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第5話ー攻防
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鑑賞どころではなかった。ロワナはそわそわしながら第一幕が降りるのを待ち、幕が降りたと同時に姉に詰め寄った。
「姉さま!演者様たちに会いに行ってみませんこと?」
「えっ?はしたなくないかしら····」
とは言うものの、アリアナも興味があるようで、ロワナと一緒に席を立った。
劇場を出て、演者が休憩しているであろうテントへ向かう。
(もっと離れた方がいいかしら)
事件の内容を詳しく聞けなかったことに不安を抱き続きつつ、ロワナはアリアナの手を引いて歩いた。
ドーーン!!!
劇場から爆発音が響いた。ロワナとアリアナの護衛騎士たちがすぐに周囲を警戒する。
(ノクティスのことだから、未然に防ぐと思っていたのに)
まだ子供であったことを失念していた。他の観客は無事だろうか。
「殿下!こちらにいらっしゃいましたか」
劇場からノクティスの兄、イグナントが飛び出て来た。
「小公爵!何があったのです?」
アリアナが慌てて聞く。
「先ほどの爆発音は空砲です」
「空砲?では会場に居た方々は無事なの?」
ロワナが口をはさむ。
イグナントは驚いて一歩下がった。踏んでしまうとでも思ったのか?
膝を付いて、にっこり微笑っていった。
「皆さんご無事です。そのお年で帝国民の心配をしてくださるなんて、ご立派です」
激しい子ども扱いに、ロワナは恥ずかしくなった。さらにイグナントはロワナを抱き上げた。
「ですが、劇場は大変混乱しております。危険なのでこのまま皇城へもどりましょう」
「ノクティス、ノクティスはどうしたの?」
「弟は早々に帰りました。どうやら飽きたようで」
有無を言わさず連れ戻されながら、ロワナは必死で抵抗した。
「お、降ろしてください!小公爵、歩けますから」
(あの状況でノクティスが帰るなんてありえないわ)
ノクティスも心配だし、抱えられて恥ずかしいのもありロワナは泣きたくなった。
「降ろして差し上げてください兄上」
後ろから聞こえた声の主を、ロワナはイグナントの肩越しに見た。
「ノクティス、お前帰ったのではなかったのか?」
「暇だったので近くを散歩していただけです」
降ろされたロワナは、ササッとノクティスの後ろに周った。
「姉上は小公爵とお戻りください!私は公子の馬車に乗ります」
頑なな声に、3人はきょとんとロワナを見る。
「無理やり抱っこしてしまい申し訳ありませんでした」
「ロワナも年頃の女の子ですから。お気になさらないでください」
しょんぼり言うイグナントに、アリアナがフォローする。
ノクティスは後ろに周ったロワナの手を握り、笑顔で言った。
「どうやら嫌われてしまったようですね、兄上。ロワナ様は私がお送りするのでご安心ください」
そう言って馬車に一緒に乗り込んだ。
❋❋❋❋❋❋
「公子、何をしたのですか?」
「何のことでしょう?」
先日の自分と同じ返答に、ロワナはこめかみをピクピクさせた。
「とぼけないでください。あの事故をどうやって止めたのですか?今回は魔素はどうなったので?」
ノクティスの瞳がギラリと光り、口端を上げた。
「おや?回帰したことはもう隠さないのですね」
ロワナはジロリと睨んだ。
「回帰したことは認めます。なので説明してください」
「分かりました。今日の事件は回帰前ではアリアナ様が魔素中毒を起こした事件です。事件自体をなかったことにしてしまうと、この先が予測不可能になってしまうので、とりあえず魔素の流出を止めました。犯行の目的は帝都の混乱だったようです。端的に言えばテロですね」
冷えた瞳でロワナを見ながら、ノクティスは淡々と説明した。
「ど、どうやって···」
自分はまだ6歳だが、ノクティスだってまだ10歳だ。子供の彼だけでここまで出来るとは思えない。
「いくつかテロ組織の内部に人を入れているので」
にこりと口だけで微笑って言った。目は冷たいままだ。
とても納得できないので、ロワナの開いた口は塞がらない。
「私には4年間の準備期間がありましたから」
回帰前は快活だった赤銅色の瞳が、常に冷たく光っている。
馬車が止まった。皇城へ着いたようだ。
ノクティスは先に降りてロワナに手を差し出した。ロワナは大人しく手を取り馬車を降りる。馬車の側にエリシャが待機していた。
「ロワナ様」
呼ばれて振り返る。ノクティスは頭を下げた。
「これでアリアナ様の危機は去りました。ロワナ様も健やかにお過ごしください」
どこか寂しそうなノクティスをロワナはぼんやり眺めた。
「ええ、あなたも···」
そう答えると、エリシャに手を引かれ皇城に入った。
そしてその後、ロワナはノクティスには会わなかった。自分から会いに行かない限り、接点がないのだ。
成人もしておらず、夜会にも参加しないので会う機会はない。ロワナは寂しさを鍛錬と勉強につぎ込んだ。
「姉さま!演者様たちに会いに行ってみませんこと?」
「えっ?はしたなくないかしら····」
とは言うものの、アリアナも興味があるようで、ロワナと一緒に席を立った。
劇場を出て、演者が休憩しているであろうテントへ向かう。
(もっと離れた方がいいかしら)
事件の内容を詳しく聞けなかったことに不安を抱き続きつつ、ロワナはアリアナの手を引いて歩いた。
ドーーン!!!
劇場から爆発音が響いた。ロワナとアリアナの護衛騎士たちがすぐに周囲を警戒する。
(ノクティスのことだから、未然に防ぐと思っていたのに)
まだ子供であったことを失念していた。他の観客は無事だろうか。
「殿下!こちらにいらっしゃいましたか」
劇場からノクティスの兄、イグナントが飛び出て来た。
「小公爵!何があったのです?」
アリアナが慌てて聞く。
「先ほどの爆発音は空砲です」
「空砲?では会場に居た方々は無事なの?」
ロワナが口をはさむ。
イグナントは驚いて一歩下がった。踏んでしまうとでも思ったのか?
膝を付いて、にっこり微笑っていった。
「皆さんご無事です。そのお年で帝国民の心配をしてくださるなんて、ご立派です」
激しい子ども扱いに、ロワナは恥ずかしくなった。さらにイグナントはロワナを抱き上げた。
「ですが、劇場は大変混乱しております。危険なのでこのまま皇城へもどりましょう」
「ノクティス、ノクティスはどうしたの?」
「弟は早々に帰りました。どうやら飽きたようで」
有無を言わさず連れ戻されながら、ロワナは必死で抵抗した。
「お、降ろしてください!小公爵、歩けますから」
(あの状況でノクティスが帰るなんてありえないわ)
ノクティスも心配だし、抱えられて恥ずかしいのもありロワナは泣きたくなった。
「降ろして差し上げてください兄上」
後ろから聞こえた声の主を、ロワナはイグナントの肩越しに見た。
「ノクティス、お前帰ったのではなかったのか?」
「暇だったので近くを散歩していただけです」
降ろされたロワナは、ササッとノクティスの後ろに周った。
「姉上は小公爵とお戻りください!私は公子の馬車に乗ります」
頑なな声に、3人はきょとんとロワナを見る。
「無理やり抱っこしてしまい申し訳ありませんでした」
「ロワナも年頃の女の子ですから。お気になさらないでください」
しょんぼり言うイグナントに、アリアナがフォローする。
ノクティスは後ろに周ったロワナの手を握り、笑顔で言った。
「どうやら嫌われてしまったようですね、兄上。ロワナ様は私がお送りするのでご安心ください」
そう言って馬車に一緒に乗り込んだ。
❋❋❋❋❋❋
「公子、何をしたのですか?」
「何のことでしょう?」
先日の自分と同じ返答に、ロワナはこめかみをピクピクさせた。
「とぼけないでください。あの事故をどうやって止めたのですか?今回は魔素はどうなったので?」
ノクティスの瞳がギラリと光り、口端を上げた。
「おや?回帰したことはもう隠さないのですね」
ロワナはジロリと睨んだ。
「回帰したことは認めます。なので説明してください」
「分かりました。今日の事件は回帰前ではアリアナ様が魔素中毒を起こした事件です。事件自体をなかったことにしてしまうと、この先が予測不可能になってしまうので、とりあえず魔素の流出を止めました。犯行の目的は帝都の混乱だったようです。端的に言えばテロですね」
冷えた瞳でロワナを見ながら、ノクティスは淡々と説明した。
「ど、どうやって···」
自分はまだ6歳だが、ノクティスだってまだ10歳だ。子供の彼だけでここまで出来るとは思えない。
「いくつかテロ組織の内部に人を入れているので」
にこりと口だけで微笑って言った。目は冷たいままだ。
とても納得できないので、ロワナの開いた口は塞がらない。
「私には4年間の準備期間がありましたから」
回帰前は快活だった赤銅色の瞳が、常に冷たく光っている。
馬車が止まった。皇城へ着いたようだ。
ノクティスは先に降りてロワナに手を差し出した。ロワナは大人しく手を取り馬車を降りる。馬車の側にエリシャが待機していた。
「ロワナ様」
呼ばれて振り返る。ノクティスは頭を下げた。
「これでアリアナ様の危機は去りました。ロワナ様も健やかにお過ごしください」
どこか寂しそうなノクティスをロワナはぼんやり眺めた。
「ええ、あなたも···」
そう答えると、エリシャに手を引かれ皇城に入った。
そしてその後、ロワナはノクティスには会わなかった。自分から会いに行かない限り、接点がないのだ。
成人もしておらず、夜会にも参加しないので会う機会はない。ロワナは寂しさを鍛錬と勉強につぎ込んだ。
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