幸せな10年でしたが、なかったことに致します。〜だから私に関わらないでください〜

織り子

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第12話ー不協和音

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ロワナに護衛を付け分かれたあと、衛兵を呼び見張りの数を増やすように指示していた。次期公爵であることは周知の事実なので、ノクティスの指示に従わない衛兵はいない。 

(立太子式の祝賀はまだ終日続く。城の衛兵はあてにならないな。オーガストに文句を言っておかねば)

人の気配がし、ノクティスは木の上に登って気配を抑えた。

現れたのはレバノンと、恐らく彼が国から連れてきた護衛だろう。3人連れている。

「ちっ、もう逃げているではないか!お前たちがトロトロしているからだ」

(なるほど。先ほどあっさり引いたのは、こいつらを連れて来るためか)

「まぁいい。収穫はあった。第ニ皇女、まだ若いが悪くない。近くにいないか探せ」

(―ふざけたことを)
ノクティスは久しぶりに感情を抑えるのに苦労した。殺意が溢れ出そうだ。

(まだ、まだ早い。今こいつを殺す訳にはいかない―いや、そうか?いいんじゃないか今殺しても····)


「王太子殿下?こちらで何を?」
巡回に来た衛兵が声をかけた。

「興が冷めたな。もういい行くぞ」
レバノンは騎士たちを連れ、今度こそ会場に戻ったようだ。ノクティスは長めのため息をついた。

(危なかった)
殺してしまうところだった。回帰前と同じなら、レバノンはあと2年待てば王になる。皇帝に献上するならば、王太子の首ではなく、王の首でなければ。

だが、計画は前倒しにした方が良さそうだ。
(王冠を被った瞬間に首を落としてもいい)
レバノンがロワナに興味を持ってしまった。放っておくなど、とても我慢できない。





❉❉❉❉❉❉❉

立太子式から二月後、隣国のアデラジャの王が崩御した。元々床に伏していたので、誰も驚かなかった。
新王が即位して早々、アデラジャはアルカダイアに宣戦布告し侵略を始めた。


「アデラジャが?」
ロワナは報告を受けて、皇帝の執務室に急いだ。アデラジャに潜ませていた部下からの報せだ。皇帝も情報を掴んでいることだろう。どう動くのか確かめたかった。

執務室には高位貴族、軍の総司令官の姿もあった。13歳のロワナが入るには気が引ける。ロワナは廊下で待つことにした。

「何を考えているんだアデラジャは」
「状況は」
「すでに国境は越えたとのことです。数は2万」
「ヴァルグレイス公爵が1万の軍を率いて出陣した模様です」
「1万?急なことだったのによく集めたな」

(ノクティスも出陣してるのかしら。前はこんなことは起こらなかったのに)
王太子だったレバノンが即位するのも、回帰前より早い。それだけでなく、まさか戦争を仕掛けてくるとは。

「ロワナ?」
振り返ると、甲冑に身を包んだオーガストが立っていた。
「お兄様、まさかお兄様も出陣されるの?」
「ああ。今、皇室騎士団を任されているのは私だからね。しかも友人の危機だ。黙ってはいられまい」

「私も付いて行かせてください」
オーガストは目を丸くし、すぐに目を細めた。
「駄目だ。遊びに行くわけではない」

いつもより低い声と、鋭い視線が回帰前のオーガストと重なり、ロワナの身体が強張る。

(あの頃とは違う。お兄様は私を心配している)
それでも、ロワナは引くわけにはいかない。
「もちろんです。遊びに行くわけではありません。お兄様も、私の実力をご存じでしょう?」

「ロワナ。訓練と実践では違う。訓練で君に敗北した者たちも、実践では君よりはるかに役に立つ」

オーガストはため息をついた。
「とはいえ、止めても後から付いてきそうだな。ーふむ」
その通りなので、ロワナは何も言えない。
「分かった。公爵領まで一緒に行こう。ロワナは公爵邸で後方支援をしてくれ。決して前線には来てはいけないよ。守れるなら連れて行こう」

「ありがとうございます!お兄様」
「陛下には私が言っておく。すぐに出発したいから準備をしておいで」

返事をして、自室に戻るロワナをオーガストは眺めた。

どうも末の妹は人一倍気にかかる。幼い頃から大人びた眼をしていた。
(戦場に行きたいなどと、あのような眼で言う13歳の姫などいるのか?) 

どれだけ優しくしても、時折自分に怯えた眼をすることも気にかかる。
ノクティスもそうだ。自分より歳下のはずなのに、大人と話している錯覚におちいる。オーガストは少し目を閉じて、ノクティスと会った時のことを思い出した。

母の執着にうんざりしていた頃、母が送った監視から2人で隠れていた時だ。母の間者を教えてくれたのもノクティスだった。

『何故そんなに僕にかまう?皇妃に目を付けられるだけで、お前にとって得はないだろう』
『あなたにまた片目を渡す訳にはいかないので。そうならないよう努力しているだけです』
『···?訳の分からないことを。ヴァルグレイスの3男は狂人だったのか?』
 

「ロワナにも問いただす必要があるな」
ポツリと言い、執務室のドアを叩いた。
まず皇帝を説得しなければ。自分と同じく、末の姫を溺愛している父が戦場に行くことを許可するだろうか。

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