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第一章 小笠原事変
第十五話 現地情勢と歴史的経緯(後編)
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「本当ですか!?」
その話を聴いた 万屋は、不覚にも大声を出してしまった。
分かり易い動揺だ。
もちろん、万屋は外交官では無い。
故に、完璧なポーカーフェイスを求めるというのは、最初から無理のある話なのだろう。
だが、それにしても手酷い失態であった。
「ええ、事実ですよ。
西天津国では家畜の餌ですら、人間の食べる様な穀類を与えています。
その上で、西端半島の兵糧を、全面的に賄ってもいるにも拘らず、食料輸出国ですから、大変豊かな国です。
凶作の年でも、餓死者は出ませんし、豊作の年は作物を棄てる、という話も聴きますな。
いや、羨ましい限りです」
伯爵の方は自然体だ。
しかし、何かに気付いているだろう。
どの程度察したかは、定かでは無い。
「そ、そうですか。
良い事ですね。
あ、話の腰を折った様で、申し訳ありません。
続きをお願いします」
自らの失態に気付いた万屋は、冷や汗を流しながらも、続きを促した。
下手に取り繕ったせいで、余計に不自然なのであるが、本人は気付いていないらしい。
気付く余裕も無いのだろう。
だが、伯爵の目が一瞬だけ光る。
直ぐに元に戻ったが、これで何かを察したのは明白となった。
余裕の無い万屋とは違い、山田の方はそれに気付いたが、だからと言ってどうする事も出来ない。
伯爵の話は続く。
西方大陸南西部に位置するのは、獣人王国である。
国土は農業には適さない荒野であり、主要産業は傭兵業だという。
獣人は身体能力に優れ、同じ武器を持った場合獣人の兵士は、人族の兵士二十人に相当すると言われる。
その為なのか、多種族連盟に加盟した後も、他国の要請があった場合のみ、有料で参戦するという、ある種の傲慢さを持つ。
にも拘らず、参戦要請が絶えないという事実が、獣人兵士の強さの証なのだろう。
ただし、そういった傲慢さと同時に誇り高く、獣人兵士は暴行略奪等を行わない。
また、参戦を外交交渉に利用する事も無く、雇用料の値上げも無いとの事だ。
さらに敗走する事も皆無で、一度参戦すれば勝利か全滅のどちらか、と言う結果をもたらす。
そういった点から、純粋に傭兵として見た場合、各国からもっとも頼られる存在である。
兵科は、種族によって得意分野が異なるので、特別に多いものが無い。
強いて言えば騎兵が少なく、大半が軽装歩兵である。
特に力の強い種族は、動きが鈍るという理由で、革鎧等の軽装備を好む。
また、力の強い種族の間では、弓矢であっても卑怯者の飛び道具として、忌み嫌われる様で大半が槍や、大剣等の近接戦用の武器を、装備している。
彼等も国民皆兵に近いので、三十万程度の戦力を有する、と言う話だ。
政治については、王が死ぬ毎に決闘式トーナメントが行われ、その優勝者を王としている。
一風変わった制度であるが、官吏の顔ぶれは変わらない為、政治的素人でもそれなりに治める事が、可能だと言う事だ。
そして、現王の出身地という、割りとどうでもいい話の中で、伯爵は重要な情報を口にした。
「い、今何と仰いました!?」
万屋は、先程一回失敗しているので、なんとか堪えたが、今度は山田が大声を出してしまう。
「は?
