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第1章 美少年「月潟北斗」も彼女の主観では「普通」です
1-1 我々が考える『現代知識無双』を逆転させるとこうなる
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「さあ、早速哀れな人々を救うために頑張らなければいけませんわね!」
しばらく私が部屋の中を探索しながら『日本人』から聞いた情報と、今置かれている状況を整理し始めた。
(本当に『プラスチック』が簡単に手に入るのですね、この世界は……。こんなにプラごみがあれば、ホムンクルスをどれだけ作れるのかしら……)
……そう思うほど、この家はいたるところに『プラごみ』や壊れた『家電』が散乱している。
(あら……うそでしょ!? こ、この缶……希少金属の『アルミニウム』じゃない!? どうして、こんなにたくさん……?)
更に驚いたのは、水に浮くほど軽量なのに細工しやすく、錬金術において重要な特徴を持つため、元の世界では大変希少な品で知られている『アルミニウム』が普通に空き缶として存在したことだった。
(ひょっとしてこの世界では※ボーキサイトは……ありふれた鉱物なのかしら……後で調べてみないと……けど、今は現状の整理が先決ですわね……)
(※アルミニウムの原料)
部屋に散乱したゴミを見ても分かることだが、どうやら我が家の家庭環境は、あまりよくないことが分かった。
「うーん……そうよ、思い出してきた……この家は……お母さまが事故でなくなってしまったのよね……」
私はどうやら、前世の記憶を思い出すとともに、今世の記憶が押し出されてしまったようだ。両親の顔などはうっすらと覚えているが、母親を亡くした心痛などはすでに消えてしまっている。
(そういえば『この世界のお父様』はどこにいるのかしら……お仕事中? ……違うわね、確か……)
そういうと、私はリビングに向かった。
「うう……どうして、死んだんだよ……なあ……」
そこには、私にそっくりな……即ち美の化身と見まがうような……美しい容姿の※男性が泣きながらウイスキーを煽っていた。
(※しつこいようですが、これは彼女の主観であり、実際の彼は普通のおっさんです)
……彼が、私の『この世界のお父様』だったことを思い出した。
手には死んだお母さまの写真があり、そして泣きながらやけ酒を煽っている。
(お父様……お母さまを失った心痛から、まだ立ち直れていないのですわね……?)
それもそのはずだ。
そもそも、まだお母さまが事故で命を落としたのは、ほんの2週間ほど前のことだ。
(……そうよ、だから私も記憶がよみがえったのね……? この辛い思い出を押し出すために……)
私が『前世の記憶』がよみがえったのは、『記憶が戻る前の私』も同様に、母を失った心痛を忘れるためだったのかもしれない、と思った。
しばらくすると、お父様は私に対して精気を失った目でこちらを見つめてきた。
「朱美か……」
私の名前は『朱美』と呼ぶことが分かった。
嗚呼、なんて素敵な名前なんでしょう! まさに錬金術師(アルケミスト)の私にふさわしい崇高な名前!
そう思いながらも私はお父様に尋ねる。
「ええ、お父様……。まだ、お辛いのですか?」
「いや……お父さんは平気だ。……それより、夕飯はそこに買ってあるから、食べてくれ、な?」
そうお父様は隣に置いてあった袋を指さした。
(なんてこと……。あんなに貴重で便利な素材『プラスチック』をこんな使い捨ての道具に使うなんて……!)
そう思いながらも、私は袋の中を見た。
そこに入っているのはやはりプラスチックの袋に包まれた食パンとジャム、そしてアルミニウムの袋に包まれたチーズが入っていた。
……なんで、この世界はこんなにプラスチックとアルミニウムを贅沢に扱うのだろう。
(これだけでは栄養が足りませんわね……。それに、お父様のほうは最近は殆ど食べていないのでしょう……。そうね、私がお父様のためにご飯を作ってあげないと! ……嗚呼、なんて私は優しい娘なの!? お父様はなんて幸せ者なのかしら!)
まだ幼い少女でありながら、父親のために食事を用意してあげるなんて!
そんな自分自身の優しさに感動しながら、私はキッチンに向かった。
「ふむ……これが、冷蔵装置……これが簡易オーブン……ですわね? そしてこれは……なるほど、※マイクロ波を照射して行う簡易的な調理装置ね」
(※電子レンジのこと)
私はキッチンに置いてある家電を一通り見て、そして大体の機能を理解した。
初めて見るものも多かったが、さすがは天才の私だ。簡単なものばかりで操作自体は難しくないことが分かった。
今回使うのは、この簡易オーブン……『トースター』と書いてある……だけで問題なさそうだ。
……だが、私はこのトースターの機能を見て、少し呆れた。
「それにしても、随分機能が原始的ですわね……。パンを焼くために、わざわざ自分で色々セットしないと行けないなんて……そうよね、早速発明してみようかしら!」
そういうと、私は近くに置いてあった、どう見ても壊れている※穀物専用の調理機から銅線を拝借した。
(※炊飯器のこと)
幸いなことに、冷蔵装置の中には腐りかけてはいたが野菜がいくつか入っていた。
「えっと、まずはこの銅線に……レモンを使って、これにこれをかけて、と……」
どうやら、この世界では、特定の鉱物に腐りかけの野菜、そして植物性の酸をかけることでマナが発生する『アシッドビルディング現象』の発見がされていないのだろう。
というより、マナという概念自体がこの世界では十分に研究されないまま廃れたのだろう。
これを使うことで、大量のマナを生み出すことが出来、動力源となる。
「そして、プラスチックに台所にあった調味料と、これとこれをまぜて、と……」
さらに、人間のような柔軟な動作を指せるために必要な『グレイドルファイヤーランチ』の技術もないことは、家電を見ただけで分かった。
「そしてこれに包丁を使って……出来ましたわ!」
そして私は、この世界に来て初めての発明を終わらせた。
それは、簡単な『ピザトースト調理機』だ。
オーブントースターの上に装着して、パンと野菜やチーズとお皿をセットすると、自動的に野菜がカットされるとともに具材がパンの上に乗せられ、それが皿の上に乗って出てくる。
タイマー機能もあるので、毎朝7時には美味しいピザトーストを食べられる優れモノだ。
※紙製の皿を使っているので、洗い物の心配もしなくていい。
(※読者の皆さんは、錬金術の知識なしに、専用のもの以外の紙皿をオーブントースターに置くような、バカな真似はしないでください)
「この世界は、銅線を使って何らかのエネルギーを送って、機械を動作させているみたいだけど……。本当に無駄なことをしていますわね……」
また、私の作ったこの素晴らしい発明品は、アシッドビルディング現象を利用した装置なので、10年は外部からエネルギーを用いなくても動く。
「さあ、まずは試運転ですわね……」
そういって私は冷蔵装置に入っていた野菜を取り出し、それを放り込んだうえでスイッチを入れる。
ガタンガタンと音がしながら野菜が切られる音や、チューブから調味料が出る音が聞こえる。
そして数秒後。
「……よし、出来ましたわ」
私の作った装置は簡易的ながら時間歪曲機がついており、数秒でピザトーストが炊きあがる仕組みになっている。
そのピザトーストを食べて、私は感動にうち震えた。
「嗚呼、美味しい……さすが天才の私……才能が怖すぎる……!」
私が喜んだのは、調理の成功だけではない。
この『日本』という世界でも、私の錬金術の知識は十分に使えることが証明できたのだ!
ありあわせの道具だけでこのような装置を作った私は、自分の才能に恐怖しながらもピザトーストを完食した。
「さあ、後はお父様の分だけど……お父様、これだけじゃ元気が出ませんよね……?」
そう思って、私は具材のアレンジをすることを考えて、戸棚を開けた。
「うーん……あら、これは……!」
そこには、緑色の粉末のパウダーがあった。
舐めてみると、ツンとくる刺激が来る。……パッケージには『ワサビ』と書いてある。
そして隣にあったのは、黄色の同じようなパウダーだ。パッケージには『からし』と書いてある。
……分かった、これは気付けのための薬品に違いない!
「そうよ、これだわ! こいつを装置の中に組み込んで、パンの中に練りこめばいいのよ! そうすれば、きっと元気が出るわよね、お父様は!」
嗚呼、私の頭がさえわたる!
これを食べることでお父様も元気になるに決まってる!
「嗚呼、本当に私は慈愛の化身よね……。お父様のために、あくなき探求心を発揮して、ピザトーストを作るのだから……」
こういう刺激のある食材は、ケチケチせずにドバっと一缶全部入れなくては!
どうせ、私はこの世界で億万長者になれるのだから、後で買って返せばいい!
そう思いながら、私はこのワサビとからしを全て調理機の中に放り込んだ。
しばらく私が部屋の中を探索しながら『日本人』から聞いた情報と、今置かれている状況を整理し始めた。
(本当に『プラスチック』が簡単に手に入るのですね、この世界は……。こんなにプラごみがあれば、ホムンクルスをどれだけ作れるのかしら……)
……そう思うほど、この家はいたるところに『プラごみ』や壊れた『家電』が散乱している。
(あら……うそでしょ!? こ、この缶……希少金属の『アルミニウム』じゃない!? どうして、こんなにたくさん……?)
更に驚いたのは、水に浮くほど軽量なのに細工しやすく、錬金術において重要な特徴を持つため、元の世界では大変希少な品で知られている『アルミニウム』が普通に空き缶として存在したことだった。
(ひょっとしてこの世界では※ボーキサイトは……ありふれた鉱物なのかしら……後で調べてみないと……けど、今は現状の整理が先決ですわね……)
(※アルミニウムの原料)
部屋に散乱したゴミを見ても分かることだが、どうやら我が家の家庭環境は、あまりよくないことが分かった。
「うーん……そうよ、思い出してきた……この家は……お母さまが事故でなくなってしまったのよね……」
私はどうやら、前世の記憶を思い出すとともに、今世の記憶が押し出されてしまったようだ。両親の顔などはうっすらと覚えているが、母親を亡くした心痛などはすでに消えてしまっている。
(そういえば『この世界のお父様』はどこにいるのかしら……お仕事中? ……違うわね、確か……)
そういうと、私はリビングに向かった。
「うう……どうして、死んだんだよ……なあ……」
そこには、私にそっくりな……即ち美の化身と見まがうような……美しい容姿の※男性が泣きながらウイスキーを煽っていた。
(※しつこいようですが、これは彼女の主観であり、実際の彼は普通のおっさんです)
……彼が、私の『この世界のお父様』だったことを思い出した。
手には死んだお母さまの写真があり、そして泣きながらやけ酒を煽っている。
(お父様……お母さまを失った心痛から、まだ立ち直れていないのですわね……?)
それもそのはずだ。
そもそも、まだお母さまが事故で命を落としたのは、ほんの2週間ほど前のことだ。
(……そうよ、だから私も記憶がよみがえったのね……? この辛い思い出を押し出すために……)
私が『前世の記憶』がよみがえったのは、『記憶が戻る前の私』も同様に、母を失った心痛を忘れるためだったのかもしれない、と思った。
しばらくすると、お父様は私に対して精気を失った目でこちらを見つめてきた。
「朱美か……」
私の名前は『朱美』と呼ぶことが分かった。
嗚呼、なんて素敵な名前なんでしょう! まさに錬金術師(アルケミスト)の私にふさわしい崇高な名前!
そう思いながらも私はお父様に尋ねる。
「ええ、お父様……。まだ、お辛いのですか?」
「いや……お父さんは平気だ。……それより、夕飯はそこに買ってあるから、食べてくれ、な?」
そうお父様は隣に置いてあった袋を指さした。
(なんてこと……。あんなに貴重で便利な素材『プラスチック』をこんな使い捨ての道具に使うなんて……!)
そう思いながらも、私は袋の中を見た。
そこに入っているのはやはりプラスチックの袋に包まれた食パンとジャム、そしてアルミニウムの袋に包まれたチーズが入っていた。
……なんで、この世界はこんなにプラスチックとアルミニウムを贅沢に扱うのだろう。
(これだけでは栄養が足りませんわね……。それに、お父様のほうは最近は殆ど食べていないのでしょう……。そうね、私がお父様のためにご飯を作ってあげないと! ……嗚呼、なんて私は優しい娘なの!? お父様はなんて幸せ者なのかしら!)
まだ幼い少女でありながら、父親のために食事を用意してあげるなんて!
