6 / 109
ルノア村奪取編
第6話 ルノア村
しおりを挟む
ルノア村を拠点とする為には、単純に力を持って制圧すれば良い訳では無い。拠点とする限りは俺達にとっても居を構えるだけの信頼のおける場所にしなければならない。支配者の座のみを奪い取る方法……考えないと。
まずは村の現状調査だな。
人身売買の取引場から森に入り、ゲームの記憶を頼りにルノア村の近くまで向かう。
到着した村の外観は、木造の壁にぐるりと囲まれ、その上には多数の弓兵が巡回していた。警備は頑丈……できれば住人から話を聞きたい。堂々と滞在する方法を取ることにしよう。
「エリュシア・サーガ」の知識からヒューメニア商人の服装へと擬態する。見た目は……今の俺はヒューメニア人そのものだから問題は無いか。
門へと赴き、警備兵を精神支配する。そして、彼から村の支配者について聞き出した。
グレディウス・フェルミア……それがこの村の支配者の名だった。聞いたことのない名前。元々ゲームでは平和な村だったはずだから当然かもしれないが。
……この世界はどうやら地形、種族、武器、魔法、技はエリュシア・サーガそのままだが、そこに住む人々の精神性や社会構成は異なるようだ。ゲームをベースにしてはいるが、どちらかと言うと、俺のいた現実世界に近いのかもしれない。
精神支配した警備兵に連れられ、村の中へと入っていく。
木造の門を括ると、中にはのどかな農耕地と、民家が並び立っていた。ここまでは俺の知っている村の風景だ。しかし、そこかしこに警備兵が立っており、如何にも息が詰まりそうな空気感がある。
主要道の続く先には、この村に似つかわしく無い屋敷があった。一目で分かる。グレディウスの屋敷だと。
警備兵にグレディウスの元へと案内させる。農作業を行っている獣人達は、皆俺を珍しいそうに眺めていた。人間が来るのは珍しいのだろうか?
小川を越え、広場を越えて、屋敷へと辿り着く。そして警備兵から俺を「鷹の目の使者」と紹介させると、あっさりとグレディウスと面会することができた。
◇◇◇
来客用の部屋に通され、しばらく待つと、テンプレの様な貴族の格好をした男が入って来た。太った容姿にやたらゴテゴテした装飾。本来獣人に貴族はいないはずだが……奴隷商としての利益。その使い道だけはハッキリと理解できる。
そして、次に鎧を来た大男の獣人。顔付きがグレディウスに似ている。跡取りか。それにしては鍛えられ過ぎている。さしづめ武芸に入れ込んだ口だろうな。
大柄な男が扉の前に立つのを確認した後、グレディウスは俺の向かいへと腰を下ろした。
「今回の出荷は終えたはずだが? 金額に不満があるならまた次回にしろ。ま、その場合は他の顧客に回すだけだがな」
奴隷の買い手は複数いる……か。また殺さなければいけない者が増える。
「いえ、私は何も値切りたい訳ではありません。グレディウス様の手腕にはひどく感銘を受けまして。どのように出荷する獣人を選定しているのですか?」
「言う訳ないだろう」
グレディウスが俺を睨み付ける。その瞳は、ただの守銭奴では無いことを告げていた。
「あぁ。申し訳ございません。そういう意味では無いのです。貴方様の出荷されるのは子供が多い。それも10歳未満の子供だ」
グレディウスの眉が持ち上がる。
「何だ? わざわざ何を言いに来た?」
グレディウスの人身売買はエルフェリアには知られたくないはずだ。森の民を優先に考えるエルフに村の実体を知られるとマズイからな。そうであるなら、この男は「ただ出荷に徹しているだけの存在」のはず。市場調査などした事も無いだろう。
「かねてより私は勿体ないと思っていたのです。グレディウス様はヒューメニアまでお越しになることができない。その為にせっかくの商機を逸してしまっていると」
「商機とは?」
「人気のある奴隷の種類ですよ」
「種類だと?」
「グレディウス様。王都では特定の年齢の奴隷が欲されているのですよ。理由は……お分かりですよね?」
グレディウスは俺の言った意味に気付くと呆れたようにため息を吐いた。
「まぁ……なるほどな。そういう者もいるか」
口にしていて虫唾が走る。しかし、これは俺が村に滞在する為に必要なことだ。そう言い聞かせて作り笑いを浮かべる。
「それで? その年齢というのは?」
「言う訳ないでしょう」
微笑みを浮かべながら先程のグレディウスの言葉を真似た。
「テメェ……俺達を愚弄する気か?」
怒りの籠った言葉と同時に、喉元へと大剣の刃先が突き付けられる。目を向けると、扉の前に立っていた大男が剣をこちらへと向けていた。
大剣を音も無く抜くとは、レベルは俺が戦ったヒューメニアの隊長クラスより上か。55……いや、60ほどはある。精神支配は無理だな。
「よせギルガメス」
父親から咎められらたギルガメスという男は、舌を鳴らして引き下がった。
「私は評価するぞ貴殿のその胆力をな。何か提案があったのだろう?」
グレディウスが俺を見てニヤリと笑う。
こちらは想定通りだな。自分をやり手だと勘違いした者は似た性質を持つ者を好む傾向にある。これは俺の現実の知識からだが。
「2、3日私を村に滞在させて頂けませんか? 私が人気の出そうな者を見繕いましょう。それを連れて行けば、新たな市場が開拓できると思います」
「ふむ。中々気に入った。貴殿の名は?」
「商人のヴィダルと申します」
「では、滞在を許可しよう。ヴィダル殿。良きパートナーになれることを期待しているぞ」
良きパートナーねぇ。やはり救いが無いな。
まずは村の現状調査だな。
人身売買の取引場から森に入り、ゲームの記憶を頼りにルノア村の近くまで向かう。
到着した村の外観は、木造の壁にぐるりと囲まれ、その上には多数の弓兵が巡回していた。警備は頑丈……できれば住人から話を聞きたい。堂々と滞在する方法を取ることにしよう。
「エリュシア・サーガ」の知識からヒューメニア商人の服装へと擬態する。見た目は……今の俺はヒューメニア人そのものだから問題は無いか。
門へと赴き、警備兵を精神支配する。そして、彼から村の支配者について聞き出した。
グレディウス・フェルミア……それがこの村の支配者の名だった。聞いたことのない名前。元々ゲームでは平和な村だったはずだから当然かもしれないが。
……この世界はどうやら地形、種族、武器、魔法、技はエリュシア・サーガそのままだが、そこに住む人々の精神性や社会構成は異なるようだ。ゲームをベースにしてはいるが、どちらかと言うと、俺のいた現実世界に近いのかもしれない。
精神支配した警備兵に連れられ、村の中へと入っていく。
木造の門を括ると、中にはのどかな農耕地と、民家が並び立っていた。ここまでは俺の知っている村の風景だ。しかし、そこかしこに警備兵が立っており、如何にも息が詰まりそうな空気感がある。
主要道の続く先には、この村に似つかわしく無い屋敷があった。一目で分かる。グレディウスの屋敷だと。
警備兵にグレディウスの元へと案内させる。農作業を行っている獣人達は、皆俺を珍しいそうに眺めていた。人間が来るのは珍しいのだろうか?
小川を越え、広場を越えて、屋敷へと辿り着く。そして警備兵から俺を「鷹の目の使者」と紹介させると、あっさりとグレディウスと面会することができた。
◇◇◇
来客用の部屋に通され、しばらく待つと、テンプレの様な貴族の格好をした男が入って来た。太った容姿にやたらゴテゴテした装飾。本来獣人に貴族はいないはずだが……奴隷商としての利益。その使い道だけはハッキリと理解できる。
そして、次に鎧を来た大男の獣人。顔付きがグレディウスに似ている。跡取りか。それにしては鍛えられ過ぎている。さしづめ武芸に入れ込んだ口だろうな。
大柄な男が扉の前に立つのを確認した後、グレディウスは俺の向かいへと腰を下ろした。
「今回の出荷は終えたはずだが? 金額に不満があるならまた次回にしろ。ま、その場合は他の顧客に回すだけだがな」
奴隷の買い手は複数いる……か。また殺さなければいけない者が増える。
「いえ、私は何も値切りたい訳ではありません。グレディウス様の手腕にはひどく感銘を受けまして。どのように出荷する獣人を選定しているのですか?」
「言う訳ないだろう」
グレディウスが俺を睨み付ける。その瞳は、ただの守銭奴では無いことを告げていた。
「あぁ。申し訳ございません。そういう意味では無いのです。貴方様の出荷されるのは子供が多い。それも10歳未満の子供だ」
グレディウスの眉が持ち上がる。
「何だ? わざわざ何を言いに来た?」
グレディウスの人身売買はエルフェリアには知られたくないはずだ。森の民を優先に考えるエルフに村の実体を知られるとマズイからな。そうであるなら、この男は「ただ出荷に徹しているだけの存在」のはず。市場調査などした事も無いだろう。
「かねてより私は勿体ないと思っていたのです。グレディウス様はヒューメニアまでお越しになることができない。その為にせっかくの商機を逸してしまっていると」
「商機とは?」
「人気のある奴隷の種類ですよ」
「種類だと?」
「グレディウス様。王都では特定の年齢の奴隷が欲されているのですよ。理由は……お分かりですよね?」
グレディウスは俺の言った意味に気付くと呆れたようにため息を吐いた。
「まぁ……なるほどな。そういう者もいるか」
口にしていて虫唾が走る。しかし、これは俺が村に滞在する為に必要なことだ。そう言い聞かせて作り笑いを浮かべる。
「それで? その年齢というのは?」
「言う訳ないでしょう」
微笑みを浮かべながら先程のグレディウスの言葉を真似た。
「テメェ……俺達を愚弄する気か?」
怒りの籠った言葉と同時に、喉元へと大剣の刃先が突き付けられる。目を向けると、扉の前に立っていた大男が剣をこちらへと向けていた。
大剣を音も無く抜くとは、レベルは俺が戦ったヒューメニアの隊長クラスより上か。55……いや、60ほどはある。精神支配は無理だな。
「よせギルガメス」
父親から咎められらたギルガメスという男は、舌を鳴らして引き下がった。
「私は評価するぞ貴殿のその胆力をな。何か提案があったのだろう?」
グレディウスが俺を見てニヤリと笑う。
こちらは想定通りだな。自分をやり手だと勘違いした者は似た性質を持つ者を好む傾向にある。これは俺の現実の知識からだが。
「2、3日私を村に滞在させて頂けませんか? 私が人気の出そうな者を見繕いましょう。それを連れて行けば、新たな市場が開拓できると思います」
「ふむ。中々気に入った。貴殿の名は?」
「商人のヴィダルと申します」
「では、滞在を許可しよう。ヴィダル殿。良きパートナーになれることを期待しているぞ」
良きパートナーねぇ。やはり救いが無いな。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる