プラごみはホムンクルスの餌ですわ! 最強錬金術師、朱美が青森県の小都市で始める『ファンタジー知識無双』

フーラー

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第1章 美少年「月潟北斗」も彼女の主観では「普通」です

1-5 ムカつく奴と優しい奴は両立する

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それからしばらくして、お昼の時間になった。
周囲は私が天才だということが分かってしまったのだろう、少し遠巻きに、どこか怖いものを見るような姿を見せる。


「ねえ、朱美さん? お昼一緒に食べよっか?」
「ええ、ありがとう、北斗さん」


そうだ、北斗さんは友達が多い方だったけど、いつも私と一緒にお昼を食べてくれていたんだ。

……母を失い、父も憔悴していた私に対して、いつも気にかけてくれていたことを私は思い出してきた。

「記憶を取り戻す前の私」が受けた恩は、必ず返さねば。


確か、男性が生涯で望むものは、金と女と名誉だとセドナお父様は言っていた。
それには一生不自由しないような人生を彼には与えて上げなければならない。


「ねえ、北斗さん……。信じてくれました? 私が『転生者』だってこと……」


その質問に、北斗さんは少し信じられないという様子を見せながらも、答えた。

「え? ……あ、いや……正直、さっきまで中二病を発症したのかと思ったけど……。どうやら、本当みたいだね。錬金術師っていうのはまだ信じられないけど……」


よかった、信じてもらえたみたいだ。


「フフフ、そうなんですよ。今度、私の発明品もお見せしますね?」
「う、うん、そうだね……」

だが、北斗さんの表情はどこか暗い。



は! そういうことね!


北斗さんは『可哀そうな私』を助けることによって『優越感』を抱いていたのだ!
そして今、私が彼よりもはるかに優秀で、美しいということ知って、傷ついているのだ!


嗚呼、何てこと!
きっと彼の頭の中では、恐ろしいほどの嫉妬の思いが渦巻いているに違いない!


(北斗さん……。辛いでしょうね、殿方が好きな女性に敗北すること……その苦しみは痛いほど分かりますわ……! 嗚呼、私が天才であるゆえに、彼はどれほど嫉妬で苦しんでいるのでしょう!)


おお、神よ、あなたは残酷だ!
私という天才の存在が、どれほど彼という哀れな弱者を傷つけるか分かっているのでしょうか!


……そう思いながら、私は必死にフォローする言葉を探す。


「で、ですからその……北斗さん……」
「え?」
「私が優秀なのは、前世がある『人生2週目』だからですわ! だから、その……北斗さんが私よりも不細工で勉強が出来なくても、恥じることはありません! 北斗さんは、北斗さんなりに頑張ってください!」
「そ、そう……あ、ありがとう……」


……やはり、北斗さんの表情は明るくない。
それはそうだろう、私のように顔も性格も良い天才が隣にいたら、誰だって辛いはずだ。近いうちに、必ずこの『天才税』の支払いはいたします。


「まあ、僕はいいんだけど……母さんが……」
「え?」
「ううん、何でもない! ……ご馳走様、僕はちょっと友達と遊んでくるよ! そうだ、朱美さんも一緒に来る?」


誘って貰ってうれしいが、今は図書室で勉強を優先させたい。

……それに、北斗さんとばかり一緒にいたら、この美しい私と一緒にいることに周囲はうらやむはずだ。
そして、周りの人たちが『何お前、美しい朱美様に近づいてんだよ!』と、彼に危害を加える可能性がある。


この優しい私がいるのだから、彼をいじめ被害者に……そして、他の男子生徒をいじめ加害者にすることだけは避けなくては!


「ごめんなさい、今日からしばらく図書室に行きたいので……」
「そっか……分かった、それじゃあね!」

そういうと、北斗さんは校庭に駆け出していった。




それからしばらくの間、昼休みは図書室で本を読んでいた。
自然科学の知識は十分に間に合っているので、興味があるのはもっぱら歴史や社会問題についてだ。


「なるほど……。この世界の問題は……家事負担の問題、ごみ処理の問題……それから女性差別の問題に男性の孤独問題、それから少子化と……やはり、目白押しですわね」


私は、書籍をもとにこの世界にはびこる問題について理解した。


「ですが……。皮肉なのは、私たちの世界では『お宝』として扱われていたプラスチックが、よくて資源、下手すればゴミとして使われていることですね」


なんという皮肉だろう!


ホムンクルスを養うためにこれ以上ない栄養源であるプラスチックがふんだんにあるのであれば、大量のホムンクルスを作ることが出来るのに!


また、少子化問題についてはやはり女性のキャリアの問題や、男性が性愛を得られない問題などについても、ホムンクルスの製造や『アルミニウム』を使った発明によって何とかなりそうだ。




……だが、私は現在悩んでいたのは北斗さんのことだった。
身近な人間一人幸せに出来ないのであれば、天才の名が聞いてあきれる。


「北斗さん……。きっと、今頃私のことで悩んでいますよね……。私はこんなに美しいのですもの。きっと彼は私を好きに違いありませんわ? そんな私に、学力で負けてしまうのですもの、どれほど彼を傷つけてしまったのか……」


私はそこらの『自分しか見えていない転生者』とは根本から違う。
優秀なものは常に、その優秀さゆえに『加害者』になることを意識しなければならない。……だからこそ、私は彼に代価を支払うべきなのだ。


「っと……そろそろ戻らないと行けませんわね」

そう思いながらも、そろそろ昼休みが終わることに気が付いた私は、優雅に席を立ち上がり、いくつかの本を借りて図書室を後にした。



そして教室に戻る際に、誰も使っていないはずの教室から声が聞こえてきた。


「……ていうかさ、あいつウザくね?」
「ああ、分かる。朱美の奴さ、北斗さんにべたべたして嫌だよね」


どうやら、私のクラスにいる女子生徒だろうか。
彼女たちはどうやら、私の悪口を言っているようだった。


(嗚呼、やっぱり私をうらやんでいますのね! 北斗さんは、私に比べれば凡庸な方ですが……彼女たちには『美少年』に見えるのですわね?)


「しかもさ、今日のあいつ見た? すげーミヤセンを見下してたよね?」
「うん、分かるわ! 自分が頭いいからって、嫌味っぽいよね……。あいつ、いつか泣かせてやらね?」
「いいわね! ……まあ、今度嫌がらせしてやろ? ま、北斗君にバレないようにさ。あいつ、朱美をいじめると怒るからな……」
「うん。……けど、良いよな、朱美の奴さ。近所に住んでるってだけで北斗君と仲良くしてて……」


嗚呼、やはりこうなりましたか……。
私があまりに美しく、しかも性格も優しいということが彼女たちを傷つけてしまっているのですね?


(けど、私は凡百の転生者とは違いますわ! 『復讐ざまぁ』など、私の趣味ではありませんもの!)


並みの転生者なら、ああいう自分に不満を持つような相手を徹底的に叩き潰すものもいるのだろう。
実際、私の天才的な頭脳をもってすれば、あんな女たちなど明日にでも永遠にこの世から消し去ってしまうことなど容易だ。


……しかし、私はそんな真似はしない。
彼女達のああいう醜い感情もまた、私は愛してあげるのだ!


(……嗚呼、私はなんて優しいのかしら! 私の心の広さには太平洋ですらかすんでしまうでしょうね……!)


そう思いながら、私はその場を後にした。
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