はるを待ちわび、かずを数える

茉莉花 香乃

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ハルの次は夏、夏の次はカズ?

05

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「僕ね、本当はかずくんがここの高校だって知ってたんだ」
「えっ?」
「中学の時、陸上部だってのも知ってた」
「嘘…」
「川崎くんが大会の冊子見せてくれて、そこにかずくんの名前を見つけて。漢字は知らなかったから最初は違うかもって思ってたけど、どこの中学かも知ってたから、そこに書いてあったのは僕の知ってる中学の名前だった。近くの陸上競技場であった大会、見に行ったんだ。川崎くんたち同じ中学の子を応援するふりをして『相沢一登くん』を探した。そしたら、やっぱりかずくんだったから嬉しかった。小さい時からカッコ良かったけど、背も伸びて、僕、見惚れちゃった」
「ちょっと待って!中学何処か知ってたの?」
「本当は同じとこに行きたかったけど、あの辺りって校区が入り組んでて、道隔てた向こうがかずくんと同じ学校だって知ったのは転校してからだった」
「そうなの?」

驚きの連続だ。

「だって、家は知ってたから。お母さんはあそこが地元だし…」

あの辺りは本当に複雑な校区割りがされていて小学校が同じならわかるだろうけど、そうでもなければ難しい。

「高校は、これも川崎くんが時々かずくんの話をしてて、川崎くんと同じ高校を受けるかもって言ってたから、僕も同じとこを受けたんだ」

ボソボソとしゃべる声は小さく、恥ずかしそうにしているけれど、内容はとても大胆な告白だった。

「お母さんは反対しなかったの?」

男を追いかけて同じ中学や高校に行くなんて、怒られそうなのに。

「応援してくれた。だって、同じとこに行きたいって言ったら、アパート借りるのも同じ中学に行けるようにって探してくれたのはお母さんだから。実際は違ったけど…。あれ、不動産屋さんに聞けばわかったと思うんだ。でも、知ってるつもりだったからわざわざ聞かなかったみたい」
「そ、そうなんだ」
「僕がずっとかずくんの事好きなのはお母さんとなっちゃんには知られてるから」

えっ?公認?

「引かない?」
「何で?」
「だって、ストーカーみたいだなって、自分でも思うから」
「そんなことない!嬉しいよ」
「良かった」
「川崎には感謝だな」

今日のこともあるし、はるちゃんと同じ高校に入ったのはどうやら川崎のおかげらしい。

「あっ、言わないでね」
「勿論内緒。教室でははるちゃんて呼ばない。二人の時だけにする」
「僕もそうする…。誰かがかずくんって呼んだら嫌だから」

それは俺のセリフだよ。

スゥスゥと穏やかな寝息が聞こえる。

凄い告白をしてから、言いたかったことを出し切った満足感かふふっと笑い抱きついてきた。

はるちゃんはおとなしいって思い出が俺の中で定着していた。それがどんどん美化されて、男の子に何だけど大和撫子って言葉がぴったりの印象だった。でもさ、結局、はるちゃんならどっちでも許せるってことだ。おとなしくっても、積極的で大胆なことして俺を困らせても。こんなことでならもっと困らせて欲しい。

腕に乗せられていた頭をそっと枕に戻した。頬にチュッとキスをして、サラサラの髪を撫でる。一晩中くっ付いて寝ていたいけれどはるちゃんが疲れたら困る。それに…安心しきって腕の中で眠る初恋の想い人。俺も忘れなかったけど、もっとはっきり俺を求めてくれた。俺に会うために今の住まいを決めたとまで言われたら嬉しくないわけない。

そんな告白を聞いて、この小悪魔のような可愛いはるちゃんを抱きしめて、そのままおとなしく寝てしまうことなんかできそうもない。

はるちゃんの体温を感じながら、不埒な手がさっき触った胸をまさぐりたくなる。はるちゃんのを触りたくなる。穏やかな寝息を悦楽の吐息に変えたくなる。

思いを断ち切るようにもう一度頬にキスをした。


スマホのアラームが、聞き逃すのを阻止するようにけたたましい電子音を奏でる。いつもならもう五分…なんて思いながら枕とお友だちなのだけれど……。

昨晩は断腸の思いではるちゃんを隣に寝かせ、俺も上を向いておとなしく寝たはずだった。それがどうだ。俺の腕の中にあの攻撃的な電子音のアラームを完全に無視して、スヤスヤ可愛い寝顔を俺の鎖骨あたりに擦り付け寝こけているはるちゃんがいる。

一瞬で覚醒した。ここはどこだ?この腕の中の可愛い子は?なんて思うわけない。昨日の記憶はバッチリ俺の中にあってニヤニヤとカッコ悪い顔を晒しているだろう。昨夜は暗くてはっきり見ることができなかったはるちゃんの寝顔を堪能する。
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