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第一章 小笠原事変
第一話 父島の漁師 三田敬一郎
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どうにも、今日は妙な日だ。
GPSが使えないぐらいなら、どうって事はない。
漁船ぐらいの小船なら、経験でどうにかなるもんだ。
何のトラブルかは分からねぇけど、暫くは大丈夫だろう。
だが、それだけじゃなかった。
何故か普段とは違う、見た事の無い変な魚ばっかり釣れるやがる。
じいさん連中も、見た事が無いと騒いでるから、相当珍しいんだろうな。
祟りが云々言うじいさんもいるが、そこは気にしない。
全く、年寄りは迷信深くて困る。
どうせ、深海魚か何かだろうさ。
言うのは勝手だが、あまり大声では言わんで欲しい。
この父島沖に、八百万組が予備発射場とかいう、ロケット打ち上げのコンクリート島、メガフロートってのか。
あれを造ってから、島の生活は随分便利になったんだ。
寂れる様な話を、広められちゃあ困る。
世界遺産登録後も、この島の生活は変わらなかった。
自然破壊とかで、港の拡張が出来無いもんで、行き来する船に限りがあるからな。
そこに、コンクリート島へ直接向かう定期航路が出来て、すっかり変わった訳だ。
今じゃあ、ホテルまで海に浮かんでいる。
八百万組ってのは、つくづく商売上手な連中なんだろう。
午前中に定期船でコンクリート島に着いた観光客は、先に予備発射場を見学してから、この島へ来る。
そして、昼飯に新鮮な海の幸を食べてから島の自然を見学し、ホテルで一泊する訳だ。
帰りには、干物なんかを買っていく。
そんなサイクルが出来た。
俺達が釣れた魚を売って、客が買うってだけじゃない。
観光客が増加した分、病院やらショッピングモールやらがコンクリート島に出来たし、定期船が増えた分、物の行き来も増えた。
島に手を加える訳じゃないから、自然破壊でもない。
八百万組様々だろうよ。
それでも、年寄り連中の中には、気に入らない爺がいるらしい。
たまに、反対運動をしているのを見かける。
コンクリート島が完成してから、少しずつ減っているとはいえ馬鹿らしい話だ。
今更、元の生活に戻れるもんかい。
それに反対派の爺だって、実はこっそりコンクリート島に行ってるって、皆知ってんだ。
バレてないとでも、思ってんのかねぇ。
ったく。
それにしたって、こんな魚は初めてだ。
長さは五十センチ、幅が三十センチ。
やけにずんぐりしてるな。
目玉が三つに口が二つの顔が、二つ付いている。
年寄りが祟りだの言うのも、まあ分からんでもないか。
コンクリート島の完成から、随分経つ。
関係ないとは思うんだがなぁ。
何か影響してるって事も、無いだろう。
急過ぎる。
昨日まで見た事が無いのに、こんなに急に釣れるってのは、どう考えたっておかしいだろうさ。
逆に言えば、いきなり過ぎる。
環境破壊云々とは関係無いだろうよ。
まあ、俺達漁師には解らん理屈が何かしらあるんだろうが、それは学者先生の考える事だ。
俺達にとって重要なのは、観光客に売れる魚が少ないって事だな。
釣れる魚のほとんどがこんなんじゃ、商売上がったりだ。
ホントに、どうすりゃいいんだ、まったく。
とにかく、漁協と役場に相談するしかないか。
学者先生を喚ぶなら、そっちで決めないとな。
さて、帰るか。
何匹か生け捕りにしてあるし、学者先生に見せるなら充分だろう。
かーちゃんや美香に叱られるかもしれねーが、釣れるもんはしょうがない。
食えるかどうか分からない化け物ばっかり釣れても、燃料代がもったいないってもんだ。
この船のローンがもう少しで終わるってのに、ついてないぜ。
ん、なんだありゃあ!?
新しい観光船か?
母島に入港するみたいだな。
にしたって遅い船だ。
ありゃ、もしかして本物の帆か?
金持ちの道楽なのか、本物の帆船らしいな。
金ってのは、あるところにあるもんだが、羨ましい。
あんなの、維持するだけでもいくらかかるんだかな。
まあ、俺には関係無い話だ。
変だな、こっちを見て騒いでいる。
やっぱり見掛けだけの帆船で、エンジントラブルを起こしてんのか?
仕方ない。
助けてやるか。
困ってる時の助け合いは、海の男の掟だかんな。
お、なんだ、無線も壊れてるのか?
反応がね??な?
準備が適当なのか?
金持ちにしちゃあ、しょうのない連中だな。
ひょっとしたら、不馴れな女ばかりって事も……………………。
いや、無いか。
金髪のネーチャンと、何て考えてたのがばれたら、美香に殺されちまう。
「おーい、敬次郎!
拡声器持ってこいや」
船室からガタガタ、音がした。
いつまで経っても、不器用な弟だ。
「にーちゃん、これかい?」
そう言って、拡声器を渡してきた。
普段、乾電池を外しているんだが、ちゃんと入っているな。
こいつにしちゃあ、珍しく気が利く。
二度手間かもしれないと思っていたが、流石に成長するもんだ。
まあ、もう十九だもんな。
少し不安だが、こいつもそのうち独立して船を持つんだろう。
ん、あの帆船、こっちに近付いて来るな。
でも、位置取りがおかしいぞ。
おいおい、船舶免許持ってんのか?
下手に回避しても、危ないな。
お、何か光った。
あれは………………花火…………なのか?
