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第2章 チート級の戦闘力を持つけど、婚約破棄されて国を出る男『アホード』
2-7 ノワールは武道大会を楽しむようです
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「レディーーーーーースエーーーーーンジェントルメーーーーン!」
そう大声で叫ぶ司会の声とともに、武道大会は開かれた。
「戦いというものは美しい! 勝者の喜びも敗者の悲しみも! 皆一様に尊ぶべきでしょう! 本日皆さんにお届けするは、実力者たちの祭典だあああああ!」
うわあああああ! という声とともに、武道会場が震えるほどの歓声が聞こえてきた。
さらに、楽団たちがBGMとして勇ましい曲を響かせる。
「うわ、凄いんだな、この大会は……」
「でしょう? セドナはこういう戦いに出る気はないの?」
ノワールは観客席で、そうセドナに尋ねるが彼は首を振る。
「いや、正直俺、格闘技は嫌いなんだよ。人が傷つくのは、試合でも見たくないからな」
「あら、そう? けど、この間うちの兵士たちが驚いてましたよ。あんなに洗練された格闘技術、初めて見たって?」
「ああ、それはまあ……別に俺は、格闘が苦手な訳じゃないからな。それより、万一大けがした奴がいたら、俺も負傷者の手当に回るから、よろしくな」
彼は元々、アンジュをはじめとした参加者が万一大けがをした場合に救命措置を行うためにやってきたのだ。
それを聞いて、ノワールはフフフ、と笑う。
「セドナは心配性ね。……まあ、無茶なカードは組んでいませんもの。そこまで恐ろしいことは起きませんわよ、多分ね?」
無論、それはファイナルマッチを除いては、なのだが。
そのことに気づかないセドナを見て笑みを浮かべながら、ノワールは試合場の方を見た。
「あ、始まるようですね?」
「最初は『銀炎の魔導士』ホイルと『月下の雪姫』フレアか……」
「へえ、フレアの種族は雪女みたいね。……妖怪なんて、セドナには懐かしいんじゃない?」
「ヨウカイ? そんな種族、聞いたことないぞ?」
セドナが不思議そうに尋ねるが、ノワールは思い出したようにうなづいた。
「あ、そうか。セドナは日本からの転移者じゃなかったわね。……まあ、雪を操る女性のことよ」
「へえ……。あ、引き分けか……。お互いいい線行ってたんだけどな……」
そんな風に二人が話していると、試合は終わった。
ホイルの強力な魔法をフレアが相殺する展開が続いたが、互いに魔力が切れて決め手を失ったことで引き分けとなったのだ。
……そしてしばらくの間、平和的な戦いは続いていた。
「決まった~! 僧侶トーニャの強烈な回し蹴り! あれには敵もイチコロだ~!」
司会のマイクパフォーマンスがうまいのだろう、観客たちの興奮は最高潮に達していた。
そしてセドナは試合票を見ながら呟く。
「お、これでセミファイナルも終わりか。それで最後は……」
「ええ、アンジュとアホードのマッチよ?」
「……そうだったな……」
不安そうな表情をするセドナ。
彼もアンジュに稽古をつけていたのだが、どうやってもレベルが上がらなかった。
一応最低限の護身術の真似事程度は教えることが出来たが、それでもアホードが相手に勝てるとは到底思えない。
「まあ、アホードのことだから殺すようなことはしないと思うけど……」
そう呟いていると、アホードとアンジュが入場してきた。
「さて、いよいよか……」
そういいながら、アホードは軽く肩を回しながら試合の会場に進んでいった。
内装はノワールの性格を反映してか、大変豪奢なものとなっている。
照明がギラギラと輝く中、アホードはアンジュが来るのを待つ。
「お、お手柔らかに……」
そういいながらアンジュは入場した。
彼女が出場するのは武道大会なので、当然防具の着用は禁止されている。
そのため、カイカフルが夜なべして彼女のために、厚手に生地で出来た格闘服をつくろったのである。
「……や、やば……」
その彼女の服は露出こそ低いが、上半身のボディラインがくっきりと見えるものであるため、アホードは赤面した。
(だ、ダメだ……。これは、アンジュの罠だ……。なるほど、精神攻撃から来るなんて、味な真似を……)
無論彼女たちにそのような意図はない。
だがアホードは、彼女のことを見ることが恥ずかしくて出来ない。
「さあ! 今回は大変珍しいマッチング! 転移者同士の対決だ~~~~!」
司会はファイナルマッチということもあるのか、大変テンションが高い。
そんな風に大声で叫びながら、こちらを指さす。
「さあ、今回戦うは『久遠の猟兵』とも揶揄される我らがヒーロー、アホードだ~~~~!」
その声とともに、周囲が『アホード!』『アホード!』と声援を送る。
「ははは、いつ聞いても悪い気がしないな……」
そんな風にアホードは思いながら、アンジュの方を見据える。
彼女はこちらのほうに二コリと笑いかけた。……当然、いつもの『悪役令嬢の眼』で。
それを見て、アホードはゾクリ、と背筋が冷たくなるのを感じた。
(こ、こわ……。油断しちゃだめだよな、うん……。アンジュは絶対に隙をついてくるはずだから……)
だが、同時に先ほどまで勝手にかかっていた魅了状態も解除され、アホードは一人の魔法戦士として、全力で戦う覚悟を決めた。
「さあ、見た目は可愛い女の子だが、その力はまさに未知数! 転移してから経ったひと月足らずで、あのカイカフル家の養女に向かい入れられた才女! その名も『最凶の魔姫』アンジュだ~~~~~~!」
うおおおおお! と、周囲は凄まじい歓声が響く。
「あ、あの、その……」
それに対して、アンジュは居心地が悪そうな表情をした。
そもそもカイカフルの家は弱小貴族であり『あの』と形容されるほどの知名度はない。
とはいえ、庶民がそんなことを知るはずもないので、司会の言葉回しに踊らされ『なんかすげー奴が来た』という気持ちになっているのだろう。
だが、頭の悪いアホードはそのあたりを理解できるわけがない。
(なるほど、アンジュ……周りがこれだけの歓声を上げるってことは……。やっぱり恐ろしい奴だってことだな……ん……なんだ、急に目の前が暗く……)
そんな風に彼は考えていると、急に目の前が暗くなるのを感じた。
……そして数秒後。
(ふう、なんだったんだ? ……いや、体調に問題はないようだな。よし。コンディションもバッチリだ)
そんな風に考えていると、アンジュがニヤリと笑みを浮かべた。
「フフフ、アホードさん。……この戦いを楽しみましょうね?」
彼女のその眼は、先ほどまでとはまるで異なるものだった。
通常の戦士であれば彼女の恐ろしい瞳に見るものは戦慄するだろう。
しかし一度「戦闘モード」に入ったアホードには寧ろ、好敵手であることを意識させるものでしかない。
「ああ、そうだね……遊ぼう、楽しくね」
そして司会が、
「はじめ!」
と叫ぶとともにアホードは飛び出す。
「はあ!」
そして全力の魔法を打ち込む。
一応アンジュからは『初段は手加減しろ』と言われていたこともあり、致命的ではない威力にはしてある。
だが。
「フフフ、いただいたわ……。あなたのその魔力……」
アンジュはそう妖艶な笑みを浮かべるとともに、その光弾を掌に集めていた。
「覚えているでしょう? ……反射魔法の恐ろしさを!」
そういうと彼女の背後に、複数の魔法陣が浮かび、それぞれにアホードが打ち込んだ光弾がセットされる。
(やっぱりか……。面白いじゃん……!)
「おおっと! 初段から打ち込まれた魔法の弾をアンジュは全て受け止めた~~~~! 来るか、恐ろしい反撃技が! さあ、面白くなってきました~~~~!」
司会がそう叫んだのをきっかけに、周囲の楽団もただ事ではないと思ったのか、BGMを変更した。
(この曲は……まさか……!)
彼らが選んだ曲は、アホードが元の世界に居た時に大好きだったゲームの曲だった。
中ボスの曲ではあったのだが、ゲーム中で流れる回数が多く、彼はサントラも購入する程だった。
アンジュもその曲を聴きながらフフ、と笑う。
「フフフ、転移者の私たちらしい曲を選んでくれたようね? まあ、あなたが最期に聴く曲にならないと良いけどね?」
「いうじゃないか! ……よし、行くぞ!」
だが、自分が望んでいた『本気の勝負』が出来ることに、アホードの心は高揚していた。
そう大声で叫ぶ司会の声とともに、武道大会は開かれた。
「戦いというものは美しい! 勝者の喜びも敗者の悲しみも! 皆一様に尊ぶべきでしょう! 本日皆さんにお届けするは、実力者たちの祭典だあああああ!」
うわあああああ! という声とともに、武道会場が震えるほどの歓声が聞こえてきた。
さらに、楽団たちがBGMとして勇ましい曲を響かせる。
「うわ、凄いんだな、この大会は……」
「でしょう? セドナはこういう戦いに出る気はないの?」
ノワールは観客席で、そうセドナに尋ねるが彼は首を振る。
「いや、正直俺、格闘技は嫌いなんだよ。人が傷つくのは、試合でも見たくないからな」
「あら、そう? けど、この間うちの兵士たちが驚いてましたよ。あんなに洗練された格闘技術、初めて見たって?」
「ああ、それはまあ……別に俺は、格闘が苦手な訳じゃないからな。それより、万一大けがした奴がいたら、俺も負傷者の手当に回るから、よろしくな」
彼は元々、アンジュをはじめとした参加者が万一大けがをした場合に救命措置を行うためにやってきたのだ。
それを聞いて、ノワールはフフフ、と笑う。
「セドナは心配性ね。……まあ、無茶なカードは組んでいませんもの。そこまで恐ろしいことは起きませんわよ、多分ね?」
無論、それはファイナルマッチを除いては、なのだが。
そのことに気づかないセドナを見て笑みを浮かべながら、ノワールは試合場の方を見た。
「あ、始まるようですね?」
「最初は『銀炎の魔導士』ホイルと『月下の雪姫』フレアか……」
「へえ、フレアの種族は雪女みたいね。……妖怪なんて、セドナには懐かしいんじゃない?」
「ヨウカイ? そんな種族、聞いたことないぞ?」
セドナが不思議そうに尋ねるが、ノワールは思い出したようにうなづいた。
「あ、そうか。セドナは日本からの転移者じゃなかったわね。……まあ、雪を操る女性のことよ」
「へえ……。あ、引き分けか……。お互いいい線行ってたんだけどな……」
そんな風に二人が話していると、試合は終わった。
ホイルの強力な魔法をフレアが相殺する展開が続いたが、互いに魔力が切れて決め手を失ったことで引き分けとなったのだ。
……そしてしばらくの間、平和的な戦いは続いていた。
「決まった~! 僧侶トーニャの強烈な回し蹴り! あれには敵もイチコロだ~!」
司会のマイクパフォーマンスがうまいのだろう、観客たちの興奮は最高潮に達していた。
そしてセドナは試合票を見ながら呟く。
「お、これでセミファイナルも終わりか。それで最後は……」
「ええ、アンジュとアホードのマッチよ?」
「……そうだったな……」
不安そうな表情をするセドナ。
彼もアンジュに稽古をつけていたのだが、どうやってもレベルが上がらなかった。
一応最低限の護身術の真似事程度は教えることが出来たが、それでもアホードが相手に勝てるとは到底思えない。
「まあ、アホードのことだから殺すようなことはしないと思うけど……」
そう呟いていると、アホードとアンジュが入場してきた。
「さて、いよいよか……」
そういいながら、アホードは軽く肩を回しながら試合の会場に進んでいった。
内装はノワールの性格を反映してか、大変豪奢なものとなっている。
照明がギラギラと輝く中、アホードはアンジュが来るのを待つ。
「お、お手柔らかに……」
そういいながらアンジュは入場した。
彼女が出場するのは武道大会なので、当然防具の着用は禁止されている。
そのため、カイカフルが夜なべして彼女のために、厚手に生地で出来た格闘服をつくろったのである。
「……や、やば……」
その彼女の服は露出こそ低いが、上半身のボディラインがくっきりと見えるものであるため、アホードは赤面した。
(だ、ダメだ……。これは、アンジュの罠だ……。なるほど、精神攻撃から来るなんて、味な真似を……)
無論彼女たちにそのような意図はない。
だがアホードは、彼女のことを見ることが恥ずかしくて出来ない。
「さあ! 今回は大変珍しいマッチング! 転移者同士の対決だ~~~~!」
司会はファイナルマッチということもあるのか、大変テンションが高い。
そんな風に大声で叫びながら、こちらを指さす。
「さあ、今回戦うは『久遠の猟兵』とも揶揄される我らがヒーロー、アホードだ~~~~!」
その声とともに、周囲が『アホード!』『アホード!』と声援を送る。
「ははは、いつ聞いても悪い気がしないな……」
そんな風にアホードは思いながら、アンジュの方を見据える。
彼女はこちらのほうに二コリと笑いかけた。……当然、いつもの『悪役令嬢の眼』で。
それを見て、アホードはゾクリ、と背筋が冷たくなるのを感じた。
(こ、こわ……。油断しちゃだめだよな、うん……。アンジュは絶対に隙をついてくるはずだから……)
だが、同時に先ほどまで勝手にかかっていた魅了状態も解除され、アホードは一人の魔法戦士として、全力で戦う覚悟を決めた。
「さあ、見た目は可愛い女の子だが、その力はまさに未知数! 転移してから経ったひと月足らずで、あのカイカフル家の養女に向かい入れられた才女! その名も『最凶の魔姫』アンジュだ~~~~~~!」
うおおおおお! と、周囲は凄まじい歓声が響く。
「あ、あの、その……」
それに対して、アンジュは居心地が悪そうな表情をした。
そもそもカイカフルの家は弱小貴族であり『あの』と形容されるほどの知名度はない。
とはいえ、庶民がそんなことを知るはずもないので、司会の言葉回しに踊らされ『なんかすげー奴が来た』という気持ちになっているのだろう。
だが、頭の悪いアホードはそのあたりを理解できるわけがない。
(なるほど、アンジュ……周りがこれだけの歓声を上げるってことは……。やっぱり恐ろしい奴だってことだな……ん……なんだ、急に目の前が暗く……)
そんな風に彼は考えていると、急に目の前が暗くなるのを感じた。
……そして数秒後。
(ふう、なんだったんだ? ……いや、体調に問題はないようだな。よし。コンディションもバッチリだ)
そんな風に考えていると、アンジュがニヤリと笑みを浮かべた。
「フフフ、アホードさん。……この戦いを楽しみましょうね?」
彼女のその眼は、先ほどまでとはまるで異なるものだった。
通常の戦士であれば彼女の恐ろしい瞳に見るものは戦慄するだろう。
しかし一度「戦闘モード」に入ったアホードには寧ろ、好敵手であることを意識させるものでしかない。
「ああ、そうだね……遊ぼう、楽しくね」
そして司会が、
「はじめ!」
と叫ぶとともにアホードは飛び出す。
「はあ!」
そして全力の魔法を打ち込む。
一応アンジュからは『初段は手加減しろ』と言われていたこともあり、致命的ではない威力にはしてある。
だが。
「フフフ、いただいたわ……。あなたのその魔力……」
アンジュはそう妖艶な笑みを浮かべるとともに、その光弾を掌に集めていた。
「覚えているでしょう? ……反射魔法の恐ろしさを!」
そういうと彼女の背後に、複数の魔法陣が浮かび、それぞれにアホードが打ち込んだ光弾がセットされる。
(やっぱりか……。面白いじゃん……!)
「おおっと! 初段から打ち込まれた魔法の弾をアンジュは全て受け止めた~~~~! 来るか、恐ろしい反撃技が! さあ、面白くなってきました~~~~!」
司会がそう叫んだのをきっかけに、周囲の楽団もただ事ではないと思ったのか、BGMを変更した。
(この曲は……まさか……!)
彼らが選んだ曲は、アホードが元の世界に居た時に大好きだったゲームの曲だった。
中ボスの曲ではあったのだが、ゲーム中で流れる回数が多く、彼はサントラも購入する程だった。
アンジュもその曲を聴きながらフフ、と笑う。
「フフフ、転移者の私たちらしい曲を選んでくれたようね? まあ、あなたが最期に聴く曲にならないと良いけどね?」
「いうじゃないか! ……よし、行くぞ!」
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