そんな自分自身の優しさに感動しながら、私はキッチンに向かった。
「ふむ……これが、冷蔵装置……これが簡易オーブン……ですわね? そしてこれは……なるほど、※マイクロ波を照射して行う簡易的な調理装置ね」
(※電子レンジのこと)
私はキッチンに置いてある家電を一通り見て、そして大体の機能を理解した。
初めて見るものも多かったが、さすがは天才の私だ。簡単なものばかりで操作自体は難しくないことが分かった。
今回使うのは、この簡易オーブン……『トースター』と書いてある……だけで問題なさそうだ。
……だが、私はこのトースターの機能を見て、少し呆れた。
「それにしても、随分機能が原始的ですわね……。パンを焼くために、わざわざ自分で色々セットしないと行けないなんて……そうよね、早速発明してみようかしら!」
そういうと、私は近くに置いてあった、どう見ても壊れている※穀物専用の調理機から銅線を拝借した。
(※炊飯器のこと)
幸いなことに、冷蔵装置の中には腐りかけてはいたが野菜がいくつか入っていた。
「えっと、まずはこの銅線に……レモンを使って、これにこれをかけて、と……」
どうやら、この世界では、特定の鉱物に腐りかけの野菜、そして植物性の酸をかけることでマナが発生する『アシッドビルディング現象』の発見がされていないのだろう。
というより、マナという概念自体がこの世界では十分に研究されないまま廃れたのだろう。
これを使うことで、大量のマナを生み出すことが出来、動力源となる。
「そして、プラスチックに台所にあった調味料と、これとこれをまぜて、と……」
さらに、人間のような柔軟な動作を指せるために必要な『グレイドルファイヤーランチ』の技術もないことは、家電を見ただけで分かった。
「そしてこれに包丁を使って……出来ましたわ!」
そして私は、この世界に来て初めての発明を終わらせた。
それは、簡単な『ピザトースト調理機』だ。
オーブントースターの上に装着して、パンと野菜やチーズとお皿をセットすると、自動的に野菜がカットされるとともに具材がパンの上に乗せられ、それが皿の上に乗って出てくる。
タイマー機能もあるので、毎朝7時には美味しいピザトーストを食べられる優れモノだ。
※紙製の皿を使っているので、洗い物の心配もしなくていい。
(※読者の皆さんは、錬金術の知識なしに、専用のもの以外の紙皿をオーブントースターに置くような、バカな真似はしないでください)
「この世界は、銅線を使って何らかのエネルギーを送って、機械を動作させているみたいだけど……。本当に無駄なことをしていますわね……」
また、私の作ったこの素晴らしい発明品は、アシッドビルディング現象を利用した装置なので、10年は外部からエネルギーを用いなくても動く。
「さあ、まずは試運転ですわね……」
そういって私は冷蔵装置に入っていた野菜を取り出し、それを放り込んだうえでスイッチを入れる。
ガタンガタンと音がしながら野菜が切られる音や、チューブから調味料が出る音が聞こえる。
そして数秒後。
「……よし、出来ましたわ」
私の作った装置は簡易的ながら時間歪曲機がついており、数秒でピザトーストが炊きあがる仕組みになっている。
そのピザトーストを食べて、私は感動にうち震えた。
「嗚呼、美味しい……さすが天才の私……才能が怖すぎる……!」
私が喜んだのは、調理の成功だけではない。
この『日本』という世界でも、私の錬金術の知識は十分に使えることが証明できたのだ!
ありあわせの道具だけでこのような装置を作った私は、自分の才能に恐怖しながらもピザトーストを完食した。
「さあ、後はお父様の分だけど……お父様、これだけじゃ元気が出ませんよね……?」
そう思って、私は具材のアレンジをすることを考えて、戸棚を開けた。
「うーん……あら、これは……!」
そこには、緑色の粉末のパウダーがあった。
舐めてみると、ツンとくる刺激が来る。……パッケージには『ワサビ』と書いてある。
そして隣にあったのは、黄色の同じようなパウダーだ。パッケージには『からし』と書いてある。
……分かった、これは気付けのための薬品に違いない!
「そうよ、これだわ! こいつを装置の中に組み込んで、パンの中に練りこめばいいのよ! そうすれば、きっと元気が出るわよね、お父様は!」
嗚呼、私の頭がさえわたる!
これを食べることでお父様も元気になるに決まってる!
「嗚呼、本当に私は慈愛の化身よね……。お父様のために、あくなき探求心を発揮して、ピザトーストを作るのだから……」
こういう刺激のある食材は、ケチケチせずにドバっと一缶全部入れなくては!
どうせ、私はこの世界で億万長者になれるのだから、後で買って返せばいい!
そう思いながら、私はこのワサビとからしを全て調理機の中に放り込んだ。
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