喫茶月影の幸せひと皿

小坂みかん

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第7話 エネルギッシュブラウニー

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 初老の男性客・水瀬は目の前に運ばれてきたパフェに目を輝かせると、どこから食べようかと迷うようにそわそわとパフェのあちこちに視線を走らせた。そして柄の長いスプーンを持ち、ここぞというところを見定めると、緊張した面持ちでスプーンを差し入れた。
 水瀬は綺麗にトッピングされたアイスやフルーツがこぼれ落ちぬよう、細心の注意を払ってスプーンをパフェから口へと運んだ。黒蜜がたっぷりとかかった抹茶アイスにパクリと食いつくと、水瀬はつかの間の幸せに頬を緩めた。至福の息をつこうとした瞬間、水瀬は何かに気がつき窓の外に目を向けて、そして盛大にむせ返った。
 俯いたまま苦しそうに悶絶している水瀬に、店主は水差しを抱えて「大丈夫ですか」と駆け寄った。すると水瀬は顔を上げることなく、静かに窓の外を指差した。水瀬の指に導かれるように首を窓のほうへと振った店主は、ひどく身をすくめて驚きながら小さく悲鳴を上げた。――とても小柄な女の子が、窓にべったりと張りついて水瀬を凝視していたのだ。
しぶイケオジがウキウキしながらパフェを頬張る姿が、尊すぎて、つい……」
 窓に張りついていた女の子を店に招き入れ、空いてる席に座らせて、事情を聞いてみるとそんな答えが返ってきた。店主と水瀬が呆れてぽかんとしていると、女の子――ほなみはマイペースに話を続けた。
「ネットの噂を頼りにお店を訪ねてみたら眼福な光景がそこに広がっていて、マスターさんが声をかけてくれなかったら、うっかりそのまま満足して帰るところでした……」
「噂ですか。うちのお店、どんなふうに噂されているんですか?」
 店主は期待で瞳を光らせた。しかしほなみが悪びれることなく「変な髪色の」と言い出したので、店主は額に片手を当ててがっくりと肩を落とした。
 ほなみは不思議そうに首を傾げると、落ち込む店主を見上げて尋ねた。
「どうしたんですか?」
「いえ、前にも、噂を頼りにご来店くださったお客様に同じことを伺ってみたことがあるんですけれど……。まさか、そのときと全く同じことを言われるだなんて……」
「まあ、ネットの噂なんて悪口と一緒で、おもしろおかしく囃し立てられることのほうが多いですからね。気にしないほうがいいですよ」
 自身も噂や悪口で嫌な思いをすることが多いのか、ほなみの表情は「気にしないほうがいい」と言いつつも自嘲混じりで冷ややかだった。
 同意しつつも意気消沈したままの店主を見兼ねて、水瀬が苦笑いを浮かべて言った。
「そんなに気になるなら、いっそステルスマーケティングのようなことでもしたらどうかね。たとえば、ゆるキャラマスコットを用意して、そちらに注目が行くようにお客のふりをして自分で書き込みをするとか――」
 店主は理解が及ばぬというかのように目をしばたかせた。そしてハッと息を飲むと、神妙な面持ちで水瀬を見つめた。
「何だかよくは分からなかったんですけれど、たしか、水瀬さまのところにも可愛らしいマスコットがいましたよね。もしかして、そういう……?」
「いや、うちのアレはそういうためのものではないが……」
 水瀬が困り顔で頬を引きつらせると、ほなみが興奮気味に食いついてきた。
「おじ様は、もしかして会社経営か何かなさっていらっしゃるんですか?」
「ああうん、会社というか、神社なんだがね」
 はぐらかすことなく、しかし言葉を濁すように、水瀬は尻すぼみにそう答えた。ほなみにとっては満足のいく回答だったようで、彼女はときめき顔を浮かべると吐息とともにポツリと呟いた。
「渋イケオジの神主姿、いい……。尊い……」
「あの、何やら浸っていらっしゃるところに申し訳ないんですけれど。また〈来店の目的〉をお忘れになりかけていらっしゃいますよ?」
