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第1章 価値観が古く、親友にボコされる運命の男『オロロッカ』
1-7 追放された愚か者、オロロッカ
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「あれ、オロロッカさんは?」
翌日、屋敷にはオロロッカの姿はなかった。
「ああ、あいつはさ。ちょっと病気になったみたいだから、開拓地で療養することになったんだよ。10年は帰ってこれないだろうね」
そうカイカフルは嘘をついた。
いくらなんでも、
「アンジュを吸血鬼のもとに売り飛ばそうとしていたうえ、その金で奴隷を買おうと思っているようなバカ息子だったから、勘当した」
とは、言えるわけがない。
これは単に家の恥であるからでも、息子に対する最後の情という訳でもない。
カイカフルはだいぶアンジュとは打ち解けてはいるものの、いまだに彼女を「怜悧なナイフを心中に隠し持つ恐ろしい女」という印象はぬぐえていない。
そのため、
「もしも、こんなバカ息子を育てていたことが分かったら、自分も何かしらの制裁を受ける」
という不安があったからだ。
だが、そんなことを知らないアンジュは心配そうな表情を見せて、
「そうなんですか……? オロロッカさん、大丈夫でしょうか……」
「ああ。まあ気にしないでくんなよ。バカだけど死んだりするほどじゃないから、あいつはさ」
「……けど……そうだ、落ち着いたら手紙を書いてもいいですか? オロロッカさんには、お世話になっていましたし……その……正直、兄さんのように思ってましたから……」
「手紙、か……」
そういいながらも、カイカフルは少し不安そうな表情を見せた。
だが、
(あんなバカに手紙を書いてあげるなんて……。一見すると優しい行動だけど……ひょっとしたら、まさかあのバカを使って、何かしようとでもいうのかい……? いや、まさかね……。ただ、断る理由はないか……)
そんな風に思いながら、彼女の方をじっと見た。
「ああ、いいよ。手紙を書いてくれたら、あたしの方から送ってやるよ。けど、返事はしばらく期待しないでおきな」
「ええ。……オロロッカさんも病気から立ち直ってくれると嬉しいです」
そういうと、アンジュは心配そうに尋ねる。
「ところで、カイカフルさんは心配じゃないですか? オロロッカさんのこともそうですけど、その……跡継ぎのこととか……」
「跡継ぎ、か……」
そういわれて、カイカフルは少し考えるそぶりを見せた。
すでに夫は病で命を落としており、自身の年齢的にも新しい跡継ぎを産むことはできない。
また、カイカフルはこの豪放な外見に違わず情が厚い。
そのため、夫以外の配偶者を新たに持つ気にはそもそもなれなかった。
また、養子を招き入れるとしても適任となる人は特に思い浮かばない。
そもそも、自身の領地には若い男女があまりいないことも理由としてある。
(けど、あのバカに家督を継がせるわけにはいかないからねえ……)
無論、昨日までカイカフルは自身の息子に、利発な嫁を遠方から招き入れてあてがい、彼女に後を継がせるつもりであった。
だが、オロロッカがいわゆる『奴隷少女を買って、恋人にしようとするタイプの人間』だと知った今では、そのような気も起らない。
身近にいて、若く読み書き計算をはじめとした、領主としての職務を全うできるだけの能力を持ち、なおかつ領民を飢えさせることがないだけの能力を持つ女性。
……そんな適任者が目の前にいるのを見て、はあ、とため息を心の中で就いた。
(そういえば、この子の誘導で、私はドワーフの酒場に行ったんだっけ……。偶然を装って、私をあのバカに会わせたのかい? ……まさかとは思うけどね……)
そうは思うが、それを否定する材料がない。そのため、アンジュがこちらを心配そうに見据える瞳に底知れない恐怖心を覚えた。
(そう考えると、うまく乗せられているような気もするけど、仕方ないねえ……。この子の底は知れないけど……それなら、いっそ味方に招き入れたほうが得、か……)
そう思いながら、カイカフルはアンジュに尋ねる。
「ねえ、アンジュ?」
「なんでしょうか?」
「あのバカに後を継がせるのは難しそうだしさ。……あんたさえよかったらさ。……うちの養子になんないかい?」
「えええええ!?」
突然のその提案に、アンジュは驚いたような表情を見せた。
だが、カイカフルはどこか冷めた心地でそれを見ていた。
(……多分だけど、この子は私がこういうことを知っていたよね……。けど、今の状況じゃ、贅沢も言ってられないからね……)
そしてカイカフルは続ける。
「まあ、あんたなら、多分領主としての仕事は出来ると思うしさ。あたしの領地には若い子がいないんだよ。だから、まあ……突然だけどさ。次期領主として働いてくれないかい?」
「そんな! けど、オロロッカさんがなんていうか……」
「あのバカのことは気にしないでおいてよ。どうせ、何も出来やしないんだし!」
「は、はあ……」
もとより、オロロッカの頭では領主の仕事は全うできないこともあり、昨日の一件で最後の情も失ったカイカフルはそう言い捨てた。
だが、オロロッカが勘当された経緯や、彼が『どうしようもないほど失敗ばかりしてきたこと』を知らないアンジュの目線だと、カイカフルの態度は、
「息子が元気なうちだけ可愛がり、病気になるなり興味を失った冷淡な母親」
に見えてしまったのだ。
(カイカフルさん、息子さんのことが嫌いなのかな……。病気になるなり、そんな風に言うなんて、ちょっと冷たい人だな……。この村の人たちはいい人だし……カイカフルさんにこの領地を任せるのは、少し心配かな……)
