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第1章 大学生になった日南田と、フリーターの陽花里
1-2 「いじめを見て見ぬ振りした過去」をやり直せるなら
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そう思っていると、陽花里は嬉しそうにスマホにインストールしていた曲を調べ始めた。
「フフフ……。これで影李のアルバムは4枚コンプリートだね」
「本当に、陽花里は影李の曲が好きなんだね」
そう日南田が尋ねると、陽花里は少しだけ寂しそうにうなづいた。
「そりゃそうだよ……。だってさ……。ひきこもっていた時に支えになってくれたのは……。影李の曲と、お兄ちゃんだったから……」
「影李の曲が、か……」
「うん。彼女もいじめに遭っていたみたいでさ。……それで、そんな彼女の体験や想いを歌った曲が私にも凄い共感出来て……。それで、立ち直れたんだ……」
「そうか……」
そこであえて日南田はとぼけた。
……実は、影李と日南田は高校時代には同級生だったためだ。
そして、彼女のいじめを日南田は『見て見ぬふり』をしていた。
「自分がいじめに遭っていなかったから、赤の他人のいじめには関心がなかった」
という理由ゆえだったのだが、その時のことはいまだに日南田にとっては罪悪感として引きずっている時期があった。
そんな日南田はコーヒーをまた一口飲んでいると、陽花里がぽつりとつぶやいた。
「影李はさ。いじめられて、ひきこもったことが、歌い手になることを決めたきっかけだったんだよね?」
「そうみたいだね……」
「だからさ。もし、だけどさ……。影李がいじめられてなくて……歌い手にならなかったら、私はどうなっていたんだろうな……」
そういいながら陽花里は日南田の目をうるんだ瞳でまっすぐと見つめた。
「……それは……」
「……あはは、ごめんね? お兄ちゃんに聴いても分からないか。それじゃ私、お風呂入ってくるね?」
だが、そういうと陽花里はすっくと立ちあがり、浴室に入っていった。
そして誰も居なくない部屋で、日南田はつぶやいた。
「もしも、影李さんがいじめられてなかったら……か……」
だが、そう思いながらも猛烈な睡魔に襲われだしたことに日南田は気が付いた。
……コーヒーをテーブルの上に置くことも出来ないまま、
「僕が……もし……あの時……」
そうつぶやきながら、日南田は眠りに落ちていった。
そして。
「……た、日南田!」
「え?」
「日南田、早く起きなさい!」
日南田は眼を開けると、目の前には母親がいた。
最後に母親にあった先月よりも明らかに若く見える。
「あ、あれ……母さん? ……ここは……実家?」
そして自分が寝ていた場所も、かつて住んでいた実家のベッドの上であった。
わけが分からないといった具合に周囲を見ていると、母親は少し呆れたようにつぶやく。
「はあ……。なに、寝ぼけてんの?」
「え?」
「まあいいけど、ご飯できてるから、着替えて早く来なさい? まったく……。陽花里に続いて、あんたまでおかしくなったら、困るんだから……」
そういうと母親は出ていった。
「……まさか……」
そう思ってカレンダーを見ると、時間は4年前だった。
それを見た日南田は、思わずびくり、とした。
「僕……昔に戻ってきたんだ……」
先ほどまで見ていた『大学生の日南田』こそが夢だった、とも一瞬思ったが、それはありえない。
というのも、自身が通っていた大学での『履修登録のやり方』や『講義の内容』をすべて鮮明に覚えていたためだ。
もし夢であれば『高校時代の自分が知りえないはずの情報』が夢の中に出るわけがない。
もっというと「高校3年で習う授業内容」を現在の時点で記憶している自分がいるので、恐らく受験はかなり有利に立ち回れることがわかる。
そう思った日南田は、自身がタイムリープしたことを確信した。
(ということは、陽花里はまだ……)
……そう想いながら、日南田は着替えた後に隣の部屋をノックした。
「ねえ、陽花里? 今日も登校しないの?」
「うるせえよ、クソ兄貴!」
