ざまぁ担当の男たちが『アホの子』すぎて自滅ばかりするから、何もしてないのに『最凶の悪役令嬢』にされてるんですけど?

フーラー

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第2章 チート級の戦闘力を持つけど、婚約破棄されて国を出る男『アホード』

2-4 大会前日にようやくアンジュは、自分の状況に気づいたようです

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それから数日が経過した。


「お、おい、アンジュ? 今度の武道大会に出るって本当か?」


アンジュの屋敷に、いつものように定期連絡としてやってきたセドナが、心配そうに尋ねてきた。


「え? 勿論です。人前で料理を食べていただくなんて、緊張しますけどね」
「……料理?」
「ええ。ぶどうの料理イベントがあるんですよね? ノワール様から伺いましたよ」
「……何言ってんだ、アンジュ?」


のんきにそうつぶやくアンジュに、セドナは一枚の羊皮紙を取り出した。


「だってさ。あんたが出るのは、この試合のことだろ?」
「え? ……なんだい、これは……?」


それを見て、隣にいたカイカフルも驚いたような表情を見せた。


「ぶどうのイベント……あの女、武道大会のことを言ってたのかい? しかも、なんだい、この内容は!」
「あ……わ、私が出ることが大々的に書かれていますね……」


そこには『異世界よりやってきた、伝説の魔導士アンジュVS同じく異世界から来た伝説の魔法剣士アホード』という体で、派手な宣伝文とイラストが描かれていた。


また、アンジュの顔は元々の『悪役令嬢のような怖い顔』を更に恐ろしくしたような、まるでゲームに出るボスのような姿で描かれている。

……因みにノワールは、アンジュのもとにギリギリまでこの話が届かないように、情報統制を行っていたのは言うまでもない。


「わ、私、こんなに悪そうな顔で書かれるなんて、酷いですね……」
「いや、突っ込むところはそこじゃないと思うけどな……」


とぼけた様子で呟くアンジュを見て、セドナは少し呆れたように答える。
そしてカイカフルは少し怒りをこめた表情で呟く。


「こりゃ、嵌められたってことだね。わざわざブドウの差し入れをするなんて、あの女らしくないと思ったけど……ありゃ、罠だったのか……」
「どういうことだ?」


カイカフルは、先日ノワールが来た時のことをセドナに説明した。


「うわ、ひでえな……。完全に騙しうちじゃねえか……なるほど、それでカイカフルさんとこのメンツを潰してしまうってことだな……」
「どういうことですか?」


まだ状況が呑み込めていないアンジュに対して、カイカフルは答える。


「要するに、あんたを公共の場でボロボロに叩きのめして、うちに恥をかかせるためのやり方だね。あの『黒薔薇姫』らしい手口だよ……」
「しかも、負けたほうはファイトマネーを支払う約束になってる。無茶苦茶な金額のな……。うーん……あいつがこういうことするなんてな……」


セドナも少し呆れた様子で呟く。


「ボロボロにって……。私、ノワールさんを怒らせるようなことなんて、何もしてませんのに……」
「……そうだねえ……確かにそうかもしれないねえ……」


セドナとオロロッカ以外のものは皆、国境沿いの村が急速に発展したことを『アンジュが裏でオロロッカを操って行った』と思い込んでいる。

それにノワールが危機感、或いは嫉妬心を持った故の行動だとはカイカフルは分かっていたがあえて口にしなかった。


「とにかく、こんな試合にわざわざ出る義理なんてないね。棄権すること、伝えて貰えるかい、セドナ?」

だが、セドナは首を振る。


「……いや、ノワールのことだから、ひょっとすると……ちょっと契約書を見せてもらえないか?」
「え? ……ああ」


そういうとセドナは契約書を一瞬で全て読み込む。
そして『やっぱり』と呟いた。


「アンジュが棄権することは出来ないようになってるな。見ろよ、この文言」
「え?」

そういってセドナは、ものすごく小さい字で書かれていた注意事項を指さす。


「もしも当日参加できなかった場合は、多額の賠償金が請求されるって書いてあるだろ?」
「あ……本当だ。こんなとこに小さな字で書いたら、分かるわけないじゃないか! ……しかもなんだい、この法外な額は! こんなの払ったら、うちは破産しちまうよ!」


更にセドナは、別のページに書いてある『勝敗について』という小さな但し書きを見ながら呟く。これはアンジュが敗北したときの数倍の賠償金を払うように書かれていた。


「……あの女……いつか焼き入れてやろうか……?」


そういうと、カイカフルは怒りで歯ぎしりをした。
違約金は到底払えない上に、敗北した場合に支払うファイトマネーは、カイカフルの家計が傾くレベルだからだ。


「どうやら、よっぽどアンジュのことを警戒しているんだろうな」
「ど、どうしてですか……?」
「さあな。ただ『転移者』ってのは、ある種のイレギュラーだからな。それが心配なのかもしれないな」


セドナはそう呟いたが、カイカフルは少し怪訝な表情をして呟く。


「それもあるけど、あの女は前から動きが怪しかったからね。多分うちの領地を接収しようとしていたから、今のうちに一撃かましとこうって腹積もりなんだろうさ」
「ノワールさんって、そんな方だったんですか……?」


きょとんとするアンジュを見ながら、カイカフルは少し呆れた表情を見せる。


「まあ、とにかくだ。どっちにしろ、試合は出なきゃいけないみたいだし……。最悪でも、殺されるようなことだけは避けないとね」
「え? こ、殺されるって……いくらなんでもそんなことはしないですよね?」


殺される、という物騒な言葉を受けたアンジュは心配そうに尋ねるが、カイカフルは残念そうに首を振る。


「いや……あのアホードって奴は、頭は悪いけど戦闘能力は半端じゃないんだ。……確かあいつも転移者だったみたいだね」
「原作知識が豊富みたいでさ、あいつは。……しかもパラメータも良成長タイプみたいなんだ。……正直あいつの本気の一撃は、この世界の兵士なら誰も受けられないだろうな。無論俺も無理だ」

セドナもこの大陸が『ゲームの世界』だと知っているため、そう付け加えた。



「だからさ。仮にアホードに手加減されたとしても、殺される可能性は高いんだよ」
「え……じゃあ、ノワールさんは……」
「ああ。ボコボコに打ち負かしてうちに恥をかかせられればそれでよし、あわよくばこの武道大会の場で致命傷を負わせてやれれば尚良し……そんな風に考えてると思うべきだね」
「そんな……酷いじゃないですか!」


ノワールのそのやり口に、思わずアンジュは叫んだ。


「……アホードは俺の友達だからな。……手加減するようには伝えておくよ。……けどあいつはなあ……」


そうセドナは心配そうに呟く。


「ああ、あいつは……婚約者のノワールに完全にお熱だからねえ……。あの性悪女のどこが良いんだか……」
「だから、ノワールに『手加減するな』って言われたら、最悪本気で来るかもしれないな……」
「じ、じゃあ私は……大会の場で殺されるかもしれないってこと、ですか……? しかも棄権もしちゃいけないなんて……」


ようやく状況が理解できたアンジュは、半泣きの表情で呟く。
それを見て、カイカフルは少し同情の眼を向けながらも、ため息をついて答える。


「しょうがないね。……とにかく、今から少しでもレベルアップしないとね……。明日から、一緒に特訓するよ、アンジュ?」
「それなら俺も手伝うよ。……俺は魔法は使えないけど、格闘なら少しは教えられると思うからな!」

セドナは近接戦には自信があるのだろう、自身の胸を叩いてそう答えた。

「は、はい……」


そういうと、アンジュはこくりとうなづいた。
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