 あ、と一瞬だけ間抜けな顔をすると、ほなみはそれをごかますように何度かまばたきをしながら小さく身じろいだ。そして気を取り直すと、ほなみは店主をじっと見据えて言った。
「食べたらたちまち太れる何か、ありますか? ここって、アッと驚くような不思議な食べ物を出しているんでしょう? だったら、そういうのもきっとありますよね?」
「ごめんなさい。さすがに、魔法のようにたちまちというものは無いんですよ。きっかけになるようなものなら、お出しできはしますけれども。――どうして太りたいのか、お嫌でなければ理由をお聞かせ願えませんか?」
「言うまでもなく、見れば分かると思うんですけど……」
 ほなみは苦い顔を浮かべて店主を睨んだ。何故なら、ほなみは体格が小さいだけでなく、誰が見ても心配するだろうほどガリガリに痩せていたからだ。
 ほなみはため息をつくと、渋々理由を話し始めた。

 幼稚園のころから、ほなみの体は誰よりも小さかった。背の順で並べば、常に一番先頭。学年で一番背の高い友達と一緒に遊んでいると、必ず友達が「小さい子の面倒を見てあげて、偉いわね」と声をかけられるほどだった。
 友人たちと体格差があることについて、小さいころはまだ、ほなみはさほど気にしてはいなかった。少しだけ残念なことがあるとするならば、遊んでいる途中でほなみだけ休憩をしないといけないことくらいだ。そんなときは決まって、ほなみはひとりでちょこんとベンチに腰を掛けて、元気に公園内を駆け回り続けている友達を羨ましいと思いながら眺めていた。
 小学校高学年に上がると、周りの女の子たちに少しずつ変化が訪れた。好きな男の子の話で盛り上がったり、おませな子などは彼氏を作ったりもした。早熟な子だと身体的にも大人の特徴を示すようになり、ほなみは変化し続けていく友人を眺めながら「私だけ、〈子供〉に取り残されている気がする」と感じるようになった。だが、自分と友人との間に深刻になるほどの差異はまだないと思っていたので、女の子の間だけでこっそりと行われる〈胸のうちに芽生えた小さな恋心の見せあいっこ〉をほなみも楽しんでした。
 そんなほなみの無垢な心がポッキリどころかバッキバキに折られる出来事が、林間学校で川辺に行ったときに起きた。林間学校での活動のひとつに「誰よりも早く川の流れに乗って進んでいける船を作ろう」という学習テーマがあり、ほなみたちは家で作ってきた発泡スチロール製の船を川で流すこととなっていた。同級生たちは図鑑で船の形を調べるなどして、思い思いの船を作ってきていた。
 女の子たちの作ったものは船の形を簡単に真似ただけというものが多かったが、男の子たちは造形に凝っていた。たとえば、風を受けて早く川を下れるようにと帆をつけている子もいたし、学習テーマを無視してロマンに走り主砲のようなものを搭載させている子もいた。しかし不器用だったほなみは発泡スチロールの切り出しに何度も失敗して、船の形すら満足に真似ることができず、いかだのような平べったいものしか用意できなかった。
 林間学校当日、同級生たちは川岸にある大きな岩を目印に決めると、「誰の船がいち早く岩のある地点を通過できるか」を楽しそうに競いはじめた。ほなみはその輪に参加することなく、ひとりで川の端にいた。水着姿を見られるのも、不出来な船を見られるのも、どちらも嫌だったからだ。
 ほなみの船は案の定、水面に浮かぶのがやっとだった。むしろ、川の流れに揉まれて何度も転覆していた。前に進むこともできずに浮き沈みする船の様子に落ち込み、ほなみはため息とともに悲しみを吐き出した。すると男の子がひとり、船を競争させていた集団からはずれてほなみのもとへとやってきた。――その子は、ほなみが密かに思いを寄せている子だった。