隣の部屋では、陽花里がひきこもっていた。
4年後の姿からは想像も出来ないほど荒々しく攻撃的な口調で、自身に返答したのを見て、日南田は思わず身体を震わせた。
「フフフ……。これで影李のアルバムは4枚コンプリートだね」
「本当に、陽花里は影李の曲が好きなんだね」
そう日南田が尋ねると、陽花里は少しだけ寂しそうにうなづいた。
「そりゃそうだよ……。だってさ……。ひきこもっていた時に支えになってくれたのは……。影李の曲と、お兄ちゃんだったから……」
「影李の曲が、か……」
「うん。彼女もいじめに遭っていたみたいでさ。……それで、そんな彼女の体験や想いを歌った曲が私にも凄い共感出来て……。それで、立ち直れたんだ……」
「そうか……」
そこであえて日南田はとぼけた。
……実は、影李と日南田は高校時代には同級生だったためだ。
そして、彼女のいじめを日南田は『見て見ぬふり』をしていた。
「自分がいじめに遭っていなかったから、赤の他人のいじめには関心がなかった」
という理由ゆえだったのだが、その時のことはいまだに日南田にとっては罪悪感として引きずっている時期があった。
そんな日南田はコーヒーをまた一口飲んでいると、陽花里がぽつりとつぶやいた。
「影李はさ。いじめられて、ひきこもったことが、歌い手になることを決めたきっかけだったんだよね?」
「そうみたいだね……」
「だからさ。もし、だけどさ……。影李がいじめられてなくて……歌い手にならなかったら、私はどうなっていたんだろうな……」
そういいながら陽花里は日南田の目をうるんだ瞳でまっすぐと見つめた。
「……それは……」
「……あはは、ごめんね? お兄ちゃんに聴いても分からないか。それじゃ私、お風呂入ってくるね?」
だが、そういうと陽花里はすっくと立ちあがり、浴室に入っていった。
そして誰も居なくない部屋で、日南田はつぶやいた。
「もしも、影李さんがいじめられてなかったら……か……」
だが、そう思いながらも猛烈な睡魔に襲われだしたことに日南田は気が付いた。
……コーヒーをテーブルの上に置くことも出来ないまま、
「僕が……もし……あの時……」
そうつぶやきながら、日南田は眠りに落ちていった。
そして。
「……た、日南田!」
「え?」
「日南田、早く起きなさい!」
日南田は眼を開けると、目の前には母親がいた。
最後に母親にあった先月よりも明らかに若く見える。
「あ、あれ……母さん? ……ここは……実家?」
そして自分が寝ていた場所も、かつて住んでいた実家のベッドの上であった。
わけが分からないといった具合に周囲を見ていると、母親は少し呆れたようにつぶやく。
「はあ……。なに、寝ぼけてんの?」
「え?」
「まあいいけど、ご飯できてるから、着替えて早く来なさい? まったく……。陽花里に続いて、あんたまでおかしくなったら、困るんだから……」
そういうと母親は出ていった。
「……まさか……」
そう思ってカレンダーを見ると、時間は4年前だった。
それを見た日南田は、思わずびくり、とした。
「僕……昔に戻ってきたんだ……」
先ほどまで見ていた『大学生の日南田』こそが夢だった、とも一瞬思ったが、それはありえない。
というのも、自身が通っていた大学での『履修登録のやり方』や『講義の内容』をすべて鮮明に覚えていたためだ。
もし夢であれば『高校時代の自分が知りえないはずの情報』が夢の中に出るわけがない。
もっというと「高校3年で習う授業内容」を現在の時点で記憶している自分がいるので、恐らく受験はかなり有利に立ち回れることがわかる。
そう思った日南田は、自身がタイムリープしたことを確信した。
(ということは、陽花里はまだ……)
……そう想いながら、日南田は着替えた後に隣の部屋をノックした。
「ねえ、陽花里? 今日も登校しないの?」
「うるせえよ、クソ兄貴!」
隣の部屋では、陽花里がひきこもっていた。
4年後の姿からは想像も出来ないほど荒々しく攻撃的な口調で、自身に返答したのを見て、日南田は思わず身体を震わせた。
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