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第1章 価値観が古く、親友にボコされる運命の男『オロロッカ』
1-8 こんな汗くさい展開、昭和だよなあ……
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一方。
「くそ! アンジュの野郎……まさか、先にドワーフに手を回すなんてな……」
あれから母親に勘当されたバカ息子オロロッカは、そういいながらやけ酒(リンゴ酒はもう懲りたのか、ウイスキーである)をあおっていた。
彼の目線では、自分は「罠に嵌められた被害者」であるからだ。
もっとも実態は「罠に嵌めるどころか、アンジュはオロロッカの策略に気づきもしないうちに自滅した」のだが。
……まったく、この世界の男はバカばかりである。
「はあ……こんな田舎で、何しろってんだよ……畑仕事? 俺がやらないと生活できないのか? 最悪じゃねえか……」
オロロッカは、アンジュの持つ領地では北西に位置する、国境沿いの小さな小屋に身一つで引っ越すこととなった。
当然実家からの仕送りなどあるわけがないので、今手持ちの食料と所持金がなくなるまでに畑仕事を始めて経済的に自立する必要がある。
……だが、そもそも肉体労働をばかにしている彼は、そんなことをするような気になれなかった。
「くそ……。もう一本開けるか……!」
すでに勘当されてから2週間ほど経つが、ただ無為に酒を飲みながら時間を無駄に過ごしている。
「はあ……。くそ、あの悪役令嬢がよう……俺から全部奪っていきやがって……」
結果的にとはいえ、アンジュによって全てを奪われることになったオロロッカは、そう恨みごとをぶつぶつと呟く。
……無論これは村人たちの耳にも入っているため、『たやすく人の家に入り込み、邪魔者を失脚させた恐ろしい悪女、アンジュ』という幻想は村中に広がることになってしまったことが、のちのちトラブルのもとになるのだが……。
「はあ……もう、今日は寝るかな……」
酒を飲むのにも飽きたのか、そういってオロロッカはふて寝をした。
そんな無為な生活を咎めるものはもう周囲にはいないためだ。
「ふああ……もう夕方か」
それからしばらくして、オロロッカは眼を覚ます。
幸い酒は抜けたようで、眼をこすりながら太陽が落ちつつある空を見上げた。
「今日も何もできなかったな……。ま、どうでもいいけどさ……」
そんな風に自己嫌悪に陥っていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
「よう、また来たぜ、オロロッカ?」
「んだよ、お前か……」
……開けると、そこにはセドナがいた。
「何の用だよ、セドナ?」
「いや、お前が相変わらず腐ってんじゃないかって思ってさ。それと……ほら」
そういってセドナは手紙を取り出した。
彼の仕事は一応『外交官』という名目だが、実際にはこういう小間使いのような仕事が中心である。
そのため、彼の仕事はどちらかというと『国家間を行き来する使いっ走り兼情報共有係』のようなものだ。
「アンジュから手紙だよ。たまには読んだらどうだ?」
「はあ? 読むわけねえだろ! 俺を嵌めたような奴のものなんか!」
そういうと、オロロッカはその手紙を部屋の隅に投げ捨てた。
彼は恐らくだが『自分を嵌めたことをあざ笑うような内容』が書かれていると思っているのだろう。
部屋の隅には、彼女が過去に書いた手紙が何枚か置かれている。
一枚も開封されていないのを見て、セドナは少し残念そうな表情を見せた。
「つーか、セドナ。お前も帰れよな……」
そしてオロロッカが酒瓶をまた手に取ろうとするのをセドナは制した。
「もうやめとけよ。どうせ朝からずっと飲んでたんだろ?」
「……うるせーな。お前には関係ねえだろ? はあ……まったく、酷い話だよな、まったく……母さんも、あんな奴に騙されて……」
そんな風にいうのを見て、セドナは眉をひそめた。
彼は、カイカフルから、オロロッカが勘当された理由を聞いていたからだ。
「なあ……お前はさ。自分が被害者だと思ってないか?」
「あん? そりゃ、俺も悪いところはあったけどよ……。けど、まだ何もしてなかったんだぜ? なのに、あいつが手を回して俺を嵌めてきたんじゃねえか……」
「……そうか……」
「せめてなあ……。あの時の二毛作が成功していればなあ……。農民連中も、未来のことを考えないで俺のアイデアを無視しやがって……」
一応『俺も悪いところはあった』という枕詞を残しているが、彼が被害者意識と他責思考を抱えているのはすぐに分かった。
加えて、過去の失敗をいつまでも愚痴りながら酒を煽ろうとする姿を見て、セドナは少し決意したような目をしてうなづく。
(オロロッカは……価値観が古いからな……。なら、この荒療治が……効くか……)
そう思うと、セドナはにこりと笑ってオロロッカに尋ねた。
「なあ、オロロッカ?」
「なんだよ?」
「歯をぐっと食いしばれるか?」
「え? ああ……」
その言葉の意図を考えずに歯をぐっと食いしばるオロロッカ。
そんな彼に対して、
「この……バカ野郎!」
そういって、思いっきりぶん殴った。
「ぐは!」
まるで『鉄の塊』に殴られたような衝撃を受けて、思わずひるむオロロッカ。
「てめえ、セドナ! いきなり何すんだよ!」
「オロロッカ……。お前はさ! 自分が何をしようとしたかわかってんのか?」
そういってセドナはもう一度ぶん殴る。
ガツン! と音が部屋に響いて大きくかしいだが、今度はひるまずに思いっきりセドナを殴り返す。
「知らねえよ!」
「ぐは!」
セドナはその一撃に思わずふらりと体をぐらつかせる。
……とはいえ、セドナはその外見にそぐわない体重があるため、たやすく踏みとどまり、反撃を喰らわす。
「オロロッカ! お前、アンジュを吸血鬼に売ろうとしたんだろ!?」
「そうだよ!」
「アンジュのこと、何だと思ってんだ!?」
「あん!?」
その攻撃を受け、今度はオロロッカがぶん殴る。
オロロッカは普段は自分の本心を相手に全力でぶつけることはない。
だが、なぐりあいで高揚している今は、本気で腹を割って気持ちをぶつけることが出来る。
……セドナはそう判断したため、オロロッカを殴りつけたのだ。
「くそ! アンジュの野郎……まさか、先にドワーフに手を回すなんてな……」
あれから母親に勘当されたバカ息子オロロッカは、そういいながらやけ酒(リンゴ酒はもう懲りたのか、ウイスキーである)をあおっていた。
彼の目線では、自分は「罠に嵌められた被害者」であるからだ。
もっとも実態は「罠に嵌めるどころか、アンジュはオロロッカの策略に気づきもしないうちに自滅した」のだが。
……まったく、この世界の男はバカばかりである。
「はあ……こんな田舎で、何しろってんだよ……畑仕事? 俺がやらないと生活できないのか? 最悪じゃねえか……」
オロロッカは、アンジュの持つ領地では北西に位置する、国境沿いの小さな小屋に身一つで引っ越すこととなった。
当然実家からの仕送りなどあるわけがないので、今手持ちの食料と所持金がなくなるまでに畑仕事を始めて経済的に自立する必要がある。
……だが、そもそも肉体労働をばかにしている彼は、そんなことをするような気になれなかった。
「くそ……。もう一本開けるか……!」
すでに勘当されてから2週間ほど経つが、ただ無為に酒を飲みながら時間を無駄に過ごしている。
「はあ……。くそ、あの悪役令嬢がよう……俺から全部奪っていきやがって……」
結果的にとはいえ、アンジュによって全てを奪われることになったオロロッカは、そう恨みごとをぶつぶつと呟く。
……無論これは村人たちの耳にも入っているため、『たやすく人の家に入り込み、邪魔者を失脚させた恐ろしい悪女、アンジュ』という幻想は村中に広がることになってしまったことが、のちのちトラブルのもとになるのだが……。
「はあ……もう、今日は寝るかな……」
酒を飲むのにも飽きたのか、そういってオロロッカはふて寝をした。
そんな無為な生活を咎めるものはもう周囲にはいないためだ。
「ふああ……もう夕方か」
それからしばらくして、オロロッカは眼を覚ます。