そんな風に思ったアンジュは、
「わ、分かりました! ……私にできるのなら、やらせてください!}
そう答えた。
翌日、屋敷にはオロロッカの姿はなかった。
「ああ、あいつはさ。ちょっと病気になったみたいだから、開拓地で療養することになったんだよ。10年は帰ってこれないだろうね」
そうカイカフルは嘘をついた。
いくらなんでも、
「アンジュを吸血鬼のもとに売り飛ばそうとしていたうえ、その金で奴隷を買おうと思っているようなバカ息子だったから、勘当した」
とは、言えるわけがない。
これは単に家の恥であるからでも、息子に対する最後の情という訳でもない。
カイカフルはだいぶアンジュとは打ち解けてはいるものの、いまだに彼女を「怜悧なナイフを心中に隠し持つ恐ろしい女」という印象はぬぐえていない。
そのため、
「もしも、こんなバカ息子を育てていたことが分かったら、自分も何かしらの制裁を受ける」
という不安があったからだ。
だが、そんなことを知らないアンジュは心配そうな表情を見せて、
「そうなんですか……? オロロッカさん、大丈夫でしょうか……」
「ああ。まあ気にしないでくんなよ。バカだけど死んだりするほどじゃないから、あいつはさ」
「……けど……そうだ、落ち着いたら手紙を書いてもいいですか? オロロッカさんには、お世話になっていましたし……その……正直、兄さんのように思ってましたから……」
「手紙、か……」
そういいながらも、カイカフルは少し不安そうな表情を見せた。
だが、
(あんなバカに手紙を書いてあげるなんて……。一見すると優しい行動だけど……ひょっとしたら、まさかあのバカを使って、何かしようとでもいうのかい……? いや、まさかね……。ただ、断る理由はないか……)
そんな風に思いながら、彼女の方をじっと見た。
「ああ、いいよ。手紙を書いてくれたら、あたしの方から送ってやるよ。けど、返事はしばらく期待しないでおきな」
「ええ。……オロロッカさんも病気から立ち直ってくれると嬉しいです」
そういうと、アンジュは心配そうに尋ねる。
「ところで、カイカフルさんは心配じゃないですか? オロロッカさんのこともそうですけど、その……跡継ぎのこととか……」
「跡継ぎ、か……」
そういわれて、カイカフルは少し考えるそぶりを見せた。
すでに夫は病で命を落としており、自身の年齢的にも新しい跡継ぎを産むことはできない。
また、カイカフルはこの豪放な外見に違わず情が厚い。
そのため、夫以外の配偶者を新たに持つ気にはそもそもなれなかった。
また、養子を招き入れるとしても適任となる人は特に思い浮かばない。
そもそも、自身の領地には若い男女があまりいないことも理由としてある。
(けど、あのバカに家督を継がせるわけにはいかないからねえ……)
無論、昨日までカイカフルは自身の息子に、利発な嫁を遠方から招き入れてあてがい、彼女に後を継がせるつもりであった。
だが、オロロッカがいわゆる『奴隷少女を買って、恋人にしようとするタイプの人間』だと知った今では、そのような気も起らない。
身近にいて、若く読み書き計算をはじめとした、領主としての職務を全うできるだけの能力を持ち、なおかつ領民を飢えさせることがないだけの能力を持つ女性。
……そんな適任者が目の前にいるのを見て、はあ、とため息を心の中で就いた。
(そういえば、この子の誘導で、私はドワーフの酒場に行ったんだっけ……。偶然を装って、私をあのバカに会わせたのかい? ……まさかとは思うけどね……)
そうは思うが、それを否定する材料がない。そのため、アンジュがこちらを心配そうに見据える瞳に底知れない恐怖心を覚えた。
(そう考えると、うまく乗せられているような気もするけど、仕方ないねえ……。この子の底は知れないけど……それなら、いっそ味方に招き入れたほうが得、か……)
そう思いながら、カイカフルはアンジュに尋ねる。
「ねえ、アンジュ?」
「なんでしょうか?」
「あのバカに後を継がせるのは難しそうだしさ。……あんたさえよかったらさ。……うちの養子になんないかい?」
「えええええ!?」
突然のその提案に、アンジュは驚いたような表情を見せた。
だが、カイカフルはどこか冷めた心地でそれを見ていた。
(……多分だけど、この子は私がこういうことを知っていたよね……。けど、今の状況じゃ、贅沢も言ってられないからね……)
そしてカイカフルは続ける。
「まあ、あんたなら、多分領主としての仕事は出来ると思うしさ。あたしの領地には若い子がいないんだよ。だから、まあ……突然だけどさ。次期領主として働いてくれないかい?」
「そんな! けど、オロロッカさんがなんていうか……」
「あのバカのことは気にしないでおいてよ。どうせ、何も出来やしないんだし!」
「は、はあ……」
もとより、オロロッカの頭では領主の仕事は全うできないこともあり、昨日の一件で最後の情も失ったカイカフルはそう言い捨てた。
だが、オロロッカが勘当された経緯や、彼が『どうしようもないほど失敗ばかりしてきたこと』を知らないアンジュの目線だと、カイカフルの態度は、
「息子が元気なうちだけ可愛がり、病気になるなり興味を失った冷淡な母親」
に見えてしまったのだ。
(カイカフルさん、息子さんのことが嫌いなのかな……。病気になるなり、そんな風に言うなんて、ちょっと冷たい人だな……。この村の人たちはいい人だし……カイカフルさんにこの領地を任せるのは、少し心配かな……)
そんな風に思ったアンジュは、
「わ、分かりました! ……私にできるのなら、やらせてください!}
そう答えた。
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