ざまぁ担当の男たちが『アホの子』すぎて自滅ばかりするから、何もしてないのに『最凶の悪役令嬢』にされてるんですけど?

フーラー

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第1章 価値観が古く、親友にボコされる運命の男『オロロッカ』

1-5 少しずつ、カイカフルは彼女のことを理解してきたようです

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さらに1カ月ほどが経過した。


「おはようございます、カイカフルさん。ジャムのお味はどうですか?」


アンジュはニコニコと楽しそうに笑ってジャムをパンに塗って手渡す。


「ああ、ありがとね。こりゃ美味しいじゃないか」
「フフフ、朝早くからイチゴを収穫した甲斐がありましたね、アンジュ様」
「ええ。ありがとう、ダンクックさん」


そういいながら、メイドのダンクックは笑みを浮かべる。
基本的にこの世界では、女性が長時間労働をする傾向が多いため、男性が主な家事労働を行う場合が多い。


それはカイカフルの領地でも例外ではない。

とはいえ彼女は弱小とはいえ領主なので、メイド・オブ・オールワーク(家事全般を行うメイドのこと。なお、この世界ではメイドは主に男性を指す)であるダンクックを一人雇っており、彼が一般的な家事を切り盛りしている。


ダンクックはそのエプロン(勿論男性向けに無骨なデザインをしている)を翻して頭を下げる。


「アンジュ様には、いつも掃除を手伝っていただいていますから、当然ですよ」
「そういってくれると嬉しいです」


そういってニコニコ笑うアンジュ。
ダンクックやカイカフルは、真面目で一生懸命に仕事を行う少しずつ彼女のことを信頼しているようで、笑みを浮かべた。


「あれ、そういえばオロロッカさんはどこですか? 朝から姿が見えませんけど……」
「ああ。今日は隣の国までお使いに出してるからね。帰りは夜になるってさ。だから夕食は作らなくていいよ、ダンクック」
「あ、そうですか。かしこまりました」

そういうとダンクックは彼女たちの皿を下げ、台所に戻る。


「オロロッカさんって、本当に素敵な方ですね? 最近はよくご飯をご馳走になりますし……」


息子を褒められて、カイカフルはまんざらではなさそうに笑みを浮かべた。


「へえ……。あいつ、まともに女の子を誘うことが出来るなんてね」
「あれ、オロロッカさんは恋愛経験がないのですか?」
「ああ。あのバカはさ。『彼女欲しい!』って叫んでるくせに恋愛には興味ないからね。だから、いつか変なことをしないといいとは思ってるんだけどね」


そういって少し呆れたようにカイカフルはつぶやく。


オロロッカはいわゆる『異性には興味があるが、恋愛は興味がない』というタイプだ。
実際彼は、自分を奴隷を手に入れた際には、その奴隷『に』何をしたいかばかり考えておりその奴隷『と』どんな関係を築きたいかはまるで頭にない。

だが、オロロッカに対するカイカフルの評価に対して、アンジュは首を振って答える。


「息子さんのことを悪く言うのは良くありませんよ。それに、オロロッカさんはそんな悪い人じゃありませんから」
「そうなのかい?」
「ええ、私とデートする時にも、凄い気を使ってくれるんです! その、ちょっと緊張が過ぎてシャイな人だな、とは思うんですけど……」


彼女の外見は『恐ろしい悪役令嬢』だ。
そのため、普段は無神経なバカであるオロロッカも、彼女と出かけるときには普段の何倍も慎重になる。当然案内するレストランや観劇なども選択に気を配っている。


皮肉にも彼女の誤解されやすい言動が彼の恋愛スキルを高めているのだが、それを能天気なアンジュは『オロロッカは、自分のことが好きだから気を使ってくれている』と勘違いしている。


「だから、いつもオロロッカさんと出かけるのは楽しいですよ? あの人といると、私の兄を思い出しますし……」
「へえ、うちのバカ息子がねえ……。ちょっと見直したな……」

カイカフルはそういいながらも、アンジュの方をじっと見た。


(外見は怖そうだけど……。実は悪い子じゃないのかな、アンジュは……けど、凄い頭がいいからね、この子は……。万一ってことがあるし、最低限油断はしちゃいけないね……)


そしてアンジュは自分もジャムを塗りながら、カイカフルに

「実は明日も、一緒にお出かけする予定なんです。ちょっと遠いけど、隣町に行く予定があるそうですよね、オロロッカさん?」
「ああ、そういやあいつに、用事を伝えていたな。一緒に行ってくれるのかい?」
「はい! 色々買うものがあるから手伝って欲しいって言われてますから!」
「ハハハ、いい子だね、アンジュは。ただ、最近は減ったけど盗賊が道中に出るかもしれないから気を付けるんだよ。それと……」


カイカフルは、ポケットから銀貨を一枚手渡した。


「オロロッカは今日の帰りも遅いし、今夜は街でご飯食べに行きなよ」


ダンクックは、それを見て少し嬉しそうな顔をする。まあ、料理を作らないで済むのだから当然だろうが。


「え、いいんですか? ……じゃあ、以前オロロッカさんといった、ドワーフさんの酒場でご飯にしちゃいます!」

その『ドワーフの酒場』は元々、カイカフルがオロロッカに伝えた場所だ。
ドワーフの種族特性もあって酒が美味しいため、カイカフルは好んでいた。


「ああ、あの店はリンゴ酒がキッツいけど美味いんだよね」
「へえ……。私は未成年だから飲めないのが残念です……」
「アハハ! なら、大人になったら奢ったげるよ! あたしは今日は忙しいから、後で行くことにしようかな。多分入れ違いになると思うから、先にアンジュは帰っておいてね?」

そういうと、アンジュは自宅のカギを渡した。

「はい、分かりました。それじゃあ、お互い今日も頑張りましょうね?」




一方。

「フフフ……。いよいよ明日だな……」

オロロッカは、ニヤニヤと笑いながら、地図を広げた。


「うまいこと母さんを説得して、隣町に行く用事を作れたぞ……。これで明日、アンジュを誘って、そのまま吸血鬼の宿に直行しよう。そしてアンジュを売り飛ばせば万事解決だ。……そうすりゃ、金も入るし……バッチリだな……」


そんな風に言いながら、荷車を押し歩いていた。
すると、後ろから誰かが声をかけてきた。


「おい、何笑ってんだよ?」
「え? なんだ、セドナか」


外交官の彼は、最近この近くに来ることが多いようである。


「ああ、ちょっと明日、色々用事があってな」
「へえ、何すんだよ?」


セドナは正義感の強いタイプなのは知っている。
そのため、自分がやろうとしていることは伝えるつもりはない。……というより、この計画は誰にもバレてはいけない。

そう考えて、オロロッカは自分の計画を伏せることにした。


「ま、お前が楽しいなら何よりだけどさ。あまり無理すんなよ? ……あんまりアンジュを怒らせないようにな?」



「……あ、ああ……」

セドナはあくまでも『アンジュは、弱い立場にいるから大事にしてやれ』という意味で発言している。

だが、この発言を聴いたオロロッカは彼の発言を


『彼女は、絶対に怒らせてはいけない人だ』


という意味で受け取ってしまった。
人のいいセドナがここまで心配するのなら、猶更明日の作戦は成功させないとまずい。
そんな風に思ったオロロッカは、ますます彼女に対する警戒心を強めてしまった。


(アンジュは母さんに取り入ってるんだろうけど、それも今日で終わりだな……)


……そもそもオロロッカは、『万が一彼女が見た目通りの悪女だったら』と心配したカイカフルの計らいによって、アンジュとはそれとなく遠ざけられていた。

また、デートの最中も緊張しすぎていたため、彼女が『単なる能天気な世間知らず』だと看破できていなかったのも大きい。


「ああ、分かってる。……それじゃあな」
「ああ」


そう言ってオロロッカはセドナと別れると、腹の虫がぐ~……となるのに気が付いた。


「そういや、今夜は外で飯を食ってけって母さんに言われてたな……。そうだ、あのドワーフの酒場に久しぶりに行くかな……。けど、酒は飲まないようにしておくか。前、酒飲んだ勢いで大ポカやらかしたからな……」


オロロッカは、酒を飲むとつい口が軽くなってしまう悪癖がある。
そのこともあり、今夜は酒を控えようと胸に誓った。
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