 彼は「あっちで、みんなと一緒に船を流そう」と声をかけに来てくれたらしい。そんな言葉を途中まで口にしたのだが、急に口をつぐんでしまった。ほなみは「好きな男の子に誘ってもらえて嬉しい」と思う半面、「せっかく人目を避けてひとりでいたのに、見られて恥ずかしい」とも思った。そして、どうして彼は黙ってしまったのだろうと不安にも思った。すると彼はほなみと船を交互に見たあと、非情なことを口にした。
「それ、ただの発泡スチロールそのままじゃん。船というよりも、もはや筏だね。しかも、ただ薄っぺらいだけの板状ってのが、ほなみちゃんにそっくりだ」
 彼はおもしろいことを言ったつもりだったのだろう、無邪気に笑みを浮かべていた。それが、ほなみをいっそう傷つけた。
 みんなのところへと戻っていきながら「ほなみちゃん、筏だった」を連呼する彼の背中を、ほなみは絶望の眼差しで見つめることしかできなかった。この一件以来、ほなみは「筏」という不名誉なあだ名で呼ばれるようになり、今まで以上にひとりで過ごすようになった。
 中学に上がると、ほなみはますます疎外感を感じるようになった。周りの女子のほとんどが〈大人〉へと変化していくのに、ほなみだけは〈子供〉のままだったからだ。しかも体力がなく丈夫さに欠けるところも相変わらずで、すぐに倒れたり怪我をしたりしてしまうため、ほなみは体育や部活動に参加することができなかった。同じ小学校出身の友人たちはか弱いほなみのことを心配してくれたが、他の小学校出身の同級生たちは「私たちだって、こんな面倒なことは参加したくなんかないのに。ほなみはズル休みしている」と陰口を言っていた。
(好きで参加してないわけじゃないのに。私だって、代われるものなら代わりたいよ。私は、あなたたちがやりたくないって思ってる体育も部活も、やりたくてしかたがないんだよ……!)
 ほなみは、声を大にしてそう叫びたかった。しかし筏事件以来、人と話すことすら億劫になってしったほなみには、心の中で泣くことしかできなくなっていた。
 高校に上がると、〈自分だけ取り残されている〉という感覚が〈自分だけ時が止まっている〉というものに変化した。周りの女の子たちは全力で恋をしておしゃれを楽しんで、大人の女性の第一歩を大きく踏み出している。レディーという名の海原を眼前にして、帆を膨らませ大人という名の航海へと繰り出していく友人たちを見送るほなみは、次第と焦燥感に駆られるようになった。

「最初のうちは『どうせ私なんて、筏だし。立派な船であるみんなと同じように恋とかおしゃれとか、そんな冒険できっこないんだ』って諦めてたんです。でも、身体的にも焦らざるを得なくなって。――おじ様のいらっしゃる前でこんなことを言うのも恥ずかしいんですけど、私、いまだに女性特有のアレが来たことがないんです。この年でそれは、さすがに健康面でもよろしくないんじゃないかと思って。それで病院で診てもらったりもしたんですけど、『まずは太れ』としか言われなくて。でもたくさん食べるということがまずできないし、そもそも食べること自体が好きじゃないし。無理して食べてみたこともあるんですけど、すぐに苦しくなって吐いちゃったし。何を食べてもあまり美味しいとは思えないから、おかげで余計に食べらんないし」
「だから、手っ取り早く太れる何かをお求めだったんですね」
 そう言って店主が胸を痛めて表情を暗くすると、ほなみは仏頂面で頷いた。すると水瀬が腕を組んで、心なしか悲しそうに眉を八の字にした。
「『ほなみさんはすでに、ちゃんと〈大人の女性〉である』と、私は思うんだがなあ。幼い子供のままだったら病院に行ってみようとは思いもつかないだろうし、変わるための努力をしようというところにまで至れずに殻に閉じこもってしまうだろう。しかし、君はどうにかせねばと自ら考え、自ら動き続けることができている。君は、誰がなんと言おうと〈大人レディー〉だよ。だから、健康面ではたしかに気になるところではあるだろうけれども、そこまで発育の遅さを気に病む必要はないんじゃないかなあ」
 ほなみは喜んでいるような悲しんでいるような、そんな曖昧な笑顔を浮かべた。今にも砕け散ってしまいそうな、儚さのある笑顔だ。
「〈おじ様〉は私のような小娘のこともきちんとレディー扱いしてくれるので、本当に尊いです。だから私、〈おじ様〉が好きなんだよなあ。――でも、やっぱり私も年頃の女の子ですから。やっぱり、おじ様からだけじゃなくて、同い年の男の子からも女の子扱いされたいんです。みずぼらしい筏じゃなくて、ちゃんと女の子として見てもらいたい。それから、女の子らしい毎日を送りたい。別に、恋はしなくてもいいの。ただ、放課後に友達とショッピングしたりプリクラ撮ったりできるくらいの体力が欲しい。それでときどき、男の子にドキッとして。そんな〈普通の女の子〉の生活を送りながら、みんなと同じペースで大人になりたいの。だから、そのためにもまずは太りたいんです」
 目にいっぱいの涙を溜めながら、それがこぼれぬようにと必死に顔をしかめて堪えながら、ほなみはもう一度「本当に、早く太りたい」と呟いた。店主はほなみを元気づけるようにニッコリと笑うと、両の手で握りこぶしを作って鼻息を荒くした。
「分かりました、任せてください! ただ先ほどもご案内しましたように、魔法のようにすぐさま効果が出るというものは、無いのでどうしてもお出しができないんです。でも、是非期待していてください!」
 そのように奮起すると、店主はぴょこぴょことカウンターへと去っていった。少しして戻ってきた店主が運んできたのは、バニラアイス添えのブラウニーだった。
 ほなみは目の前に置かれたブラウニーを見つめると、怪訝そうに眉根を寄せた。何故なら、ブラウニーの厚さが一センチにも満たなかったのだ。
「あの、こういうお店のブラウニーって、普通はもっと厚みがあるものじゃないですか? ごろっと塊で出てきたりとか。いくら私の食が細いからって、これはちょっとひどいような……」
「そんな失礼な忖度で薄切りにしたわけじゃないんです。このブラウニー、人間のお客様にお出しできるのはこれが限界なんです。なにせ、エネルギッシュすぎるものですから」
 ほなみはいっそう、険しい表情を浮かべた。店主はあわあわと慌てふためくと、困ったような笑顔を浮かべて手を揉み合わせた。
「このブラウニー、普通のブラウニーではないんですよ。ほなみさんも耳にした〈噂の不思議な食べ物〉のひとつなんです。材料もね、普通のブラウニーとは違うんですよ」

 ブラウニーの材料はチョコレートとカカオマス、バターと砂糖、卵、薄力粉。塩少々にバニラエクストラだ。
 カカオは古来より〈神の食べ物〉と呼ばれているだけあって、神様向けに栽培・商品化されているものがある。そんな貴重なカカオから作られたチョコレートとカカオマスを、喫茶月影の特製ブラウニーでは使用している。
 バターも特別なもので、牛の神使ブリーダーが自家用に乳を絞って作ったものを分けてもらっている。卵も同じく、神使の鳥由来のものだ。
「お砂糖は蓮の花の蜜ですし、お塩も――。あっ、薄力粉とバニラエクストラはそこの商店街で調達したものなんですけれどもね」
「えっ、何でそこは普通なの? どうせなら、最後までこだわって欲しかった……」
 心なしか不満げに、がっかりしたというかのようにほなみは店主を見つめた。店主は顔を真っ赤にすると、バツが悪そうにもじもじとした。
「薄力粉の在庫が切れているのにうっかり気づかなくて、発注し損なったんです……」
「えええ、それって、本当ならお客さんに出したらダメなやつなんじゃ」
「ご、ご注文いただいたお客様には、いつもと少々違う材料を使っているというのをお伝えして、ちゃんと確認した上でお出ししていますから……! それに、食べて得られる〈効果〉はほぼ同じですし……!」
 ほなみは静かにじっとりと、残念なものを眺めるような視線を店主に向け続けた。店主がいっそう縮こまると、水瀬が苦笑交じりに助け舟を出した。
「まあまあ、ほなみさん。たまにうっかりをやらかすのが、このマスターの可愛いところでもあるんだ。それの味や効果は保証するから、ここは私に免じて大目に見てやってくれないかな」
「はあ、おじ様がそう言うなら……」
 ほなみは不承不承頷くと、フォークを手に持ちブラウニーに差し入れた。そして小さく切り分けたひと口分にフォークを突き立て掲げるように持ち上げると、それをしげしげと眺め見た。
「うーん、見た目は普通なんだよなあ……」
 フォークの先に刺さった黒いものを怪しむように睨みつけながら、ほなみはおっかなびっくり顔とフォークとを近づけた。そして意を決したようにギュウと強く目をつむると、勢いよくパクリと食いついた。
 ほなみはゆっくりと目を開けながら、もぐもぐとあごを動かした。しかしすぐに咀嚼するのをやめて真顔のまま微動だにしなくなった。どうしたのだろうと心配した店主が顔を覗き込むと、ほなみの手からフォークが滑り落ちた。フォークがテーブルの上でカツンと大きな音を立ててもなお、ほなみは固まったままだった。
 店主も水瀬も、ほなみの無作法を咎めはしなかった。それよりも、深刻そうな表情のまま動かなくなってしまったほなみを、ふたりはとても心配に思った。
「えっ!? ほなみさん!? 大丈夫ですか? お口に合いませんでした!?」
 店主がおろおろとしているのもお構いなしに、ほなみはゆっくりとブラウニーに視線を落としてプルプルと震えた。
「あの、ほなみさん? 本当に大丈夫――」
「……美味しい」
「えっ?」
「初めて、食べ物を食べて美味しいと思った……。すごく、美味しい……」
 愕然とした面持ちで語られた言葉は、その表情をは真逆の好意的なものだった。店主は思わず、喜んでパアと頬を染め上げた。水瀬は微笑ましいとばかりに小さく笑うと、ほなみに「アイスも食べてごらん」と勧めた。
 ほなみは水瀬に向かって静かに頷くと、握り直していたフォークをスプーンに持ち替えてアイスをひとすくいした。そしてアイスを口に含んだ途端、ほなみは空いた手で口元を覆い隠しガックリとうなだれた。
「やばい……。何これ……。めっちゃ美味しい……。濃厚なチョコの味にミルク感たっぷりのバニラが混ざり合って……」
「だろう? すごく、美味しいだろう」
 水瀬の問いかけに、ほなみは俯いたまま何度も激しく頷いた。
 勢いよく顔を上げると、ほなみは店主を真剣な眼差しでじっと見つめて言った。
「何なんですか、このブラウニーは! 神レベルの美味しさなんですけれど!」
「お口に合ったようで、よかったです」
「正直、最初は疑ってました。噂のスペシャルフード感を盛り上げようと、メルヘンなことを言ってるだけなんだろうなって。でも、今なら信じられる! だって、今までは何を食べても美味しいと思えなかったのに、こんなに美味しいんだもん!」
 店主は苦笑いを浮かべながら、アイスが溶けるからと食べ進めるよう促した。しかし、ほなみは食べることをためらった。珈琲を一緒にいただいたほうが、よりいっそう美味しいだろうと感じたからだ。
 どうしようかとほなみが迷っていると、水瀬が店主に声をかけた。
「マスター、すぐにとびきりの珈琲を入れてあげなさい。――初めて美味しく食べ物をいただけた記念に、おじさんが奢ってあげようじゃないか」

 今までにない多幸感に満たされて、ほなみは店をあとにした。「お代はまた、そのときが来たら」という常識では考えられないことを言われたにもかかわらず、ほなみの頭の中に「本当にそのまま帰っちゃっても良かったのかな」や「なんて不思議なことを言うお店なのだろう」は存在していなかった。ただそこにあるのは「ブラウニー、本当に美味しかった……」だけだった。
 日常生活へと戻ったあとも、ほなみはブラウニーのことばかり考えていた。どうしたらまたあの極上のブラウニーを食べることができるのか、そもそも一般の食材で同じものを作ることができるのか。そんなことを考えながら、ほなみはケーキ屋を巡るようになった。しかしどこの店のものも喫茶月影ほどは美味しいとは思えず、ほなみはしょんぼりと肩を落として母にブラウニーに対する行き場のない思いを吐露した。すると、母はそんなほなみの様子をたいそう喜んだ。
「食が細いうえに食べ物に執着のなかったほなみが、最近ブラウニーばかり買ってくるようになったと思ったら。お母さん、嬉しいわ! だって、食べたいものがあるというのは、とてもいいことだもの。――中々同じようなものに出会えないのなら、いっそ自分で作ってみたら? 体調のいいときにおうちでのんびり作れば、疲れて倒れるということもないでしょう」
 最初、ほなみは母の提案を断った。何をするにしてもすぐにくたくたになってしまう自分には無理だと思ったからだ。しかし、それでも母はこっそりとレシピ本と道具、そして材料を用意した。台所のすみに半ば主張するように置かれたレシピ本を見つけたほなみは、だったら作ってみようかと腰を上げた。
 だが、初めて挑んだ本格的なお菓子作りは失敗に終わった。
「初心者向けの簡単なチョコ菓子って、嘘じゃん……。全然ちゃんとできないんだけど……」
 ほなみは何故かテラテラと油ぎっていたブラウニーを前にしながら、ガックリと肩を落とした。見るからに失敗と分かるそれを「いやでも、味はいいかもしれないよね」と呟きながらしばし見つめると、おもむろにスプーンを手にとった。まだ粗熱もとれておらず、型からも外されていないブラウニーにスプーンを突っ込むと、ごっそりとすくって口に放り込んだ。
「あっふ! あふい! ひかも、おいひくない!」
 盛大に顔をしかめ、はふはふと苦しそうに口をパクパクさせながら、ほなみは慌てて水を求めた。
「何が悪かったんだろう……」
 コップの中の水を全て飲み干してひと息つくと、ほなみは残念な出来のブラウニーをぼんやりと眺めながらポツリと呟いた。
 それから何度も、ほなみはブラウニーを焼いた。もう一度喫茶月影に行ってみようかということも頭にはよぎったのだが、何となく、それはしてはいけない気がしていた。――それは悔しい。何だか負けたような気がする。そんなことを思いながら、ほなみは〈理想のブラウニー〉を求めて焼き続けた。
 ときには母にも手伝ってもらったし、母だけで作ってもらってみたこともあった。しかし、母も上手に作ることができなかった。濡れたように油まみれだったり、生焼けのようにトロトロになったり、逆に全く膨らまずにゴムのようにギュムギュムなものができあがるたびに、ほなみは母と一緒に「何が駄目なんだろうね」と頭を悩ませた。

 ある日の朝、ほなみはブラウニーのことをぼんやりと考えながらホームルームが始まるのを待っていた。すると、クラスメイトのひとりが仲のいい友達に綺麗にラッピングされたカップケーキをあげているのが目に入った。昨日の部活で作ったと言っているのが耳に入り、ほなみは無意識に席を立った。
「ねえ、ケーキってブラウニーも焼いたりする?」
 気がつけば、ほなみはそのように言いながらクラスメイトの肩を叩いていた。普段は誰と会話することもなく教室の自分の席で気配を消しているほなみが声をかけてきたことに、クラスメイトは驚いていた。
 ほなみも、まさかそんな自分がこんな大胆なことをするとは思いもしなかった。我に返ると、みるみる恥ずかしさと申し訳なさがこみあげてきた。
「あ……。突然、ごめんね。今の、忘れて……」
 ほなみは顔を真っ赤にして俯くと、蚊の鳴くような小さな声で謝った。そしてぎこちなくきびすを返したのだが、ほなみはクラスメイトに呼び止められた。
「もしかして、澤田さんもお菓子作るの?」
「……あ、うん。最近やりはじめて。でも、レシピ通りに作ってるのに上手にできなくて……」
 ほなみは足を止めクラスメイトに向き直ると、勇気を振り絞ってそう答えた。すると彼女は首を傾げて〈どのように失敗してしまうのか〉を尋ねてきた。ほなみがそれに答えると、彼女は思案げな面持ちで言った。
「ゴムみたいになるのは、多分、チョコレート生地と小麦粉を混ぜ合わせるときに練り過ぎなんだと思う」
「そうなの……? レシピには〈ざっくり混ぜる〉って書いてあったけど、それだとちゃんと混ざらない気がしたっていうか、むしろ混ざってない感じだったんだけど……」