何でそんなもん、こっちに向けて打ち上げるんだ。
おかしいぞ。
「敬次郎、様子がおかしい。
近くの船にも、きゅ」
GPSが使えないぐらいなら、どうって事はない。
漁船ぐらいの小船なら、経験でどうにかなるもんだ。
何のトラブルかは分からねぇけど、暫くは大丈夫だろう。
だが、それだけじゃなかった。
何故か普段とは違う、見た事の無い変な魚ばっかり釣れるやがる。
じいさん連中も、見た事が無いと騒いでるから、相当珍しいんだろうな。
祟りが云々言うじいさんもいるが、そこは気にしない。
全く、年寄りは迷信深くて困る。
どうせ、深海魚か何かだろうさ。
言うのは勝手だが、あまり大声では言わんで欲しい。
この父島沖に、八百万組が予備発射場とかいう、ロケット打ち上げのコンクリート島、メガフロートってのか。
あれを造ってから、島の生活は随分便利になったんだ。
寂れる様な話を、広められちゃあ困る。
世界遺産登録後も、この島の生活は変わらなかった。
自然破壊とかで、港の拡張が出来無いもんで、行き来する船に限りがあるからな。
そこに、コンクリート島へ直接向かう定期航路が出来て、すっかり変わった訳だ。
今じゃあ、ホテルまで海に浮かんでいる。
八百万組ってのは、つくづく商売上手な連中なんだろう。
午前中に定期船でコンクリート島に着いた観光客は、先に予備発射場を見学してから、この島へ来る。
そして、昼飯に新鮮な海の幸を食べてから島の自然を見学し、ホテルで一泊する訳だ。
帰りには、干物なんかを買っていく。
そんなサイクルが出来た。
俺達が釣れた魚を売って、客が買うってだけじゃない。
観光客が増加した分、病院やらショッピングモールやらがコンクリート島に出来たし、定期船が増えた分、物の行き来も増えた。
島に手を加える訳じゃないから、自然破壊でもない。
八百万組様々だろうよ。
それでも、年寄り連中の中には、気に入らない爺がいるらしい。
たまに、反対運動をしているのを見かける。
コンクリート島が完成してから、少しずつ減っているとはいえ馬鹿らしい話だ。
今更、元の生活に戻れるもんかい。
それに反対派の爺だって、実はこっそりコンクリート島に行ってるって、皆知ってんだ。
バレてないとでも、思ってんのかねぇ。
ったく。
それにしたって、こんな魚は初めてだ。
長さは五十センチ、幅が三十センチ。
やけにずんぐりしてるな。
目玉が三つに口が二つの顔が、二つ付いている。
年寄りが祟りだの言うのも、まあ分からんでもないか。
コンクリート島の完成から、随分経つ。
関係ないとは思うんだがなぁ。
何か影響してるって事も、無いだろう。
急過ぎる。
昨日まで見た事が無いのに、こんなに急に釣れるってのは、どう考えたっておかしいだろうさ。
逆に言えば、いきなり過ぎる。
環境破壊云々とは関係無いだろうよ。
まあ、俺達漁師には解らん理屈が何かしらあるんだろうが、それは学者先生の考える事だ。
俺達にとって重要なのは、観光客に売れる魚が少ないって事だな。
釣れる魚のほとんどがこんなんじゃ、商売上がったりだ。
ホントに、どうすりゃいいんだ、まったく。
とにかく、漁協と役場に相談するしかないか。
学者先生を喚ぶなら、そっちで決めないとな。
さて、帰るか。
何匹か生け捕りにしてあるし、学者先生に見せるなら充分だろう。
かーちゃんや美香に叱られるかもしれねーが、釣れるもんはしょうがない。
食えるかどうか分からない化け物ばっかり釣れても、燃料代がもったいないってもんだ。
この船のローンがもう少しで終わるってのに、ついてないぜ。
ん、なんだありゃあ!?
新しい観光船か?
母島に入港するみたいだな。
にしたって遅い船だ。
ありゃ、もしかして本物の帆か?
金持ちの道楽なのか、本物の帆船らしいな。
金ってのは、あるところにあるもんだが、羨ましい。
あんなの、維持するだけでもいくらかかるんだかな。
まあ、俺には関係無い話だ。
変だな、こっちを見て騒いでいる。
やっぱり見掛けだけの帆船で、エンジントラブルを起こしてんのか?
仕方ない。
助けてやるか。
困ってる時の助け合いは、海の男の掟だかんな。
お、なんだ、無線も壊れてるのか?
反応がね??な?
準備が適当なのか?
金持ちにしちゃあ、しょうのない連中だな。
ひょっとしたら、不馴れな女ばかりって事も……………………。
いや、無いか。
金髪のネーチャンと、何て考えてたのがばれたら、美香に殺されちまう。
「おーい、敬次郎!
拡声器持ってこいや」
船室からガタガタ、音がした。
いつまで経っても、不器用な弟だ。
「にーちゃん、これかい?」
そう言って、拡声器を渡してきた。
普段、乾電池を外しているんだが、ちゃんと入っているな。
こいつにしちゃあ、珍しく気が利く。
二度手間かもしれないと思っていたが、流石に成長するもんだ。
まあ、もう十九だもんな。
少し不安だが、こいつもそのうち独立して船を持つんだろう。
ん、あの帆船、こっちに近付いて来るな。
でも、位置取りがおかしいぞ。
おいおい、船舶免許持ってんのか?
下手に回避しても、危ないな。
お、何か光った。
あれは………………花火…………なのか?
何でそんなもん、こっちに向けて打ち上げるんだ。
おかしいぞ。
「敬次郎、様子がおかしい。
近くの船にも、きゅ」
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