幸い酒は抜けたようで、眼をこすりながら太陽が落ちつつある空を見上げた。
「今日も何もできなかったな……。ま、どうでもいいけどさ……」
そんな風に自己嫌悪に陥っていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
「よう、また来たぜ、オロロッカ?」
「んだよ、お前か……」
……開けると、そこにはセドナがいた。
「何の用だよ、セドナ?」
「いや、お前が相変わらず腐ってんじゃないかって思ってさ。それと……ほら」
そういってセドナは手紙を取り出した。
彼の仕事は一応『外交官』という名目だが、実際にはこういう小間使いのような仕事が中心である。
そのため、彼の仕事はどちらかというと『国家間を行き来する使いっ走り兼情報共有係』のようなものだ。
「アンジュから手紙だよ。たまには読んだらどうだ?」
「はあ? 読むわけねえだろ! 俺を嵌めたような奴のものなんか!」
そういうと、オロロッカはその手紙を部屋の隅に投げ捨てた。
彼は恐らくだが『自分を嵌めたことをあざ笑うような内容』が書かれていると思っているのだろう。
部屋の隅には、彼女が過去に書いた手紙が何枚か置かれている。
一枚も開封されていないのを見て、セドナは少し残念そうな表情を見せた。
「つーか、セドナ。お前も帰れよな……」
そしてオロロッカが酒瓶をまた手に取ろうとするのをセドナは制した。
「もうやめとけよ。どうせ朝からずっと飲んでたんだろ?」
「……うるせーな。お前には関係ねえだろ? はあ……まったく、酷い話だよな、まったく……母さんも、あんな奴に騙されて……」
そんな風にいうのを見て、セドナは眉をひそめた。
彼は、カイカフルから、オロロッカが勘当された理由を聞いていたからだ。
「なあ……お前はさ。自分が被害者だと思ってないか?」
「あん? そりゃ、俺も悪いところはあったけどよ……。けど、まだ何もしてなかったんだぜ? なのに、あいつが手を回して俺を嵌めてきたんじゃねえか……」
「……そうか……」
「せめてなあ……。あの時の二毛作が成功していればなあ……。農民連中も、未来のことを考えないで俺のアイデアを無視しやがって……」
一応『俺も悪いところはあった』という枕詞を残しているが、彼が被害者意識と他責思考を抱えているのはすぐに分かった。
加えて、過去の失敗をいつまでも愚痴りながら酒を煽ろうとする姿を見て、セドナは少し決意したような目をしてうなづく。
(オロロッカは……価値観が古いからな……。なら、この荒療治が……効くか……)
そう思うと、セドナはにこりと笑ってオロロッカに尋ねた。
「なあ、オロロッカ?」
「なんだよ?」
「歯をぐっと食いしばれるか?」
「え? ああ……」
その言葉の意図を考えずに歯をぐっと食いしばるオロロッカ。
そんな彼に対して、
「この……バカ野郎!」
そういって、思いっきりぶん殴った。
「ぐは!」
まるで『鉄の塊』に殴られたような衝撃を受けて、思わずひるむオロロッカ。
「てめえ、セドナ! いきなり何すんだよ!」
「オロロッカ……。お前はさ! 自分が何をしようとしたかわかってんのか?」
そういってセドナはもう一度ぶん殴る。
ガツン! と音が部屋に響いて大きくかしいだが、今度はひるまずに思いっきりセドナを殴り返す。
「知らねえよ!」
「ぐは!」
セドナはその一撃に思わずふらりと体をぐらつかせる。
……とはいえ、セドナはその外見にそぐわない体重があるため、たやすく踏みとどまり、反撃を喰らわす。
「オロロッカ! お前、アンジュを吸血鬼に売ろうとしたんだろ!?」
「そうだよ!」
「アンジュのこと、何だと思ってんだ!?」
「あん!?」
その攻撃を受け、今度はオロロッカがぶん殴る。
オロロッカは普段は自分の本心を相手に全力でぶつけることはない。
だが、なぐりあいで高揚している今は、本気で腹を割って気持ちをぶつけることが出来る。
……セドナはそう判断したため、オロロッカを殴りつけたのだ。
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