12 / 54
ハルは桜が散れば、物のカズにも入らないのでしょ?
04
しおりを挟む
出席番号の奇数の者がクジを引いて相手を決めたが、偶数の俺もクジを引いている。これは出発順を決めるクジだ。俺と中島は16番と割と早めの出発になった。
登山の後、さっさと風呂と夕飯を済ませたから外はまだほのかに明るい。けれど、次々に出発するわけにはいかないから時間がかかるため最初のペアはつまらないかもしれない。でも、俺たちが出発する頃には辺りは真っ暗で雰囲気が盛り上がる。
「相沢くん、怖いね」
「そうか?」
「わたし暗いとこ苦手なんだ…」
女子同士でペアの子たちは手を繋いでくっ付いて出発している。
「ペア、変える?」
基本そんなことはできないだろうけど、合意の上でならいいだろ?ちょうど俺たちの前には直樹と女子が次の出発を待っている。
「俺、直樹と行くからさ」
女子同士で行く方が楽しいと思ってそう提案したら首を横に振る。
「わたし、相沢くんと行きたい」
「まあ、俺はどっちでもいいけどさ」
何か言いたそうな中島を置いて、直樹の後ろからヘッドロックする。まあ、いつもの俺たちだ。
「お前、怖がりだから俺たち行くまでどっかで待っとくか?」
「!…そ、そんな!怖くなんかない」
いやいや、何年の付き合いだと思ってるんだよ。幼稚園からの腐れ縁は女の趣味から好きな食べ物に至るまで何でも知っている。直樹ん家の父親と母親の仲がどうのとか姉ちゃんがどうだとか知りたくもない事情まで知っている。
「それより…」
「何だよ?」
「後で聞かせろよ?」
「ああ…あれ?」
「何とぼけてんの?俺の目を誤魔化すなんてできないんだからな」
「あっ!直樹、出発だぞ」
背中を押して送り出し、手を振る。
「頑張れ~」
何か言いたげに口を開けるけど、行ってくださいと先生に促され諦めて食堂を出ていった。俺たちももう直ぐだ。
「あの…相沢くん」
中島が俺の体操服をチョンチョンと引っ張る。
「わたし、暗いとこ本当に苦手で…手を繋いで欲しいんだけど」
「えっ?ヤダよ」
「ここからじゃなくてもいいから」
ねっ?と上目遣いで見つめられても、あざとく見えてしまうのは仕方ない。
中学の時付き合った子は、付き合う前にこんな視線を俺によこした。最初、大人っぽい仕草に何か嬉しかったけど、だんだんこの視線の意味を考えるようになる。媚びるようなものを感じちょっと引いてしまうようになった。
俺がみんなの前だから恥ずかしいと思っているようで、後でねと小さい声で言った。ここでこれ以上言い合いになっても面倒なので何も返事せずに順番を待つ。中島っておとなしいと思っていたけど、割と積極的なんだな。たまたま肝試しで一緒になった奴なら誰でもいいなんて。
はるちゃんなら……ほらほら、こうやって比べるんだ。いつもの思考に笑ってしまう。俺がはるちゃんを思って笑った顔をなんと勘違いしたのか、楽しみだねと中島が俺の肘に手をかける。
「止めろよ!」
「あっ、後からだよね」
「後もねぇよ」
「えっ?」
「ほら、行くぞ」
俺たちの番だ。二階の食堂から一階に降りる。二つある階段は食堂から近い方に通れないように衝立が置いてあり、わざわざ遠回りをする。山沿いに立っているこの施設は少し複雑な形をしていて、体育館には屋根のある渡り廊下を通らなければならず距離がある。渡り廊下と言っても体育館に行くこの廊下は壁もあり、寒くない。肝試しと言うことで明かりは極端に少なくゆっくり進む。途中、白いシーツが下から照らされる仄かなランタンの明かりでホワンと光り、ビビってる奴には効果あるだろう。箒をパタンと倒し突然の音にびっくりしたり…怪我が無いように、しかし少しは驚かせようと先生は頑張っているのだろう。俺はワクワクしかしないけどね。
「相沢くん」
「何?」
黙々と進む俺に中島が少しきつい感じで話しかける。
「手、繋いでくれるって言ったよね?」
「俺は言ってない」
「だって…笑ってくれた」
「俺は違うことで、思い出し笑いしただけだって」
「何それ?」
「だから、手なんか繋がないよ。誰かに見られたら勘違いされる」
誰かははるちゃんだけどここで名前は出せないだろ。
登山の後、さっさと風呂と夕飯を済ませたから外はまだほのかに明るい。けれど、次々に出発するわけにはいかないから時間がかかるため最初のペアはつまらないかもしれない。でも、俺たちが出発する頃には辺りは真っ暗で雰囲気が盛り上がる。
「相沢くん、怖いね」
「そうか?」
「わたし暗いとこ苦手なんだ…」
女子同士でペアの子たちは手を繋いでくっ付いて出発している。
「ペア、変える?」
基本そんなことはできないだろうけど、合意の上でならいいだろ?ちょうど俺たちの前には直樹と女子が次の出発を待っている。
「俺、直樹と行くからさ」
女子同士で行く方が楽しいと思ってそう提案したら首を横に振る。
「わたし、相沢くんと行きたい」
「まあ、俺はどっちでもいいけどさ」
何か言いたそうな中島を置いて、直樹の後ろからヘッドロックする。まあ、いつもの俺たちだ。
「お前、怖がりだから俺たち行くまでどっかで待っとくか?」
「!…そ、そんな!怖くなんかない」
いやいや、何年の付き合いだと思ってるんだよ。幼稚園からの腐れ縁は女の趣味から好きな食べ物に至るまで何でも知っている。直樹ん家の父親と母親の仲がどうのとか姉ちゃんがどうだとか知りたくもない事情まで知っている。
「それより…」
「何だよ?」
