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第二章 西端半島戦役
第二話 特殊作戦群との合流
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万屋達を乗せたヘリは、『みうら』の広い甲板上に着艦した。
『おおすみ型』の拡大改良型とされる『みうら型』の甲板は、素人目に見ると飛行甲板に見える、と言われる程広い。
何せ、海自のヘリだけでなく、陸自の大型輸送ヘリであっても、運用可能なのだ。
さらに波の状況によっては、オスプレイ系統の機体でさえも、運用を可能としている。
事実上の航空母艦と言われても、反論出来ない大きさであろう。
もちろん、それでも公式には護衛艦である。
反論出来ない様でも、そう言い張らなくてはならないのだ。
その広い甲板の一部を占めていた捕虜達(小笠原での戦闘後、半分溺者扱いから完全に捕虜扱いとされている)は、既に姿を消している。
『みうら』に収用されていた彼等は、他の輸送艦に移された上で横須賀へ移送中であった。
ちなみに、父島の戦闘で捕虜となった若干名は、現地の仮設収容所に押し込まれている為、横須賀には向かわない。
彼等は、それなりの情報を持っていると推測されるので、別の扱いなのだ。
とは言え現状、捕虜の尋問は進んでいない。
何故なら、万屋無しには尋問が進められ無い、と言う厄介な問題が立ち塞がっているからだ。
もちろん既に、言語学者を動員しようと言う動きが、防衛省だけで無く各部署で起こっていた。
特に、防衛省から委託されている言語学者達は、既に父島へ向かっている段階である。
しかし、当然ながら当面の交渉に役立てるには、圧倒的に時間が不足していた。
万屋との会話を、録音したものをベースとしても、やはりそれなりに時間は掛かるものである。
そして、たとえ言語学者が天津語の解読に成功したとしても、通訳に関しては別の話であった。
何故なら、機密に関わる問題もあるので、全てを言語学者に任せる訳にもいかないからである。
言語学者はあくまでも、指導や辞書の編纂等を役割としなければならない。
通訳は、通訳の専門家に委託するか、外交官が覚えなければならないのである。
そして、彼等に委ねるよりも、万屋に通訳を任せた方が、遥かに速いのだ。
故に、言語学者が動員された後も暫くは、万屋の仕事が増え続けるのであるが、それは別の話である。
横須賀に向かうのは、輸送艦だけでは無かった。
この有事とも言える非常時に、万が一の事があっては困る。
第二次世界大戦以来、日本人はシーレーンの安全に対して、過剰な程敏感である。
それだけでは無い。
専門家から観た、万が一の備えだけで無く、政治的な事情も含まれている。
この様な状況下で、輸送艦だけを航海させるのは如何なものか、と言う野党からの非難を考慮していた。
輸送艦はそれ等の事情から、横須賀に向かう米艦隊と同行しているのであった。
米艦隊が横須賀に向かってしまうのも、かなり不自然であったが、それには事情があった。
残念な事にアメリカ人には、異世界云々と言った事態への免疫が無く、米艦隊は混乱を避ける為に横須賀へ向ったのである。
もちろんこの場合の混乱とは、自殺者だけを指すものでは無い。
自暴自棄になった暴動や、反乱等も含まれている。
近年の日本人には、馴染みが薄い話であるが、アメリカはいまだに暴動が起こる国なのだ。
あり得ない事でも無い。
『みうら』の周囲には護衛艦が展開しているが、他の輸送艦は見当たら無い。
どうやら輸送艦の中では唯一、自衛隊の『みうら』のみが残って、拉致被害者救出作戦に参加する様だ。
もちろん、捕虜を連れての戦闘航海を避ける、と言う合理的判断である。
それだけ無く、普通科にしろ何にしろ、普通の部隊をぞろぞろ連れても無意味、と言う考えもあった。
あくまでも、特殊作戦群を中心とした、小規模な部隊による救出作戦なのだ。
万屋達はこの艦で、ほとんど残してきた小隊の部下達や、特殊作戦群と合流する予定であった。
特殊作戦群。
その中身は、謎に包まれている。
近代までの特殊部隊であれば、その中身は比較的単純であり、素人でも予測する事が容易いだろう。
一般市民のイメージ通り、その大多数は実働部隊であり、通信技術と言う観点から観ても、首都の密室からリアルタイムで管制し、細やかな指示を送る等と言う真似は、到底出来なかった。
故に、現代とは異なり現場に於いては、高度な判断が求められる。
だからと言って、肉体的に脆弱な指揮官では困るのだ。
当然、指揮官としても求められるのは、屈強で体力のある肉体的な意味でも、優秀な人材である。
しかし、二十一世紀も中盤となれば、話は別であった。
戦場は画面の中にも、存在するのだ。
あるいは、ラジコンの様な小型飛行機が、遥か本国からの操作でミサイルを放つ。
そんな時代なのだ。
当然ながら、特殊部隊でも多種多様な人材が、求められる。
そして、その選抜された多種多様なエキスパート達は、専門分野で優れて居れば良い訳であり、極端な話をすれば特殊部隊と言う、素人のイメージからかけ離れた様な病的に青白く、華奢な者でも優秀ならば含まれるのだ。
故に、日本の特殊作戦群と一言で言っても、見た目だけでは判断出来ないだろう。
オペレーターの場合は、女性の方が多い時代なのだ。
分野によっては、女性の方が多い事も充分にあり得る。
さらに言えば、部隊に所属する自衛官は公開されていない。
機密保持の為、本人と家族の安全の為である。
それは、どこの国でも同じ事だ。
近年では、普段所属する部隊の上官どころか、特殊作戦群に所属する自衛官同士であっても、お互いの本名すら知らないと言う場合もある程、機密保持には煩い部署なのだ。
だからこそ一芸に秀でていれば、誰が所属していてもおかしくは無い。
特殊作戦群とは、そんな存在であった。
(こいつ、特戦群なんじゃないのか?)
万屋がそんな風に、山田の実力について良い意味で、疑問を持ったのは何時頃からか。
優秀な補佐役であり、普段から頼り切りな相手ではあり、普通ならばその異様な優秀さに、気付きそうなものだ。
しかし、任官早々からの付き合いともなれば、話は別である。
何故なら、他に比較対象が存在しないからだ。
むしろ、疑問を持つ方が不思議なぐらいである。
しかし、何故疑問に思ったのかを、本人に訊いてみても、明確な答えは返って来ないであろう。
万屋自身にも、分からないのだ。
そんな、何時からかも分からない漠然とした疑問は、山田の語学力と普段以上の判断力によって、確信へと変化しつつあった。
もちろん、万屋は何も言わない。
優秀な部下が、補佐役として働いてくれるだけで、感謝する事はあっても、不満等は無いのだ。
(俺のサポートと、特戦群の任務か。
両立以上に良くやってくれてるよな)
残念ながら、万屋は山田に感謝はしても、これまで以上に励もうと言う考えが無かった。
何故なら万屋の主観では、給料分働いているつもりだからである。
もちろん、それは間違いでは無い。
万屋は、給料分働いている。
しかし、社会と言うものは、向上心を求めるのだ。
それは、自衛隊でも例外では無い。
そして、万屋には給料分は働くと言う、当然備わっているべき義務感は、人並み以上あっても、給料分以上に働くと言う向上心が、致命的に欠けているのであろう。
真面目なのか不真面目なのか。
端から見ると、些か判断に困るスタンスである。
実際、この様な万屋の勤務態度は、上官からも部下からも困惑の眼差しで、見られていた。
たとえ、当人が真面目なつもりであっても、客観的に見ればちぐはぐに見える、と言う典型的な例であろう。
そんな万屋ではあったが、ブリーフィングルームで特殊作戦群と合流すると、人並みに緊張を感じていた。
前線に出る為に、鍛え上げられた屈強な精鋭達は、初の実戦を前に殺気立っていたのだ。
もちろん、これが初陣とは限らない。
万屋が知らないだけで、極秘の作戦で実戦を経験している、と言う可能性も充分にあり得る。
特殊作戦群の動向等、万屋の様な一般的な下っ端幹部では、知り様も無い事だ。
そして万屋自身も、知りたいとは思わなかった。
万屋は、保身ついでに部下の心配をするぐらいには、部下思いであるが『好奇心は猫をも殺す』と言う言葉を、盲信している。
自分から、給料分以上の危険に近付く事は、滅多に無かった。
「初めまして、万屋三彦二尉。
特殊作戦群所属の、佐藤と申します。
偽名で恐縮ですが、よろしくお願いします。
ああ、階級は貴方と同格の二尉、と言う事になっていますので、お互い気楽に行きましょう」
屈強な精鋭達から一人の男が進み出て、気圧されていた万屋にそう言った。
偽名な為か、下の名前は名乗らない。
用意していないのか、されていないのか。
あるいは、万屋との任務を最初で最後と思い、一回限りの簡単な偽名を用意したのか。
万屋には、予想も付かない話であった。
「え、ああ、はい。
自分が万屋です。
特戦群の事情は、それなりに理解しているつもりですので、気になさらないでください。
こちらこそよろしくお願いします」
万屋は、気圧されつつもなんとか、挨拶を返した。
逆に言えば、それだけしか返せなかった、と言うのが正しいのであるが、それを指摘する程軽率な者は、この場にいない。
「あまり、緊張なさらないでください。
分隊規模で小隊を護衛するなんて、聞いた事も無い任務ですから、うちの部下達も殺気立ってはいますが、気の良い連中です」
佐藤が自身の部下をフォローをする。
しかし、残念な事に肝心なフォローの部分は、万屋の耳に入らなかった。
万屋にとって聞き捨てなら無い話が、含まれていたのだ。
「ちょっと待ってください!?
そちらは分隊規模なのですか!?」
万屋は、予想外の事態に驚いた。
「ええ!?
作戦の概要を、まだご存知無いのですか!?」
だが、驚いたのは佐藤も同じであった。
要するに、連絡の不備であろう。
残念ながら政府だけでなく、自衛隊も混乱している、と言う事実の証明であった。
もっとも自衛隊としては、全くの想定外では無い。
非公式ではあるが、個人的な集まりと言う名目で、某巨大怪獣や宇宙人の襲来と言う様な、あり得ない様な想定での研究は、趣味人が多い事もあって盛んであった。
もちろん遊びにすぎないが、そこは問題では無い。
この場合、普通ならば考えもしない想定を、遊び半分とは言え考えた経験が、重要なのだ。
そして、その半分以上遊びにすぎない想定の中には、異世界に転移した場合と言うものも存在した。
それは良い。
さらに、一次接触が交戦と言う最悪の事態も、実は概ね想定内であった。
民間人の拉致と言う、想定外の事件も起こったが、事前の想定等当たる方が珍しいのだ。
それぐらいならば動揺はしても、組織単位で混乱する事は無いだろう。
むしろ、ある程度想定内と言う状況は、むしろ歓迎しても良い程の出来事である。
では、何故自衛隊が混乱しているのかと言うと、それは自衛官の権限が全く及ば無い、政治的な混乱が原因であった。
何の事は無い。
自衛隊は、政府の混乱に引き摺られているのだ。
もちろん、自衛官の権限は政治に及ばない方が良い。
それは当然であろう。
軍人が政治に関わると、ろくなことにならないのは、歴史が証明しているのだ。
軍令はともかく軍政ですら、関わらせると外交まで引っ掻き回した例もある。
この場に於いては、非常に不都合な話であったが、それは必要な混乱とも言えるであろう。
連絡の不備に気付いた一同は、一旦席に座る。
万屋は焦っていた。
極端な話、作戦内容と戦力さえ合っていれば、どうにかなるのだ。
それに、連絡の不備があっても、万屋が責められる事は無い。
だが、この場に用意された戦力よりも、作戦に必要とされている戦力の方が、多い場合は問題である。
そうなれば、前提が覆される事によって、作戦は失敗に終わるであろう。
と言うよりはむしろ、中止や延期の可能性の方が高い。
特殊作戦群と万屋は、貴重なのだ。
喪われる訳にはいかないであろう。
しかし、その場合は責任を追及される、と言う可能性がある。
同じ不備でも成功と失敗では、責任の及ぶ範囲が違うのだ。
「納得は出来ませんが、そちらの戦力は理解しました。
ですが、そちらが少数である以上、それなりの作戦があるのでしょうね?」
万屋は佐藤に問い掛ける。
「それは大丈夫です。
連絡の不備はありましたが、作戦に支障はありませんよ」
万屋の心配を察したのであろう。
佐藤は頼り甲斐のある、不敵な笑みを浮かべた。
『おおすみ型』の拡大改良型とされる『みうら型』の甲板は、素人目に見ると飛行甲板に見える、と言われる程広い。
何せ、海自のヘリだけでなく、陸自の大型輸送ヘリであっても、運用可能なのだ。
さらに波の状況によっては、オスプレイ系統の機体でさえも、運用を可能としている。
事実上の航空母艦と言われても、反論出来ない大きさであろう。
もちろん、それでも公式には護衛艦である。
反論出来ない様でも、そう言い張らなくてはならないのだ。
その広い甲板の一部を占めていた捕虜達(小笠原での戦闘後、半分溺者扱いから完全に捕虜扱いとされている)は、既に姿を消している。
『みうら』に収用されていた彼等は、他の輸送艦に移された上で横須賀へ移送中であった。
ちなみに、父島の戦闘で捕虜となった若干名は、現地の仮設収容所に押し込まれている為、横須賀には向かわない。
彼等は、それなりの情報を持っていると推測されるので、別の扱いなのだ。
とは言え現状、捕虜の尋問は進んでいない。
何故なら、万屋無しには尋問が進められ無い、と言う厄介な問題が立ち塞がっているからだ。
もちろん既に、言語学者を動員しようと言う動きが、防衛省だけで無く各部署で起こっていた。
特に、防衛省から委託されている言語学者達は、既に父島へ向かっている段階である。
しかし、当然ながら当面の交渉に役立てるには、圧倒的に時間が不足していた。
万屋との会話を、録音したものをベースとしても、やはりそれなりに時間は掛かるものである。
そして、たとえ言語学者が天津語の解読に成功したとしても、通訳に関しては別の話であった。
何故なら、機密に関わる問題もあるので、全てを言語学者に任せる訳にもいかないからである。
言語学者はあくまでも、指導や辞書の編纂等を役割としなければならない。
通訳は、通訳の専門家に委託するか、外交官が覚えなければならないのである。
そして、彼等に委ねるよりも、万屋に通訳を任せた方が、遥かに速いのだ。
故に、言語学者が動員された後も暫くは、万屋の仕事が増え続けるのであるが、それは別の話である。
横須賀に向かうのは、輸送艦だけでは無かった。
この有事とも言える非常時に、万が一の事があっては困る。
第二次世界大戦以来、日本人はシーレーンの安全に対して、過剰な程敏感である。
それだけでは無い。
専門家から観た、万が一の備えだけで無く、政治的な事情も含まれている。
この様な状況下で、輸送艦だけを航海させるのは如何なものか、と言う野党からの非難を考慮していた。
輸送艦はそれ等の事情から、横須賀に向かう米艦隊と同行しているのであった。
米艦隊が横須賀に向かってしまうのも、かなり不自然であったが、それには事情があった。
残念な事にアメリカ人には、異世界云々と言った事態への免疫が無く、米艦隊は混乱を避ける為に横須賀へ向ったのである。
もちろんこの場合の混乱とは、自殺者だけを指すものでは無い。
自暴自棄になった暴動や、反乱等も含まれている。
近年の日本人には、馴染みが薄い話であるが、アメリカはいまだに暴動が起こる国なのだ。
あり得ない事でも無い。
『みうら』の周囲には護衛艦が展開しているが、他の輸送艦は見当たら無い。
どうやら輸送艦の中では唯一、自衛隊の『みうら』のみが残って、拉致被害者救出作戦に参加する様だ。
もちろん、捕虜を連れての戦闘航海を避ける、と言う合理的判断である。
それだけ無く、普通科にしろ何にしろ、普通の部隊をぞろぞろ連れても無意味、と言う考えもあった。
あくまでも、特殊作戦群を中心とした、小規模な部隊による救出作戦なのだ。
万屋達はこの艦で、ほとんど残してきた小隊の部下達や、特殊作戦群と合流する予定であった。
特殊作戦群。
その中身は、謎に包まれている。
近代までの特殊部隊であれば、その中身は比較的単純であり、素人でも予測する事が容易いだろう。
一般市民のイメージ通り、その大多数は実働部隊であり、通信技術と言う観点から観ても、首都の密室からリアルタイムで管制し、細やかな指示を送る等と言う真似は、到底出来なかった。
故に、現代とは異なり現場に於いては、高度な判断が求められる。
だからと言って、肉体的に脆弱な指揮官では困るのだ。
当然、指揮官としても求められるのは、屈強で体力のある肉体的な意味でも、優秀な人材である。
しかし、二十一世紀も中盤となれば、話は別であった。
戦場は画面の中にも、存在するのだ。
あるいは、ラジコンの様な小型飛行機が、遥か本国からの操作でミサイルを放つ。
そんな時代なのだ。
当然ながら、特殊部隊でも多種多様な人材が、求められる。
そして、その選抜された多種多様なエキスパート達は、専門分野で優れて居れば良い訳であり、極端な話をすれば特殊部隊と言う、素人のイメージからかけ離れた様な病的に青白く、華奢な者でも優秀ならば含まれるのだ。
故に、日本の特殊作戦群と一言で言っても、見た目だけでは判断出来ないだろう。
オペレーターの場合は、女性の方が多い時代なのだ。
分野によっては、女性の方が多い事も充分にあり得る。
さらに言えば、部隊に所属する自衛官は公開されていない。
機密保持の為、本人と家族の安全の為である。
それは、どこの国でも同じ事だ。
近年では、普段所属する部隊の上官どころか、特殊作戦群に所属する自衛官同士であっても、お互いの本名すら知らないと言う場合もある程、機密保持には煩い部署なのだ。
だからこそ一芸に秀でていれば、誰が所属していてもおかしくは無い。
特殊作戦群とは、そんな存在であった。
(こいつ、特戦群なんじゃないのか?)
万屋がそんな風に、山田の実力について良い意味で、疑問を持ったのは何時頃からか。
優秀な補佐役であり、普段から頼り切りな相手ではあり、普通ならばその異様な優秀さに、気付きそうなものだ。
しかし、任官早々からの付き合いともなれば、話は別である。
何故なら、他に比較対象が存在しないからだ。
むしろ、疑問を持つ方が不思議なぐらいである。
しかし、何故疑問に思ったのかを、本人に訊いてみても、明確な答えは返って来ないであろう。
万屋自身にも、分からないのだ。
そんな、何時からかも分からない漠然とした疑問は、山田の語学力と普段以上の判断力によって、確信へと変化しつつあった。
もちろん、万屋は何も言わない。
優秀な部下が、補佐役として働いてくれるだけで、感謝する事はあっても、不満等は無いのだ。
(俺のサポートと、特戦群の任務か。
両立以上に良くやってくれてるよな)
残念ながら、万屋は山田に感謝はしても、これまで以上に励もうと言う考えが無かった。
何故なら万屋の主観では、給料分働いているつもりだからである。
もちろん、それは間違いでは無い。
万屋は、給料分働いている。
しかし、社会と言うものは、向上心を求めるのだ。
それは、自衛隊でも例外では無い。
そして、万屋には給料分は働くと言う、当然備わっているべき義務感は、人並み以上あっても、給料分以上に働くと言う向上心が、致命的に欠けているのであろう。
真面目なのか不真面目なのか。
端から見ると、些か判断に困るスタンスである。
実際、この様な万屋の勤務態度は、上官からも部下からも困惑の眼差しで、見られていた。
たとえ、当人が真面目なつもりであっても、客観的に見ればちぐはぐに見える、と言う典型的な例であろう。
そんな万屋ではあったが、ブリーフィングルームで特殊作戦群と合流すると、人並みに緊張を感じていた。
前線に出る為に、鍛え上げられた屈強な精鋭達は、初の実戦を前に殺気立っていたのだ。
もちろん、これが初陣とは限らない。
万屋が知らないだけで、極秘の作戦で実戦を経験している、と言う可能性も充分にあり得る。
特殊作戦群の動向等、万屋の様な一般的な下っ端幹部では、知り様も無い事だ。
そして万屋自身も、知りたいとは思わなかった。
万屋は、保身ついでに部下の心配をするぐらいには、部下思いであるが『好奇心は猫をも殺す』と言う言葉を、盲信している。
自分から、給料分以上の危険に近付く事は、滅多に無かった。
「初めまして、万屋三彦二尉。
特殊作戦群所属の、佐藤と申します。
偽名で恐縮ですが、よろしくお願いします。
ああ、階級は貴方と同格の二尉、と言う事になっていますので、お互い気楽に行きましょう」
屈強な精鋭達から一人の男が進み出て、気圧されていた万屋にそう言った。
偽名な為か、下の名前は名乗らない。
用意していないのか、されていないのか。
あるいは、万屋との任務を最初で最後と思い、一回限りの簡単な偽名を用意したのか。
万屋には、予想も付かない話であった。
「え、ああ、はい。
自分が万屋です。
特戦群の事情は、それなりに理解しているつもりですので、気になさらないでください。
こちらこそよろしくお願いします」
万屋は、気圧されつつもなんとか、挨拶を返した。
逆に言えば、それだけしか返せなかった、と言うのが正しいのであるが、それを指摘する程軽率な者は、この場にいない。
「あまり、緊張なさらないでください。
分隊規模で小隊を護衛するなんて、聞いた事も無い任務ですから、うちの部下達も殺気立ってはいますが、気の良い連中です」
佐藤が自身の部下をフォローをする。
しかし、残念な事に肝心なフォローの部分は、万屋の耳に入らなかった。
万屋にとって聞き捨てなら無い話が、含まれていたのだ。
「ちょっと待ってください!?
そちらは分隊規模なのですか!?」
万屋は、予想外の事態に驚いた。
「ええ!?
作戦の概要を、まだご存知無いのですか!?」
だが、驚いたのは佐藤も同じであった。
要するに、連絡の不備であろう。
残念ながら政府だけでなく、自衛隊も混乱している、と言う事実の証明であった。
もっとも自衛隊としては、全くの想定外では無い。
非公式ではあるが、個人的な集まりと言う名目で、某巨大怪獣や宇宙人の襲来と言う様な、あり得ない様な想定での研究は、趣味人が多い事もあって盛んであった。
もちろん遊びにすぎないが、そこは問題では無い。
この場合、普通ならば考えもしない想定を、遊び半分とは言え考えた経験が、重要なのだ。
そして、その半分以上遊びにすぎない想定の中には、異世界に転移した場合と言うものも存在した。
それは良い。
さらに、一次接触が交戦と言う最悪の事態も、実は概ね想定内であった。
民間人の拉致と言う、想定外の事件も起こったが、事前の想定等当たる方が珍しいのだ。
それぐらいならば動揺はしても、組織単位で混乱する事は無いだろう。
むしろ、ある程度想定内と言う状況は、むしろ歓迎しても良い程の出来事である。
では、何故自衛隊が混乱しているのかと言うと、それは自衛官の権限が全く及ば無い、政治的な混乱が原因であった。
何の事は無い。
自衛隊は、政府の混乱に引き摺られているのだ。
もちろん、自衛官の権限は政治に及ばない方が良い。
それは当然であろう。
軍人が政治に関わると、ろくなことにならないのは、歴史が証明しているのだ。
軍令はともかく軍政ですら、関わらせると外交まで引っ掻き回した例もある。
この場に於いては、非常に不都合な話であったが、それは必要な混乱とも言えるであろう。
連絡の不備に気付いた一同は、一旦席に座る。
万屋は焦っていた。
極端な話、作戦内容と戦力さえ合っていれば、どうにかなるのだ。
それに、連絡の不備があっても、万屋が責められる事は無い。
だが、この場に用意された戦力よりも、作戦に必要とされている戦力の方が、多い場合は問題である。
そうなれば、前提が覆される事によって、作戦は失敗に終わるであろう。
と言うよりはむしろ、中止や延期の可能性の方が高い。
特殊作戦群と万屋は、貴重なのだ。
喪われる訳にはいかないであろう。
しかし、その場合は責任を追及される、と言う可能性がある。
同じ不備でも成功と失敗では、責任の及ぶ範囲が違うのだ。
「納得は出来ませんが、そちらの戦力は理解しました。
ですが、そちらが少数である以上、それなりの作戦があるのでしょうね?」
万屋は佐藤に問い掛ける。
「それは大丈夫です。
連絡の不備はありましたが、作戦に支障はありませんよ」
万屋の心配を察したのであろう。
佐藤は頼り甲斐のある、不敵な笑みを浮かべた。
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氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
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女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
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