はるを待ちわび、かずを数える

茉莉花 香乃

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ハルの次は夏、夏の次はカズ?

06

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「はるちゃん、朝だよ」

どうして俺の腕の中にいるのかはわからないけれど、今は離してあげることはできない。寝ている間に俺が抱き寄せたか、はるちゃんが寄ってきてくれたのか?

「ん~、まだっ」
「はるちゃん、可愛い」
「えっ?か、かずくん!あっ、えっ?」

まだ、しっかりと起きていないのかキョロキョロと忙しなく動く瞳。はるちゃんにとっては寝た時と変わりない格好だけど、いつもとは違う環境に、目の前の俺に戸惑う姿は見ていて楽しい。

彷徨わせていた目を俺に向けてじわじわと赤くなる頬。

「おはよ…」

朝の挨拶がこんなになまめかしく聞こえたことはない。

「おはよう。疲れてない?」
「うん、大丈夫。かずくんは?かずくんの方が疲れたんじゃない?腕だるくない?」
「ん~、ちょっと?でも、平気。はるちゃん…」
「ん?」

名を呼ぶと至近距離にある顔が更に近くなる。すかさず唇にチュッとキスをする。触れるだけのキスは朝の挨拶にはふさわしいだろ。物足りない気持ちもあるが、朝の生理現象がヤバい。気付かれてはいないと思う。別に気付かれても良いけどさ、男同士なんだから。

「起きよっか?」
「うん」

自分の準備を素早く済ませ、はるちゃんの手伝いをする。廊下には女子の甲高い声が響き、朝食に向かう生徒がゾロゾロと歩いているのだろう。朝食が終わればクラス対抗で校歌コンクール。それが終わればみんなでカレーを作って、それが昼食だ。後片付けまでしっかりして、宿泊施設の掃除をした後バスに乗り込んだ。

席順は行きと同じ。後ろでは変わって座っているみたいだけど、担任は何も言わない。俺とはるちゃんはこのまま。直樹にはるちゃんとのことを言ってなかったら、もしかしたら一緒にと言ってきたかもしれない。直樹は意味深な視線を寄越しただけで何も言わなかった。

寒くないようにと持ってきていたジャージを鞄から引っ張り出し、はるちゃんの膝にかける。その中に俺の手も入れて、ジャージに隠れて手を握った。

「疲れてるなら、寝ても良いよ」

俺の肩に頭乗せて寝る?小声で耳元で囁くとブルっと震えて首を振る。

「か、…えっと、相沢くんとおしゃべりがしたいから」

わざわざ名字で呼んだのにそれは小さな声で、出発前のガヤガヤとした車内では俺の他は誰の耳にも入らないだろう。

朝から何度か中島の顔を見た。どうやら孤立しているみたいで、カレーを作っている時も食べる時も誰と話すでもなく一人だった。昨日の今日だしな。何を考えてあんなことをしたのか?俺がってか、誰でもキスをすれば落ちるだろうって思ってた中島の自業自得だけど、これから三年間大変だな。クラスメイトと仲良くなるためのオリエンテーションでまさかのぼっち確定か?

俺ははるちゃんが嫌な気持ちにならないように中島の顔を見ないし、名前も言わないけどね。

バスはうるさい高校一年生を日常へと運んでゆく。出発してから十五分もすると騒がしかった車内はだんだん静かになっていった。最初歌でも歌って帰ろうぜと意気込んでた奴らも、一人二人と寝てしまうクラスメイトに静かにしているしかなかった。

あちこちでボソボソとしゃべる声は耳障りではなく、さざ波のように心地よく耳に届く。エンジン音とちょうど良い振動ではるちゃんも船を漕ぎ始めた。そっと頭を俺の肩に乗せる。クラスメイトとして許されるギリギリだろう。膝にあったジャージを肩まで上げて、寒くないかとそっと腕や膝を触る。俺もはるちゃんの体温を半身に感じながら目を閉じた。

ガクンと微かなバスの揺れに目を覚ます。窓の外はまだ見慣れない景色だ。出発してから一時間くらいしか経っていない。はるちゃんはまだ寝ているのか規則正しい呼吸音が聞こえる。小さなしゃべり声は今も聞こえてくる。ずっと起きていたのか、俺のように一旦寝てしまってから起き出したのかはわからない。

地元が近くなるとその声はだんだん大きくなり、このオリエンテーションの終わりを告げる。
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