二度目の冒険は『低レベル縛り』でいきましょう~『自称』ドMの女勇者ちゃんと一緒に、魔王になったヤンデレ妹を討伐します~

フーラー

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第6章

6-7 勇者たちは魔王と再度対峙する

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「来たわね……」

玉座では、魔王ロナが足を組んでこちらを見据えてきた。
……相変わらず、なんて美しさだ。そう思わせるような容姿をしている。
彼女は美しい声で俺に語り掛けてきた。

「シイル……。まさかレベル1まで落とされたあなたが、ここまで来るとは思わなかったわ。最初の村でスローライフを送っていればよかったのに……」
「……お前を野放しにして送るスローライフに、何の意味もないだろ? ……ロナ。ずっと逢いたかったよ」
「私もよ、シイル……あなたは、その……どういう、意味で……?」


だが、その会話をマルティナが遮った。


「あたしも会いたかったよ! ロナ……あんたがいろんな人を傷つけて殺したこと……今更なかったことにするつもりはないから! ……まさかとは思うけどさ! 今更、魔王を辞めてシイルと添い遂げようなんて思わないよね! 魔王様?」


いつになく攻撃的な口調でそう剣を抜くマルティナ。
だがロナは落ち着いた口調で答える。


「分かってるわよ。……私がやったことは、許されないってことは……」


フィクションなどでは、
『主人公に許してもらったら、どんな罪もチャラになる』
『たとえ罪をおかしても、組織から抜ければ法の裁きを免れる』
という展開は非常に多い。

……だが、この世界にはそんな『免罪符』などはない。
仮にここでロナを捕らえても、処刑は確定だ。
俺は思わず涙が出てきた。

「なあ、ロナ……どうして俺たち、こうなっちまったんだろうな……」

ロナも少し悲しそうな、それでいてどこか諦めるような口調で答える。

「全部、全部あなたのせいよ、シイル……。あなたが私の『兄』だったことが、全ての原因だもの……。見なさい、外を……」

そういってロナは窓の外を指さす。
……そこでは数多くの兵士たちが戦い、そして死んでいく姿が見えた。


「あれはね、シイル。……あなたが起こしたようなものよ? ……もし、あなたが兄じゃなければ……もし、私を愛してくれていたら……流れなかった血が……今あそこで流れているのよ?」


だが、マルティナはそれを遮るように叫ぶ。


「ふっざけないでよ! あんたが……あんたが、シイルの妹でいることから逃げ出したことが原因じゃない! なんで、それで満足しなかったの!? なんで、シイルと離れ離れになることを受入れなかったの!?」

その正論に、ロナの美しい顔が歪み、そしてマルティナに激昂した。


「……血が繋がってない、あなたには分からないわよ! どうせみんな、私の気持ちなんて『間違いだ』っていうもの! 誰に聞いたって『歪んでる』『勘違いだ』って取り合わないし……! ……フィクションですら否定されるのよ、私の気持ちは!」


……悲しいが、ロナのいうことは正しい。
本当に『兄と妹が愛し合う話』のバッドエンド率は異常だ。成人向けの漫画でもない限り、前世界が敵になり、二人が結ばれるエンディングを全力で否定しようとしてくる。

唯一『実は血がつながってませんでした』という逃げ口上があるが、俺たちは明確に、戸籍上も血がつながっていることは保証されていた。
ロナは憎悪を込めた目でマルティナを睨みつける。


「だから、私は魔王になったのよ……! それよりマルティナ! ……何より、シイルの傍をチョロチョロする、あなたは……一番殺したかった! ニルバナに言われてなかったら、あの場で八つ裂きにしていたわよ!」
「あたしもだよ……! シイルの妹だったってだけで、シイルの心を独り占めするあんたは……ずっとずっと……殺したかった!」


……そうか、ニルバナはすでに最初に俺たちが敗北したときから手を回していたのか。
今にして思うと『殺したら、マルティナは俺の心に永遠に残る』という発想は、言っては悪いが短絡的な性格のロナには思いつきそうもない。


