのだ。
思えば何度か送ってきた生で、登場人物の性格にズレはあった。
2度目の生など、瑠璃自身が破天荒に振る舞ったせいか、悪役に位置づけられている令嬢みんなの性格がゲームと全く違っていた。最終的にラスボスであるジュナ・クライスが崇められる、謎の展開になったりした。
なのでそれからは冷静に、ゲームのストーリーに沿って進んだ。
今生はおかしいことが多すぎる。
毎回、主人公補正なのか攻略対象は基本的に瑠璃に魅入るはずなのに、それすらない。
王太子のエドウィンにも、教授のアレクにも、魅入られている気が全くしない。
(なんなの。アンバーには私の魅了は効いているのに)
今生での学園生活で、エリアル攻略は諦めた。性格が違い過ぎて、瑠璃の手に負えない。ならば、と前回の生での王太子攻略が微妙だった気がしたので、王太子ルートに切り替えたのだ。
そして王宮で過ごして数日、瑠璃はこんなにも手応えを感じないことに愕然とした。
(おかしいおかしいおかしい。どういうことなの。どうしてエドウィンの反応までおかしいの)
与えられた豪華な客室で、瑠璃は天蓋のベッドに顔を埋めた。
「これで最後なのに···。何がいけなかったの」
ふと、ジュナ・クライスの顔が浮かんだ。
彼女は最初から異質だった。悪役にしては性格が弱々しく、闇属性にまだ目覚めてもいない。
(そういえば私に怯えたように振る舞っていたわね。何なの。悪役が聖女に怯えるなんておかしいのよ)
「エリアルにずっと守ってもらって、主人公きどりなのかしら」
だんだんイライラしてきて拳を握り締めると、いつもの明るい魔力とは別の力がみなぎってきた。
「そうだ。ジュナ・クライスが闇属性に目覚めれば、性格が変わるんじゃないかしら。ストーリーも正常に戻るかも」
闇の獣の隷属たちが、ジュナの周囲を彷徨いているのは知っていた。
「そろそろ、クライス邸のパーティーが開催される時期だわ。ーあ、たしか王太子の婚約者も居るはずね。あの子もついでに消えてもらおうかな」
ふと視線を上げると、部屋の隅に黒い獣が居た。
何度目かの生で、ジュナ・クライスが操っていた獣に似ている。
「闇の隷属?私にも操れるの?」
瑠璃は怖れもせず聞いた。この世界が自分にとって不利なことをするばずがないと信じているからだ。
獣は、にやりと微笑ったように見えた。すごく禍々しかったが、瑠璃には全く気にならない。
瑠璃は微笑み、獣を送った。
その微笑みは、とても聖女の微笑みとは言えないものだった。
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