ああ、ですから現王の出身地は、北部の不毛地帯です。
荒野ばかりの王国でも、農業が全く出来ない土地、と聴いておりますな」
伯爵は、山田の食い付いた部分が、いまいち分からないのだろう。
探る様に、再度説明する。
「いえ、その後です。
燃える水があるのですか?」
「はあ。
あると言うよりも、そればかりと言う話ですな。
あれは、戦場で瓶に入れて、火種と共に投石機で飛ばしますが、それだけのものです」
伯爵は、未だに探っている様な目で、そう説明した。
無理も無い話だ。
食料ならば、察する事も出来るだろう。
古今東西、人間が生きるのに、必要不可欠なものだ。
先程の話に食い付かれれば、それが不足している事が、簡単に想像出来る。
しかし、山田が食い付いたのは、一見衣食住に関わりの無さそうな、燃える水の話である。
訝しげに思うのは、当然だろう。
科学一辺倒の機械文明と、全く関わりの無かった伯爵には、どうにも察する事の出来ない、日本の事情の一つである。
もっとも、国内でのみ消費するならば、石油は足りているのだ。
新潟沖油田の石油埋蔵量を推測すると、シーレーンが封鎖されても国内消費のみならば、五十年以上は持つというデータも存在する。
しかし、輸出入を換算すれば、また別の話だ。
この世界を日本製品が席巻する事は、エルフ達の反応を観れば明らかである。
と言うよりは日本側としても、貿易無しでは経済成長が危ういので、押し付けてでも日本製品の輸出は為されるだろう。
そうなれば、石油は確実に不足する。
故に、どうしても油田が必要なのだ。
だが、今この場に居て、そこまで考えているのは、山田だけである。
万屋は食料問題ですら、何となくレベルで不安に思っていただけだった。
石油についても、国内消費の事のみを考えていたのだ。
平静を保てたのも、それが理由の一つであろう。
「何度も遮って申し訳ありません。
続けてください」
万屋が続きを促す。
『ドワーフ職人組合』は、ドワーフの共同体の事である。
正確には国家では無いが、重要な勢力の一つと言える組織だ。
ドワーフは、職人以外の職業に就く事が無い為、組合以外の組織を必要としない。
故に、この様な職人の組合が、最大組織となっているのだ。
一応の領土としては、西方大陸を東西に分ける中央山脈に組合本部を置いて、周辺に複数の鉱山都市を築いているが、基本的にそれのみとなっている。
また、それ以外の土地に住むドワーフは、各国の首都にある組合支部や、各地方都市の分室に所属する者が大半であるが、場合によっては気に入った村の鍛冶師となる事もある様だ。
組合への参加条件は厳しい。
ドワーフ以外は、確実に入れないのだ。
さらには、組合の認めた才能あるハーフドワーフ等、ある程度ドワーフの血を引いていなければ、組合への参加は認めない。
この様に、排他的な色の強い組織である。
そして、組合内の技術は門外不出であり、違反者は死刑とされている、という事もあってか技術が流出する可能性は低い。
その為、西方大陸の職人は殆ど全てがドワーフである。
当然、その影響力は大きく、各都市では組合の支部を中心に職人街が設置され、組合による事実上の、治外法権地区が存在する程だ。
それは、中央集権化の進んでいる西天津国でも例外ではない。
ただし、ドワーフは基本的に政治に興味が無く、ドワーフの権利を侵したり、支払い等で揉める事さえなければ、政治的に干渉してくる事は無い。
その為ドワーフ職人組合は、西方大陸各国が最も気を使う組織、とされている。
軍事力は保有していないが、ドワーフの義勇兵は力が強く、自身の装備を自ら作製するので、重装歩兵として活躍するとの事。
また、各国から工兵将校として、招聘される事もある様だ。
鉱山都市だけで無く、各地に散らばっているので、大まかな人口すら不明である。
(貿易摩擦があるとしたら、ドワーフが相手だな)
万屋はそんな事を思った。
しかし、国家では無い為、直接的に日本との貿易摩擦は無い筈だ。
各国で、ドワーフに与えられていた、自治権等の特権が失われる可能性もあるのだが、それはあくまでも各国の内政事情であり、日本と組合が直接対立する事にはならない。
それなりに荒れても、日本には関係が無いのだ。
その他の国は、日本と絡む事の少なそうな勢力ばかりだった。
『ケンタウルス族長会議』とは、西方大陸北東部にある大草原地帯に住むケンタウルス族の、諸部族合同会議である。
ケンタウルスは、人族とはかけ離れた容姿をしているが、生活様式は地球の騎馬民族に似ている様だ。
家畜と共に、牧草のある場所を移動し、組み立て式テントで生活する。
遥か古代から、強大な国家を形成していたが、サキノウダイ朝の成立直後に、ティネガーシマ部隊によって滅ぼされた。
北東部に移ったのは、それ以降の事である。
近年はキヴァ・ティボーの様に、ティネガーシマを持った傭兵として、戦場で活躍しているとの事。
しかし、工作等の細かい作業が苦手なので、自力ではティネガーシマの生産が出来ず、兵站面で他国に依存している為、自立した勢力とは言えない。
総戦力は二十万程度で、やはり国民皆兵に近い。
『神道協会』は、西方大陸における各神殿の互助会である。
ジン朝西天津国のデロクテンマー派を除いた、天津大陸に存在する大小数千の神殿全てが、加盟しているという。
また、神殿に所属しない流れの神官も、加盟している場合が多い。
神官だけでなく治癒術師も、加盟する事で様々な特典があるので、大抵の治癒術師はこれに加盟している。
ただ、各都市以上の単位で纏まって行動する事は無く、名実共に各神殿を拠点とした、神官と治癒術師の組合に近い。
また、一定の資産を納める事で、保険の様な役割も果たす。
形式としては、イザナギ神殿を盟主としている。
イザナギ神殿の指導者は姫巫女と呼ばれ、女性による世襲制である。
姫巫女の地位は、天孫とされる姫巫女家の中から、神々の神託を最も聴き取れる者という事だ。
これは、神々からどれ程寵愛されているかを判断する為の、最も重要な基準とだれている。
「他にも小国はありますが、気にする程の勢力はこれで全てです」
伯爵の話が終わり、ベアトリクスがそう締めくくった。
何時の時代も、小国は大国に翻弄されるものであるが、大国側から観れば小国の存在は、無視出来るものらしい。
万屋は、露骨な言い回しにドン引きして、心の距離を取った。
「そうですな。
まあ、こんなところでしょう。
何か、他に気になる事はありますかな?」
話はここで終わりらしい。
万屋は、気になった事を訊こうとするが、先に山田が発言した。
「他の大陸の話がありませんね。
何故です?」
「中央大陸とは、交戦中ですからな。
先程の話の中で出た事以外は、よく分からんのですよ。
捕虜を尋問しても、話がバラバラでしてな。
捕虜の話や知識から察するに、識字率が低いのでしょう。
騎士階級、場合によっては貴族の捕虜ですら、文字を読めない者がいました。
大陸各国でも、実情を知る者は極一部と思われます」
伯爵はそう答えた。
「成る程。
対立していればそれも当然ですね。
ですが、東方大陸の話も無いのは、何故です?」
山田は再度、疑問を投げ掛ける。
「東方大陸は未知の大陸と言えるでしょう。
大陸全土が城壁で覆われています。
統一国家が存在した様ですが、今でも残っているかどうかまでは、分かりません」
伯爵は妙な事を言う。
「はあ、城壁ですか」
万屋は怪しげな情報を聴いて、困惑する。
(東方大陸情勢は不明っと)
取り敢えずメモを取るが、何とも言えない様だ。
「ちなみに、魔族領域についてですが、これもよく分からないと言うのが、本音です」
伯爵が念の為に補足する。
これは万屋にも予想出来た。
何せ、断続的に続いている、中央大陸と西方大陸との争いであっても、魔族の侵入があれば即時に停戦して、共に戦うというのだ。
協定や条約止まりで無く、実例もあるというのだから、相当なものであろう。
戦国時代ならともかく、現代の日本人には付いて行けない感覚なのだ。
(しかし、それにしても他大陸の情報が少な過ぎる)
情報が重視される様になったのは、近代以降であるが、彼等は戦争をしているのだ。
情報を、余りにも軽視し過ぎている、と言えるだろう。
万屋がそんな事を考えていると、伯爵が思い出した様に発言する。
「そういえば、シドンかティルスには、帝国の亡命皇女が住むとか。
中央大陸情勢が気になるのであれば、伝を辿りましょうか?」
成る程、伯爵の狙いはその皇女と、日本人を引き会わせることだろう。
(やっぱり狸だ)
万屋はそう思った。
その話を聴いた 万屋は、不覚にも大声を出してしまった。
分かり易い動揺だ。
もちろん、万屋は外交官では無い。
故に、完璧なポーカーフェイスを求めるというのは、最初から無理のある話なのだろう。
だが、それにしても手酷い失態であった。
「ええ、事実ですよ。
西天津国では家畜の餌ですら、人間の食べる様な穀類を与えています。
その上で、西端半島の兵糧を、全面的に賄ってもいるにも拘らず、食料輸出国ですから、大変豊かな国です。
凶作の年でも、餓死者は出ませんし、豊作の年は作物を棄てる、という話も聴きますな。
いや、羨ましい限りです」
伯爵の方は自然体だ。
しかし、何かに気付いているだろう。
どの程度察したかは、定かでは無い。
「そ、そうですか。
良い事ですね。
あ、話の腰を折った様で、申し訳ありません。
続きをお願いします」
自らの失態に気付いた万屋は、冷や汗を流しながらも、続きを促した。
下手に取り繕ったせいで、余計に不自然なのであるが、本人は気付いていないらしい。
気付く余裕も無いのだろう。
だが、伯爵の目が一瞬だけ光る。
直ぐに元に戻ったが、これで何かを察したのは明白となった。
余裕の無い万屋とは違い、山田の方はそれに気付いたが、だからと言ってどうする事も出来ない。
伯爵の話は続く。
西方大陸南西部に位置するのは、獣人王国である。
国土は農業には適さない荒野であり、主要産業は傭兵業だという。
獣人は身体能力に優れ、同じ武器を持った場合獣人の兵士は、人族の兵士二十人に相当すると言われる。
その為なのか、多種族連盟に加盟した後も、他国の要請があった場合のみ、有料で参戦するという、ある種の傲慢さを持つ。
にも拘らず、参戦要請が絶えないという事実が、獣人兵士の強さの証なのだろう。
ただし、そういった傲慢さと同時に誇り高く、獣人兵士は暴行略奪等を行わない。
また、参戦を外交交渉に利用する事も無く、雇用料の値上げも無いとの事だ。
さらに敗走する事も皆無で、一度参戦すれば勝利か全滅のどちらか、と言う結果をもたらす。
そういった点から、純粋に傭兵として見た場合、各国からもっとも頼られる存在である。
兵科は、種族によって得意分野が異なるので、特別に多いものが無い。
強いて言えば騎兵が少なく、大半が軽装歩兵である。
特に力の強い種族は、動きが鈍るという理由で、革鎧等の軽装備を好む。
また、力の強い種族の間では、弓矢であっても卑怯者の飛び道具として、忌み嫌われる様で大半が槍や、大剣等の近接戦用の武器を、装備している。
彼等も国民皆兵に近いので、三十万程度の戦力を有する、と言う話だ。
政治については、王が死ぬ毎に決闘式トーナメントが行われ、その優勝者を王としている。
一風変わった制度であるが、官吏の顔ぶれは変わらない為、政治的素人でもそれなりに治める事が、可能だと言う事だ。
そして、現王の出身地という、割りとどうでもいい話の中で、伯爵は重要な情報を口にした。
「い、今何と仰いました!?」
万屋は、先程一回失敗しているので、なんとか堪えたが、今度は山田が大声を出してしまう。
「は?
ああ、ですから現王の出身地は、北部の不毛地帯です。
荒野ばかりの王国でも、農業が全く出来ない土地、と聴いておりますな」
伯爵は、山田の食い付いた部分が、いまいち分からないのだろう。
探る様に、再度説明する。
「いえ、その後です。
燃える水があるのですか?」
「はあ。
あると言うよりも、そればかりと言う話ですな。
あれは、戦場で瓶に入れて、火種と共に投石機で飛ばしますが、それだけのものです」
伯爵は、未だに探っている様な目で、そう説明した。
無理も無い話だ。
食料ならば、察する事も出来るだろう。
古今東西、人間が生きるのに、必要不可欠なものだ。
先程の話に食い付かれれば、それが不足している事が、簡単に想像出来る。
しかし、山田が食い付いたのは、一見衣食住に関わりの無さそうな、燃える水の話である。
訝しげに思うのは、当然だろう。
科学一辺倒の機械文明と、全く関わりの無かった伯爵には、どうにも察する事の出来ない、日本の事情の一つである。
もっとも、国内でのみ消費するならば、石油は足りているのだ。
新潟沖油田の石油埋蔵量を推測すると、シーレーンが封鎖されても国内消費のみならば、五十年以上は持つというデータも存在する。
しかし、輸出入を換算すれば、また別の話だ。
この世界を日本製品が席巻する事は、エルフ達の反応を観れば明らかである。
と言うよりは日本側としても、貿易無しでは経済成長が危ういので、押し付けてでも日本製品の輸出は為されるだろう。
そうなれば、石油は確実に不足する。
故に、どうしても油田が必要なのだ。
だが、今この場に居て、そこまで考えているのは、山田だけである。
万屋は食料問題ですら、何となくレベルで不安に思っていただけだった。
石油についても、国内消費の事のみを考えていたのだ。
平静を保てたのも、それが理由の一つであろう。
「何度も遮って申し訳ありません。
続けてください」
万屋が続きを促す。
『ドワーフ職人組合』は、ドワーフの共同体の事である。
正確には国家では無いが、重要な勢力の一つと言える組織だ。
ドワーフは、職人以外の職業に就く事が無い為、組合以外の組織を必要としない。
故に、この様な職人の組合が、最大組織となっているのだ。
一応の領土としては、西方大陸を東西に分ける中央山脈に組合本部を置いて、周辺に複数の鉱山都市を築いているが、基本的にそれのみとなっている。
また、それ以外の土地に住むドワーフは、各国の首都にある組合支部や、各地方都市の分室に所属する者が大半であるが、場合によっては気に入った村の鍛冶師となる事もある様だ。
組合への参加条件は厳しい。
ドワーフ以外は、確実に入れないのだ。
さらには、組合の認めた才能あるハーフドワーフ等、ある程度ドワーフの血を引いていなければ、組合への参加は認めない。
この様に、排他的な色の強い組織である。
そして、組合内の技術は門外不出であり、違反者は死刑とされている、という事もあってか技術が流出する可能性は低い。
その為、西方大陸の職人は殆ど全てがドワーフである。
当然、その影響力は大きく、各都市では組合の支部を中心に職人街が設置され、組合による事実上の、治外法権地区が存在する程だ。
それは、中央集権化の進んでいる西天津国でも例外ではない。
ただし、ドワーフは基本的に政治に興味が無く、ドワーフの権利を侵したり、支払い等で揉める事さえなければ、政治的に干渉してくる事は無い。
その為ドワーフ職人組合は、西方大陸各国が最も気を使う組織、とされている。
軍事力は保有していないが、ドワーフの義勇兵は力が強く、自身の装備を自ら作製するので、重装歩兵として活躍するとの事。
また、各国から工兵将校として、招聘される事もある様だ。
鉱山都市だけで無く、各地に散らばっているので、大まかな人口すら不明である。
(貿易摩擦があるとしたら、ドワーフが相手だな)
万屋はそんな事を思った。
しかし、国家では無い為、直接的に日本との貿易摩擦は無い筈だ。
各国で、ドワーフに与えられていた、自治権等の特権が失われる可能性もあるのだが、それはあくまでも各国の内政事情であり、日本と組合が直接対立する事にはならない。
それなりに荒れても、日本には関係が無いのだ。
その他の国は、日本と絡む事の少なそうな勢力ばかりだった。
『ケンタウルス族長会議』とは、西方大陸北東部にある大草原地帯に住むケンタウルス族の、諸部族合同会議である。
ケンタウルスは、人族とはかけ離れた容姿をしているが、生活様式は地球の騎馬民族に似ている様だ。
家畜と共に、牧草のある場所を移動し、組み立て式テントで生活する。
遥か古代から、強大な国家を形成していたが、サキノウダイ朝の成立直後に、ティネガーシマ部隊によって滅ぼされた。
北東部に移ったのは、それ以降の事である。
近年はキヴァ・ティボーの様に、ティネガーシマを持った傭兵として、戦場で活躍しているとの事。
しかし、工作等の細かい作業が苦手なので、自力ではティネガーシマの生産が出来ず、兵站面で他国に依存している為、自立した勢力とは言えない。
総戦力は二十万程度で、やはり国民皆兵に近い。
『神道協会』は、西方大陸における各神殿の互助会である。
ジン朝西天津国のデロクテンマー派を除いた、天津大陸に存在する大小数千の神殿全てが、加盟しているという。
また、神殿に所属しない流れの神官も、加盟している場合が多い。
神官だけでなく治癒術師も、加盟する事で様々な特典があるので、大抵の治癒術師はこれに加盟している。
ただ、各都市以上の単位で纏まって行動する事は無く、名実共に各神殿を拠点とした、神官と治癒術師の組合に近い。
また、一定の資産を納める事で、保険の様な役割も果たす。
形式としては、イザナギ神殿を盟主としている。
イザナギ神殿の指導者は姫巫女と呼ばれ、女性による世襲制である。
姫巫女の地位は、天孫とされる姫巫女家の中から、神々の神託を最も聴き取れる者という事だ。
これは、神々からどれ程寵愛されているかを判断する為の、最も重要な基準とだれている。
「他にも小国はありますが、気にする程の勢力はこれで全てです」
伯爵の話が終わり、ベアトリクスがそう締めくくった。
何時の時代も、小国は大国に翻弄されるものであるが、大国側から観れば小国の存在は、無視出来るものらしい。
万屋は、露骨な言い回しにドン引きして、心の距離を取った。
「そうですな。
まあ、こんなところでしょう。
何か、他に気になる事はありますかな?」
話はここで終わりらしい。
万屋は、気になった事を訊こうとするが、先に山田が発言した。
「他の大陸の話がありませんね。
何故です?」
「中央大陸とは、交戦中ですからな。
先程の話の中で出た事以外は、よく分からんのですよ。
捕虜を尋問しても、話がバラバラでしてな。
捕虜の話や知識から察するに、識字率が低いのでしょう。
騎士階級、場合によっては貴族の捕虜ですら、文字を読めない者がいました。
大陸各国でも、実情を知る者は極一部と思われます」
伯爵はそう答えた。
「成る程。
対立していればそれも当然ですね。
ですが、東方大陸の話も無いのは、何故です?」
山田は再度、疑問を投げ掛ける。
「東方大陸は未知の大陸と言えるでしょう。
大陸全土が城壁で覆われています。
統一国家が存在した様ですが、今でも残っているかどうかまでは、分かりません」
伯爵は妙な事を言う。
「はあ、城壁ですか」
万屋は怪しげな情報を聴いて、困惑する。
(東方大陸情勢は不明っと)
取り敢えずメモを取るが、何とも言えない様だ。
「ちなみに、魔族領域についてですが、これもよく分からないと言うのが、本音です」
伯爵が念の為に補足する。
これは万屋にも予想出来た。
何せ、断続的に続いている、中央大陸と西方大陸との争いであっても、魔族の侵入があれば即時に停戦して、共に戦うというのだ。
協定や条約止まりで無く、実例もあるというのだから、相当なものであろう。
戦国時代ならともかく、現代の日本人には付いて行けない感覚なのだ。
(しかし、それにしても他大陸の情報が少な過ぎる)
情報が重視される様になったのは、近代以降であるが、彼等は戦争をしているのだ。
情報を、余りにも軽視し過ぎている、と言えるだろう。
万屋がそんな事を考えていると、伯爵が思い出した様に発言する。
「そういえば、シドンかティルスには、帝国の亡命皇女が住むとか。
中央大陸情勢が気になるのであれば、伝を辿りましょうか?」
成る程、伯爵の狙いはその皇女と、日本人を引き会わせることだろう。
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タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
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第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
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とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
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クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
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その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
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