「後で聞かせろよ?」
「ああ…あれ?」
「何とぼけてんの?俺の目を誤魔化すなんてできないんだからな」
「あっ!直樹、出発だぞ」
背中を押して送り出し、手を振る。
「頑張れ~」
何か言いたげに口を開けるけど、行ってくださいと先生に促され諦めて食堂を出ていった。俺たちももう直ぐだ。
「あの…相沢くん」
中島が俺の体操服をチョンチョンと引っ張る。
「わたし、暗いとこ本当に苦手で…手を繋いで欲しいんだけど」
「えっ?ヤダよ」
「ここからじゃなくてもいいから」
ねっ?と上目遣いで見つめられても、あざとく見えてしまうのは仕方ない。
中学の時付き合った子は、付き合う前にこんな視線を俺によこした。最初、大人っぽい仕草に何か嬉しかったけど、だんだんこの視線の意味を考えるようになる。媚びるようなものを感じちょっと引いてしまうようになった。
俺がみんなの前だから恥ずかしいと思っているようで、後でねと小さい声で言った。ここでこれ以上言い合いになっても面倒なので何も返事せずに順番を待つ。中島っておとなしいと思っていたけど、割と積極的なんだな。たまたま肝試しで一緒になった奴なら誰でもいいなんて。
はるちゃんなら……ほらほら、こうやって比べるんだ。いつもの思考に笑ってしまう。俺がはるちゃんを思って笑った顔をなんと勘違いしたのか、楽しみだねと中島が俺の肘に手をかける。
「止めろよ!」
「あっ、後からだよね」
「後もねぇよ」
「えっ?」
「ほら、行くぞ」
俺たちの番だ。二階の食堂から一階に降りる。二つある階段は食堂から近い方に通れないように衝立が置いてあり、わざわざ遠回りをする。山沿いに立っているこの施設は少し複雑な形をしていて、体育館には屋根のある渡り廊下を通らなければならず距離がある。渡り廊下と言っても体育館に行くこの廊下は壁もあり、寒くない。肝試しと言うことで明かりは極端に少なくゆっくり進む。途中、白いシーツが下から照らされる仄かなランタンの明かりでホワンと光り、ビビってる奴には効果あるだろう。箒をパタンと倒し突然の音にびっくりしたり…怪我が無いように、しかし少しは驚かせようと先生は頑張っているのだろう。俺はワクワクしかしないけどね。
「相沢くん」
「何?」
黙々と進む俺に中島が少しきつい感じで話しかける。
「手、繋いでくれるって言ったよね?」
「俺は言ってない」
「だって…笑ってくれた」
「俺は違うことで、思い出し笑いしただけだって」
「何それ?」
「だから、手なんか繋がないよ。誰かに見られたら勘違いされる」
誰かははるちゃんだけどここで名前は出せないだろ。
0
あなたにおすすめの小説
未完成な僕たちの鼓動の色
水飴さらさ
BL
由人は、気が弱い恥ずかしがり屋の162cmの高校3年生。
今日も大人しく控えめに生きていく。
同じクラスになった学校でも人気者の久場くんはそんな由人に毎日「おはよう」と、挨拶をしてくれる。
嬉しいのに恥ずかしくて、挨拶も返せない由人に久場くんはいつも優しい。
由人にとって久場くんは遠く憧れの存在。
体育の時間、足を痛めた由人がほっとけない久場くん。
保健室で2人きりになり……
だいぶんじれじれが続きます。
キスや、体に触れる描写が含まれる甘いエピソードには※をつけてます。
素敵な作品が数多くある中、由人と久場くんのお話を読んで頂いてありがとうございます。
少しでも皆さんを癒すことができれば幸いです。
2025.0808
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
ポメった幼馴染をモフる話
鑽孔さんこう
BL
ポメガバースBLです! 大学生の幼馴染2人は恋人同士で同じ家に住んでいる。ある金曜日の夜、バイト帰りで疲れ切ったまま寒空の下家路につき、愛しの我が家へ着いた頃には体は冷え切っていた。家の中では恋人の居川仁が帰りを待ってくれているはずだが、家の外から人の気配は感じられない。聞きそびれていた用事でもあったか、と思考を巡らせながら家の扉を開けるとそこには…!※12時投稿。2025.3.11完結しました。追加で投稿中。
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
君に捧げる、魔法のレシピ〜さえない動画配信者の僕が、クラスの王子様的男子に恋をした結果〜
ryon*
BL
地味でおとなしい性格の高校生 佐藤 理人は、趣味でこっそりお菓子のレシピ動画を公開している人気配信者でありスイーツ研究家。
ある日理人は、幼なじみの太陽に味見用としてクッキーを手渡すところを、大路に見られてしまう。
しかも清雅は大の甘党で、理人が配信している動画の大ファンだったことが判明。
しかし清雅は、理人=推し配信者の『りとる』だとはまったく気付いていなくて……!?
泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。
恋の闇路の向こう側
七賀ごふん
BL
学校一の優等生として過ごす川音深白には、大切な幼馴染がいる。
家庭の事情で離れ離れになった幼馴染、貴島月仁が転校してくることを知った深白は、今こそ昔守られていた恩を返そうと意気込むが…。
────────
クールで過保護な攻め×完璧でいたいけど本当は甘えたい受け
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる