はるを待ちわび、かずを数える

茉莉花 香乃

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ハルは桜が散れば、物のカズにも入らないのでしょ?

04

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出席番号の奇数の者がクジを引いて相手を決めたが、偶数の俺もクジを引いている。これは出発順を決めるクジだ。俺と中島は16番と割と早めの出発になった。
登山の後、さっさと風呂と夕飯を済ませたから外はまだほのかに明るい。けれど、次々に出発するわけにはいかないから時間がかかるため最初のペアはつまらないかもしれない。でも、俺たちが出発する頃には辺りは真っ暗で雰囲気が盛り上がる。

「相沢くん、怖いね」
「そうか?」
「わたし暗いとこ苦手なんだ…」

女子同士でペアの子たちは手を繋いでくっ付いて出発している。

「ペア、変える?」

基本そんなことはできないだろうけど、合意の上でならいいだろ?ちょうど俺たちの前には直樹と女子が次の出発を待っている。

「俺、直樹と行くからさ」

女子同士で行く方が楽しいと思ってそう提案したら首を横に振る。

「わたし、相沢くんと行きたい」
「まあ、俺はどっちでもいいけどさ」

何か言いたそうな中島を置いて、直樹の後ろからヘッドロックする。まあ、いつもの俺たちだ。

「お前、怖がりだから俺たち行くまでどっかで待っとくか?」
「!…そ、そんな!怖くなんかない」

いやいや、何年の付き合いだと思ってるんだよ。幼稚園からの腐れ縁は女の趣味から好きな食べ物に至るまで何でも知っている。直樹んの父親と母親の仲がどうのとか姉ちゃんがどうだとか知りたくもない事情まで知っている。

「それより…」
「何だよ?」
「後で聞かせろよ?」
「ああ…あれ?」
「何とぼけてんの?俺の目を誤魔化すなんてできないんだからな」
「あっ!直樹、出発だぞ」

背中を押して送り出し、手を振る。

「頑張れ~」

何か言いたげに口を開けるけど、行ってくださいと先生に促され諦めて食堂を出ていった。俺たちももう直ぐだ。

「あの…相沢くん」

中島が俺の体操服をチョンチョンと引っ張る。

「わたし、暗いとこ本当に苦手で…手を繋いで欲しいんだけど」
「えっ?ヤダよ」
「ここからじゃなくてもいいから」

ねっ?と上目遣いで見つめられても、あざとく見えてしまうのは仕方ない。

中学の時付き合った子は、付き合う前にこんな視線を俺によこした。最初、大人っぽい仕草に何か嬉しかったけど、だんだんこの視線の意味を考えるようになる。媚びるようなものを感じちょっと引いてしまうようになった。

俺がみんなの前だから恥ずかしいと思っているようで、後でねと小さい声で言った。ここでこれ以上言い合いになっても面倒なので何も返事せずに順番を待つ。中島っておとなしいと思っていたけど、割と積極的なんだな。たまたま肝試しで一緒になった奴なら誰でもいいなんて。

はるちゃんなら……ほらほら、こうやって比べるんだ。いつもの思考に笑ってしまう。俺がはるちゃんを思って笑った顔をなんと勘違いしたのか、楽しみだねと中島が俺の肘に手をかける。

「止めろよ!」
「あっ、後からだよね」
「後もねぇよ」
「えっ?」
「ほら、行くぞ」

俺たちの番だ。二階の食堂から一階に降りる。二つある階段は食堂から近い方に通れないように衝立が置いてあり、わざわざ遠回りをする。山沿いに立っているこの施設は少し複雑な形をしていて、体育館には屋根のある渡り廊下を通らなければならず距離がある。渡り廊下と言っても体育館に行くこの廊下は壁もあり、寒くない。肝試しと言うことで明かりは極端に少なくゆっくり進む。途中、白いシーツが下から照らされる仄かなランタンの明かりでホワンと光り、ビビってる奴には効果あるだろう。箒をパタンと倒し突然の音にびっくりしたり…怪我が無いように、しかし少しは驚かせようと先生は頑張っているのだろう。俺はワクワクしかしないけどね。

「相沢くん」
「何?」

黙々と進む俺に中島が少しきつい感じで話しかける。

「手、繋いでくれるって言ったよね?」
「俺は言ってない」
「だって…笑ってくれた」
「俺は違うことで、思い出し笑いしただけだって」
「何それ?」
「だから、手なんか繋がないよ。誰かに見られたら勘違いされる」

誰かははるちゃんだけどここで名前は出せないだろ。
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