ざまぁ担当の男たちが『アホの子』すぎて自滅ばかりするから、何もしてないのに『最凶の悪役令嬢』にされてるんですけど?

フーラー

文字の大きさ
7 / 29
第1章 価値観が古く、親友にボコされる運命の男『オロロッカ』

1-4 海外旅行経験者は、もうオチが薄々わかるかもしれない

しおりを挟む
それからしばらくして、行きつけの喫茶店にアンジュとオロロッカは到着した。


「ここが俺の好きなカフェでさ。エルフが経営しているんだ。それとメニューは、現実世界のものに近いものが出るから、安心してくれ」


そう、オロロッカは付け加えた。

「へえ……エルフがこの世界にはいるんですか?」
「ああ。エルフやドワーフ、吸血鬼やハーフリング……。基本的なファンタジーの種族は全部いると思っていいかな」
「そうなんですか……楽しくていいですね! ……それにしても、ここはゲームの世界みたいですけど……なんのゲームなんでしょうね?」


そうアンジュが不思議そうに尋ねるが、それについてはオロロッカも首を振った。


「さあ……。正直俺には分からないな。せめて知ってるゲームの世界に転生できていれば、攻略しやすかったんだけどな……。ただ、ゲームの世界なのはこの大陸だけみたいだな」
「そうなんですか?」
「ああ。人間が希少種でエルフが80%を占めるの大陸や、日本妖怪が出る大陸、色々あるみたいだな……まあ、俺たちには関係ない話だけどな」


実際、もしも我々が『ゲームの世界』に転生したとしても、それが『何のゲームなのか』を本人たちが知らなければ、現代知識を武器に戦うしかない。


そしてオロロッカはその現代知識をうまく使えずに失敗したため、現地の住民と同じような生活をせざるを得ないのである。
唯一の幸いは、言語体系が日本のそれと同一なことと、時間の流れなどが現実世界と同じことだけだろう。


そんな風に話をしていると、エルフの店員がやってきた。

(うわ、綺麗……)

エルフの御多分に漏れず、彼は秀麗な容姿をしているのを見て、思わずアンジュはつぶやいた。


「注文をお取りしたいのですが、よろしいですか?」
「えっあ、はい……」


突然そういわれたこともあり、アンジュはメニューを見ないで尋ねた。


「……そうだ、ホットケーキとか、あります?」
「ほ、ホット……?」
「ないなら、ソフトクリームなんかあると嬉しいですけど……」


そのアンジュの注文に、エルフはきょとんとしていた。


「あ……すみません、その、えっと……それは……どんな料理ですか?」


困惑の表情を浮かべるエルフ。


「ええ? ここって喫茶店ですよね、このお店? ソフトクリームがないんですか?」
「ああ、ゴメン、アンジュ。実はさ……えっと……」


それを見て説明しようとするオロロッカだが、詳しく解説するのは彼の頭では難しい。
だが、そこに横から、端正な容姿をした青年が声をかけてきた。


「この大陸ではさ。『和製英語』は伝わらないんだよ」



(うわ、この人も綺麗……。どこかの俳優さんみたい……)


そうアンジュは思わず思って、彼を見据えた。
そしてその男は、にっこりと笑ってオロロッカに手を振る。



「よう、久しぶりじゃんか、オロロッカ!」
「セドナ! 珍しいじゃんか、うちの領地の方まで来るなんて!」


普段は仏頂面をしていることが多いオロロッカが、珍しく嬉しそうにセドナと呼ばれたその男に声をかけた。

セドナはアンジュに向き直り、


「ホットケーキって言葉は和製英語だからな。『パンケーキ』なら大丈夫だ」


厳密には両者は微妙に違うものだが、アンジュは突っ込むことはせずにエルフに少し申し訳なさそうな表情で答える。


「あ、そうなんですね。すみません、パンケーキを一つください」
「ああ、パンケーキのことですね? かしこまりました」


アンジュがそういうと、エルフの店員は納得したらしく去っていった。


「ありがとうございます、えっと……」
「ああ、こいつはセドナ。俺の数少ない友人でさ。すっげーいい奴なんだよ」


そうオロロッカは自慢気に答える。
そしてセドナは、興味深そうにアンジュのことを見つめた後、嬉しそうに笑う。


「へえ……あんたは転移者なんだな。初めまして、俺はセドナっていうんだ。俺も異世界から転移してきたから、ある意味仲間だな」
「そうなんですか! ……私はアンジュって言います。結構この世界には転移者や転生者の方ってが多いんですか?」