「練りすぎると、グルテンが出てきちゃって粘っちゃうんだよ。グルテンは強くくっつき合うから、それでギュムッとしちゃうの。あと、ギトギトになったり生焼けになるのは、湯煎の温度が高すぎるんだと思うよ」
 ちょっと待って、と慌ててスマホを取り出すと、ほなみはいそいそとメモを取った。クラスメイトはもう一度、ゆっくり丁寧に教えてくれた。
「また分からないことがあったら、いつでも聞いてね」
 ほなみが感謝すると、彼女はそう言って気さくに笑った。

 クラスメイトのおかげで、上手にブラウニーを焼けるようになった。しかし、できあがったそれを試食しながら、ほなみは不満をいだいた。
(ちゃんと焼けたし、多分美味しいんだろうけど、アレの足元にも及ばないなあ……)
 それから、ほなみは他のレシピ本に載っている作り方で焼いてみることにした。アレンジが加わればきっとあの味に近づけるだろうと思ったのだが、思い通りにはいかなかった。
 例のクラスメイトにも、オススメのアレンジを聞いてみた。教えてもらい焼くたびに、ほなみはできあがったものを持参して彼女に感謝した。すると何回目かの〈できあがり報告〉のときに、彼女がニッコリと笑って言った。
「ねえ、澤田さん。〈ほなみちゃん〉って、下の名前で呼んでいい?」
「ええっ!? いいけど、どうして急に……?」
 ほなみが戸惑うと、彼女はおかしそうにクスクスと笑った。
「そんな、急じゃないよお。もう十分仲良くなったし、そろそろ名字で呼びあうのも他人行儀すぎるかなって」
「そ、そうかなあ……?」
「そうだよお。うちら、もう友達じゃん? せっかく友達になったんだからさ、もっと仲良くなりたいし。だから、名前で呼んじゃ駄目?」
 筏事件以来、〈友達〉というものもほなみは諦めていた。だから他人を避けるように過ごしてきたし、これからもきっとひとりぼっちなのだろうと思っていた。だが、ほなみにはすでに友達ができていたのだ。その事実に、ほなみは天と地が入れ替わったんじゃないかと思うほど驚いた。そして押し寄せる感動を噛み締めながら、ほなみは一生懸命に首を縦に振った。
 それから数回後の〈できあがり報告〉の際に、今度は「料理研究部に入らない?」とほなみは誘われた。一緒にいろんなものを作りながら試行錯誤を重ねていけば、お菓子作りの腕も上がるしアレンジネタも浮かびやすいだろうとの提案だった。ほなみは表情を曇らせると、不安をポツリと口にした。
「部活なんて、私にできるかなあ……?」
「何で? もうやってるようなもんじゃん。私とほなみちゃんでさ。変わることといったら、人数が増えるのと、お菓子を作る場所くらいじゃん? だから、おいでよ。一緒に部活しよう?」
 ほなみは頭を殴られたような衝撃を受けた。それと同時に、たしかにその通りだと思った。体力という心配の種があったので母に相談してみたら、母はあっけらかんと「大丈夫じゃない?」と返してきた。
「でも、本当に大丈夫かなあ?」
「大丈夫よ。だって、最近はもうお菓子を作ってる途中で休憩することなんてないじゃない。体力、結構ついてきたんじゃあないの?」
「そうだね……。そうかも……!」
 料理研究部に入ったほなみは、どんどんと調理の腕をあげていった。いろいろなものを上手に作れるようになったことで、ほなみはよりいっそう「美味しいって、何だろう?」と思うようになった。アレンジを加えてみたり素材にこだわってみたりしながら、友達が作ったものと食べ比べてみながら、ほなみは少しずつ〈好きな味〉〈美味しいと思える味〉を見つけていった。

「いらっしゃいませ。……あら、ほなみさん? お久しぶりね!」
「えへへ、ご無沙汰です」
 あの来店から五年ほど経った満月の夜、喫茶月影に現れたほなみは照れくさそうに頭をかいた。ほなみは背丈が変わらず体型も小柄なままだったが、以前のように折れてしまいそうなほど細くはなく、かといってそこまで太ってはいないが健康的にふっくらとしていた。肌の色も血色良くつややかで、青白かった頬はほんのりとバラ色に染まっていた。――あれだけ〈自分だけ大人レディーになれない〉と落ち込んでいたのが嘘のように、ほなみはしっかりと大人レディーになっていた。
 空いている席へと店主が案内しようとすると、ほなみは「えっと」と声を上げながらまごついた。それと同時に、店の扉が押し開けられた。ほなみが慌てて横に避けると、店に入ってきたロマンスグレーがその場で足を止めて目を丸くした。
「おや、誰かと思ったら。ほなみさんじゃあないか。見違えたよ。元気そうで何よりだよ」
「おじ様、お久しぶりです!」
 ほなみが嬉しそうに笑顔を見せると、水瀬は客席側の少し奥のほうにすでに移動していた店主とほなみとを交互に見やりながら不思議そうに首を傾げた。
「何でこんなところで立ち止まっていたんだい? 今、席に案内されるところだったんだろう?」
「あの……今日はお客として来たわけじゃあないんです。――これ! 食べてもらいたくて!」
 ほなみは赤面して勢いよく俯きながら、俯いたのと同じ速度で紙袋を掲げた。ひょこひょこと戻ってきた店主はそれを受け取ると、袋の中に視線を落として目をしばたかせた。中に入っていたのは、菓子折りなどではなく保存容器だったからだ。
「あら、チョコレートの甘い香りが……。これ、もしかしてほなみさんの手作りですか?」
「はい。ブラウニーを焼いてきました。このお店で食べたものとは同じ味には作れなかったけれど、この五年ほど、ずっと焼き続けてできあがった自信作です!」
 店主はほなみと水瀬を同じ席へと案内すると、いそいそとカウンターへと去っていった。戻ってきた店主が運んできたのは、三人分のブラウニーと珈琲だった。
「あれっ!? 何で私の分まで?」
「一緒にいただいたほうが、よりいっそう美味しくなりますから。あと、今までのお話をお聞きしながらゆっくりといただきたいので、アイスはなしです」
 配膳を終えた店主が席に腰を掛けると、ほなみは照れくさそうに笑った。それから、どのようにこの五年を過ごしてきたかを話し始めた。そこには〈男の子とのロマンス〉はでてこなかったが、お菓子作りを中心とした〈友達との輝かしい青春〉がたくさん詰め込まれていた。ほなみは自分で思い描いていたとおりの、〈友達と同じ速度で青春しながら、同じ速度で大人になっていく〉をしっかりと満喫できたようだった。
「たしかに、喫茶月影の特製ブラウニーはエネルギッシュでした。立ちどころに太るってことはなかったけれど、代わりに心がメキメキと太っていったんです。甘いモノって元気をくれるって言うけれど、それ以上でした。まさか、自分がこんなにも、何かに対して積極的になれるとは思ってもみなかったです。――私、今度フランスに行くんですよ。製菓学校の成績優秀者に贈られる推薦留学の権利を利用して」
 店主と水瀬は嬉しそうに笑うと、ほなみの新しい船出を心から祝福した。そしてフォークを手に取ると、ほなみ特製のブラウニーを口に運んだ。
「うん、美味しい。神レベルの美味しさだ!」
 美味しいを繰り返しながら、店主も水瀬もモリモリとブラウニーを食べ進めた。ほなみもフォークに手をかけると、ブラウニーをパクリとひと口食べた。
「うん、自分で言うのもなんだけど、すごく美味しい!」
 そう言って笑うほなみの〈船〉は、もう〈筏〉なんかではなかった。しっかりと帆を膨らませ、波に乗りどこまでも前進していく――そんな、エネルギーに溢れた立派な船だった。
「でも、さらに美味しいブラウニーが焼けるようになりたいです! フランスでしっかりと研究してきますね!」
 カウンターの奥から、レジスターがチンと音をあげるのが聞こえた。それはまるで、出港を知らせる汽笛のようだった。
 ――ほなみの新しい船旅は、今まさに、始まったばかり。
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