はるを待ちわび、かずを数える

茉莉花 香乃

文字の大きさ
11 / 54
ハルは桜が散れば、物のカズにも入らないのでしょ?

03

しおりを挟む
「なんか怪しい」

ドキリとする。坂口直樹が俺の膝を叩きながら、意味深な視線を寄越した。班は違うけど、ちょうど隣に座ってた。

「な、何が?」
「ほらほら、動揺してる」
「だから、何だよ?」

あくまで小声で言い合う。周りの喧騒が更に直樹の声を目立たなくする。直樹とは所謂幼馴染で、保育園からずっと一緒。俺が園子ちゃんの事を密かに思っていたことや、誰も知らないはるちゃんの事を唯一教えた悪友だ。まあ、男だとは言ってない…と思う。男に恋したのかと、からかわれた記憶が無いから多分言ってない…と思う。愚痴を嫌がらずに聞いてくれるし、聞き上手な直樹にはついつい余計なことまでしゃべってしまう。

でも、はるちゃんとの事はまだ言えない。ここでは尚更だ。

「藍川おぶって先に帰ったんだって?」
「ああ、ちょうど俺たちの前だったんだ」
「ふぅ~ん。それで?」
「それで?それでも何も、それだけだよ」
「いやいや、何年の付き合いだと思ってるのさ?登山の前と今とじゃ、一登の表情全然違うし」
「直樹には何でもお見通しなんだな」
「うんうん。で?」
「でも言わない」
「何でだよ?」
「今は無理」

俺の顔を見てこれ以上ここで聞いても無駄だと察したのか、後で教えろよとみんなの会話に加わって、夕食を食べ始めた。後片付けも手伝って、はるちゃんの待つ二人きりの部屋に向かう。

「ただいま」
「あ、かずくん。……お帰りなさい」

なんか違ったか?荷物の整理をしていたのか鞄の中身を出す手を止めて俺を見る。

「ちゃんと食べられた?」
「うん、少し残したけど…」
「そっか…、体調は?肝試し行ける?」

これから季節外れじゃないかと思うけど、肝試しがある。外は寒いからか食堂から宿泊施設の中を通り体育館に行き、辿り着いた証拠の何かを持ち帰る。何かは知らされていない。行けばわかると言われているから不正はできないってことなのか?確かにダルいけど…。そこまでする奴いるか?体育館を出て、渡り廊下を通り別館の二階の会議室がゴールだ。

「無理ならさ、俺もここに残るよ」
「そんなの悪いよ。楽しみにしてたでしょ?」

あっ、バレてる?ダルいとか言いながら、今回のオリエンテーションで一番面白そうだなと思っていたのが、実はこの季節外れの肝試し。まだ、想いを伝える前で、モヤモヤと、ウジウジと悩んではいてもできれば藍川…はるちゃんと一緒に行きたいと思っていた。けど、誰と行くことになってもなんか面白くない?

クラスで偶数の数字を入れた紙を奇数の子が引くので、必ず女子と一緒ってわけじゃないらしいし、余程のことがない限り放っておけばいい。一番と二番は一緒に行ける可能性があった。

「はるちゃんが辛いなら、一緒にここに残るよ。一人残して行くなんてできない」
「肝試しはやめておくよ。でも、先生と一緒にみんなを…かずくんを待ってる」
「そっか…。はるちゃんと一緒に行きたかったど仕方ないよな」
「僕も…かずくんと一緒に行けるなら行きたいけど…。でも、誰と行くかはわからないから」
「そうだけどさ。じゃあ、俺が行くの待ってて」
「うん。頑張って」
「おう」

もうそろそろ集合時間だ。廊下を大声で歩く声も聞こえ出した。

「はるちゃん…」

両腕を広げ、はるちゃんを待つ。ポスンと飛び込む可愛い身体を抱きしめた。しっかりと腕を回し痛いくらいに抱きついてくる。手を怪我してるのに。

「手、痛くない?」
「うん。少しだけ」
「はるちゃん、顔上げて」

胸に擦り付けるように埋められていた顔をゆっくり上げて、俺を見る可愛い瞳。顔を寄せると同じように顎を少し上げ唇を差し出してくれる。

「…ふっ…んっ」

チュッチュと何度も触れると、鼻から漏れるはるちゃんの吐息がヤバい。行きたくないかも…。でも、今日は二人きりで夜を過ごせる。行くかと未練の残る唇を離し、一度髪を撫でて二人で食堂に向かった。

はるちゃんは先生に参加しないと言いに行った。登山でのこともあり、途中で何かあっては困るからかあっさり許された。クジの結果、俺は中島理奈っておとなしい感じの女子とペアになった。はるちゃんは先生と既に移動している。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

推し変なんて絶対しない!

toki
BL
ごくごく平凡な男子高校生、相沢時雨には“推し”がいる。 それは、超人気男性アイドルユニット『CiEL(シエル)』の「太陽くん」である。 太陽くん単推しガチ恋勢の時雨に、しつこく「俺を推せ!」と言ってつきまとい続けるのは、幼馴染で太陽くんの相方でもある美月(みづき)だった。 ➤➤➤ 読み切り短編、アイドルものです! 地味に高校生BLを初めて書きました。 推しへの愛情と恋愛感情の境界線がまだちょっとあやふやな発展途上の17歳。そんな感じのお話。 【2025/11/15追記】 一年半ぶりに続編書きました。第二話として掲載しておきます。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/97035517)

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

もしも願いが叶うなら、あの頃にかえりたい

マカリ
BL
幼馴染だった親友が、突然『サヨナラ』も言わずに、引っ越してしまった高校三年の夏。 しばらく、落ち込んでいたが、大学受験の忙しさが気を紛らわせ、いつの間にか『過去』の事になっていた。 社会人になり、そんなことがあったのも忘れていた、ある日の事。 新しい取引先の担当者が、偶然にもその幼馴染で…… あの夏の日々が蘇る。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

笑って下さい、シンデレラ

椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。 面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。 ツンデレは振り回されるべき。

未完成な僕たちの鼓動の色

水飴さらさ
BL
由人は、気が弱い恥ずかしがり屋の162cmの高校3年生。 今日も大人しく控えめに生きていく。 同じクラスになった学校でも人気者の久場くんはそんな由人に毎日「おはよう」と、挨拶をしてくれる。 嬉しいのに恥ずかしくて、挨拶も返せない由人に久場くんはいつも優しい。 由人にとって久場くんは遠く憧れの存在。 体育の時間、足を痛めた由人がほっとけない久場くん。 保健室で2人きりになり…… だいぶんじれじれが続きます。 キスや、体に触れる描写が含まれる甘いエピソードには※をつけてます。 素敵な作品が数多くある中、由人と久場くんのお話を読んで頂いてありがとうございます。 少しでも皆さんを癒すことができれば幸いです。 2025.0808

【BL】腐れ縁の幼馴染と、キスから始まる恋もある?【幼馴染同士・隠れ執着攻×鈍感受】

彩華
BL
家が近所で、幼馴染。そんな関係の俺たち。 兄弟のように思いながら、途中から弟のように思っていた幼馴染──圭介が、モテ始める。小さい頃、俺のことが好きだと言っていたのが嘘のようだ。 おっと、それは良い。(羨ましいけど) 俺にもきっと、恋の春はやって来る。そう思っていたのに、モテ期はやって来ない。中学、高校を過ぎ。流石に大学では、圭介との腐れ縁も切れるだろうと思っていたのに!! 「遠野さん、この清算をお願いします」 「……分かりました」 どういうわけか、社会人になっても俺と圭介の腐れ縁は続いたままで……────!? ******** 外面と顔が良い攻めと、鈍感受け幼馴染BL。 お気軽にコメント頂けると嬉しいです。そこまで長くならないのでは?と思います。あと健全の予定 表紙お借りしました。 本年も宜しくお願い致します。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

処理中です...