天才鍼師の俺に治せないビョーキはない…ハズ!

久遠寺遥

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緑のホクロ

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 次の日、俺は朝早くに目を覚ました。

 夜のあいだ、ずっと体が熱くて、よく眠れなかった。

 俺の体の中で何かが変わった気がする。いつもの朝とは違う感じ。

 もしかして、天眼が開いたのか?

 自分の体を鏡に映し、目を細めて神経を集中する。
 でも、見えるのはいつもの赤い経絡の線だけだった。

 爺ちゃんは、天眼が開くと深部経絡しんぶけいらくが見えるといっていたけど、それらしきものはぜんぜん見えない。

 いつもと違う感じがするのは、気のせいかな?

 俺は梅干し茶漬けを食べて、いつもより早く鍼灸院をオープンさせた。

 今日の予約はゼロだから、早くオープンしてもイミないけど、一応スタンバイしておく。

 ネットで天気予報を確認すると、今日もいい天気だ。暑くなるかも。

 待合室で、何度も読んで暗記しているブラックジャックを読んでいると、美織が入って来た。

「おはようございまーす」 

「おう、美織、早いな」

「お爺様から聞きましたよ。
 龍脈が回復したそうですね」

「爺ちゃんから聞いたって、どこで?」

「ショートメールが入ってました」

「ショートメールでやり取りしてるのか。仲がいいな。
 なにか俺に隠してるだろう?」

「そんなことありませんよ。それより、ちょっといいですか?」

「なに?」

「動かないで下さいよ」

 美織は俺の耳を引っ張って、髪をかき上げた。

「スゴイ。もうできてる!」

「なにが?」

 美織はスマホを取り出した。

「おい、なにができてるんだ?」

 美織は俺を無視してスマホを耳に当てた。

 俺は耳の後ろを触ってみた。
 小さな膨らみができているような気がする。

 急いで洗面台の前に行き、鏡を見たけど、耳の後ろは見えない。

 引き出しの中から手鏡を探し出して、洗面台の鏡と合わせて、耳の後ろを見た。

 何かある。

 鏡に近づいてよく見ると、ホクロのようなものだった。
 だけどホクロにしてはおかしい。緑色だ。

 なんだ、これは?

 美織はこれが何か知っているみたいだ。

 本人の俺が知らないのに、どうして美織が知っているんだ?

 待合室に戻ると、美織の電話は終わっていた。

「おい、これはなんなんだ?」 

「お爺様がすぐに来ます。それまで、ここで待っててくださいね」

 美織は裏庭に出て行った。

「ちょっと、まって。説明してくれよ」

「もうすぐです。天眼が開きますよ」

「どうして天眼のこと知ってるんだ?」

「話すと長くなるから、全部終わってから説明しまーす」

「全部終わってから?」

「はい」

「爺ちゃんも、美織も、アヤシイ。
 なにを隠してるんだ?」

「キャタピラちゃんたちが大きくなってる!」

「え?」

「ほら」

 虫かごの中のイモムシが巨大化していた。思いっきり葉を食べている!

「陽気の流れって、スゴイですね」

「これって、龍脈の影響?」
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