そういわれて、セドナは少し首をかしげて考えるそぶりを見せた後、答える。


「そうだな、一万人に一人ってところかな。かなり珍しいけど、一年に一回は会えるってくらいかな。……まあ、転移前の俺は、あんたらみたいな『日本人』じゃないんだけどさ」
「そういえばセドナさん、ちょっと日本人っぽくないですものね」


セドナが笑みを浮かべると、アンジュも納得したようにうなづく。
彼の人懐っこい笑みを見て、警戒を解いたのかアンジュはニコニコと笑って尋ねる。


「ところセドナさんは、普段何をされてるんですか?」
「え? ああ。俺は、この世界では外交官として、あちこち飛び回ってるんだ」
「セドナは、頭いいからな。羨ましいよ」
「あはは、そうか? ……正直俺は、今の仕事より介護や福祉の仕事をしたいんだけどな……。頼まれると、断れなくてさ」


オロロッカが少し羨望の目を向けたのに対して謙遜するように、セドナは答える。


「それじゃ、俺はまだ仕事あるから。また、何かあったら宜しくな?」
「ええ、今度は一緒に食事でもしましょうね、セドナさん?」
「……いや、俺は……まあいいや、じゃあな、オロロッカ」
「ああ、またな」


そういうとセドナは、ニコニコと笑って去っていった。




その様子を見て、少し驚いた様子でアンジュは尋ねる。


「凄い素敵な方でしたね、セドナさんって……その……見た目も綺麗ですし……」
「ああ。あいつは裏表がなくってさ。あちこちに友人がいるらしいんだ。あと、めちゃくちゃ頭がいいから、いろんな国で仕事しているよ」
「頭がいいんですか?」
「ああ。……正直『こっちの世界』の男の中ではナンバーワンかもな」


この大陸の男性は、転移者や転生者を含め、基本的に頭が悪い。
……だが、セドナは例外的に高い知力を持っている上に身体能力も高いため、領主から大変重宝されている。


加えて、利己的な性格のオロロッカですら友情を覚えるほど、彼の社交性は高い。
以上の理由もあり、オロロッカは彼と友人であることを誇りに思っていた。


「セドナさん、彼女とか、いらっしゃらないんですか? モテそうなのに……」
「どうもあいつはそういうのは苦手みたいでな。基本、恋愛には興味ないんだよ」
「へえ……珍しいですね……あ、パンケーキ来ましたね?」


そういうとアンジュはパンケーキを口にした。


「へえ……。あ、これ、美味しいです……」


アンジュが顔をほころばせるのを見て、少しだけオロロッカは安堵した。
彼女の機嫌を損ねてしまったら、命はないとでも思っているのだろう。


「な、なら良かったよ。……けど、悪かったな、アンジュ。その……この世界で使えない言葉があるの、伝えていなくて……」
「あ、いえ……。それにしても、和製英語が使えないなんて、珍しいですね」
「俺たち転移者は普通に使うからな。だから、ハンバーグとかフライドポテトって言葉も使えないんだよな」


その発言に、少し驚いた様子でアンジュは手を止める。


「そういう言葉も使えないんですね!?」
「そうなんだよ! 後は『ライトノベル』ってのも伝わらないな」
「どうしてなんでしょう……なんか、不思議ですね?」


そういわれたオロロッカは、少し考えた後につぶやく。


「……多分だけどさ。この世界は『洋ゲーをローカライズしたもの』なんだろうな」


ゲームになじみの薄いアンジュは、少し考えた後に答える。


「……洋ゲー? ああ、日本のゲームじゃないってことですか?」
「そうだな。それで和訳チームがサボって、和製英語を使わなかったからって思ったら、不思議じゃないんじゃないか?」
「アハハ! 確かにそう考えれば納得できますね!」


そんな風に楽しそうに笑うアンジュ。
一瞬だけその姿を見て『楽しい』と思ったオロロッカは、そんな自分に驚いていた。


(……いけない、彼女は恐ろしい女だったんだ。つい、気を抜いちまうな……)


そう気を引き締めなおすと、オロロッカはその日のデートは聞き役に徹した。
……その甲斐もあってか、デートは無難に過ごすことが出来た。




だが、元の世界では海外旅行に行ったことがないオロロッカは、知らなかった。


『和製英語が通じないレベルで和訳がきちんとされてない世界』には、もう一つ大きな『言葉の罠』が隠されていることを。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

処理中です...