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魔王の果実【第1話】
しおりを挟む”わしの名前はベルル・ユナイリ。ここ魔境薬方の女主人じゃ…。訳あってこの人間界で商売をしとる。さて…今日はどんなお客がくるのやら…。“
古びた建物に居眠りをする老婆がいた。看板には魔境薬方と書かれていた。
「ふぁあ…。どうも最近は不景気だねぇ…世の中どうなっちまたんだろうねぇ~。」
入口が開く音。
“カラン、カラン”
「うん!?お客かね?珍しい…。」
入口には小柄な帽子を被った男が立っていた。
「ちわ~ベル様~。」
「なんじゃ、メヒストかい!あたしゃ忙しいんだ!ひやかしなら帰っておくれ!」
“この男の名はメヒスト。わしの助手兼、召し使い兼、舎弟兼店員のはしくれみたいな…いわゆる何でも屋じゃな…。”
「えっ?忙しいんですか?そんな風には見えないけど…せっかくお客を連れて来たのに…。ベル様が忙しいんなら仕方な…。」
“バコッ!!”
ベルルの投げた灰皿がメヒストに当たる。
「痛っ!」
「先にいわんか!ボケ!」
「痛いなぁ~全く!暇なくせして、忙しいふりをするからでしょ!こんな優秀な舎弟がいながら…。ブツブツ…。」
「うるさいわい!誰が優秀な舎弟じゃ!ふらりと来てはタダ飯ばかり食って行きやがって!」
「そんなぁ~」
「で、どこにおるんじゃそのお客とは!」
ゆっくりと店の戸が開く。
「こんばんは…。」
そこには細身の顔立ちの綺麗な女性が。
「おぉ、さささ、我が魔境薬方へようこそ、夜泣き、夜尿症はもちろん打ち身、捻挫、更年期障害から精力増強、恋患いにはちとてまどるが…で、今日はどんな症状で?…」
女がうつむき加減で話す。
「実は…魔王…。魔王の果実を探してるんです!」
「!?…。おぬし…それをどこで知った…」
ベルルの表情が一変する。
「闇サイトの書き込みを見て…何でも…自分の願いがなんでもかなう果実があるって!…わたし、どうしてもそれが必要なんです!でも…普通の人じゃ絶対買うことが出来ないって…。お金なら!何とかします!わたしの…わたし…。ウウ…」
泣き崩れる女を見てベルルが何かを察した。
「ふむ…。さぞかし大事な願いみたいじゃな…。しかし…」
黙るベルルに不安になる女。
「こちらには…無いんですか?」
暫くの沈黙の後ベルルが口を開く。
「…。おぬし、それを何の為に使いたいのじゃ…。」
ベルルの一言に表情が憎しみへと変わる女。
「殺したい…。あの男を…私の全てを奪ったあの男を…。」
ベルルも心なしか気づいていた様でいた。
「やはり怨みか…。だが…殺して何が晴れる…。おぬしはまだ若い、やり直しがいくらでも…。」
「遅い…。私に残された時間はわずかしかないんです…。病気が進行していて、気付いた時には手遅れでした…。女の幸せを踏みにじらた挙げ句の果てが死だなんて…。」
「病か…ふむ…。わかった…。処方しよう…。」
簡単に言うベルルに呆気にとられる女。
「えっ?あるんですか!?」
淡々と話すベルルの表情が更におぞましくなる。
「確かに果実はある…。だがお金はいらんよ…。但し、ひとつ条件がある…。」
「な、何ですか?条件って…」
ニヤリと笑うベルルの表情。
「…。その残された命を貰う…。それが条件じゃ。」
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「!?…。わ、わかりました…。治る見込みさえない命に未練はありません…。」
第2話へ続く
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