「……もう、いいわ。ニルバナがなんて言おうと、あなたはここで殺す……! おしゃべりは終わりにしましょう?」

ロナは怒りとともに手を上げ、こちらを見据えてきた。
……ラストバトルの開始だ。



「……来るぞ! 構えろ!」
「あたしのうしろに隠れて!」

ロナが戦闘態勢を取るのに呼応するように、テイラーは剣を抜き、セドナは拳を構えて俺たちの前に立つ。
だが、ロナはフン、とそれを鼻で笑う。

「……あなたたちに用はないわ!」

そう叫ぶとともに、光弾が宙に浮かび、凄まじい速度で飛んでくる。……以前グリモアとアリーナを倒した魔法だ。


「させるか!」
「同じ手は食わないよ!」

だが、それは対策済みだ。
俺が事前に渡していた『身かわしのマント』を使って攻撃を回避した二人は、合わせるようにロナに向けて一撃を放つ。

「ふうん……結構いい一撃ねえ……? まあ、私には効かないけど」
「な……!」
「くそ……!」


だが、それをロナは素手で受け止めた。
……強靭な魔王の肉体は、その手足ですら鋼のような硬度を持たせることが出来るのだろう。そう余裕の表情とともに、魔王ロナは二人を吹き飛ばす。


「ぐ……!」
「やるね……」


だが、流石に運動能力の高いテイラーと体重の重く吹き飛びにくいセドナだ。
吹き飛んだ身体をひねると、ダメージを殺すべくふんわりと地面に着地した。


「まだまだ! 私を楽しませなさい! そしてシイル……!」
「なんだ!」
「この戦争に勝ったら、世界は私のものになる……! そしたら、今度こそ、あなたは私の夫にするわよ! 永遠に離さない……!」
「……ロナ……最初にそういってくれたら……俺は……!」


そこまで言って俺はいうのを辞めた。
もし、俺はロナから交際を申し込まれたら、断ることは絶対になかった。

……兄というのは自分の幸せより、妹の幸福のために生きなくてはならない。
愛する妹一人幸せにできなければ、俺の人生には何もない。

だから、彼女が俺との恋愛を望むなら、何が何だろうと受け入れるつもりだった。
……だが、今そんなことを言ったところで意味がないことだからだ。


「いくぞ、ロナ!」

俺はそういって杖を握る。




……それから、数十分後。


「はあ!」
「この!」

ロナの魔力は圧倒的だ。そして身体能力も俺たちは到底及ばない。
……だが、


「いい加減に諦めなさい、マルティナ!」
「嫌! ……絶対に、ロナ! あんたの思い通りにさせない!」

マルティナは何度も絶命し、それでも蘇生薬によって復活を繰り返しながらロナの注意を引く。ロナは挑発(タウント)を使うまでもなく、マルティナを集中的に攻撃することもあり、俺に対してはノーマークになりやすい。


その隙に俺は『轟炎の結晶』……これは『轟炎のかけら』の上位アイテムだ……を取り出してあちこちに配置した。


「ロナ、こいつでどうだ!」


そういうと俺は、ファイヤーボールで着火した。
その瞬間、五か所に設置されたアイテムは一斉に光だし、魔王ロナめがけて炎の槍となって襲う。


「く……! けど、こんなもの!」

だが、この攻撃は必中だ。
ロナの頑丈な肉体には大したダメージにはならないが、それでも確実に彼女の肉体にダメージを蓄積させていく。


「あなたたちがその気なら……! はあ!」

そしてロナは、自身の周囲に魔力の障壁を展開した。
……先ほど蛇使いの男が展開した魔法と同種の、魔法を無効化するものだろう。

「これで魔法は無効よ……! そして、膂力なら……私のほうが上!」

さらに、ロナは人間の反応速度では到達できない速度でテイラーの背後に回り込み、強烈な闘気を叩き込む。


「がはあ……!」


テイラーはその一撃にひるみながらも、何とか踏みとどまる。
そして、彼女の手をがっしり掴んだ。


「どんなに強い魔物でも……! 体重が同じなら、この技は効くだろ……うおりゃあああああ!」

そう叫ぶとともに、彼女を背負う形で入り込むと投げ飛ばす。
あれは柔道ともまた異なる体系の技だ。ロナは反応しきれず、宙に舞う。

「フ……けど、こんなのは……え……!?」

だが、ロナが着地するまでの一瞬の隙に俺は『幻惑の宝珠』を投げ、周囲に壁を作った。
この壁は幻覚だが、魔法攻撃を無効化することが出来る。

これにより、ロナの視界を封じる。
無論こちらもロナの動きは補足できなくなるが、それは当然分かっている。


「ふうん……騙しうちでもするのかしら?」


ロナは冷静に魔力を蓄え始めたのが、壁の向こうからでも分かった。
彼女はカウンターを狙っているのだろう。

幻覚の障壁に遮られているのはロナだけじゃないし、この障壁はこちらの魔法も無効化してしまう。

従って、ロナに対して攻撃するのであれば、結局は彼女の前に姿を表す必要があるのだ。
……無論、それが普通の人間ならば、だが。


「甘いよ、ロナ! ……この時間だけが欲しかったんだ!」

そういうと、準備を終えたセドナは、


「ファイヤ!」

そう叫ぶともに引き金を引いた。
そして彼女の持っていた『自動小銃』から、無数の弾丸が放たれた。


「え……! まさか、これは……転移物……!?」

そう、陛下が渡してくれたアイテムの中には、セドナ同様『転移』してきたアイテムもあった。あの自動小銃もその一つだ。


(セドナが、軍人ロボットで、本当に良かったよ……)

あの手の『兵器』は俺には扱えないが、セドナであれば使いこなせる。持ち手の攻撃力を参照しない上に魔法ではない銃火器は、ロナの展開した障壁にひびを入れた。

「なんでこっちが分かるの……!?」
「私にはね! 熱感知機能の一つくらい、ついてんだよ!」


ロボットであるセドナは俺たちと違って視覚に頼らなくても敵の居場所を補足できるのだ。それを作戦に組み込んだのが功を奏した。


「く……! あんたも転移者だったのね……! けど……!」
「今だ!」

同時に『幻惑の宝珠』の効果が切れたタイミングでテイラーが飛び込む。


「はああああ! くらえ、飛燕閃光激!」

テイラーは自らの剣に闘気を込めて高く飛び上がり、連続でロナの障壁を切り付けた。
……あれは、剣士グリモアが得意とした技だ。ロナと戦ったときには使う前に倒されたのだが、それが逆に功を奏し、見切られることがあんかった。


「な……しまった!」


連続攻撃によって、ロナを包んでいた障壁がパリンと割れた。
……あと少しだ。


「さあ、これで決めるよ!」

そういうとマルティナが飛び込む。
だがロナもそれは読んでいたのだろう、腰の剣を抜くと、彼女に向けて抜こうとする。


「無駄よ! ……死になさい、マルティナ!」


そう凄まじい殺気とともに斬りかかろうとした。
……だが、その瞬間。


キイイイイン……という凄まじい音とともに窓の外から光の刃が届き、それが魔王ロナの剣を叩き落とした。


「誰!?」


外を見ると、ディラックが、満身創痍のいでたちで笑みを浮かべながら宙を待っていた。

(……まさか、来てくれるなんてな……!)

ルネが装備していたマントを身にまとっており、そのマントの付け根からは翼が生えている。……恐らく、あれがルネのドロップアイテムだろう。

ディラックはいつもの不敵な笑みを浮かべながら呟いた。

「はあ……はあ……。言ったろ……! おいしいところは……僕が貰うって……!」
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