2 / 4
承
しおりを挟む
翔太は簡単な自己紹介を済ませると、リフォームの打ち合わせを始めた。
涼子はキッチンテーブルに資料を広げて彼と向き合うが、目の前の若い男性の存在感に不思議と気圧されていた。
大きな手が資料を指し示しながら説明するたび、その手の動きに無意識に目がいく。
力強く、厚みのある手。
夫の手とは違う、何か温かみのある生々しい感覚を連想させた。
「ここを新しいクロスに変えると、部屋全体がもっと明るくなりますよ。」
翔太の声は低く穏やかだったが、その中に若さ特有の熱っぽさが感じられる。
涼子は無意識に頷きながらも、彼の声が耳に響くたび、胸の奥で奇妙な感覚が膨らんでいくのを感じていた。
それが自分でも何なのか分からないまま、打ち合わせを進める。
涼子が押し入れの修繕箇所を説明するため、先に立ってリビングの隅に向かったときだった。
翔太が後ろからついてくる気配を感じ、その距離感が妙に意識される。
押し入れの扉を開け、中の劣化した箇所を指し示そうとした瞬間、翔太がふと涼子の肩に触れた。
「ここですか?」
気軽な仕草だった。
だが、その一瞬の接触が涼子の心臓を跳ねさせた。
触れた部分が熱を帯びたように感じられ、その熱が全身に広がる。
思わず振り向いた涼子の目と翔太の目がぶつかった。
翔太は何事もなかったように軽く笑みを浮かべているが、その視線は涼子の内面を探るように鋭く、まるで心の奥底を見透かしているようだ。
「すみません、急に触ってしまって。」
翔太が一歩引いて謝罪する。
涼子は微笑んで「いえ‥」と答えたが、声が少し震えているのに自分でも気づいていた。
翔太の視線が一瞬、涼子の髪のあたりに留まるのを感じ、何か言いたげな表情を見せたが、結局何も言わずに押し入れを覗き込んだ。
*
打ち合わせが終わり、涼子はキッチンでお茶を淹れた。
緊張感を隠そうと翔太に背を向けて作業をするが、彼がすぐ近くにいる気配に鼓動が早くなる。
お盆を持ってリビングに戻り、テーブルに置いた瞬間、翔太がふと涼子に声をかけてきた。
「おひとりで暮らしているんですか?」
不意打ちの質問だった。
涼子は少し驚いて「いえ、夫と2人暮らしです。」と答えた。
翔太は頷きながら「あれ、そうでしたか。それにしては何だか静かな家ですね…」とつぶやく。
その言葉が妙に胸に刺さった。
翔太は何気ないつもりだったのかもしれないが、涼子にはまるで自分の孤独を見抜かれたように感じられた。
その後も何事もないように会話が続いたが、涼子の中でのざわめきは次第に強くなっていった。
翔太の親しみやすい態度に惹かれる自分を抑えきれないのだ。
夫のいる身として、こんな感情を抱くことは許されない。
それはわかっているのに、翔太の視線や動きに心が揺れるのを止められなかった。
打ち合わせを終えて資料を片付ける翔太に、涼子は何気なく「お茶のお代わりはいかがですか?」と尋ねた。
自分でも驚くほど軽い調子で言ったつもりだったが、翔太は少し驚いたように目を丸くした後、にっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。でも、そろそろお暇させていただきます。」
彼はそう言いながら工具箱を片手に立ち上がった。
だが、そのとき。
翔太の指先がテーブルの上の涼子の手に触れた。
それはほんの一瞬だったが、涼子の中で理性の糸が音を立てて緩むのを感じた。
翔太が小さく笑って「またご相談があれば呼んでください」と言い残し、玄関に向かう姿を目で追いながら、涼子の心の中には抑えがたい熱が確実に芽生えていた。
涼子はキッチンテーブルに資料を広げて彼と向き合うが、目の前の若い男性の存在感に不思議と気圧されていた。
大きな手が資料を指し示しながら説明するたび、その手の動きに無意識に目がいく。
力強く、厚みのある手。
夫の手とは違う、何か温かみのある生々しい感覚を連想させた。
「ここを新しいクロスに変えると、部屋全体がもっと明るくなりますよ。」
翔太の声は低く穏やかだったが、その中に若さ特有の熱っぽさが感じられる。
涼子は無意識に頷きながらも、彼の声が耳に響くたび、胸の奥で奇妙な感覚が膨らんでいくのを感じていた。
それが自分でも何なのか分からないまま、打ち合わせを進める。
涼子が押し入れの修繕箇所を説明するため、先に立ってリビングの隅に向かったときだった。
翔太が後ろからついてくる気配を感じ、その距離感が妙に意識される。
押し入れの扉を開け、中の劣化した箇所を指し示そうとした瞬間、翔太がふと涼子の肩に触れた。
「ここですか?」
気軽な仕草だった。
だが、その一瞬の接触が涼子の心臓を跳ねさせた。
触れた部分が熱を帯びたように感じられ、その熱が全身に広がる。
思わず振り向いた涼子の目と翔太の目がぶつかった。
翔太は何事もなかったように軽く笑みを浮かべているが、その視線は涼子の内面を探るように鋭く、まるで心の奥底を見透かしているようだ。
「すみません、急に触ってしまって。」
翔太が一歩引いて謝罪する。
涼子は微笑んで「いえ‥」と答えたが、声が少し震えているのに自分でも気づいていた。
翔太の視線が一瞬、涼子の髪のあたりに留まるのを感じ、何か言いたげな表情を見せたが、結局何も言わずに押し入れを覗き込んだ。
*
打ち合わせが終わり、涼子はキッチンでお茶を淹れた。
緊張感を隠そうと翔太に背を向けて作業をするが、彼がすぐ近くにいる気配に鼓動が早くなる。
お盆を持ってリビングに戻り、テーブルに置いた瞬間、翔太がふと涼子に声をかけてきた。
「おひとりで暮らしているんですか?」
不意打ちの質問だった。
涼子は少し驚いて「いえ、夫と2人暮らしです。」と答えた。
翔太は頷きながら「あれ、そうでしたか。それにしては何だか静かな家ですね…」とつぶやく。
その言葉が妙に胸に刺さった。
翔太は何気ないつもりだったのかもしれないが、涼子にはまるで自分の孤独を見抜かれたように感じられた。
その後も何事もないように会話が続いたが、涼子の中でのざわめきは次第に強くなっていった。
翔太の親しみやすい態度に惹かれる自分を抑えきれないのだ。
夫のいる身として、こんな感情を抱くことは許されない。
それはわかっているのに、翔太の視線や動きに心が揺れるのを止められなかった。
打ち合わせを終えて資料を片付ける翔太に、涼子は何気なく「お茶のお代わりはいかがですか?」と尋ねた。
自分でも驚くほど軽い調子で言ったつもりだったが、翔太は少し驚いたように目を丸くした後、にっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。でも、そろそろお暇させていただきます。」
彼はそう言いながら工具箱を片手に立ち上がった。
だが、そのとき。
翔太の指先がテーブルの上の涼子の手に触れた。
それはほんの一瞬だったが、涼子の中で理性の糸が音を立てて緩むのを感じた。
翔太が小さく笑って「またご相談があれば呼んでください」と言い残し、玄関に向かう姿を目で追いながら、涼子の心の中には抑えがたい熱が確実に芽生えていた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる